• 著者: Duan J, Cui L, Zhao X, Bai H, Cai S, Wang G, Zhao Z, Zhao J, Chen S, Song J, Qi C, Wang Q, Huang M, Zhang Y, Huang D, Bai Y, Sun F, Lee JJ, Wang Z, Wang J
  • Corresponding author: Zhijie Wang, MD; Jie Wang, MD, PhD (National Cancer Center/Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical College, Beijing, China)
  • 雑誌: JAMA Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2019-12-26
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31876895

背景

免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) は、プログラム細胞死1 (PD-1) およびそのリガンド (PD-L1) を標的とし、がん治療にパラダイムシフトをもたらした。これらの薬剤は、広範囲の腫瘍タイプにおいて、標準治療と比較して全生存期間 (OS) を有意に延長し、優れた安全性プロファイルを示すことが報告されている Ribas et al. Science 2018。しかし、抗PD-1抗体 (ニボルマブ、ペムブロリズマブ) と抗PD-L1抗体 (アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ) は、ともに多くの固形腫瘍で承認され開発が進められているものの、両クラスの薬剤を直接比較したランダム化比較試験 (RCT) はこれまで存在しなかった。そのため、両クラスの臨床的有効性および安全性プロファイルの差異は未解明な点が多かった。

例えば、腎細胞癌 (RCC) の初回治療において、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法は、スニチニブと比較してOSの有意な改善を示した (KEYNOTE-426試験) が、抗PD-L1抗体であるアベルマブとアキシチニブの併用療法は、同設定でスニチニブに対するOSの優位性を示すには至らなかった。また、非小細胞肺がん (NSCLC) においても、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブと化学療法の併用が、転移性扁平上皮NSCLCの初回治療として米国食品医薬品局 (FDA) に承認された (KEYNOTE-407試験) のに対し、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブと化学療法の併用は、扁平上皮NSCLCにおいて化学療法単独と比較してOSの改善を示さなかった (IMpower131試験)。

これらの同一設定における異なる臨床成績は、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の間に生物学的および臨床的な差異が存在する可能性を示唆しており、その系統的な評価が強く求められていた。これまでのいくつかのシステマティックレビューやメタアナリシスでは、間接比較を通じて異なる免疫チェックポイント阻害薬の臨床成績が検討されてきたが、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体が異なる臨床アウトカムをもたらすかについては、依然としてcontroversialな状況であった。先行研究の中には、両クラスの薬剤間で有効性や安全性に有意な差がないと示唆するものもあれば、抗PD-1抗体が抗PD-L1抗体と比較して優れた有効性を示すと報告するものもあった。例えば、Topalian et al. NEnglJMed 2012Brahmer et al. NEnglJMed 2012 が両クラスの薬剤の初期の安全性と活性を示した一方で、その後の直接比較は不足していた。これらの研究間の矛盾の主な原因は、組み入れられた研究の比較可能性が不十分であったことや、間接比較に対する適切なアプローチが不足していたことにあると考えられる。特に、試験デザインや患者特性における変動や不一致を考慮すると、すべての関連研究のプールされた結果間で比較を行うと、系統的バイアスや交絡のリスクが導入される可能性があった。

このような背景から、本研究では、バイアスを最小限に抑えるための「ミラーグループ」原則に基づく調整済み間接比較を通じて、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の有効性と安全性の差異を体系的に評価する必要性が認識された。特に、同一の臨床設定における両クラスの薬剤の比較データが不足しており、この知識のギャップを埋めることが喫緊の課題であった。

目的

本研究の目的は、固形腫瘍(主に非小細胞肺がん、胃がん、尿路上皮がん、腎細胞がん)を対象としたランダム化比較試験 (RCT) の体系的レビューとメタアナリシスを実施し、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の有効性(全生存期間 [OS] および無増悪生存期間 [PFS])および安全性プロファイルを比較することである。具体的には、ミラーグループ原則に基づき、腫瘍タイプ、治療ライン、介入レジメン、対照群、バイオマーカー状態などの臨床的特徴が一致する試験をペアリングし、調整済み間接比較を行うことで、両クラスの薬剤間の臨床的差異を評価することを目的とした。これにより、臨床現場における治療戦略の選択に有用な指針を提供することを目指した。本研究は、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の直接比較試験が欠如している現状において、最も信頼性の高い間接比較データを提供し、薬剤選択の意思決定を支援することを意図している。

結果

組み入れられた研究の特性: 初期の文献検索により4596件の出版物が特定され、重複を除外後3398件が残った。タイトルと抄録のレビューにより3325件が除外され、最終的に19件のRCT、合計11,379名の患者がメタアナリシスに組み入れられた (Figure 1)。これらの研究は、腫瘍タイプ、治療ライン、バイオマーカー状態、介入タイプが一致する7つのミラーグループに分けられた。組み入れられた試験は、抗PD-1抗体(ニボルマブ3件、ペムブロリズマブ7件)と抗PD-L1抗体(アベルマブ3件、アテゾリズマブ6件)を標準治療と比較したものであった。腫瘍タイプの内訳は、NSCLCが13試験、胃がんが2試験、尿路上皮がんが2試験、腎細胞がんが2試験であった (Figure 3)。すべての試験は適切にデザインされており、主要評価項目も明確に定義されていた。出版バイアスはBegg検定 (P = .58) およびEgger検定 (P = .48) により評価され、有意なバイアスは認められなかった。

全体的な全生存期間 (OS) の優位性: 全ミラーグループを統合した結果、抗PD-1抗体は抗PD-L1抗体と比較して、患者のOSを有意に改善することが示された。ランダム効果モデルを用いた解析では、HR 0.75 (95% CI 0.65-0.86, P < .001) であった (Figure 4A)。異質性はI² = 37% (P = .15) であった。ベイズ論的アプローチでも同様に、抗PD-1抗体のOS優位性が示され、HR 0.79 (95% CrI 0.71-0.88) であった。この結果は、抗PD-1抗体が固形がん患者の全生存期間において、抗PD-L1抗体よりも優れていることを明確に示している。

介入タイプ別のOS比較: サブグループ解析では、抗PD-1抗体は単独療法として抗PD-L1抗体と比較して優れたOSを示し (HR 0.78; 95% CI 0.63-0.95; P = .01)、併用療法としてもより顕著なOSの改善を示した (HR 0.68; 95% CI 0.55-0.83; P < .001) (Figure 4A)。単独療法群では中程度の異質性 (I² = 61%; P = .05) が観察されたが、併用療法群では異質性は認められなかった (I² = 0%; P = .97)。ベイズ論的アプローチでも、単独療法でOS HR 0.85 (95% CrI 0.74-0.97)、併用療法でOS HR 0.67 (95% CrI 0.55-0.82) と、同様の結果が得られた。特に併用療法における抗PD-1抗体の優位性は、現在の臨床プラクティスにおける化学免疫療法の重要性を鑑みると、重要な知見である。

腫瘍タイプ別のOS比較: 腫瘍タイプ別のサブグループ解析では、NSCLC (HR 0.77; 95% CI 0.65-0.92; P < .001) および胃がん (HR 0.57; 95% CI 0.42-0.78; P < .001) において、抗PD-1抗体が抗PD-L1抗体と比較してOSを有意に延長した (Figure 4B)。特に胃がんでは最も顕著な差が認められた。尿路上皮がん (HR 0.86; 95% CI 0.66-1.12; P = .26) および腎細胞がん (HR 0.68; 95% CI 0.42-1.09; P = .11) では、統計的有意差は認められなかったが、抗PD-1抗体の方が良好な傾向を示した。これらの腫瘍タイプでは、比較に利用可能な研究が2件のみであり、統計的検出力が不十分であった可能性がある。感度分析では、各腫瘍タイプを1つずつ除外しても全体的な推定値の一貫性が示された。

無増悪生存期間 (PFS) の比較: PFSの解析では、抗PD-1抗体は抗PD-L1抗体と比較して、PFSを有意に改善することが示された (HR 0.73; 95% CI 0.56-0.96; P = .02)。ベイズ論的アプローチでもPFS HR 0.80 (95% CrI 0.69-0.93) と同様の結果であった。サブグループ解析では、抗PD-1抗体は単独療法として抗PD-L1抗体と比較してPFSの改善傾向を示し (HR 0.62; 95% CI 0.37-1.05; P = .08)、併用療法としてはPFSを有意に改善した (HR 0.86; 95% CI 0.74-0.99; P = .04)。PFSの全体的な解析および単独療法群では有意な異質性 (I² = 83%; P < .001、およびI² = 91%; P < .001) が観察されたが、併用療法群では異質性は認められなかった (I² = 0%; P = .37)。

安全性プロファイルの比較: 抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の全体的な安全性プロファイルは同等であった (Table)。グレード3-5のあらゆる有害事象 (AE) のリスク比は1.04 (95% CI 0.78-1.39, P = .78) であり、有意差は認められなかった。免疫関連AE (グレード3-5) のリスク比も0.88 (95% CI 0.46-1.68, P = .69) であり、有意差はなかった。治療中止に至るAEのリスク比は1.20 (95% CI 0.95-1.52, P = .13) であり、死亡に至るAEのリスク比は1.01 (95% CI 0.53-1.93, P = .98) であった。いずれも両クラスの薬剤間で有意な差は認められなかった。グレード3-5のあらゆるAEでは有意な異質性 (I² = 90%; P < .001) が観察されたが、治療中止または死亡に至るAE、および免疫関連AEでは異質性は認められなかった。

考察/結論

本研究は、固形腫瘍患者における抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の治療アウトカムと安全性プロファイルを比較した、我々の知る限り初の体系的レビューおよびメタアナリシスである。本研究の結果は、抗PD-1抗体が抗PD-L1抗体と比較して、統計学的に有意に優れた生存アウトカムと、同等の安全性プロファイルを示すことを示唆している。

先行研究との違い: これまでのメタアナリシスの中には、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の治療効果に有意な差がないと示唆するものも存在した。しかし、それらの研究では組み入れられた試験の比較可能性が不十分であったため、結論の信頼性が限定的であった。例えば、尿路上皮がん、頭頸部がん、悪性黒色腫では、抗PD-1抗体の試験のみが組み入れられており、比較に大きなバイアスリスクを伴っていた。本研究では、腫瘍タイプ、治療ライン、介入レジメン、対照群、バイオマーカー状態などの臨床的特徴を厳密にマッチングさせる「ミラーグループ」原則を適用することで、バイアスリスクを最小限に抑えた調整済み間接比較を実施した点が、これまでの研究と異なり、より信頼性の高い結果を提供できたと考えられる。

新規性: 本研究で初めて、19件のRCT、合計11,379名の患者という大規模なデータを用いて、抗PD-1抗体が抗PD-L1抗体と比較して、全体的なOS (HR 0.75; 95% CI 0.65-0.86; P < .001) およびPFS (HR 0.73; 95% CI 0.56-0.96; P = .02) の両方で有意な優位性を示すことを明らかにした。特に、非小細胞肺がん (HR 0.77) および胃がん (HR 0.57) において、抗PD-1抗体の優位性が統計学的に有意であったことは新規の知見である。また、単独療法および併用療法の両方で抗PD-1抗体の優位性が確認されたことも、これまでの報告にはない包括的な評価である。

分子機序と臨床的意義: この有効性の差の分子機序として、PD-1抗体がPD-1リガンドであるPD-L1とPD-L2の両方への結合を遮断するのに対し、PD-L1抗体はPD-L1のみを遮断し、PD-1/PD-L2経路の相互作用を温存する点が考えられる。PD-L2は多くの固形腫瘍、特にNSCLCや胃がんで高発現していることが報告されており、PD-L2シグナルの遮断が抗PD-1抗体の優位性に寄与している可能性が示唆される。腫瘍はPD-L1抗体による治療中にPD-1/PD-L2軸を介して抗腫瘍免疫応答から逃避する可能性がある。PD-L2発現状態は、PD-L1発現状態とは独立して、免疫チェックポイント阻害薬治療に対する生存利益の有意な予測因子としても同定されている。本研究でNSCLCおよび胃がんで抗PD-1抗体の優位性が観察されたことは、これらの腫瘍タイプでPD-L2発現が高いという報告と一致する。また、PD-L1の阻害はPD-L1とCD80の相互作用をブロックする上でも重要であり、これはT細胞活性化の負の制御因子である。このようなブロックは抗PD-L1抗体で達成されるが、抗PD-1抗体では達成されないため、がん治療における両者の性能の複雑性が増す。安全性プロファイルに有意な差がない一方で有効性に差があるという結果は、同クラスの薬剤であっても分子標的の違いが臨床アウトカムに影響を与えることを示唆しており、臨床現場での薬剤選択において重要な考慮事項となる。特に、抗PD-1抗体が標準治療との併用療法でより強力な生存優位性を示したこと (HR 0.68; 95% CI 0.55-0.83; P < .001) は、現在のNSCLC治療において化学免疫療法が標準となっている状況を鑑みると、実臨床的により重要な知見である。

残された課題と今後の方向性: 本研究はミラーグループ原則に基づく調整済み間接比較であり、直接比較試験ではないという限界を持つ。また、組み入れられた試験間には、EGFR変異やALK再配列を有する患者の割合など、臨床設定のわずかな不均一性が存在した可能性も否定できない。これらの患者は免疫チェックポイント阻害薬に対する感受性が低いと報告されているが、本研究の対象患者全体に占める割合は限定的であり、バイアスリスクは小さいと考えられる。さらに、一部のデータは会議発表からのものであり、査読が限定的でデータが未成熟である可能性も考慮する必要がある。しかし、これらの研究は高レベルのエビデンスを持つRCTであり、追跡期間も他の完了した試験と同等であったため、最終解析と大きく異なることはないと予想される。今後の検討課題として、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の直接比較試験が望まれる。また、PD-L2発現などのバイオマーカーを用いた層別化解析により、抗PD-1抗体の優位性が発揮される患者群をより詳細に特定する研究も必要である。

方法

本研究は、PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses) ガイドラインに従い、体系的レビューおよびメタアナリシスとして実施された。

検索戦略と選択基準: PubMed、Cochrane CENTRAL (Cochrane Central Register of Controlled Trials)、およびEmbaseデータベースを2000年1月1日から2019年3月1日までの期間で体系的に検索した。主要な学会(米国臨床腫瘍学会 [ASCO]、欧州臨床腫瘍学会 [ESMO] など)の抄録および発表も2019年3月1日までレビューされた。検索キーワードには、「randomized」、「PD-1」、「PD-L1」、「nivolumab」、「pembrolizumab」、「atezolizumab」、「durvalumab」、「cemiplimab-rwlc」、「avelumab」、「programmed death receptor 1」などが含まれた。

組み入れ基準と除外基準: 固形腫瘍患者において、抗PD-1または抗PD-L1抗体を標準治療と比較したすべてのRCTが候補として選択された。後向き研究、単アームの第I/II相試験、および抗PD-1/PD-L1抗体を他の免疫療法と比較した試験は除外された。重複出版が特定された場合は、最新かつ最も完全な報告、またはFDA承認を支持する報告のみが組み入れられた。

ミラーグループ原則: 組み入れられた試験は、バイアスを最小限に抑えるため、「ミラーグループ」原則に基づいてペアリングされた。この原則では、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の試験が、腫瘍タイプ、治療ライン、介入タイプ(免疫チェックポイント阻害薬単独療法または併用療法)、対照群のデザイン(標準治療)、およびバイオマーカー状態(PD-L1発現レベル)などの臨床的特徴が正確に一致するようにスクリーニングされ、個別のミラーグループに分類された。このプロセスにより、最終的に19件のRCT (NCT番号は各試験に付与) がメタアナリシスに組み入れられた。これらの試験は、非小細胞肺がん (13試験)、胃がん (2試験)、尿路上皮がん (2試験)、腎細胞がん (2試験) を対象としていた。

データ抽出と質評価: 3名の独立した研究者が、各研究からデータを抽出した。抽出されたデータには、試験名、筆頭著者、出版年、研究デザイン、盲検化状態、研究フェーズ、病理学的特徴、患者数、患者の年齢および性別分布、Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status (ECOG PS)、治療ライン、試験薬、バイオマーカー状態、追跡期間、有害事象の発生率、およびOSとPFSのハザード比 (HR) と95%信頼区間 (CI) が含まれた。各研究の方法論的質は、Cochrane Collaborationハンドブックで推奨されるツールを用いて評価された。

統計解析: OSまたはPFSの主要評価項目にはハザード比が、有害事象の評価項目にはリスク比 (RR) が効果量として用いられた。ハザード比またはRRは、逆分散法を用いて統合された。間接比較には、頻度論的アプローチとベイズ論的アプローチの両方が適用された。頻度論的アプローチでは、Rパッケージnetmeta (バージョン1.0-1) を用いてランダム効果モデルが適用された。ベイズ論的アプローチでは、JAGS (Just Another Gibbs Sampler) ソフトウェア (バージョン4.3.0) とRパッケージgemtc (バージョン0.8-2) を用いて、マルコフ連鎖モンテカルロ (MCMC) 法による階層モデルでHRと95%信用区間 (CrI) が計算された。統計的異質性はQ検定とI²指数を用いて評価された。結果の安定性を評価するため、腫瘍タイプ別または介入タイプ別のサブグループ解析、および各腫瘍タイプを除外する感度分析が実施された。すべてのP値は両側であり、P < .05を有意と判断した。出版バイアスはBegg検定およびEgger検定を用いて評価された。主要評価項目であるOSの解析には、Cox proportional hazardsモデルが用いられた。