• 著者: Belani CP, Choy H, Bonomi P, Scott C, Travis P, Haluschak J, Curran WJ Jr
  • Corresponding author: Chandra P. Belani, MD (University of Pittsburgh Cancer Institute, Pittsburgh, PA, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2005
  • Epub日: 2005-09-21
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 16087941

背景

切除不能なStage III非小細胞肺癌(NSCLC)は、診断時に全肺癌患者の約40%を占め、極めて予後不良な疾患群である。歴史的に胸部放射線療法(TRT、thoracic radiation therapy)単独治療が行われてきたが、局所制御や生存期間の改善効果は限定的であり、5年生存率は著しく低いことが報告されていた。Perez et al. (1982) や Johnson et al. (1990) などの先行研究において、TRT単独療法の限界が示されていた。1990年代に入り、化学療法と放射線療法の併用療法の優越性が示され、特にSause et al. (1995) が報告したRTOG 88-08試験において、シスプラチンとビンブラスチンの逐次投与後に60 GyのTRTを行う逐次化学放射線療法が標準治療として確立された。その後、2000年代初頭には、同時化学放射線療法(CRT、concurrent chemoradiotherapy)が逐次療法を上回る生存ベネフィットをもたらすことが、Furuse et al. (1999) や Curran et al. (2003) などのランダム化比較試験によって示された。

さらに、パクリタキセルやカルボプラチンといった新規の第二世代・第三世代抗癌剤は、優れた抗腫瘍効果に加えて放射線増感効果を有することが基礎研究で示されていた。しかし、これらの新規薬剤を用いた多剤併用療法において、同時CRTの前に誘導化学療法(induction chemotherapy)を先行させるべきか、あるいは同時CRTの後に地固め化学療法(consolidation chemotherapy)を追加すべきか、もしくは従来の逐次化学放射線療法にとどめるべきかという、最適な投与シーケンスや統合方法については未確立であった。また、それぞれのシーケンスにおける詳細な毒性プロファイルや治療失敗パターンの比較データが不足しており、臨床現場における最適な治療選択を行う上での大きな知識ギャップとなっていた。本研究であるLAMP(Locally Advanced Multi-Modality Protocol)試験は、この重要な臨床的課題を解決するために、パクリタキセルとカルボプラチンを用いた化学放射線療法の3つの異なるシーケンスを系統的に検証した、最初の多施設共同ランダム化Phase II試験である。

目的

本Phase II無作為化非比較試験は、切除不能なStage IIIAまたはIIIBのNSCLC患者を対象に、新規薬剤であるパクリタキセルおよびカルボプラチンと、標準的な毎日分割照射によるTRT(総線量63.0 Gy)を組み合わせた3種類の異なる治療シーケンスの有効性と安全性を評価し、最適な統合方法を決定することを目的とした。

具体的には、以下の3つの治療アームを評価した。

  1. Arm 1(逐次群): パクリタキセル 200 mg/m² およびカルボプラチン AUC(area under the plasma concentration time curve)= 6 mg/mL・min を3週ごとに2サイクル投与する誘導化学療法を実施後、TRT 63.0 Gyを施行する。
  2. Arm 2(誘導+同時群): 同様の誘導化学療法を2サイクル実施後、毎週パクリタキセル 45 mg/m² およびカルボプラチン AUC = 2 mg/mL・min をTRT 63.0 Gyと同時に投与する。
  3. Arm 3(同時+地固め群): 毎週パクリタキセル 45 mg/m² およびカルボプラチン AUC = 2 mg/mL・min とTRT 63.0 Gyを同時に投与する同時CRTを実施後、パクリタキセル 200 mg/m² およびカルボプラチン AUC = 6 mg/mL・min を3週ごとに2サイクル地固め投与する。

主要評価項目は全生存期間(OS)であり、各アームの生存期間中央値(mOS)を、RTOG 88-08試験の逐次化学放射線療法アームにおける歴史的対照データ(mOS 13.7ヶ月)と比較し、統計的に有意な生存期間の改善を達成できるレジメンを同定することを目指した。

結果

患者特性とアーム間の均一性: 本試験には総計276例の患者が登録された。中間解析における三角テストの結果、Arm 2は歴史的対照に対する優越性を示す可能性が極めて低いと判定され、早期に登録閉鎖となった。登録された276例のうち、不適格と判定された18例および治療未実施の1例を除く、計257例(Arm 1: n=91, Arm 2: n=74, Arm 3: n=92)が有効性および安全性の解析対象となった (Table 1)。患者のベースライン特性は3アーム間で概ね均衡していた。年齢分布では70歳未満が72〜80%を占め、性別は男性が67〜73%であった。KPSは80-100の良好な全身状態の患者が92〜98%と大部分を占めており、KPS 70の患者はArm 1で8% (n=7)、Arm 2で7% (n=5)、Arm 3で2% (n=2) であった。組織型は扁平上皮癌が32〜42%、腺癌が34〜35%、大細胞癌が10〜15%であった。病期はStage IIIBが62〜64%と多数を占めていた。

全生存期間(OS)の推移とアーム間の傾向: 追跡期間中央値39.6ヶ月において、各治療アームの生存期間中央値(mOS)は、Arm 1(逐次群)で 13.0 vs 13.7 months (HR 1.00, 95% CI 0.70-1.43, p=0.40)(歴史的対照との比較)、Arm 2(誘導+同時群)で 12.7 vs 13.7 months (HR 1.08, 95% CI 0.74-1.58, p=0.80)(歴史的対照との比較)、Arm 3(同時+地固め群)で 16.3 vs 13.7 months (HR 0.84, 95% CI 0.59-1.20, p=0.34)(歴史的対照との比較)であった (Figure 2, Figure 3, Figure 4)。いずれのアームも歴史的対照に対する統計的有意差を達成することはできなかった。また、本試験で目標として設定されたmOS 20.0ヶ月を達成したアームは存在しなかった。各アームにおける1年生存率は、Arm 1で57%、Arm 2で53%、Arm 3で63%であり、2年生存率はArm 1で30%、Arm 2で25%、Arm 3で31%であった。統計的な直接比較は行われていないものの、同時CRTの後に地固め化学療法を行うArm 3において、生存期間および生存率が数値的に最も良好な推移を示す傾向が認められた。

無増悪生存期間(PFS)と疾患進行率の解析: 無増悪生存期間中央値(mPFS)は、Arm 1で9.0 months、Arm 2で6.7 months、Arm 3で8.7 monthsであった。また、治療開始後1年時点における疾患進行率は、Arm 1で54%、Arm 2で46%、Arm 3で46%であった。PFSにおいても各アーム間で統計的な有意差は認められず、同時CRTを含むアーム(Arm 2およびArm 3)が疾患進行率において数値的にわずかな管理効果を示すにとどまった。

治療完遂率および放射線線量達成率の評価: 化学療法と放射線療法の両モダリティを計画通り完遂した患者の割合は、Arm 1で70% (n=64/91)、Arm 2で69% (n=51/74)、Arm 3で74% (n=68/92) であり、アーム間で同等であった (Table 2)。計画された総放射線線量である63.0 Gyを完遂した患者の割合は、Arm 1で76% (n=69/91)、Arm 2で70% (n=52/74)、Arm 3で81% (n=75/92) であった。誘導化学療法の予定された2サイクルを完遂した割合は、Arm 1で95% (n=86/91)、Arm 2で93% (n=69/74) と極めて高かった。同時化学療法において、毎週投与を6サイクル以上実施できた割合は、Arm 2で65% (n=48/74)、Arm 3で85% (n=78/92) であり、Arm 3において同時期の化学療法の遵守率が良好であった。Arm 3における地固め化学療法の予定された2サイクルを完遂した割合は67% (n=62/92) であった。

化学療法および放射線療法に関連する有害事象プロファイル: 治療シーケンスの違いにより、有害事象の発生傾向に顕著な差異が認められた。誘導化学療法期間中(Arm 1およびArm 2)の主な毒性は血液毒性であり、Grade 3/4の好中球減少症がArm 1で32% (n=29/91)、Arm 2で38% (n=28/74) に認められた (Table 3)。放射線療法中およびその後に発生した有害事象において、最も臨床的に重要な非血液毒性は食道炎であった。Grade 3/4の食道炎の発生率は、Arm 1で3% (n=3/90)、Arm 2で19% (n=14/74)、Arm 3で28% (n=26/92) であり、同時CRTを施行したアームで有意に高頻度であった (p<0.0001) (Table 4)。放射線療法期間中およびその後の血液毒性についても、同時CRT群で増強が認められた。Grade 3/4の白血球減少症は、Arm 1で2% (n=2/90)、Arm 2で31% (n=23/74)、Arm 3で51% (n=47/92) であった。Grade 3/4の肺毒性の発生率は、Arm 1で7% (n=6/90)、Arm 2で4% (n=3/74)、Arm 3で16% (n=15/92) であり、Arm 3において最も高頻度であった。治療開始後90日以内の治療関連死は計3例(Arm 2で1例、Arm 3で2例)報告され、死因はいずれも重篤な感染症であった。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、従来のシスプラチン併用化学療法とTRTを用いたRTOG 88-08やRTOG 9410などの先行研究と異なり、パクリタキセルとカルボプラチンという新規薬剤の組み合わせを用いて、切除不能Stage III NSCLCに対する3つの異なる治療シーケンス(逐次、誘導+同時、同時+地固め)を同一試験内で系統的に比較した最初のランダム化Phase II試験である。先行研究では、同時CRTの優越性が示されていたものの、新規薬剤を用いた同時CRTの前後における全身化学療法の最適な統合方法については未確立であった。本試験は、これらの異なるアプローチの治療完遂率や詳細な毒性プロファイルを直接比較した点で、これまでの研究と大きく異なる。

新規性: 本研究で初めて、パクリタキセルとカルボプラチンを用いた同時CRTの後に地固め化学療法を行うシーケンス(Arm 3)が、生存期間中央値 16.3ヶ月と数値的に最も良好な生存期間をもたらす傾向にあることを示した。さらに、治療シーケンスによって毒性プロファイルが著しく異なることを明らかにし、特に同時CRTを伴うArm 3においてGrade 3/4の食道炎の発生率が28%に達し、逐次療法の3%と比較して約9倍高頻度となることを新規に同定した。これにより、同時CRTの有効性と引き換えに生じる消化器毒性や肺毒性のリスクを定量的に示し、治療シーケンスの選択における毒性管理の重要性を浮き彫りにした。

臨床応用: 本試験の臨床的意義は、同時CRT後の地固め化学療法という治療骨格の有用性を示唆し、その後の臨床開発のプラットフォームを確立した点にある。本試験で評価された毎週投与のパクリタキセル/カルボプラチン同時CRTレジメンは、その良好な忍容性と実施の容易さから、米国の臨床現場において「コミュニティ・スタンダード」として広く普及した。さらに、このレジメンは、Stage III NSCLCに対する画期的な標準治療を確立したPACIFIC試験において、デュルバルマブによる免疫地固め療法の標準的な化学放射線療法プラットフォームとして採用され、現代の臨床応用における重要なマイルストーンとなった。

残された課題: 今後の検討課題として、同時CRTに伴う高い毒性、特に食道炎や肺毒性を軽減しつつ、治療効果を最大化するためのアプローチが残されている。具体的には、3次元原体照射(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)などの高度な放射線照射技術の導入による正常組織への線量低減や、患者ごとの忍容性に応じた個別化医療の推進が挙げられる。また、地固め化学療法の最適なサイクル数や、免疫チェックポイント阻害剤などの新規分子標的薬との最適な併用シーケンスの確立が、今後の研究方向性として極めて重要である。

方法

試験デザインと患者選択: 本試験は、1998年2月から2001年6月にかけて、米国の49施設が参加して実施された多施設共同無作為化非比較Phase II試験である。対象患者は、組織学的または細胞学的に切除不能と診断されたStage IIIAまたはIIIBのNSCLC患者であった。主な適格基準は、年齢18歳以上、KPS(Karnofsky Performance Status)が70%以上、診断前3ヶ月以内の体重減少が10%以下、測定可能な病変を有すること、1秒量(FEV1、forced expiratory volume in 1 second)が800 mL超、クレアチニンクリアランスが50 mL/min超、および適切な骨髄・肝・腎機能を有することであった。活動性の脳転移、悪性胸水、重篤な心疾患、または活動性の重複がんを有する患者は除外された。すべての患者は登録前4週間以内に脳のCTまたはMRI検査を受け、無症状 of 脳転移がないことを確認された。本試験は各参加施設の治験審査委員会によって承認され、すべての患者から書面によるインフォームドコンセントを取得した。なお、本試験のIdentifierとして、関連する同時期の臨床試験であるRTOG 9410試験(NCT00003299)や、地固め療法の比較試験であるCALGB 39801試験(NCT00003752)の登録情報を参照した。

治療レジメン: 患者は無作為に以下の3つのアームに1:1:1の割合で割り付けられた。

  • Arm 1(逐次群): パクリタキセル 200 mg/m²(3時間点警静注)およびカルボプラチン AUC = 6 mg/mL・min(30分点滴静注、Calvert式およびCockcroft-Gault式を用いて算出)を3週ごとに2サイクル投与した。その後、42日目からTRTを開始した。TRTは1回1.8 Gy、週5回、計34回で総線量63.0 Gy(初期野45.0 Gy、縮小野18.0 Gy)を7週間で照射した。
  • Arm 2(誘導+同時群): Arm 1と同様の誘導化学療法を2サイクル実施後、毎週パクリタキセル 45 mg/m²(1時間点滴静注)およびカルボプラチン AUC = 2 mg/mL・min(30分点滴静注)を、TRT 63.0 Gyと同時に最大7週間投与した。
  • Arm 3(同時+地固め群): 毎週パクリタキセル 45 mg/m² およびカルボプラチン AUC = 2 mg/mL・min を、TRT 63.0 Gyと同時に最大7週間投与した。同時CRT完了の3〜4週間後、パクリタキセル 200 mg/m² およびカルボプラチン AUC = 6 mg/mL・min を3週ごとに2サイクル地固め投与した。

統計解析: 主要評価項目はOSであり、各アームの生存曲線を Kaplan-Meier 法により推定し、RTOG 88-08試験の逐次療法アーム(mOS 13.7ヶ月)を歴史的対照として片側 log-rank 検定を用いて比較した。有意水準は片側0.05、検出力は80%に設定され、歴史的対照に対して生存期間が45%改善したmOS 20.0ヶ月を検出するために、各アームに84名の評価可能患者が必要とされた。