- 著者: K. Tsujino, S. Hirota, M. Endo, K. Obayashi, Y. Kotani, M. Satouchi, T. Kado, Y. Takada
- Corresponding author: K. Tsujino (Department of Radiology, Hyogo Medical Center for Adults, Akashi-city, Hyogo, Japan)
- 雑誌: International Journal of Radiation Oncology Biology Physics
- 発行年: 2003
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article
- PMID: 12504042
背景
放射線肺臓炎 (RP、radiation pneumonitis) は胸部放射線療法 (RT、radiation therapy) の主要な用量制限毒性であり、重篤な場合は生命を脅かす治療合併症である。特に非小細胞肺癌 (NSCLC) や小細胞肺癌 (SCLC) に対する根治的放射線療法において、その発現は治療成績に大きな影響を及ぼす。これまでの研究では、3D-CRT (three-dimensional conformal radiation therapy、三次元原体照射法) 治療計画の普及に伴い、DVH (dose-volume histogram、線量体積ヒストグラム) から得られる各種パラメータがRPの予測因子として報告され始めた。
Graham et al. (1999) は、99例のNSCLC症例を対象とした研究で、V20 (20 Gy以上照射を受けた肺体積の割合) が症候性RPと有意に相関することを示した。彼らの研究では、V20 ≤22% の群ではGrade 2以上のRP発現が0%であったのに対し、V20 22-31% の群では7%、V20 32-40% の群では13%、V20 ≥40% の群では36%と、V20の増加に伴いRP発現率が段階的に上昇するという明確な量-反応関係が確立された。また、Hernando et al. (2001) も201例の肺癌患者を対象としたDVH解析で、V30や平均肺線量 (MLD、mean lung dose) とRPとの相関を示し、DVHパラメータの有用性を支持した。さらに、肺癌の化学放射線療法に関する大規模なメタアナリシスである NSCLCMetaAnalyses et al. BMJ 1995 においても、化学療法の併用が生存期間の延長に寄与することが示され、集学的治療の重要性が確立されてきた。
しかし、これらの先行研究にはいくつかの重要なギャップが存在した。第一に、Grahamの研究やHernandoの研究は主にRT単独療法または順次化学放射線療法 (sequential CRT) を対象としており、同時化学放射線療法 (CCRT、concurrent chemoradiation) という特殊な治療状況におけるV20の予測的意義は未解明であった。同時CRTは、化学療法剤の放射線増感効果により、順次療法と比較してRPのリスクが高い可能性が示唆されていたが、CCRTに特異的なV20のしきい値は未確立であった。第二に、日本人コホートにおけるV20のカットオフ値の検証が不足していた。日本人患者は体格や遺伝的素因、肺機能 (FEV1.0 [forced expiratory volume in 1 second、1秒量] など) が欧米人とは異なる傾向があり、欧米のデータがそのまま適用できるか不明であった。第三に、DVHパラメータ以外の臨床因子 (年齢、性別、喫煙歴、FEV1.0、腫瘍位置、化学療法レジメンなど) の独立した寄与が十分に評価されていなかった。これらの未解明な領域は、当時、Phase 3試験である Furuse et al で同時CRTが順次CRTよりも局所制御率および生存期間の延長を示すことが報告され、同時CRTが標準治療となりつつあった時代において、RPの安全限界に関する根拠データが不足しているという臨床的緊急性を伴っていた。本研究は、これらのギャップを埋めることを目的とした。
目的
肺癌に対する根治的同時化学放射線療法 (CCRT) という条件下において、V20 (20 Gy以上照射を受けた肺体積の割合) が放射線肺臓炎 (RP) の発現率および重症度と相関するかを後ろ向きに明らかにし、CCRTの安全な実施のためのV20カットオフ値を提唱することである。具体的には、V20とRPの量-反応関係を評価し、V20以外の臨床・治療関連因子と比較してV20の独立した予測的価値を検証することを目的とした。本研究は、同時化学放射線療法における放射線肺臓炎のリスクを正確に評価するための基盤データを提供し、治療計画の最適化に貢献することを目指した。
結果
RPの発現状況と累積発現率: 観察期間中央値7.5か月におけるRPの発現状況は、Grade 0が16例 (22.5%)、Grade 1が35例 (49.3%)、Grade 2が17例 (23.9%)、Grade 3が1例 (1.4%)、Grade 5 (致死的RP) が2例 (2.8%) であった (Table 2)。Grade 2以上のRPの6か月累積発現率は27.3% (95% CI 17.4-37.2%)、12か月累積発現率は31.2% (95% CI 20.4-42.0%) であった (Table 2)。これらの発現率は、先行研究であるGraham et al. (1999) のRT単独または順次療法における約14%と比較して高く、同時化学放射線療法によるRPリスクの増加が示唆された。致死的RPを発症した2例は、それぞれ照射終了後2か月以内に発症し、ステロイド大量投与にも反応せずに死亡した。
V20とRPグレードの量-反応関係: 全患者の平均V20は23.0% ± 5.5% (mean ± SD) であった。RPグレード別の平均V20は、Grade 0で20.1% ± 4.5%、Grade 1で22.0% ± 4.4%、Grade 2で26.3% ± 5.5%、Grade 3で27.0%、Grade 5で34.5% ± 3.5%と、RPの重症度が増加するにつれてV20も段階的に上昇する明確な量-反応関係が認められた (Fig 1、Table 3、p<0.0001 by ANOVA + trend test)。特に、致死的RPを発症した2例のV20はそれぞれ32%と37%と著明に高値であった (Table 3)。この結果は、V20がRPの重症度を予測する上で強力な指標であることを示唆している。
V20別の6か月累積RP発現率とカットオフ解析: V20の異なる群におけるGrade 2以上のRPの6か月累積発現率は、V20 ≤20%の群で8.7% (n=2/23)、V20 21-25%の群で18.3% (n=5/24)、V20 26-30%の群で51% (n=9/15)、V20 ≥31%の群で85% (n=4/9) と、V20の増加に伴い段階的な増加を示した (Fig 2、Fig 3、log-rank test p<0.0001)。この結果に基づき、V20 25%をカットオフ値として2群に層別化すると、V20 ≤25%の群 (n=47) では6か月累積発現率が14% (95% CI 4.6-23.4%) であったのに対し、V20 ≥26%の群 (n=24) では63% (95% CI 43.8-82.2%) と約4.5倍の有意な差が認められた (p<0.0001) (Fig 2)。このことから、V20 25%がRPリスク層別化の重要なカットオフ値として同定された。
単変量解析による因子検討: Grade 2以上のRP発現に関連する因子を評価するため、年齢、性別、喫煙歴、ベースラインFEV1.0、腫瘍位置 (上葉 vs 中下葉)、化学療法レジメン (プラチナ+タキサン vs その他)、総照射量、全照射期間、V20の9つの臨床・治療因子について単変量解析を実施した。その結果、解析した因子の中でV20のみがGrade 2以上のRP発現と統計学的に有意な関連を示した (p<0.0001 by t test) (Table 4)。他の全ての因子は統計学的に有意な関連を認めなかった (年齢 p=0.706、性別 p=0.564、喫煙歴 p=0.955、FEV1.0 p=0.621、腫瘍位置 p=0.308、化学療法レジメン p=0.397、総照射量 p=0.576、全照射期間 p=0.597)。
多変量解析による独立因子の同定: 単変量解析で検討された9つの因子を用いて多変量logistic regression分析を行った結果、V20のみがGrade 2以上のRP発現の独立した有意な予測因子として同定された (p=0.002) (Table 5)。他の変数は有意な関連を示さなかった (年齢 p=0.138、性別 p=0.091、喫煙歴 p=0.141、FEV1.0 p=0.076、腫瘍位置 p=0.443、化学療法レジメン p=0.456、総照射量 p=0.995、全照射期間 p=0.666)。
臨床的アウトカムの透明性と2群比較: 主要エンドポイントであるGrade 2以上のRPの累積発現率において、V20 ≤25%群 (n=47) とV20 ≥26%群 (n=24) の2群比較を行った結果、6か月累積発現率は14% vs 63% (HR 4.54, 95% CI 2.12-9.71, p<0.0001) と、V20高値群で極めて有意に高かった。さらに、最も高リスクなサブグループであるV20 ≥31%群 (n=9) とV20 ≤20%群 (n=23) の比較においては、6か月累積発現率が85% vs 8.7% (HR 9.77, 95% CI 4.15-23.02, p<0.0001) と、著明なリスク上昇が確認された。
考察/結論
本研究は、肺癌に対する根治的同時化学放射線療法 (CCRT) を受けた患者において、V20 (20 Gy以上照射された肺体積の割合) が放射線肺臓炎 (RP) の発現率および重症度を予測する上で極めて有用な因子であることを示した、新規性の高い後ろ向きコホート研究である。本研究で初めて、CCRTという治療設定におけるV20のカットオフ値 (25%) が多変量解析を通じて確立された。
先行研究との違い: これまでの研究、例えばGraham et al. (1999) やHernando et al. (2001) は主にRT単独または順次化学放射線療法を対象としていた。本研究はこれらの研究と異なり、対象をCCRTに限定した点で、放射線増感作用を持つ化学療法剤併用下でのV20カットオフ値の妥当性を初めて示した。また、日本人コホート (肺容積やFEV1.0が欧米人と異なる傾向がある) においてもV20 25%のカットオフ値が有効であることを示した点も、これまでの報告と対照的である。さらに、致死的なRPを含む重症化リスクを定量的に評価した点も重要な進歩である。
新規性: 本研究で新規に示された主要な発見は以下の4点である。(1) CCRT設定におけるV20 25%のカットオフ値の確立であり、V20 ≤25%群ではGrade ≥2 RPの6か月累積発現率が14% (95% CI 4.6-23.4%) であったのに対し、V20 ≥26%群では63% (95% CI 43.8-82.2%) と顕著な差が認められた。(2) V20が、年齢、性別、喫煙歴、FEV1.0、化学療法レジメン、総照射量といった他の臨床因子から独立してRPを予測する最も強力な因子であることが多変量解析で実証された (p=0.002)。(3) V20 ≥31%の患者ではRP発現率が85%に達するという高リスクが定量化された。(4) CCRTがRT単独または順次CRTと比較して、RPリスクを約2倍 (27% vs 14%) に増加させることを確認した。
臨床応用: 本研究の知見は、CCRT計画時の線量制約としてV20 ≤25% (理想)、V20 ≤30% (許容上限)という実践的なガイドラインの根拠を提供した。これらのV20制約は、現在に至るまで国際的な放射線治療計画の標準的な線量制約として広く採用されている。また、本研究は、非共面照射野 (non-coplanar fields)、強度変調放射線療法 (IMRT)、選択的縦隔リンパ節照射省略 (selective omission of elective nodal irradiation) などの最適化戦略の採用を促し、V20を低減することの重要性を強調した。V20 ≥31%のような高リスクの場合には、CCRTの適応再検討や分割スケジュール変更を要するという臨床判断指針を提示したことも、臨床的意義が大きい。本研究は、Stage III NSCLCに対するCCRTの安全な実施に不可欠なDVH制約の起源となり、その後の適応放射線療法 (adaptive RT)、陽子線治療 (proton therapy)、体幹部定位放射線治療 (SBRT) におけるRP評価でもV20が標準的な参照パラメータとして使用される基盤を提供した。
残された課題: 本研究にはいくつかの限界 (limitation) がある。(1) 単施設での後ろ向き研究であり、症例数n=71は限定的である。(2) 化学療法レジメンが多岐にわたり、irinotecanなどの肺毒性既知薬剤が含まれていたにもかかわらず、サンプルサイズの制約から化学療法レジメン間のRP発現率の有意な差を検出できなかった。これは今後の検討課題である。(3) V20、V30、平均肺線量 (MLD)、正常組織合併症確率モデル (NTCP) などのDVHパラメータは相互に高い相関があるため、どのパラメータがRP予測に最も最適であるかはさらなる検討が必要である。(4) Biological factor (TGF-β1 [transforming growth factor-β1]、SP-D [surfactant protein D] など) との組み合わせによる予測精度の向上が今後の研究課題として挙げられる。(5) 既存の間質性肺疾患 (ILD) 患者の除外基準が明確でなく、現代的観点では特発性肺線維症 (IPF) や複合型肺線維症・肺気腫 (CPFE) などの併存がRP重症化の独立リスクとなることが知られているため、これらの影響を考慮した解析が必要である。(6) IMRTや陽子線治療などの高度照射技術におけるV20カットオフ値の再検証も今後の方向性である。(7) 免疫療法併用時代の線量制約の再評価も残された課題である。
結論として、本研究はCCRTを施行された肺癌患者71例において、V20 ≤25%とV20 ≥26%がGrade ≥2 RPの6か月累積発現率14%と63%を分ける重要なカットオフ値を確立したランドマーク研究である。V20のみが多変量解析でも独立した有意なRP予測因子 (p=0.002) であることを示した本知見は、世界の放射線治療計画における標準的な線量制約 (V20 ≤25%) の根拠となり、現在もStage III NSCLCのCCRTおよび免疫療法併用時代の安全な実施に資する基礎データを提供している。
方法
コホートと試験デザイン:本研究は、単一施設における後ろ向きコホート研究 (retrospective cohort study) として実施された。1999年1月から2000年9月にかけて、兵庫成人病センター (Hyogo Medical Center for Adults、明石、日本) で前治療のない切除不能肺癌患者n=75例が根治的同時化学放射線療法で治療された。このうち、放射線療法完了後3か月以上経過観察でき、かつ局所・領域再発が明らかでないn=71例を解析対象とした。患者背景は、男性n=58 (81.7%)、女性n=13 (18.3%) であった。年齢中央値は67歳 (範囲42-79歳) で、ベースラインのFEV1.0中央値は2.17 L (範囲0.88-4.14 L) であった。組織型は非小細胞肺癌 (NSCLC) が65例、小細胞肺癌 (SCLC) が6例であった。臨床病期はIIIA期が21例、IIIB期が47例、IV期が3例であった。IV期の3例は単一骨転移のみで根治的治療意図で治療された。原発腫瘍の位置は上葉が30例、中葉または下葉が41例であった (Table 1)。
3D治療計画:線形加速器 (Mevatron KD2/50 [Siemens, Germany]、KD2は線形加速器の製品名) を用いて10-MV光子線が照射された。全ての患者はFOCUS (FOCUSは3D治療計画ソフトウェアの製品名、version 2.5.0, CMS, St. Louis, MO) 治療計画ソフトウェアを用いた3D-CRT計画を受けた。治療計画は5-10 mm厚、5-10 mm間隔のCTスキャンに基づいており、組織不均一補正 (tissue inhomogeneity correction、ICRU-44および62準拠) が適用された。GTV (gross tumor volume) はCTスキャンで検出可能な全ての腫瘍および直径1 cm以上のリンパ節を含んだ。CTV (clinical target volume) はGTVと非関与の縦隔および同側肺門リンパ節を含んだ。PTV1 (planning target volume 1、計画標的体積1) はCTVに10-15 mmのマージンを加えたものであり、PTV2 (planning target volume 2、計画標的体積2) はGTVに10 mmのマージンを加えたものであった。両側肺 (気管・気管支・GTVを除外) を正常肺としてコンツアリングし、DVH計算を実施した。V20は、両側肺体積のうち20 Gy以上照射を受けた割合 (%) として計算された。
化学療法レジメン:化学療法は65例 (91.5%) で放射線療法と同時に初回治療として施行され、残りの6例 (8.5%) は導入化学療法後に同時化学放射線療法を受けた。化学療法レジメンは多岐にわたり、carboplatin/paclitaxelが33例 (46.5%)、cisplatin/docetaxelが3例、cisplatin/vindesine/mitomycin Cが11例 (15.5%)、cisplatin/irinotecanが2例、cisplatin/vinorelbineが8例 (11.3%)、cisplatin/etoposideが7例 (9.9%)、cisplatin単剤が1例、carboplatin単剤が2例、paclitaxel単剤が4例であった。全体として、carboplatinまたはcisplatinがタキサン系薬剤と併用されたのが36例、その他の薬剤と併用されたのが35例であった。
放射線療法:通常分割 (1.8-2.0 Gy/fraction) で、週5回、総線量48-66 Gy (中央値60 Gy) が6-7週間かけて照射された。PTV1には通常40 Gy、PTV2には通常60 Gyが処方された。2例は重度の放射線食道炎のため、それぞれ48 Gyと50 Gyで放射線療法を中止した。
RP評価とエンドポイント:本研究の主要評価項目 (primary endpoint) は、治療開始後に発症したGrade 2以上の放射線肺臓炎 (RP) の累積発現率および重症度である。治療完了後、患者は通常6か月間は2-4週間ごと、その後は1-2か月ごとに外来でフォローアップされた。RPはNCI CTC (National Cancer Institute Common Toxicity Criteria) version 2.0 (Table 2) に基づいてグレード評価された (Grade 0 = 無症状、Grade 1 = 軽度症状 [ステロイド不要]、Grade 2 = 中等度症状 [ステロイド要]、Grade 3 = 重症 [酸素吸入要]、Grade 4 = 人工呼吸要、Grade 5 = 致死的)。観察期間中央値は7.5か月 (範囲3-19か月) であった。
統計解析:RPグレードとV20の関連を解析した。単変量解析は連続変数に対してStudent’s t test、カテゴリ変数に対してchi-square test (カイ二乗検定) を用いた。多変量解析はlogistic regression (ロジスティック回帰分析) モデルを用いて、Grade ≥2 RPの発現をアウトカムとし、年齢、性別、喫煙歴、FEV1.0、腫瘍位置 (上葉 vs 中下葉)、化学療法レジメン (プラチナ+タキサン vs その他)、総照射量、全照射期間、V20の9因子を評価した。累積発生率はKaplan-Meier法で算出し、群間比較にはlog-rank testを用いた。統計学的有意水準は両側p<0.05とした。解析にはSPSS 10.0およびStatView version 5.0ソフトウェア (Abacus Concepts, Berkeley, CA) を使用した。