• 著者: Gadgeel S, Rodriguez-Abreu D, Speranza G, Esteban E, Felip E, Domine M, Hui R, Hochmair MJ, Clingan P, Powell SF, Cheng SY, Bischoff HG, Peled N, Grossi F, Jennens RR, Reck M, Garon EB, Novello S, Rubio-Viqueira B, Boyer M, Kurata T, Gray JE, Yang J, Bas T, Pietanza MC, Garassino MC
  • Corresponding author: Shirish Gadgeel, MB, BS (University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-01-15
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 32150489

背景

進行非扁平上皮非小細胞肺がん (NSCLC) の一次治療は、免疫療法が登場するまでプラチナ製剤ベースの化学療法が標準であった。しかし、抗PD-1モノクローナル抗体であるペムブロリズマブの導入により、治療パラダイムは大きく変化した。ペムブロリズマブは、PD-L1腫瘍細胞比率 (TPS) が50%以上の患者に対する単剤療法、およびPD-L1発現レベルにかかわらずプラチナ製剤ベースの化学療法との併用療法において、進行/転移性NSCLCの一次治療として有効性を示している。

KEYNOTE-189試験の主要解析 (中央値追跡期間10.5ヶ月) は、ペムブロリズマブとペメトレキセド・プラチナ併用療法 (pembro+pem/plat) が、プラセボと化学療法と比較して、転移性非扁平上皮NSCLCの一次治療において、全生存期間 (OS) のハザード比 (HR) 0.49 (95% CI 0.38-0.64, p<0.001)、無増悪生存期間 (PFS) のHR 0.52 (95% CI 0.43-0.64, p<0.001) と、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを示した Gandhi et al. NEnglJMed 2018。この結果は、PD-L1 TPSにかかわらず一貫していた。しかし、この主要解析では追跡期間が比較的短く、2年以上の長期成績や、肝転移・脳転移を有するサブグループにおける詳細な有効性データが不足していた。特に、肝転移や脳転移はNSCLC患者において予後不良因子として知られており、これらの高リスク集団における免疫療法の効果は未解明な点が多かった。また、次治療までの期間 (PFS-2) の解析も限定的であった。

本更新解析は、データカットオフを2018年9月21日 (中央値追跡期間23.1ヶ月) に延長し、より成熟した有効性および安全性データを報告することを目的とした。これにより、長期的な生存ベネフィットの持続性、PD-L1発現レベル、肝転移、脳転移の有無といった重要なサブグループにおけるペムブロリズマブと化学療法の併用効果の一貫性を詳細に評価し、非扁平上皮NSCLCの一次治療における本レジメンの標準治療としての地位をさらに確立するためのエビデンスを補完することが期待された。

目的

KEYNOTE-189試験の更新解析として、転移性非扁平上皮NSCLCの未治療患者 (n=616) におけるペムブロリズマブとペメトレキセド・プラチナ併用療法の有効性および安全性の長期成績を評価すること。具体的には、より成熟したOS、PFS、奏効率 (ORR) データを報告し、PD-L1発現状態、肝転移、脳転移の有無といった重要なサブグループにおける有効性の一貫性を確認することを目的とした。また、次治療までの無増悪生存期間 (PFS-2) を評価し、一次治療におけるペムブロリズマブ併用療法の長期的な影響を明らかにすることも目的とした。本解析は、主要解析で不足していた長期データや特定の高リスクサブグループにおける詳細な情報を提供し、ペムブロリズマブ併用療法の臨床的意義をさらに明確にすることを目指した。

結果

患者背景と治療: 全体で616名の患者が無作為に割り付けられ、ペムブロリズマブ併用群に410名、プラセボ併用群に206名が割り付けられた。患者の人口統計学的特性およびベースラインの疾患特性は両群間で概ね類似していた (Table 1)。PD-L1 TPSサブグループ (<1%、1%-49%、≥50%) の患者割合も両群で類似しており、約3分の1の患者がTPS <1%であった。ベースライン時、ペムブロリズマブ併用群では66名 (16.1%) が肝転移、73名 (17.8%) が脳転移を有しており、プラセボ併用群ではそれぞれ49名 (23.8%)、35名 (17.0%) であった。データカットオフ時 (2018年9月21日) の追跡期間中央値は23.1ヶ月 (範囲18.6-30.9ヶ月) であった。平均治療期間はペムブロリズマブ併用群で9.8ヶ月 (標準偏差7.8ヶ月)、プラセボ併用群で6.2ヶ月 (標準偏差5.7ヶ月) であった。プラセボ併用群の患者のうち、84名 (40.8%) が試験中にペムブロリズマブ単剤療法にクロスオーバーし、合計111名 (53.9%) が何らかの次治療として抗PD-(L)1療法を受けた。

全生存期間 (OS) の更新解析: データカットオフ時、ペムブロリズマブ併用群では213名 (52.0%)、プラセボ併用群では144名 (69.9%) の患者が死亡していた。OS中央値は、ペムブロリズマブ併用群で22.0ヶ月 (95% CI 19.5-25.2ヶ月) であったのに対し、プラセボ併用群では10.7ヶ月 (95% CI 8.7-13.6ヶ月) であり、ハザード比 (HR) は0.56 (95% CI 0.45-0.70) であった (Figure 2A)。この結果は、ペムブロリズマブと化学療法の併用が、プラセボと化学療法と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるOSの延長をもたらすことを示している。推定24ヶ月OS率は、ペムブロリズマブ併用群で45.5%、プラセボ併用群で29.9%であった。ペムブロリズマブの追加による生存ベネフィットは、PD-L1発現レベルにかかわらず観察された。PD-L1 TPS <1%の患者群ではOS HR 0.52 (95% CI 0.36-0.74) であり、PD-L1 TPS 1-49%の患者群ではOS HR 0.63 (95% CI 0.46-0.86)、PD-L1 TPS ≥50%の患者群ではOS HR 0.42 (95% CI 0.29-0.61) であった (Figure 2B-D)。

無増悪生存期間 (PFS) の更新解析: PFS中央値は、ペムブロリズマブ併用群で9.0ヶ月 (95% CI 8.1-9.9ヶ月) であったのに対し、プラセボ併用群では4.9ヶ月 (95% CI 4.7-5.5ヶ月) であり、HRは0.48 (95% CI 0.40-0.58) であった (Figure 3A)。推定24ヶ月PFS率は、ペムブロリズマブ併用群で20.5%、プラセボ併用群で1.5%と、両群間で大きな差が認められた。OSと同様に、ペムブロリズマブの追加によるPFSベネフィットもPD-L1発現レベルにかかわらず観察された (Figure 3B-D)。

奏効率 (ORR) および奏効期間 (DOR): 確認された客観的奏効率は、ペムブロリズマブ併用群で48.0% (完全奏効 [CR] 1.0%、部分奏効 [PR] 47.1%) であったのに対し、プラセボ併用群では19.4% (CR 0.5%、PR 18.9%) であった (Table 2)。奏効期間中央値は、ペムブロリズマブ併用群で12.4ヶ月 (範囲1.1+〜29.0+ヶ月)、プラセボ併用群で7.1ヶ月 (範囲2.4〜22.0+ヶ月) であった。12ヶ月以上の奏効持続が推定された患者の割合は、ペムブロリズマブ併用群で52.3%、プラセボ併用群で26.9%であった。奏効率および奏効期間は、PD-L1発現レベルにかかわらずペムブロリズマブ併用群で高かった。

次治療までの無増悪生存期間 (PFS-2): PFS-2中央値は、ペムブロリズマブ併用群で17.0ヶ月 (95% CI 15.1-19.4ヶ月) であったのに対し、プラセボ併用群では9.0ヶ月 (95% CI 7.6-10.4ヶ月) であり、HRは0.49 (95% CI 0.40-0.59) であった (Figure 4A)。ペムブロリズマブに関連するPFS-2のベネフィットは、PD-L1発現レベルにかかわらず観察された (Figure 4B-D)。

ベースライン時の肝転移または脳転移を有する患者におけるアウトカム: 全体集団と同様に、肝転移を有する患者 (n=115) および脳転移を有する患者 (n=108) のサブグループにおいても、ペムブロリズマブ併用群はプラセボ併用群と比較してOSのベネフィットを示した (Figure 5A-D)。肝転移を有する患者におけるOSのHRは0.62 (95% CI 0.39-0.98) であり、肝転移のない患者におけるHR 0.58 (95% CI 0.45-0.74) と類似していた。同様に、脳転移を有する患者におけるOSのHRは0.41 (95% CI 0.24-0.67) であり、脳転移のない患者におけるHR 0.59 (95% CI 0.46-0.75) と比較して、脳転移を有する患者でより大きな効果が示唆された。PFSも肝転移および脳転移の有無にかかわらず改善した。

安全性プロファイル: 全ての原因による有害事象 (AE) は、ペムブロリズマブ併用群で404名 (99.8%)、プラセボ併用群で200名 (99.0%) の患者に発生した (Table 3)。グレード3-5のAEは、それぞれ291名 (71.9%) と135名 (66.8%) に発生した。治療関連死は、ペムブロリズマブ併用群で29名 (7.2%)、プラセボ併用群で14名 (6.9%) であった。免疫関連AE (任意のグレード) は、ペムブロリズマブ併用群で107名 (26.4%)、プラセボ併用群で26名 (12.9%) に発生した。グレード3-5の免疫関連AEは、それぞれ10.9%と4.5%であった。最も頻繁に発生した免疫関連AEは、甲状腺機能低下症 (7.9%)、甲状腺機能亢進症 (4.9%)、肺炎 (4.9%) であった。腎炎はペムブロリズマブ併用群で8名 (2.0%) に発生し、そのうち6名がグレード3-4であった。プラセボ併用群では腎炎の発生はなかった。肝転移または脳転移の有無にかかわらず、グレード3以上のAEの発生率は両群間で概ね類似していた。

考察/結論

KEYNOTE-189試験の更新解析 (中央値追跡期間23.1ヶ月) は、転移性非扁平上皮NSCLCの一次治療において、ペムブロリズマブとペメトレキセド・プラチナ併用療法がプラセボと化学療法と比較して、OSおよびPFSを大幅に改善し、その効果が長期にわたって持続することを確認した。OS中央値は22.0ヶ月 vs 10.7ヶ月 (HR 0.56, 95% CI 0.45-0.70) であり、2年OS率は45.5% vs 29.9%であった。PFS中央値は9.0ヶ月 vs 4.9ヶ月 (HR 0.48, 95% CI 0.40-0.58) であり、2年PFS率は20.5% vs 1.5%と、ペムブロリズマブ併用群で劇的な改善が認められた。

先行研究との違い: 本更新解析は、主要解析 (中央値追跡期間10.5ヶ月) の結果を裏付け、さらに長期的な生存ベネフィットの持続性を示した点で重要である。特に、プラセボ群の54%が次治療として抗PD-(L)1療法にクロスオーバーしたにもかかわらず、ペムブロリズマブ併用群でOSの優位性が維持されたことは、一次治療としての免疫化学療法の強力な効果を強調する。これは、化学療法単独の歴史的な2年OS率 (14-19%) と比較して、プラセボ群の2年OS率が30%と高かったことからも、クロスオーバーの影響を考慮してもなお、一次治療での併用療法の優位性が示唆される。

新規性: 本研究で初めて、PD-L1発現レベル (<1%、1-49%、≥50%)、肝転移、脳転移の有無にかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用によるOSおよびPFSのベネフィットが一貫して観察されることが示された。特に、PD-L1 TPS <1%の患者群においてもOS HR 0.52 (95% CI 0.36-0.74) という有意な生存利益が確認されたことは、これまで単剤の抗PD-1療法では効果が限定的であったPD-L1陰性患者に対する新規の治療戦略として極めて重要である。また、PFS-2の改善 (HR 0.49, 95% CI 0.40-0.59) は、一次治療におけるペムブロリズマブ併用療法の効果が次治療以降も維持されることを初めて示した。

臨床応用: これらの知見は、転移性非扁平上皮NSCLCの一次治療において、PD-L1発現や肝・脳転移の有無にかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用が標準治療としての地位を確立することを強く支持する。特に、肝転移や脳転移といった予後不良因子を持つ患者群においても、ペムブロリズマブ併用療法が生存ベネフィットをもたらすことが示されたことは、臨床現場での治療選択において重要な含意を持つ。

残された課題: 今後の検討課題としては、長期生存患者における治療中止後の再発パターンや、特定の免疫関連有害事象の長期的な管理戦略の確立が挙げられる。また、本試験ではEGFR/ALK変異陰性患者が対象であったため、これらのドライバー変異を有する患者における免疫化学療法の役割についてはさらなる研究が必要である。さらに、免疫化学療法後の最適な次治療戦略についても、さらなるデータ蓄積が求められる。

方法

本研究は、国際多施設共同無作為化二重盲検第3相試験であるKEYNOTE-189 (ClinicalTrials.gov: NCT02578680) の更新解析として実施された。対象患者は、未治療の転移性非扁平上皮NSCLC患者で、EGFR/ALK遺伝子変異陰性、ECOGパフォーマンスステータス0または1、測定可能病変が1つ以上存在し、PD-L1評価のための腫瘍検体を提供した。症候性中枢神経系転移、ステロイド治療を要する非感染性肺炎の既往、活動性自己免疫疾患、全身性免疫抑制療法を受けている患者は除外された。

患者はペムブロリズマブ群 (n=410) またはプラセボ群 (n=206) に2:1の比率で無作為に割り付けられた。両群ともに、ペメトレキセド500mg/m²とシスプラチンまたはカルボプラチンを3週間ごとに4サイクル投与された。その後、ペムブロリズマブ群はペメトレキセド維持療法とペムブロリズマブ200mgを3週間ごとに最大35サイクル、プラセボ群はペメトレキセド維持療法とプラセボを同様に投与された。プラセボ群で病勢進行が確認された適格患者は、ペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーが許可された。無作為化は、PD-L1 TPS (<1% vs ≥1%)、プラチナ製剤の選択 (シスプラチン vs カルボプラチン)、および喫煙歴 (非喫煙者 vs 喫煙者/元喫煙者) によって層別化された。

腫瘍組織検体は、診断時にコアニードル生検または切除生検により採取され、PD-L1 IHC 22C3 pharmDxアッセイ (Agilent Technologies) を用いて中央でPD-L1発現が評価された。PD-L1発現はTPS (膜性PD-L1染色陽性腫瘍細胞の割合) によって分類された。腫瘍画像評価は、6週目と12週目に実施され、その後48週目までは9週間ごと、48週目以降は12週間ごとに実施された。脳転移を有する患者は、同じ間隔で脳の画像評価も受けた。奏効は、RECISTバージョン1.1に基づき、盲検化された独立中央画像診断委員会 (BICR) によって評価された。有害事象 (AE) は、NCI-CTCAEバージョン4.0に基づき、最終投与後30日 (重篤なAEは90日) まで、または新規治療開始まで評価された。

主要評価項目はOSおよびPFSであった。副次評価項目はORR、奏効期間 (DOR)、および安全性であった。ベースライン時に肝転移または脳転移を有する患者における有効性解析は探索的であった。PFS-2は、無作為化から次治療における客観的腫瘍進行またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義され、プロトコルで規定された探索的評価項目であった。

有効性解析は、ITT (intention-to-treat) 集団 (無作為に割り付けられた全患者) で実施された。安全性解析は、as-treated集団 (1回以上の治療を受けた全患者) で実施された。OS、PFS、およびPFS-2の推定にはカプラン・マイヤー法が用いられた。ハザード比 (HR) および95%信頼区間 (CI) は、Efronの方法を用いた層別Cox比例ハザードモデルによって決定された。無作為化に用いられた層別化因子が適用された。本更新解析には多重性の調整は行われず、αエラーは割り当てられなかった。