• 著者: Gandhi L, Rodríguez-Abreu D, Gadgeel S, Esteban E, Felip E, De Angelis F, Domine M, Clingan P, Hochmair MJ, Powell SF, Cheng SYS, Bischoff HG, Peled N, Grossi F, Jennens RR, Reck M, Hui R, Garon EB, Boyer M, Rubio-Viqueira B, Novello S, Kurata T, Gray JE, Vida J, Wei Z, Yang J, Raftopoulos H, Pietanza MC, Garassino MC
  • Corresponding author: Leena Gandhi, MD, PhD (NYU Perlmutter Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-04-16
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 29658856

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) のうち、EGFRまたはALK遺伝子変異を持たない患者に対する一次治療は、長らくプラチナ製剤ベースの化学療法が標準であった。この治療法における奏効率は約30%前後、全生存期間 (OS) 中央値は約12〜14ヶ月に留まり、予後改善が大きな課題として残されていた。近年、免疫チェックポイント阻害薬、特にPD-1阻害薬であるペムブロリズマブが、PD-L1腫瘍細胞比率 (TPS) が50%以上の進行NSCLC患者において、化学療法を上回るOS延長効果を示した(Reck et al. NEnglJMed 2016)。この結果に基づき、ペムブロリズマブ単剤療法はPD-L1高発現患者の一次治療として2016年10月に米国FDAの承認を得た。しかし、PD-L1 TPSが50%以上の患者は全NSCLC患者の約25〜30%に過ぎず、残りの70〜75%を占めるPD-L1低発現または陰性患者に対する免疫療法の最適な組み入れ戦略は未確立であった。この知識ギャップを埋めることが喫緊の課題であった。

化学療法とPD-1阻害薬の併用療法には、免疫学的相乗効果が期待されていた。そのメカニズムとして、以下のような仮説が提唱されている。(1) 化学療法による免疫原性細胞死 (ICD) が腫瘍抗原の放出を促進し、樹状細胞による抗原提示を増強する(Bracci et al. Cell Death Differ 2014)。(2) 骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の除去により、抗腫瘍免疫応答が回復する(Wang et al. Oncoimmunology 2017)。(3) 細胞傷害性T細胞と制御性T細胞の比率が上昇し、免疫抑制環境が改善される(Roselli et al. Oncoimmunology 2013)。(4) プラチナ製剤がSTAT6経路を遮断することで、樹状細胞の活性化を促進する(Lesterhuis et al. J Clin Invest 2011)。これらのメカニズムは、PD-L1発現レベルにかかわらず免疫応答を増強し、より広範な患者群に免疫療法の恩恵をもたらす可能性を示唆していた。

先行する第2相試験であるKEYNOTE-021 Cohort Gでは、カルボプラチンとペメトレキセドにペムブロリズマブを追加した併用療法が、化学療法単独と比較して有意に高い奏効率 (ORR 55% vs 29%; P=0.0016) と長い無増悪生存期間 (PFS) (ハザード比 [HR] 0.53) を示し、有望なシグナルが確認された(Langer et al. LancetOncol 2016)。この結果を受け、大規模な第3相試験であるKEYNOTE-189が、未治療の転移性非扁平上皮NSCLC患者におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法の有効性と安全性をさらに検証するために設計された。従来の化学療法単独では、PD-L1低発現または陰性患者に対する治療選択肢が不足しており、新たな治療戦略の確立が強く求められていた。

目的

本第3相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の目的は、未治療の転移性非扁平上皮NSCLC(EGFRまたはALK遺伝子変異陰性)患者において、ペメトレキセド (500 mg/m²) とプラチナ製剤 (シスプラチン 75 mg/m² またはカルボプラチン AUC=5) にペムブロリズマブ 200 mg を併用する3週ごとの4サイクル導入療法、その後のペムブロリズマブとペメトレキセドによる維持療法 (最長35サイクル) の有効性と安全性を、プラセボと化学療法の併用療法と比較して評価することであった。主要評価項目は全生存期間 (OS) と無増悪生存期間 (PFS) であり、副次評価項目として客観的奏効率 (ORR)、奏効持続期間 (DOR)、および安全性が設定された。本研究は、PD-L1発現レベルにかかわらず、この併用療法が標準化学療法と比較して臨床的ベネフィットをもたらすか否かを明らかにすることを目的とした。

結果

全生存期間 (OS) の有意な延長: 追跡期間中央値10.5ヶ月の時点で、ペムブロリズマブ併用群のOS中央値は未到達であったのに対し、プラセボ併用群では11.3ヶ月 (95% CI 8.7-15.1) であった。死亡リスクはペムブロリズマブ併用群でプラセボ併用群と比較して51%低減され、ハザード比 (HR) は0.49 (95% CI 0.38-0.64; P<0.001) と統計学的に極めて有意な差を示した (Figure 1A)。12ヶ月時点でのOS率は、ペムブロリズマブ併用群で69.2% (95% CI 64.1-73.8) であったのに対し、プラセボ併用群では49.4% (95% CI 42.1-56.2) であり、絶対差は19.8%であった。このOS改善効果は、解析された全てのサブグループで一貫して認められた (Figure 1B)。

PD-L1発現レベル別OS効果: PD-L1発現レベル別の解析では、全てのカテゴリでペムブロリズマブ併用群のOS改善が確認された (Figure 2)。PD-L1 TPSが1%未満の患者群 (ITT集団の約30%) においても、12ヶ月OS率は61.7% vs 52.2%であり、HRは0.59 (95% CI 0.38-0.92) と有意な死亡リスクの低減が認められた。PD-L1 TPSが1〜49%の患者群では、12ヶ月OS率は71.5% vs 50.9%、HRは0.55 (95% CI 0.34-0.90) であった。PD-L1 TPSが50%以上の患者群では、12ヶ月OS率は73.0% vs 48.1%であり、HRは0.42 (95% CI 0.26-0.68) と最も顕著な効果が示された。この結果は、PD-L1発現レベルにかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用がOSを改善することを示す重要な知見である。

無増悪生存期間 (PFS) の有意な延長: PFS中央値は、ペムブロリズマブ併用群で8.8ヶ月 (95% CI 7.6-9.2) であったのに対し、プラセボ併用群では4.9ヶ月 (95% CI 4.7-5.5) であった。病勢進行または死亡のリスクはペムブロリズマブ併用群で48%低減され、HRは0.52 (95% CI 0.43-0.64; P<0.001) と有意な改善が認められた (Figure 3A)。12ヶ月時点でのPFS率は、ペムブロリズマブ併用群で34.1% (95% CI 28.8-39.5) であったのに対し、プラセボ併用群では17.3% (95% CI 12.0-23.5) であった。PD-L1発現レベル別のPFS解析では、全てのサブグループでHRが1.00を下回ったものの、PD-L1 TPSが1%未満の患者群ではHR 0.75 (95% CI 0.53-1.05) であり、95% CIの上限が1.00を超過した (Figure 4)。これは、PD-L1低発現群におけるPFSの改善はOSほど一貫していない可能性を示唆する。

客観的奏効率 (ORR) と奏効持続期間 (DOR) の改善: 盲検下独立中央放射線学的評価によるORRは、ペムブロリズマブ併用群で47.6% (95% CI 42.6-52.5) であったのに対し、プラセボ併用群では18.9% (95% CI 13.8-25.0) と有意に高かった (P<0.001)。病勢制御率 (完全奏効+部分奏効+安定) は、ペムブロリズマブ併用群で84.6%、プラセボ併用群で70.4%であった。奏効持続期間中央値は、ペムブロリズマブ併用群で11.2ヶ月 (範囲 1.1+〜18.0+)、プラセボ併用群で7.8ヶ月 (範囲 2.1+〜16.4+) であった。PD-L1 TPSが50%以上の患者群では、ペムブロリズマブ併用群のORRが61.4%と最も高かった。

安全性プロファイル: Grade 3以上の有害事象 (全原因) の発生率は、ペムブロリズマブ併用群で67.2% (n=405中272例)、プラセボ併用群で65.8% (n=202中133例) であり、両群間で大きな差は認められなかった (Table 2)。治療関連死は、ペムブロリズマブ併用群で27例 (6.7%)、プラセボ併用群で12例 (5.9%) であり、こちらも有意な差はなかった。免疫関連有害事象 (いずれかのグレード) は、ペムブロリズマブ併用群で22.7% (n=405中92例)、プラセボ併用群で11.9% (n=202中24例) と、ペムブロリズマブ併用群で高頻度であった (Table 3)。Grade 3以上の免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ併用群で8.9% (n=405中36例)、プラセボ併用群で4.5% (n=202中9例) であった。主な免疫関連有害事象は、甲状腺機能低下症 (6.7%)、肺炎 (4.4%、Grade 3以上は2.7%)、甲状腺機能亢進症 (4.0%)、大腸炎 (2.2%)、腎炎 (1.7%)、肝炎 (1.2%) であった。肺炎による死亡はペムブロリズマブ併用群で3例報告された。急性腎障害の発生率は、ペムブロリズマブ併用群で5.2%と、プラセボ併用群の0.5%と比較して有意に高かった。これは、ペメトレキセドとプラチナ製剤の腎毒性との相加効果が示唆される。Grade 3以上の貧血 (16.3% vs 15.3%) および好中球減少症 (15.8% vs 11.9%) は両群で同程度であった。治療中止に至った有害事象の発生率は、ペムブロリズマブ併用群で13.8%、プラセボ併用群で7.9%であった。

考察/結論

KEYNOTE-189試験は、未治療の転移性非扁平上皮NSCLC(EGFR/ALK変異陰性)患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブとペメトレキセドおよびプラチナ製剤の併用療法が、化学療法単独と比較してOSおよびPFSを統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるレベルで延長することを示した。OSのハザード比0.49 (95% CI 0.38-0.64, P<0.001) は、死亡リスクを約半分に低減するという圧倒的な効果を示している。

先行研究との違い: 本研究の最も重要な知見の一つは、PD-L1発現レベルにかかわらず、全てのサブグループでOS改善効果が認められた点である。特に、PD-L1 TPSが1%未満の患者群においてもOSのハザード比が0.59 (95% CI 0.38-0.92, P<0.05) と有意な改善を示したことは、これまでPD-L1陰性患者に対するPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法の効果が限定的であるとされてきた既存の知見(Reck et al. NEnglJMed 2016Garon et al. NEnglJMed 2015)と対照的である。これは、化学療法との併用が、PD-L1発現によらず免疫療法の恩恵をより広範な患者群に届ける可能性を示唆する新規の発見である。

新規性: 本研究は、第2相試験であるKEYNOTE-021 Cohort Gで示された有望なシグナル(ORR 55% vs 29%, PFS HR 0.53)を、大規模な第3相試験で完全に確認し、OSの有意な改善という形で拡張した点で新規性がある。同時期に報告されたIMpower150試験(アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)も非扁平上皮NSCLCでOS HR 0.78を示したが、KEYNOTE-189の規模、効果量、そしてよりシンプルなレジメンは際立っていた。本研究の結果は、未治療の転移性非扁平上皮NSCLCに対する一次治療のパラダイムシフトを確立した。

臨床応用: 本試験の結果に基づき、ペムブロリズマブとペメトレキセドおよびプラチナ製剤の併用療法は、非扁平上皮NSCLCの一次標準治療として世界的に広く普及した。特に、PD-L1 TPSが50%以上の患者ではペムブロリズマブ単剤療法(Reck et al. NEnglJMed 2016)が標準治療となり、それ以外のPD-L1発現レベルの患者ではペムブロリズマブと化学療法の併用療法が標準となるという、一次治療の層別化戦略が確立された。安全性プロファイルに関しては、Grade 3以上の有害事象の発生率が化学療法単独群とほぼ同等であったことは、ペムブロリズマブの追加が忍容性を著しく悪化させないことを示しており、臨床現場での導入を後押しする重要な要素である。ただし、急性腎障害の発生率がペムブロリズマブ併用群で有意に高かった (5.2% vs 0.5%) 点は、ペメトレキセドとプラチナ製剤の相加的な腎毒性によるものと考えられ、今後の臨床管理において注意が必要である。

残された課題: 本解析は追跡期間中央値10.5ヶ月での中間解析であり、OS中央値はペムブロリズマブ併用群で未到達であったため、より長期的なフォローアップによるOSの成熟データが今後の検討課題である。また、プラセボ群の患者の32.5%が試験中にペムブロリズマブ単剤療法にクロスオーバーし、試験外の免疫療法を含めると実効的なクロスオーバー率は41.3%に達した。このクロスオーバーがプラセボ群のOSに与える影響を正確に評価することも今後の課題として残されている。さらに、脳転移を有する患者サブセット(約17%)における有効性の詳細な解析や、腫瘍変異負荷 (TMB) などの他のバイオマーカーを用いたさらなる患者選択の可能性についても、今後の研究で検討されるべきである。

方法

本試験は、国際多施設共同の第3相二重盲検無作為化プラセボ対照試験 (KEYNOTE-189、ClinicalTrials.gov番号 NCT02578680) として実施された。2016年2月26日から2017年3月6日の期間に、16ヶ国118施設から合計616名の患者が登録された。

患者選択: 登録された患者は、病理学的に確認された転移性非扁平上皮NSCLCであり、EGFRまたはALK遺伝子変異がなく、転移性疾患に対する全身治療歴がないこと、ECOGパフォーマンスステータスが0または1であること、RECIST version 1.1に基づき測定可能な病変を少なくとも1つ有すること、およびPD-L1発現状態を評価するための腫瘍組織検体を提供していることが適格基準とされた。症候性の中枢神経系転移、ステロイド治療を要する非感染性肺炎の既往、活動性自己免疫疾患、全身性免疫抑制療法を受けている患者は除外された。

試験デザインと治療: 患者はペムブロリズマブ併用群とプラセボ併用群に2:1の比率で無作為に割り付けられた。両群ともに、ペメトレキセド (500 mg/m²) とプラチナ製剤 (シスプラチン 75 mg/m² またはカルボプラチン AUC=5) を3週ごとに4サイクル投与する導入療法を受けた。ペムブロリズマブ併用群はこれにペムブロリズマブ 200 mg を、プラセボ併用群はプラセボを併用した。導入療法後、両群ともにペメトレキセド維持療法を継続し、ペムブロリズマブ併用群はペムブロリズマブを、プラセボ併用群はプラセボを最長35サイクル (約2年間) まで継続投与した。プラセボ併用群の患者は、盲検下独立中央判定により病勢進行が確認された場合、ペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーが許可された。

患者背景: 無作為化された患者のベースライン特性は両群間で概ね均衡がとれていた。年齢中央値はペムブロリズマブ群で65.0歳、プラセボ群で63.5歳であった。男性の割合はペムブロリズマブ群で62.0%、プラセボ群で52.9%であり、有意差が認められた (P=0.04)。喫煙歴は両群ともに約88%が現在または過去の喫煙者であった。組織型は96%が腺癌であった。脳転移を有する患者は両群ともに約17%であった。PD-L1 TPSの分布は、<1%が約31%、1〜49%が約31%、≥50%が約32%であり、約5.6%は評価不能であった。プラチナ製剤の選択では、72.2%の患者がカルボプラチンを選択した。無作為化はPD-L1 TPS (≥1% vs <1%)、プラチナ製剤の選択、および喫煙歴によって層別化された。

評価項目: 主要評価項目は、全生存期間 (OS) と盲検下独立中央放射線学的評価による無増悪生存期間 (PFS) であった。副次評価項目は、客観的奏効率 (ORR)、奏効持続期間 (DOR)、および安全性であった。腫瘍評価はRECIST version 1.1に従い、6週目、12週目、その後48週目まで9週ごと、それ以降は12週ごとに実施された。有害事象および臨床検査値異常は、NCI Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) version 4.0に従って評価された。

統計解析: 有効性評価はintention-to-treat (ITT) 集団で実施され、安全性評価はas-treated集団で実施された。OSおよびPFSの推定にはKaplan-Meier法が用いられ、群間比較には層別ログランク検定が使用された。ハザード比 (HR) および95%信頼区間 (CI) は、層別Cox比例ハザードモデルを用いて算出された。奏効率の差はMiettinenとNurminenの層別法で評価された。本試験は、PFSのHR 0.70を検出するために468イベント、OSのHR 0.70を検出するために416死亡を検出する90%の検出力を持つように設計された。初回中間解析は、PFSイベントが410件、死亡が235件発生した時点で実施された。この解析時点での多重度調整済み片側α水準は、PFSで0.00559、OSで0.00128であった。