TYRO3 (TAM receptor tyrosine kinase)
一行要約
TYRO3 は AXL / MERTK とともに TAM receptor tyrosine kinase family を構成し、Gas6 / Protein S をリガンドとして efferocytosis、免疫寛容、細胞生存シグナルを駆動する。腫瘍では TYRO3 が腫瘍細胞の増殖・生存・治療抵抗性と、macrophage / DC を介した免疫抑制の双方に関与する。三者の中では研究が比較的少ないが、AXL / MERTK との機能冗長性ゆえ pan-TAM 標的化の対象に含められ、ICB との併用文脈で注目される。
主要エビデンス
- TAM family と kinase 創薬: TYRO3 を含む TAM 受容体がキナーゼ阻害剤開発の標的群として論じられる (Ferguson et al. NatRevDrugDiscov 2018)
- TAM 標的 mAb の前臨床: MER 標的抗体の文脈で TAM family (TYRO3 含む) の冗長性が議論 (Cummings et al. Oncotarget 2014)
- multi-kinase 阻害の臨床: TAM family を含む multi-kinase 標的化 (cabozantinib 等) の腎癌などでの臨床応用文脈 (Choueiri et al. NEnglJMed 2021)
メカニズム
TYRO3 は AXL / MERTK と共通の構造 (2 個の Ig-like + 2 個の FNIII 細胞外ドメイン、分割キナーゼドメイン) を持ち、bridging molecule Gas6 (TYRO3 に高親和性) / Protein S を介して apoptotic cell の phosphatidylserine を認識する。リガンド結合で受容体二量体化 → 自己リン酸化 → PI3K-AKT / RAS-MAPK / STAT 経路を活性化し、細胞生存・遊走・増殖と、貪食細胞では efferocytosis に伴う anti-inflammatory / tolerogenic プログラムを誘導する。腫瘍では (1) 腫瘍細胞内在性 TYRO3 が survival / chemoresistance / EMT を支え、(2) TAM / DC 上の TYRO3 が免疫沈黙的な apoptotic cell 処理を介して抗原提示・type I IFN を抑制する。AXL / MERTK と高度に冗長なため単独阻害では代償が起こりやすい。
臨床位置づけ
TYRO3 単独の臨床標的化は限定的で、AXL / MERTK との冗長性から pan-TAM 阻害剤や multi-kinase 阻害剤 (sitravatinib, cabozantinib 等のオフターゲット作用) の一部として標的化される。腫瘍細胞内在性シグナル (治療抵抗性) と myeloid 介在性免疫抑制 (efferocytosis checkpoint) の双方への寄与から、ICB 併用による cold tumor の感作戦略の構成要素として研究されるが、選択的阻害剤と patient selection biomarker は未確立。
Open Questions
- TYRO3 が AXL / MERTK と独立して寄与する病態は何か (単独標的化の意義)
- pan-TAM 阻害における TYRO3 阻害の上乗せ効果と正常組織 (efferocytosis) への影響