• 著者: Zukin M, Barrios CH, Pereira JR, Ribeiro R de A, Beato CA, do Nascimento YN, Murad A, Franke FA, Precivale M, Araujo LH, Baldotto CS, Vieira FM, Small IA, de Castro G Jr, Gotto M, Robert NJ
  • Corresponding author: Rogerio C. Lilenbaum, MD (Yale Cancer Center, New Haven, CT, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2013
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 23775961

背景

ECOG PS (Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status) 2の進行NSCLC (非小細胞肺がん) 患者は、全NSCLC患者の約30%を占める重要な集団である。しかし、これらの患者は臓器機能低下、複数の合併症、および全身状態の不良により、化学療法の毒性リスクが高いとされ、多くの無作為化臨床試験から除外されてきた。このため、PS 2患者に対する最適な化学療法レジメンに関する質の高いエビデンスは長らく不足しており、臨床現場では単剤化学療法または最良支持療法 (BSC) が選択されることが多かった。

過去のエビデンスとしては、ECOG E1594試験のPS 2サブセット解析 (n=99) で、組み合わせ化学療法群の全生存期間中央値 (mOS) が4.7ヶ月、単剤療法群が2.4ヶ月と報告され、不良な予後が示されていた (Sweeney et al. Cancer 2001)。一方で、CALGB (Cancer and Leukemia Group B) 試験では、組み合わせ化学療法が単剤療法よりも優れる傾向が示唆され (Lilenbaum et al. JClinOncol 2005)、また別のPS 2患者を対象とした第II相試験では、erlotinibとcarboplatin+paclitaxelの比較において、組み合わせ療法群でmOS 9.7ヶ月という良好な結果が報告されるなど、知見は一貫していなかった。さらに、高齢者NSCLC患者を対象としたIFCT-0501試験 (Quoix et al. Lancet 2011)では、組み合わせ化学療法群で治療関連死が4.4%と報告されており、PS2患者における組み合わせ療法の安全性への懸念も存在した。これらの矛盾する結果は、PS 2患者における最適な治療戦略が未解明であることを示していた。

Pemetrexed (ペメトレキセド) は葉酸代謝拮抗薬であり、ビタミンB12および葉酸の補充により非血液毒性が軽減される特徴を持つ。この特性から、PS 2患者にも比較的安全に投与できる薬剤として注目されていた。しかし、PS 2患者のみを対象とした大規模な前向き第III相試験は実施されていなかった。このような背景から、本研究はECOG PS 2の進行NSCLC患者のみを対象とし、carboplatin (カルボプラチン) とpemetrexed (CP) の併用療法がpemetrexed (P) 単剤療法と比較して、生存期間およびその他の臨床アウトカムを改善するかを検証することを目的として設計された。特に、PS 2患者における組み合わせ化学療法の安全性と有効性に関するエビデンスが不足しており、本試験はそのギャップを埋める重要な意義を持つと考えられた。

目的

本研究の主要な目的は、ECOG PS 2の未治療進行NSCLC患者を対象として、carboplatinとpemetrexedの併用療法 (CP群) が、pemetrexed単剤療法 (P群) と比較して、主要評価項目である全生存期間 (OS) を有意に改善するかを検証することである。

副次的な目的としては、以下の項目を評価した。

  1. 無増悪生存期間 (PFS) の比較。
  2. 奏効率 (ORR) の比較。
  3. 両治療レジメンの安全性プロファイルと毒性の比較。
  4. 高齢者 (70歳以上) や喫煙歴などのサブグループにおける治療効果の検討。
  5. 治療完遂率、後治療の状況、および曝露量の評価。

本試験は、PS 2患者における最適な一次治療戦略が確立されていない現状において、組み合わせ化学療法が単剤療法よりも優位性を持つことを、初の第III相試験として明確なエビデンスをもって示すことを目指した。

結果

患者登録とベースライン特性: 2008年4月から2011年7月までに合計217例の患者が無作為に割り付けられた (P群 n=109、CP群 n=108)。このうち12例が不適格と判断され、最終的に205例が解析対象となった (P群 n=102、CP群 n=103)。不適格理由は、悪性胸水のないStage IIIB (n=4)、未制御のCNS疾患 (n=2)、測定不能病変 (n=1)、GFR < 45 mL/min (n=2)、トランスアミナーゼ > 5倍ULN (n=2)、および先行化学療法 (n=1) であった。両群間でベースライン特性に大きな差はなかった (Table 1)。患者の約95%がStage IVであり、約35%が70歳以上であった。半数以上の患者が5%以上の体重減少を経験していた。喫煙歴は両群で類似していた。扁平上皮癌患者はP群で10.8%、CP群で2.9%とP群で多かったが、これはプロトコル改訂前の登録によるものであった。

治療完遂と後治療: 両群ともに中央値で4サイクルが投与されたが、P群では53.9%の患者のみが規定の4サイクルを完遂したのに対し、CP群では70.9%が完遂した (p=.012)。P群での早期中止の主な理由は、早期死亡 (14.7% vs 9.7%)、早期進行 (15.7% vs 7.8%)、臨床的悪化 (12.7% vs 6.8%) であった。CP群では治療遅延がP群より多く (44.7% vs 20.6%)、用量減量は両群で少なかった (3.9% vs 2.9%)。両群ともに約35%の患者が二次治療を受けた (Table 2)。P群ではプラチナベースの化学療法が二次治療として多く選択された (69.4%) のに対し、CP群ではドセタキセルが多かった (27.8%)。

毒性プロファイル: Grade 3/4の血液毒性はCP群でより頻繁に認められたが、全体的に管理可能であった (Table 3)。貧血 (Grade 3/4: CP群 11.7% vs P群 3.9%)、好中球減少症 (Grade 3/4: CP群 6.8% vs P群 1.0%)、血小板減少症 (Grade 3/4: CP群 1.0% vs P群 0%) がCP群で高頻度であった。しかし、発熱性好中球減少症の発生率は両群で類似していた (CP群 1.0% vs P群 2.9%、p=.37)。Grade 3/4の非血液毒性は両群で低かった。呼吸困難はP群でより多く報告された (10.8% vs 5.8%) が、これは治療毒性よりも疾患進行の症状である可能性が高いとされた。CP群では4例 (3.9%) の治療関連死が報告された (腎不全、敗血症、肺炎、血小板減少症)。P群では治療関連死は報告されなかった。

全生存期間 (OS) — 主要評価項目: 追跡期間中央値27.5ヶ月 (95% CI, 20.5-34.5) において、CP群のmOSは9.3ヶ月 (95% CI, 7.4-11.2) であったのに対し、P群では5.3ヶ月 (95% CI, 4.1-6.5) であった。CP群はP群と比較してOSを有意に改善し、ハザード比 (HR) は0.62 (95% CI, 0.46-0.83; p=.001) であった (Fig 2B)。これは死亡リスクを38%低減することを示し、臨床的に意義のある効果であった。1年生存率はCP群で40.1%、P群で21.9%であり、6ヶ月生存率はCP群で66.8%、P群で44.9%であった。この結果は、PS 2という全身状態不良の患者集団において、組み合わせ化学療法が単剤療法よりも有意に優れることを、第III相試験で初めて実証した歴史的知見である。当初想定された効果量 (HR 0.674) を上回る改善 (HR 0.62) が観察され、試験は事前に規定された結論を支持する結果となった。扁平上皮癌患者 (n=14) および組織型不明患者 (n=10) を除外した解析でも、OSのHRは0.65 (95% CI, 0.47-0.89; p=.007) と同様の結果が再現され、主要解析の頑健性が確認された。

無増悪生存期間 (PFS) — 副次評価項目: CP群のmPFSは5.8ヶ月 (95% CI, 4.7-6.9) であったのに対し、P群では2.8ヶ月 (95% CI, 2.5-3.2) であった。CP群はP群と比較してPFSを著明に改善し、HRは0.46 (95% CI, 0.35-0.63; p<.001) であった (Fig 2A)。PFSはOSよりも大きな改善 (HR 0.46) を示し、化学療法による疾患コントロール効果の差が顕著であった。6ヶ月PFS率はCP群で48.9%、P群で18.4%と2.5倍以上の差があり、12ヶ月PFS率はCP群で17%、P群で2%であった。P群では初回評価時点 (2サイクル後) ですでに31.4%の患者が病勢進行しており、単剤療法では早期進行を防ぐ効果が不十分であることが示された。

奏効率 (ORR) — 副次評価項目: 全無作為化患者におけるORRは、CP群で18.4% (19/103)、P群で6.9% (7/102) であり、有意な差が認められた (p=.032)。評価可能患者のみでみると、CP群で24% (19/79)、P群で10.5% (7/67) であった (p=.032)。ORRはOSやPFSほど大きな差ではなかったが、P群で34.4%、CP群で23.3%の患者で最良効果が判定不能であった点に注意が必要である。これは主に臨床的悪化 (P群 11.7% vs CP群 7.7%) や早期死亡 (P群 14.7% vs CP群 9.7%) による評価困難が原因であった。

サブグループ解析: 高齢者 (70歳以上) サブグループ (P群 n=36、CP群 n=38) において、CP群のmOSは9.9ヶ月、P群では5.3ヶ月であり、HRは0.49 (95% CI, 0.29-0.82; p=.006) であった。これは、高齢のPS 2患者においても組み合わせ化学療法の有意な生存改善が確認されたことを示している。非高齢者 (70歳未満) サブグループ (P群 n=66、CP群 n=65) でもHRは0.49 (95% CI, 0.34-0.70; p<.001) であり、年齢がCP併用療法のベネフィットを制限しないことが示唆された。非喫煙者サブグループ (P群 n=23、CP群 n=23) では、CP群のmOSが9.4ヶ月、P群が4.2ヶ月であり、HRは0.54 (95% CI, 0.28-1.05; p=.069) と有意傾向が認められたが、少数例のため統計的有意性には至らなかった。合併症数 (0個、1個、2個以上) による探索的サブグループ解析では、mOSに有意な差は認められず (6.9ヶ月、6.3ヶ月、8.2ヶ月)、合併症の多寡がOSの予測因子とならない可能性が示された。

考察/結論

本第III相試験は、ECOG PS 2の進行NSCLC患者205名を対象に、carboplatinとpemetrexedの併用療法 (CP) がpemetrexed単剤療法 (P) と比較して、全生存期間 (OS)、無増悪生存期間 (PFS)、および奏効率 (ORR) の全ての主要な臨床評価項目において有意な優位性を示すことを初めて実証した。CP群のmOSは9.3ヶ月 (95% CI, 7.4-11.2) であったのに対し、P群では5.3ヶ月 (95% CI, 4.1-6.5) であり、HRは0.62 (95% CI, 0.46-0.83; p=.001) と、死亡リスクを38%低減した。PFSにおいてもCP群のmPFSは5.8ヶ月 (95% CI, 4.7-6.9) と、P群の2.8ヶ月 (95% CI, 2.5-3.2) に対して著明な改善を示し、HRは0.46 (95% CI, 0.35-0.63; p<.001) であった。

先行研究との違い: これまでのPS 2患者を対象とした研究では、組み合わせ化学療法の安全性や有効性について一貫した見解が得られていなかった。例えば、Sweeney et al. Cancer 2001のECOG E1594試験のPS 2サブセット解析では、組み合わせ化学療法群のmOSが4.7ヶ月と不良な結果であった。本研究は、この長年の議論に終止符を打ち、PS 2患者においても組み合わせ化学療法が単剤療法よりも優位であるという明確なエビデンスを、第III相試験として初めて提供した点で、これまでの知見と対照的な結果を示した。特に、mOS 9.3ヶ月という結果は、PS 2患者における組み合わせ化学療法の有効性に対する懸念を払拭するものである。

新規性: 本研究で初めて、ECOG PS 2の進行NSCLC患者のみを対象とした大規模な無作為化第III相試験において、carboplatinとpemetrexedの併用療法が単剤療法と比較して生存期間を大幅に改善することを新規に示した。この知見は、PS 2患者に対する単剤化学療法推奨という長年の慣行を覆し、組み合わせ化学療法が標準治療として適用可能であることを示した歴史的エビデンスである。また、高齢者 (70歳以上) サブグループにおいても同様の生存改善効果 (HR 0.49; p=.006、mOS 9.9 vs 5.3ヶ月) が確認され、年齢がCP併用療法のベネフィットを制限しないことが示唆された点も新規性がある。

臨床応用: 本知見は、ECOG PS 2の進行NSCLC患者の治療戦略に大きな臨床的意義を持つ。これまで、全身状態不良を理由に積極的な治療をためらわれていた患者に対し、CP併用療法が有効かつ管理可能な毒性プロファイルで提供できることを示唆する。これにより、より多くのPS 2患者が生存期間の延長という恩恵を受けられる可能性があり、臨床現場での治療選択肢を拡大する。ただし、CP群で報告された4例 (3.9%) の治療関連死は重要な注意点であり、腎不全、敗血症、肺炎、血小板減少症が原因であった。PS 2患者では、腎機能や骨髄予備能の慎重な評価と密な毒性モニタリングが不可欠である。

残された課題: 本研究にはいくつかの限界が残されている。まず、ブラジルと米国の一部の施設を中心とした研究であり、その結果の外部妥当性には注意が必要である。また、試験開始当初は全ての組織型が対象であったが、プロトコル改訂により扁平上皮癌が除外されたため、14例の扁平上皮癌患者が解析から除外されている。しかし、扁平上皮癌患者を除外した解析でも主要結果の頑健性は保たれている。PS 2の評価は施設間でばらつきが生じる可能性があり、患者選択が結果に影響を与えた可能性も完全に否定はできない。しかし、主要施設では2名の独立した医師がPS 2の評価に合意しており、また他のPS 2対象試験の結果と比較しても、本研究の患者集団が特に良好なPSであったとは考えにくい。さらに、本試験は4サイクルで維持療法なしの設計であったため、現代の治療戦略である維持pemetrexedの追加によるさらなる改善の可能性は今後の検討課題である。免疫療法が標準治療となっている現在においても、PS 2患者は多くの免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) 試験から除外されるか、少数しか含まれていないため、本試験のPS 2特化エビデンスは依然として参照価値が高い。PS 2患者へのICI単独療法またはICIと化学療法の併用療法の最適な戦略は、今後の研究で解明されるべき残された課題である。

方法

本研究は、多施設共同、無作為化、非盲検の第III相臨床試験 (NCT01836575) として実施された。ブラジルの8施設と米国の1施設が参加した。

対象患者: 組織学的または細胞学的に確認されたStage IIIB (悪性胸水あり) またはStage IVの進行NSCLC患者が対象とされた。ECOG PS 2であり、化学療法歴がないこと、および適切な臓器機能 (糸球体濾過量 [GFR] ≥ 45 mL/minを含む) を有することが組み入れ基準であった。当初は全ての組織型が対象であったが、2009年5月のプロトコル改訂により扁平上皮癌患者は除外された (改訂前に14例の扁平上皮癌患者が登録済みであった)。局所進行性疾患で集学的治療の対象となる患者は除外された。脳転移患者は、神経学的に安定しており、適切な治療後にステロイド投与が不要であれば組み入れ可能であった。

治療計画: 患者は、pemetrexed単剤療法 (P群) またはcarboplatinとpemetrexedの併用療法 (CP群) のいずれかに1:1で無作為に割り付けられた。

  • P群: Pemetrexed 500 mg/m²をDay 1に3週間ごとに静脈内投与。
  • CP群: Carboplatin AUC 5をDay 1に、Pemetrexed 500 mg/m²をDay 1に、それぞれ3週間ごとに静脈内投与。 両群ともに最大4サイクルまで投与された。全ての患者は、pemetrexedの添付文書に従い、dexamethasone (デキサメタゾン)、ビタミンB12、および葉酸による前処置を受けた。維持療法はプロトコル上許可されなかった。治療中に病勢進行した患者やプロトコル治療後に病勢進行した患者は、担当医の裁量で後治療を受けた。

無作為化と層別化: 無作為化は独立したプロバイダーによって実施され、以下の因子で層別化された: 病期 (IIIB vs IV)、体重減少 (≥ 5% vs < 5%)、年齢 (≥ 70歳 vs < 70歳)。

評価項目:

  • 主要評価項目: 全生存期間 (OS)。初回治療開始日からあらゆる原因による死亡日までの期間と定義された。
  • 副次評価項目:
    • 奏効率 (ORR): RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) 基準 (version 1.0) に基づき、画像診断により2サイクルごとに評価された。
    • 無増悪生存期間 (PFS): 初回治療開始日から病勢進行またはあらゆる原因による死亡日までの期間と定義された。
    • 毒性: Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) version 3.0を用いて各サイクルで評価された。用量減量や治療遅延は、発熱性好中球減少症、Grade 4血小板減少症および/または出血、またはGrade 3/4の非血液毒性 (悪心/嘔吐を除く) に基づく所定のガイドラインに従って実施された。

統計解析: OSの比較が主要な目的であった。本研究は、CP群のmOSが少なくとも4.3ヶ月、P群のmOSが少なくとも2.9ヶ月 (ハザード比 [HR] 0.674) と仮定し、80%の検出力と両側αエラー0.05で設計された。これにより、合計208例の適格患者が必要とされた。中間解析は46イベント発生後に実施され、安全性または有効性に関する大きな懸念は認められなかった。全ての生存分布はKaplan-Meier法を用いて計算され、ログランク検定 (log-rank test) で比較された。ハザード比はCox回帰分析を用いて算出された。探索的サブグループ解析は、年齢、組織型、喫煙状況に基づいて実施された。二値データの関連性は、χ²検定およびFisher’s exact testを用いて検討された。ブラジルの全参加施設において、ソースドキュメントのレビューとプロトコル遵守の確認のため、定期的なモニタリングが実施された。