• 著者: Antonio Saviano, Alberto Toso, Samuel J. Klempner, Thomas F. Baumert
  • Corresponding author: Antonio Saviano (saviano@unistra.fr) / Thomas F. Baumert (thomas.baumert@unistra.fr), University of Strasbourg / Institute for Translational Medicine and Liver Disease (ITM)
  • 雑誌: Nature Reviews Cancer
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-03-02
  • Article種別: Review
  • PMID: 41772030

背景

タイトジャンクション (TJ) は、上皮細胞の細胞間接着、細胞極性、およびシグナル伝達を媒介する多タンパク質複合体である。TJは主に3つの機能を担う。第一に、傍細胞腔を密閉し、イオンや溶質の透過を制御するバリア機能。第二に、頂端膜と基底側膜のドメイン混合を防ぎ、細胞極性を維持するフェンス機能。第三に、環境シグナルを細胞応答に伝達するシグナル伝達機能である。TJの構造的かつシグナル伝達的中核成分であるクローディン (CLDN; claudin) は、ラテン語の claudere (閉じる) に由来する名称を持つ4回膜貫通型タンパク質であり、ヒトゲノムには23種類の機能的メンバーが存在する。各CLDNは4回膜貫通 (TM; transmembrane) 構造、ECL1 (extracellular loop 1)、ECL2 (extracellular loop 2)、細胞質N/C末端、およびC末端のPDZ結合モチーフを共有するが、組織別発現と機能は多様である。

機能特性によりCLDNは4クラスに分類される。Class 1 (CLDN1・3・7・9・11・14・18.1・19) は自律的バリア形成性で、独立にタイトで低コンダクタンスな接合を形成する。Class 2 (CLDN2・10A・10B・15) は自律的イオン選択的傍細胞チャネルを形成する。Class 3 (CLDN8・12・16・17など) は非自律的で、既存のTJに組み込まれて機能する。Class 4 (CLDN18.2のみ) は中性条件下で弱いストランドを形成するが、酸性条件で接合強度が増強されるという、胃粘膜の生理的特殊化を反映した特性を示す。

C末端PDZ結合モチーフを介する足場タンパク質 Itoh et al. J Cell Biol 1999 との相互作用は、CLDNをアクチン細胞骨格に繋留し、シグナル統合プラットフォームとして機能させる。がん環境ではCLDNが過剰発現し、非ジャンクション膜領域への再分布を起こし、治療抗体アクセス可能な表面抗原として機能する。2024年のゾルベツキシマブ (CLDN18.2標的IgG1モノクローナル抗体) のFDA承認は、この治療戦略の臨床的実現可能性を最初に証明したマイルストーンである。しかし、CLDNファミリーの固形腫瘍における機能的役割、特に「ドライバー」と「マーカー」の区別、および多様な治療モダリティの臨床開発状況を包括的に整理し、バイオマーカー戦略やオンターゲット・オフ腫瘍毒性のリスク管理に関する知識ギャップが残されており、この点が未解明である。既存のレビューでは特定のCLDNメンバーや治療モダリティに焦点が当てられることが多く、CLDNファミリー全体を機能的役割と治療モダリティの観点から統合的に評価した包括的な参照体系が不足しており、系統的な整理が不十分であった。先行研究である Sahin et al. (2008) や Nakayama et al. (2024) などの既報では、CLDN18.2の有用性が強調されてきたものの、ファミリー全体を網羅する治療開発の全体像は提示されておらず、臨床応用を最大化するための体系的知見が不足しているという課題が残されている。

目的

CLDNファミリー23メンバーの固形腫瘍における発現パターン、脱制御機序、がん生物学的機能 (増殖、上皮間葉転換 (EMT; epithelial-mesenchymal transition)、幹細胞性、線維症、免疫調節、治療抵抗性) を包括的に整理し、CLDN18.2を中心とした各モダリティ (モノクローナル抗体、ADC (antibody-drug conjugate; 抗体薬物複合体)、二重特異性/三重特異性抗体、CAR (chimeric antigen receptor; キメラ抗原受容体) T細胞療法、細胞内PDZ標的小分子) の臨床開発状況を統合する。また、「ドライバー vs マーカー」の概念区分、バイオマーカー駆動型患者選択 (IHC (immunohistochemistry; 免疫組織化学) スレッショルド、H-スコア、空間プロファイリング、液性生検) の現状課題、オンターゲット・オフ腫瘍毒性のリスク管理、免疫チェックポイント阻害剤との併用戦略設計を論述し、CLDN標的療法を固形腫瘍精密医療における基盤モダリティに発展させるための研究方向性を提示することを目的とする。

結果

CLDNファミリーの発現パターンと組織特異性: CLDN18.2 (Class 4) は胃腺がんおよび食道腺がんの30-40%に発現し、膵がん・一部の卵巣がん・特定の結腸直腸がん (CRC; colorectal cancer) サブタイプ (MSI-H + 粘液性) にも発現する (Fig 2)。一方、CLDN18.1は肺胞上皮および肺腫瘍に発現し、両アイソフォームは最初の69残基中21アミノ酸が異なり、特にECL1に8つの置換を持つため、抗体結合選択性が決定される。CLDN1はCRC、食道扁平上皮がん (SCC; squamous cell carcinoma)、頭頸部SCC (HNSCC; head and neck squamous cell carcinoma)、および肝胆道系がんで高頻度に過剰発現する。CLDN4は消化管、肺、卵巣腫瘍で高発現する。CLDN6は精巣胚細胞腫瘍、卵巣がんの攻撃的サブタイプ、子宮内膜がんで特異的に発現し、成人正常組織での発現が極めて低いため、腫瘍選択的抗原として有望である。腫瘍内不均一性はCLDN18.2で約60%の症例に認められ、原発巣と転移巣の発現不一致は最大25%に達する。転移部位別では、腹膜転移が最高陽性率44.3%と一致率31.4%を示す一方、肝転移が最低 (陽性率17.9%と一致率12.8%) という臨床的に重要な空間的ヘテロジェネティが報告されている (n=1 コホート研究)。

CLDN脱制御の多層的分子機序: 遺伝的変化においては、CNAが点変異より圧倒的に多く、扁平上皮がん (肺・食道・頭頸部・子宮頸・膀胱) と一部の腺がん (卵巣・胃) で最高頻度、最大40-60%の腫瘍が少なくとも1つのCLDN遺伝子変化を保有する。CLDN1の遺伝子変化は肺SCCで20-30%、食道/卵巣腺がんで10-15%、その他の腺がんで5%以下である。CLDN4 / CLDN6の遺伝子変化は概して4%未満である。CLDN18の遺伝子変化はSCCで5-10%、食道腺がんで約8%、子宮内膜/卵巣/胃で5-6%、胃腺がんでのみ構造変異が2.8%とユニークに高い。CLDN18-ARHGAP26融合遺伝子は胃腺がんの約3% (印環細胞がんでは最大17%) に検出され、CLDN18の切断とARHGAP26のRhoGAPドメインとの融合によりRhoA-FAK-YAP-TEAD活性化が生じ、Trp53欠損マウスオルガノイド + 異種移植モデルでFAK / YAP-TEAD阻害により有意な腫瘍進行抑制が確認された。転写制御では、TNF (腫瘍壊死因子) → MAPK / NF-κB 経路を介したCLDN1誘導、HIF-1α (低酸素誘導因子-1α) → CLDN1 / CLDN4誘導、TGFβ (形質転換成長因子β) → SMAD + JUN経路を介したCLDN4誘導、TWIST1 → CLDN4、17β-エストラジオール/ERα → CLDN6が同定されている。エピジェネティック制御では、CLDN10BプロモーターCpGメチル化が腎がんで悪性度・予後不良と相関し、CRISPR-dCas9媒介脱メチル化でCLDN10B発現回復が実証された。

機能的役割 — ドライバー vs マーカー区分と発がんシグナル伝達: 「ドライバー (機能的腫瘍促進因子)」と「マーカー (受動的細胞表面抗原)」の区分は治療戦略選択を規定する。CLDN1はPI3K-AKT-mTOR / NOTCH1 / MAPK-ERK / SRC-AKT-BCL2を活性化し、in vivoでの機能獲得・機能喪失実験でドライバー機能が確立されている (Fig 3)。抗CLDN1抗体はHCC (hepatocellular carcinoma; 肝細胞がん) マウスモデル (n=5 mice) + 患者由来スフェロイドで腫瘍増殖抑制 + TME (tumour microenvironment; 腫瘍微小環境) 再プログラミング (CD8+ T細胞エフェクター機能増強) を示し、抗CLDN1抗体リキシューデバート (ALE.F02) は非ヒト霊長類での4週連続点滴で主要な安全性シグナルなし、ALE.P02 MMAE-ADC (NCT06747585) + ALE.P03エキサテカン-ADC (NCT07169734) がPhase I/IIを開始している。CLDN6はHCCでTJP2-YAP1競合によりYAP1核移行 → ソラフェニブ耐性を誘導し、子宮内膜がん/胃がんでも増殖促進するが、乳がん・肺がんではRIP1-ASK1-p38-JNK経路でアポトーシス誘導 → 腫瘍抑制因子として機能するという、コンテキスト依存的な二重性を示す。CLDN2はCRCでEGFR-ERK1/2 + PI3K依存的増殖促進 + ZO1-ZONAB → NDRG1抑制で転移、YAP活性化 + miR-222-3p抑制でがん幹細胞性を維持する。CLDN18.1は逆にYAP-TAZ抑制 → 腫瘍抑制、Cldn18.1ノックアウトマウスで自発的肺腺がん発生が認められる。治療耐性として、CRCでオキサリプラチンがMAPK-p38-GSK3β-WNT-β-カテニン軸でCLDN1を転写誘導 (抗CLDN1-MMAE ADCとのシーケンスで異種移植片増殖を有意に抑制)、NSCLC (non-small-cell lung cancer; 非小細胞肺がん) SCCでCLDN1がPI3K-AKT-NF-κB経路を介してドキソルビシンの傍細胞透過性を低下、HCCでCLDN6がソラフェニブ耐性を媒介、上皮性卵巣がんでCLDN4がシスプラチン取り込みを制限するなど、多様な耐性機序が同定されている。

CLDN18.2標的療法の臨床開発 — 最も進んだパラダイム: ゾルベツキシマブ (抗体依存性細胞傷害 (ADCC) + 補体依存性細胞傷害 (CDC) 媒介IgG1) のPhase III SPOTLIGHT (mFOLFOX6併用) とPhase III GLOW (CAPOX併用) の統合解析は、HER2陰性 + CLDN18.2陽性 (中等度-強度IHCで75%以上の腫瘍細胞) の胃 / 胃食道接合部腺がん1次治療において、主要エンドポイントである無増悪生存期間 (PFS) の有意な延長を示した。SPOTLIGHT試験では中央値PFS 10.6 vs 8.7 months、HR 0.75 (95% CI 0.60-0.94, p=0.012) を達成し、GLOW試験においても中央値PFS 8.2 vs 6.8 months、HR 0.69 (95% CI 0.54-0.87, p=0.002) と一貫した治療効果を示した。客観的奏効率 (ORR) 45.5%、完全奏効率6%を達成し、2024年FDA承認を獲得した。最多有害事象は悪心・嘔吐 (正常胃粘膜へのオンターゲット・オフ腫瘍毒性) であった。ILUSTRO Phase II (ゾルベツキシマブ + ペムブロリズマブ) は、前治療歴の多い小規模群で安全性は許容されたものの効果は限定的であり、より大規模なPhase III LUCERNA (NCT06901531) とTST-001 (オセミタマブ) との比較 + 免疫療法併用試験が進行中である。ADCとしてソネシタツグ ベドチン (旧AZD0901 / CMG901)・IBI343・SHR-A1904が初期試験でORR 24-29%を示し、Phase IIIが進行中である (Fig 4)。二重特異性抗体ギバストミグ (CLDN18.2 × 4-1BB / CD137) のfirst-in-human Phase IでORR 16%が観察され、ギバストミグは抗PD1 + 化学療法併用試験 (NCT04900818) に展開中である。CAR-T細胞療法は、既治療CLDN18.2陽性胃 / 胃食道接合部腺がんPhase IIオープンラベル試験でORR 35%、奏効持続中央値3.88ヶ月、PFS 3.25 vs 1.77 months、OS 7.92 vs 5.49 monthsを達成し、ゾルベツキシマブ治療後でも逐次標的化の可能性を示唆した。

その他のCLDN標的 (CLDN6 / CLDN1 / CLDN4 / CLDN3 / CLDN9): CLDN6は成人正常組織発現が低く、高い腫瘍選択性を示す。単剤モノクローナル抗体ASP1650 Phase IIは再発/難治性胚細胞腫瘍で効果が限定的であったが、ADC (DS-9606a・TORL-1-23)、二重特異性/三重特異性抗体 (BNT142、SAIL66)、CAR-T BNT211 (CARVac自己増幅RNAワクチンと組み合わせでT細胞持続性を増強) が早期臨床に進入している。BNT211 Phase I/IIはCLDN6陽性固形腫瘍でORR 33%、サイトカイン放出症候群 (CRS) 発生率 46%という潜在性と課題の両面を示した。CLDN1はHCC・胆管がん・CRC・NSCLC・尿路上皮がん・食道がん・子宮頸がん・HNSCCに発現し、非ジャンクション膜形態が表面アクセス可能で、発がん経路を駆動する。抗CLDN1抗体リキシューデバート (旧ALE.F02) は腫瘍学外でも進行性肝線維症 / 軽度肝硬変 (FEGATO-01; NCT05939947) + ANCA関連血管炎-急速進行性糸球体腎炎 (RENAL-F02; NCT06047171) で臨床評価中である。CLDN4は消化管 / 肺 / 卵巣で広く発現し、二重特異性抗体ASP1002 (CLDN4 × 4-1BB) がPhase I (NCT05719558) にある。CLDN3標的抗体ABN501は小細胞肺がん前臨床モデルで有効性を示し、KM3907 (CLDN3 × CLDN4) やCLDN3 × CD3二重特異性抗体も開発中である。細胞内標的戦略としては、CLDN1のPDZ結合モチーフを妨害するN-フェニルカルバモチオイル-2-ナフタミド誘導体 (例: PDS-0330) がCRC前臨床でCLDN1-SRC会合を阻害し抗腫瘍効果を示すが、現在は前臨床段階にとどまる。

バイオマーカー戦略と知識ギャップ: Phase III SPOTLIGHT + GLOWは、75%以上の腫瘍細胞での中等度-強度のCLDN18.2 IHCを発現選択基準としたが、Phase II FAST試験のサブグループ解析では、CLDN18.2発現40-69%の患者層で有意なPFS / OS改善が得られず、より低発現患者はモノクローナル抗体ではベネフィットが限定的であることが示された。一方、ADC + CAR-T + 二重特異性抗体は、HER2-low乳がんADC拡張に類似したパラダイムシフトをもたらす可能性が高く、Phase I ADC試験ではCLDN18.2陽性細胞1%以上のみで患者登録、CAR-T試験では中等度染色40%以上で登録され、適格患者層を胃がん全体の約40%から約60%へ拡大する見込みがある。CLDN18.2発現はゾルベツキシマブ治療後も大部分が維持されることが示され、逐次標的化戦略の実現可能性が報告された (n=1 小規模臨床研究)。CLDN18.2陽性腫瘍はCD4+ + CD8+ T細胞密度が高く、非疲弊型で腫瘍細胞に近接しているにもかかわらず予後不良であり、PD-L1 CPS (combined positive score) 5以上の陽性率は17-40%でCLDN18.2陰性腫瘍 (50-60%) より低く、免疫療法感受性が低い背景の一因と推察される。さらに、術前化学療法後に制御性T細胞 + 腫瘍関連マクロファージ + NK細胞数が増加し、TGFβ + CCL5-CCR5軸による免疫抑制プログラムが強化される。H-スコアシステムは半定量的IHCとして情報価値があるが、閾値の標準化は不一致であり、組織マイクロアレイは腫瘍内空間的ヘテロジェネティの捕捉に限界があり、空間プロファイリング + 多部位生検 + 液性生検が今後の必須課題である。オンターゲット・オフ腫瘍毒性として、ゾルベツキシマブは消化管毒性 (悪心・嘔吐) が支配的であり、ADC / CAR-Tでは血液学的毒性 (リンパ球減少 / CRS) + ペイロード特異的毒性 + 消化管毒性が報告されている。CLDN1は皮膚・肝臓・腎臓のボーマン嚢に、CLDN4は消化管に正常発現があるため、皮膚 / 消化管 / 腎臓の皮膚科的副作用のモニタリングが継続課題である。

考察/結論

先行研究との違い: 本レビューは、特定のCLDNメンバーや単一の治療モダリティに焦点を当てていたこれまでの報告と異なり、CLDNファミリー23メンバー全体を「ドライバー vs マーカー」「多層的脱制御機序」「多様な治療モダリティ」「線維症-腫瘍連続体」の統合軸でがん治療の文脈に整理し、各メンバーのメカニズム的信頼性をタイプ別に提示する包括的参照体系を構築した点で独自の貢献をなす。

新規性: 本研究で初めて、CLDNファミリー全体を機能的役割と治療モダリティの観点から統合的に評価し、特にCLDN18.2の成功を基盤とした他のCLDNメンバー (CLDN1, CLDN4, CLDN6) への治療戦略の拡張可能性を詳細に論じた。また、CLDNのコンテキスト依存的な機能的二面性や、腫瘍微小環境におけるCLDNの役割に関する知識ギャップを明確に提示した点は、これまで報告されていない。

臨床応用: ゾルベツキシマブの2024年FDA承認は、表面発現CLDNを利用した固形腫瘍精密医療の臨床的実現可能性を初めて立証した重要な節目であり、CLDN1 / CLDN4 / CLDN6を含む後続モダリティ (ADC + 二重特異性抗体 + CAR-T) の台頭が、それぞれ独自の生物学を反映した治療可能集団の拡大をもたらしつつある。臨床現場においては、HER2 ADCがHER2-lowへ拡張したパラダイムと同様に、CLDN標的ADCやCAR-Tが、低発現または不均一なCLDN発現を有する腫瘍に対しても治療効果を発揮する可能性があり、患者選択基準を拡大する潜在的な臨床的意義を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、CLDN発現の閾値定義の標準化、腫瘍内不均一性や転移部位間の発現不一致を克服するための空間プロファイリングや液性生検の導入、オンターゲット・オフ腫瘍毒性のさらなる詳細な特性評価が挙げられる。特に、CLDN1やCLDN4のように正常組織にも広く発現するCLDNを標的とする際の安全性プロファイルの確立は重要である。また、免疫チェックポイント阻害剤やRNAベースワクチンとの合理的な併用戦略の設計、および線維症駆動型前悪性病変を含むより広範な適応症へのCLDN標的療法の拡大も今後の研究方向性となる。

方法

本研究は、CLDNファミリータンパク質のがん治療標的としての可能性を包括的に評価した体系的レビューである。文献検索は、PubMed、Embase、Cochrane Library、および Web of Science の主要な医学データベースを用いて網羅的に実施された。検索キーワードには、「claudin」、「solid tumour」、「CLDN18.2」、「antibody-drug conjugate」、「bispecific antibody」、「CAR-T cell」、「precision oncology」を組み合わせた論理式を使用した。検索対象期間はデータベース開設から2025年12月までに発表された英語論文とし、事前に定義された適格基準 (inclusion/exclusion criteria) に基づき、CLDNの発現、機能、シグナル伝達、および標的治療に関する原著論文と臨床試験報告を抽出した。文献の選定プロセスおよびスクリーニング結果は、PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) フローチャートに準拠して整理された。

データベース検索に加え、Cerami et al. CancerDiscov 2012 および Human Protein Atlas (HPA) の公開データセットを活用し、固形腫瘍におけるCLDN遺伝子のコピー数異常 (CNA; copy number amplification) やmRNA発現レベルを解析した。cBioPortalのデータ解析は、Gao et al. SciSignal 2013 に記載された統合ゲノミクス解析手法に準拠し、TCGA (The Cancer Genome Atlas) のデータセットを用いて実施された。抽出された臨床試験データ (SPOTLIGHT試験、GLOW試験など) のエビデンスレベルおよび推奨度の評価には、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムを適用し、バイアスのリスク、結果の一貫性、およびエビデンスの直接性を多角的に検証した。統計解析手法としては、各臨床試験で報告されたハザード比 (HR; hazard ratio)、95%信頼区間 (CI; confidence interval)、および対数ランク検定 (log-rank test) のp値を抽出し、治療効果の有意性を定量的かつ客観的に評価した。