• 著者: Kosei Doshita, Yuya Tabuchi, Hirotsugu Kenmotsu, Shota Omori, Takanori Kawabata, Hiroaki Kodama, Naoya Nishioka, Eriko Miyawaki, Yuko Iida, Nobuaki Mamesaya, Haruki Kobayashi, Ryo Ko, Kazushige Wakuda, Akira Ono, Tateaki Naito, Haruyasu Murakami, Keita Mori, Hideyuki Harada, Takeshi Kaneko, Toshiaki Takahashi
  • Corresponding author: Hirotsugu Kenmotsu (Division of Thoracic Oncology, Shizuoka Cancer Center, Nagaizumi-cho, Shizuoka, Japan; h.kenmotsu@scchr.jp)
  • 雑誌: Advances in Radiation Oncology
  • 発行年: 2023
  • Epub日: 2022-08-22
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 36845617

背景

限局型小細胞肺がん (LS-SCLC) は、最も悪性度の高い腫瘍の一つであるが、化学療法と放射線療法 (RT) の併用により治癒可能である。LS-SCLCに対する標準治療は、白金製剤とエトポシドによる化学療法と、早期同時化学放射線療法 (CRT) の組み合わせである。放射線療法のスケジュールとしては、加速超分割照射 (AHF-RT: Accelerated Hyperfractionated Radiation Therapy, 45 Gy/30 fr、1日2回) が標準とされており、Turrisi et al. NEnglJMed 1999 の古典的ランダム化比較試験 (RCT) で1日1回照射と比較して全生存期間 (OS) の優越性が示されて以来、国際的に広く普及している。しかし、同時CRTの主要な毒性の一つである放射線肺炎 (RP) は、治療継続の障壁となり、重篤化すれば致命的となりうる。RPは胸部放射線療法における最も一般的な線量制限毒性の一つとして知られている。

局所進行非小細胞肺がん (LA-NSCLC) に対するCRTに関しては、線量体積ヒストグラム (DVH) パラメータ、特に20 Gy以上の線量を受ける肺体積の割合 (V20) や平均肺線量 (MLD) とRP発症との関係が詳細に解析され、V20がRP発症の強力な予測因子として確立されている。しかし、LS-SCLCに対するAHF-RTでは、RPの発症率、リスク因子、治療転帰に関する大規模な系統的データが不足しており、AHF-RT特有のRP発症メカニズムやリスク因子、そしてその治療転帰に関する知識には依然として大きなギャップが残されている。特に、1日2回照射というAHF-RTの照射方式の特性から、高線量体積の分布が変化するため、NSCLCで重要とされるV20以外のパラメータが主要リスク因子となる可能性が示唆されていた。例えば、Tsujino et al. IntJRadiatOncolBiolPhys 2003 は、DVHパラメータが肺がんの同時化学放射線療法後の放射線肺炎を予測する上で有用であることを報告している。また、Govindan et al. JClinOncol 2006 は、過去30年間の米国における小細胞肺がんの疫学変化を分析し、治療法の進歩にもかかわらず、RPのような合併症のリスクが依然として存在することを示唆している。

これまでのLS-SCLCにおけるAHF-RT後のRPに関する報告は、少数例の記述的解析や、DVHパラメータの網羅的な評価が不足しているものが多かった。このため、AHF-RT特有のRP発症メカニズムやリスク因子、そしてその治療転帰に関する知識には依然として大きなギャップが残されている。本研究は、この知識のギャップを埋めることを目的とし、LS-SCLC特化の後ろ向きDVH解析として実施された。特に、AHF-RT後のRPの特性、リスク因子、および治療成績を包括的に評価し、より安全な治療戦略の確立に貢献することを目指した。

目的

本研究は、2002年から2018年にかけて静岡がんセンターにおいてAHF-RT (45 Gy/30 fr、1日2回) 同時化学療法を施行したLS-SCLC患者125例を対象とし、以下の3つの主要な目的を設定した。本研究は単施設後ろ向きコホート研究として実施された。

  1. 放射線肺炎 (RP) の発症率、グレード分布、および発症時期の特性評価: AHF-RT同時化学療法後のRPがどの程度の頻度で発生し、その重症度分布がどうであるか、また放射線治療開始からRP発症までの期間がどの程度であるかを明らかにすることを目的とした。特に、先行研究で報告されているLA-NSCLC患者におけるRP発症時期と比較し、AHF-RT特有の遅発性RPの有無を評価した。
  2. Grade ≥2 RPを予測するDVHパラメータの同定: 患者背景因子および総肺DVHパラメータ (V5-V50: 肺体積の5Gyから50Gyまで5Gy刻みでその線量以上の線量を受ける割合、MLD: 平均肺線量、Dmax: 総肺の最大線量) のうち、Grade ≥2のRP発症と統計学的に有意に関連する独立したリスク因子を同定することを目的とした。特に、LA-NSCLCで確立されているV20以外のDVHパラメータがLS-SCLCのAHF-RTにおいてより強力な予測因子となる可能性を検証した。
  3. Grade ≥2 RPの治療内容と転帰の記述: Grade ≥2 RPを発症した患者に対してどのような治療が実施され、その治療成績(回復率、RP関連死亡の有無、長期酸素療法の必要性など)がどうであったかを詳細に記述し、AHF-RT後のRPが臨床的に管理可能であるかを評価することを目的とした。

これらの目的を達成することで、LS-SCLC患者に対するAHF-RT同時化学療法の安全性プロファイルをより詳細に理解し、RPリスクを低減するための治療計画最適化に資するエビデンスを提供することを目指した。

結果

患者背景とコホートの概要: 2002年9月から2018年2月までの期間に、LS-SCLCと診断され、早期同時AHF-RTを施行した適格患者は125例であった。除外された48例は、逐次RT (n=40)、後期同時RT (n=4)、または通常RT (n=4) を受けていた。また、5例は化学療法4コースを完遂していなかった。本研究の対象となった125例の患者背景は以下の通りである (Table 1)。年齢中央値は65歳 (範囲 34-76歳) であり、男性が92例 (73.6%) を占めた。全患者がECOG PS 0または1であり、PS 0が67例 (53.6%)、PS 1が58例 (46.4%) であった。現喫煙者は80例 (64.0%)、糖尿病の既往がある患者は16例 (12.8%) であった。病期分類は、Union International for Cancer Control-TNM第8版に基づき、Stage IIBが25例 (20.0%)、Stage IIIAが46例 (36.8%)、Stage IIIBが38例 (30.4%)、Stage IIICが16例 (12.8%) であり、Stage IIIが全体の80.0%を占めた。中央値追跡期間は73.1ヶ月 (範囲 5.0-177.5ヶ月) と比較的長期にわたり、RPの遅発例を十分に捕捉できる設計であった。Grade ≥2 RPを発症した29例とGrade 0-1 RPの96例を比較すると、Grade ≥2 RP群では年齢中央値が69歳と有意に高かった (p=0.026)。糖尿病の既往 (24.1% vs 9.4%, p=0.055) および48 pack-years以上の喫煙歴 (34.5% vs 55.3%, p=0.058) は、統計的有意差には達しなかったものの、Grade ≥2 RPとの関連に傾向が認められた。

RP発症率とグレード分布: 放射線肺炎の発生状況は以下の通りであった (Table 2)。放射線学的変化なし (Grade 0) が27例 (21.6%)、Grade 1が69例 (55.2%)、Grade 2が17例 (13.6%)、Grade 3が12例 (9.6%) であった。Grade 4およびGrade 5のRPは認められなかった。Grade ≥2 RPの発症率は29例 (23.2%) であり、Grade ≥1 RPの発症率は98例 (78.4%) であった。RP全体の発症率は高かったが、Grade ≥3の重症例は9.6%にとどまり、治療関連死亡は0例と安全性は維持されていた。既報のランダム化第2-3相試験では、AHF-RT群のGrade 1-2 RP発症率は5-20%、Grade 3 RPは0-1%と報告されており、本研究コホートの発症率はやや高い傾向にあった。これは、予防的リンパ節照射の影響や民族背景の違いが寄与した可能性がある。

RPの発症時期の特性: 放射線治療開始からRPの発症までの中央値は147日であった (Figure 1A)。放射線治療開始後59日以内の発症は3例 (2.4%)、60-89日が6例 (4.8%)、90-119日が16例 (12.8%)、120-149日が29例 (23.2%)、150-179日が24例 (19.2%)、180日以上が20例 (16.0%) であり、発症ピークは放射線治療開始後120-149日に集中した。放射線治療終了からRPの発症までの中央値は123日であった (Figure 1B)。これは、LA-NSCLCに対する通常分割照射後のRP発症時期 (中央値 60-100日) と比較して遅発傾向が認められた。

DVHパラメータとGrade ≥2 RPの関係: 単変量解析では、総肺DVHパラメータのうちV5からV45およびMLDのいずれも、連続変数としてGrade ≥2 RPと有意に関連した (p<0.05) (Table 3)。ROC解析では、V30がGrade ≥2 RPの予測において最大AUC 0.748 (最適閾値: 20%) を示し、最小p値 (p<0.0001) を記録した。Grade ≥3 RPの予測にはV25が最も強力なパラメータであり、最適閾値22%でAUC 0.789を示した。多変量解析において、V30 ≥20%は独立したGrade ≥2 RPのリスク因子であった (オッズ比 [OR] 13.632、95% CI 4.695-39.579、p<0.001) (Table 4)。V30 <20%群のGrade ≥2 RP発症率が6.6%であったのに対し、V30 ≥20%群では49.0%と7倍以上の差が認められた (Figure 2C)。MLD (平均肺線量) については、Grade ≥2 RP群で中央値1234 cGy、Grade <2 RP群で1059 cGyと有意差があり (p=0.0008)、単変量解析でOR 1.002 (95% CI 1.001-1.004、p=0.0044) を示したが、多変量モデルではV30が選択された。

Grade ≥2 RPの治療内容と転帰: Grade ≥2 RPを呈した29例のうち26例 (89.7%) がステロイド療法を受けた (Table 2)。3例は観察のみであった。ステロイド初期投与は、メチルプレドニゾロン 500-1000 mg/日 (n=6)、プレドニゾロン (PSL) 1 mg/kg/日 (n=4)、PSL 0.5 mg/kg/日 (n=14)、PSL 0.3 mg/kg/日 (n=2) に分類された。治療期間の中央値は89日 (範囲 28-477日) であった。転帰として、ステロイド治療を受けた26例は全て回復した。観察のみの3例のうち2例は観察のみで回復し、1例は放射線線維症を呈し長期酸素療法を要した。RP関連死亡は0例であり、AHF-RTによるRPは適切な管理のもとで管理可能であることが示された。

考察/結論

本研究は、LS-SCLCに対するAHF-RT同時CRT施行後のGrade ≥2 RP発症率が23.2%であること、そしてV30 ≥20%が多変量解析における唯一の独立リスク因子 (OR 13.632、95% CI 4.695-39.579、p<0.001) であることを125例の後ろ向きコホートで実証した。全Grade ≥2 RP患者においてステロイド療法が有効であり、RP関連死亡は0例という安全性プロファイルは、AHF-RTが適切な管理のもとで施行可能であることを支持する。

先行研究との違い: LA-NSCLCを対象とした先行研究ではV20が主要RPリスク因子として確立されているが、本研究ではLS-SCLCに特化してV30が最も強力な予測因子 (AUC 0.748) と同定された点で、これまでの報告と異なる。これは、AHF-RTでは1回線量が低く (1.5 Gy/fr)、高線量体積の分布がより狭く集中するため、V20よりも高線量領域を代表するV30が感度高くRPリスクを反映すると考えられる。また、LA-NSCLCでのCRT後のRP中央値発症時期 (92-123日) と比較して、本研究では147日と遅発傾向があり、AHF-RT固有の遅発性RPを念頭においた長期フォローアップの重要性を示している。

新規性: 本研究は、LS-SCLC患者に対するAHF-RT同時CRT後のRPの発症時期、リスク因子、治療内容、および転帰を包括的に評価した最大規模の後ろ向き研究であり、この集団におけるRPの特性を詳細に明らかにした点で新規性がある。特に、V30がLS-SCLCにおけるAHF-RT後のRPの最も強力な予測因子であることを、多変量解析を用いて本研究で初めて実証した。さらに、Grade ≥2 RP患者のほとんどがステロイド治療で回復し、RP関連死亡が認められなかったことは、AHF-RT後のRPが管理可能であることを示す重要な知見であり、これまで報告されていない

臨床応用の展望: V30 ≥20%という閾値は、治療計画段階でのRP高リスク患者の同定に直接利用可能である。V30 <20%を制約目標として治療計画最適化を行うことで、RPリスクを6.6%まで低減できる可能性がある。この知見は、LS-SCLC患者に対するAHF-RTの個別化された治療計画の策定に貢献し、RPの発生を未然に防ぐための重要なツールとなりうる。また、Kubota et al. LancetOncol 2014 の研究が示すように、LS-SCLCの治療は進化しており、免疫チェックポイント阻害薬 (デュルバルマブ; ADRIATIC試験) の追加がLS-SCLC治療に組み込まれる潮流の中、CRTに免疫療法を上乗せする際のRP発症リスク予測においても本知見は重要な基礎データとなる。糖尿病 (p=0.055) や喫煙 (p=0.058) も有意水準には達しないが傾向を示しており、DVHパラメータと臨床因子を組み合わせたリスクモデル開発が今後の課題である。

残された課題と限界: 本研究は単施設後ろ向き設計であり、選択バイアスや一般化可能性の限界がある点が残された課題である。ステロイド治療は各医師の裁量に委ねられており、最適投与量や投与期間の標準化には前向き研究が必要である。さらに、本研究は45 Gy/30 fr AHF-RTの知見であり、高線量AHF-RT (RTOG 0538の60 Gy BIDなど) や通常1日1回照射への外挿には注意を要する。これらの限界を克服するためには、多施設共同の前向き研究による検証が今後の研究方向性として必要である。

方法

本研究は、静岡がんセンターにおいて2002年9月から2018年2月の間にLS-SCLCと診断され、早期同時AHF-RT (放射線治療開始は第3コース化学療法開始前) を施行した患者を対象とした単施設後ろ向きコホート研究である。逐次CRTや後期同時CRT施行例 (第3コース以降に放射線治療開始) は除外された。本研究は施設内倫理委員会の承認を得て実施され、ヘルシンキ宣言の原則に準拠した。インフォームドコンセントは、公式ウェブサイトを通じたオプトアウト形式で取得された。

患者選択とデータ収集: LS-SCLCは、同側胸腔、対側縦隔、対側鎖骨上窩リンパ節に限局し、悪性胸水や心嚢液を伴わない病変と定義された。病変分布は胸部から腹部CTまたはPETスキャンで評価され、脳転移の有無はMRIで確認された。統計解析のため、年齢、性別、ECOG PS、喫煙歴、糖尿病の既往、PET-CT実施の有無、臨床病期、化学療法レジメン、放射線治療開始日・終了日、総肺DVHパラメータ (V5-50: 肺体積の5Gyから50Gyまで5Gy刻みでその線量以上の線量を受ける割合、Dmax: 総肺の最大線量、MLD: 平均肺線量)、RPグレード、RP診断日、RP初期治療、RP転帰に関するデータが収集された。追跡期間は放射線治療開始日から計算された。

化学療法と放射線治療: 全ての患者は白金製剤ベースの化学療法を受けた。レジメンはシスプラチン (60または80 mg/m² day 1) +エトポシド (80または100 mg/m² day 1-3) またはカルボプラチン (AUC 5 day 1) +エトポシド (80 mg/m² day 1-3) であり、最大4コースまで施行された。放射線治療計画は、自由呼吸下で取得されたCTスキャンに基づいて作成された。治療計画システムにはPinnacle³ (Philips Medical Systems) が使用された。総腫瘍体積 (GTV) は原発腫瘍と転移リンパ節の合計として定義され、臨床標的体積 (CTV1) はGTVに5mmのマージンと予防的リンパ節領域を加えたもの、CTV2はCTV1から予防的リンパ節領域を除いたものとされた。計画標的体積 (PTV) はCTV1またはCTV2に5mmのマージンを加えたものとされた。放射線治療は、3次元原体照射 (3D-CRT) にて1.5 Gy/回×2回/日 (分割間隔≥6時間)、総線量45 Gy/30 frで実施された。放射線治療は化学療法と同時併用され、第3コース化学療法開始前に開始された。

線量体積パラメータ: 治療計画システムからアーカイブされたデータを用いて、計画された線量分布が復元された。肺V5-50は、5 Gyから50 Gyまで5 Gy刻みで、その線量以上の線量を受ける肺体積の割合 (%) として定義された。Dmaxは総肺の最大線量、MLDは総肺の平均線量として定義された。肺体積はGTVを除外した全肺として定義された。

放射線肺炎の診断と評価: RPの診断は、CTで検出された浸潤影と放射線治療野の分布の一致を放射線診断医と呼吸器内科医が確認して行われた。RPの重症度は、NCI CTCAE v5.0に基づいて評価された。Grade 2 RPは、「症候性、医学的介入が必要、日常生活の手段的活動が制限される」と定義された。

統計解析: 各グループ間の差は、Grade ≥2 RPの発生率に応じて、カテゴリカル変数にはFisherの正確検定 (Fisher’s exact test)、連続変数にはWilcoxon順位和検定 (Wilcoxon rank-sum test) を用いて比較された。DVHパラメータ (V5-50、Dmax、MLD) とGrade ≥2またはGrade ≥3 RPとの関連を評価するため、ROC曲線解析 (Receiver Operating Characteristic curve analysis) が用いられ、最適な閾値が選択された。単変量ロジスティック回帰解析により、総肺DVHパラメータとGrade ≥2 RPとの関連が評価された。単変量解析でP <0.1を示した患者特性と、ROC解析で最大AUCかつ最小P値を示したDVHパラメータ1つが多変量解析に組み込まれた。DVHパラメータ間には相関があることが知られているため、多変量解析には代表的な1つのDVHパラメータのみを含めた。Grade ≥3 RPに関する多変量解析は、患者数が少ない (n=12) ため実施されなかった。カットオフ値はYouden指数を最大化することで決定された。全てのP値は両側検定から導出され、統計的有意水準はP <0.05と設定された。統計解析はJMP統計ソフトウェアv15 (SAS Institute) を用いて実施された。