• 著者: D. Rodriguez-Abreu, S.F. Powell, M.J. Hochmair, et al.
  • Corresponding author: D. Rodriguez-Abreu (Complejo Hospitalario Universitario Insular Materno-Infantil de Gran Canaria, Spain)
  • 雑誌: Annals of Oncology
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-04-22
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33894335

背景

転移性非扁平上皮非小細胞肺がん (NSCLC) は予後不良な疾患であり、効果的な治療法の開発が求められている。抗PD-1抗体であるペムブロリズマブは、PD-L1発現陽性NSCLCに対する単剤療法、およびプラチナ製剤ベースの化学療法との併用療法として、一次治療での承認を得ている。特に、KEYNOTE-021試験コホートGでは、ペムブロリズマブとペメトレキセド・カルボプラチンの併用療法が、化学療法単独と比較してOSの有意な改善を示したことが報告されている Langer et al. LancetOncol 2016

KEYNOTE-189試験 (phase III、NCT02578680) は、未治療転移性非扁平上皮NSCLC (EGFR/ALK変異陰性) 患者を対象に、ペムブロリズマブ200 mg + ペメトレキセド + プラチナ併用療法とプラセボ + ペメトレキセド + プラチナ併用療法を比較する無作為化二重盲検試験として実施された。第1回中間解析 (追跡期間中央値10.5ヶ月) では、ペムブロリズマブ群がプラセボ群と比較して、OS (HR 0.49、95% CI 0.38-0.64、p<0.001)、PFS (HR 0.52、95% CI 0.43-0.64、p<0.001)、およびORR (47.6% vs 18.9%、p<0.001) において有意な改善を示したことが報告されている Gandhi et al. NEnglJMed 2018。その後、約10ヶ月の追加追跡期間を含む更新解析でも、OS (HR 0.56) およびPFS (HR 0.48) の持続的な改善が示された Gadgeel et al. JClinOncol 2020

しかし、これらの報告では、長期的な有効性データ、特に2年間のペムブロリズマブ治療を完遂した患者の転帰や、プラセボ群からペムブロリズマブへのクロスオーバー患者のデータについては詳細な情報が不足していた。本報告は、KEYNOTE-189試験のプロトコル規定最終解析であり、追加の18ヶ月の長期データ、クロスオーバー患者の転帰、および35サイクル (約2年間) の治療を完遂した患者の長期アウトカムを初めて報告するものである。これにより、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法の長期的な有効性と安全性のプロファイルに関する理解が深まることが期待される。

目的

KEYNOTE-189試験のプロトコル規定最終解析 (追跡期間中央値31.0ヶ月) において、未治療転移性非扁平上皮NSCLC患者に対するペムブロリズマブと化学療法の併用療法の長期的な有効性および安全性を確認すること。また、プラセボ群からペムブロリズマブへのクロスオーバー患者の転帰、および35サイクル (約2年間) のペムブロリズマブ治療を完遂した患者の長期アウトカムを初めて報告することを目的とする。

結果

全生存期間 (OS): データカットオフ日 (2019年5月20日) 時点での追跡期間中央値は31.0ヶ月 (範囲26.5-38.8ヶ月) であった。ペムブロリズマブ + ペメトレキセド + プラチナ群のOS中央値は22.0ヶ月 (95% CI 19.5-24.5) であり、プラセボ + ペメトレキセド + プラチナ群の10.6ヶ月 (95% CI 8.7-13.6) と比較して有意な改善を示した (HR 0.56、95% CI 0.46-0.69、p<0.001) (Figure 1A)。24ヶ月OS率は、ペムブロリズマブ群で45.7%、プラセボ群で27.3%であった。OSのベネフィットは、PD-L1 TPS <1% (HR 0.51、95% CI 0.36-0.71、p=0.0001)、1-49%、および≥50%の全てのサブグループで一貫して認められた (Figure 1B-D)。また、脳転移の有無、肝転移の有無、年齢、ECOG PS、性別、喫煙状況、割り付けられたプラチナ製剤の種類にかかわらず、OSの改善が持続的に観察された (Figure 1E)。

無増悪生存期間 (PFS) およびPFS2: PFS中央値は、ペムブロリズマブ群で9.0ヶ月 (95% CI 8.1-10.4)、プラセボ群で4.9ヶ月 (95% CI 4.7-5.5) であった (HR 0.49、95% CI 0.41-0.59、p<0.001) (Figure 2A)。24ヶ月PFS率は、ペムブロリズマブ群で22.0%、プラセボ群で3.4%であった。PFSの延長も、全てのPD-L1 TPS区分および主要なサブグループで一貫してペムブロリズマブ群が優れていた (Figure 2B-E)。次治療後の病勢進行までの期間 (PFS2) 中央値は、ペムブロリズマブ群で17.0ヶ月 (95% CI 15.1-19.1)、プラセボ群で9.0ヶ月 (95% CI 7.4-10.4) であり、ペムブロリズマブ群で有意な改善が認められた (HR 0.50、95% CI 0.41-0.61、p<0.001)。24ヶ月PFS2率は、ペムブロリズマブ群で38.2%、プラセボ群で16.2%であった (Figure 3)。

客観的奏効率 (ORR) および奏効期間 (DOR): ORRは、ペムブロリズマブ群で48.3% (CR 5例、PR 193例) であり、プラセボ群の19.9% (CR 1例、PR 40例) と比較して有意に高かった (Table 1)。奏効期間 (DOR) 中央値は、ペムブロリズマブ群で12.5ヶ月 (範囲1.1+〜34.9+)、プラセボ群で7.1ヶ月 (範囲2.4〜27.8+) であった。24ヶ月時点での奏効継続割合は、ペムブロリズマブ群で28.4%、プラセボ群で9.9%であった。ORRの改善は、PD-L1 TPS <1%の患者においてもペムブロリズマブ群で認められた。

クロスオーバー患者の転帰: プラセボ群の206例中84例 (40.8%) が試験内でペムブロリズマブ単剤療法にクロスオーバーした。このクロスオーバー患者集団のうち、28.6%がPD-L1 TPS <1%であった。クロスオーバー後のOS中央値は6.9ヶ月 (95% CI 4.8-10.5) であり、24ヶ月OS率は20.7%であった。PFS中央値は2.8ヶ月 (95% CI 2.5-2.9) であり、24ヶ月PFS率は12.1%であった。ORRは17.9% (15/84例) であり、DOR中央値は21.9ヶ月 (3.9〜25.9+) であった。12ヶ月時点での奏効継続割合は60.0%であった。また、プラセボ群の追加31例 (15.0%) が試験外で抗PD-1/PD-L1免疫療法を受け、実効クロスオーバー率は55.8%に達したにもかかわらず、ペムブロリズマブ群のOSベネフィットは持続的に観察された。

35サイクル完遂患者の転帰: ペムブロリズマブ群の410例中56例 (13.7%) が35サイクル (約2年間) のペムブロリズマブ治療を完遂した。これらの患者のORRは85.7% (48/56例) であり、4例がCR、44例がPR、8例がSDであった。データカットオフ時点で、53例 (94.6%) が生存しており、3例 (5.4%) が死亡していた。OS中央値は未到達であった。35サイクル完遂患者における免疫関連有害事象は21例 (37.5%) で発生し、グレード3-4の免疫関連有害事象は6例 (10.7%) であった。致死的な有害事象は認められなかった。

安全性プロファイル: 全ての原因によるグレード3-5の有害事象は、ペムブロリズマブ群で292例 (72.1%)、プラセボ群で135例 (66.8%) に発生した (Table 2)。最も頻繁に報告された有害事象は、悪心、貧血、疲労であった。治療関連有害事象による死亡は、ペムブロリズマブ群で7.2%、プラセボ群で6.9%であった。長期追跡期間においても新たな安全性シグナルは特定されず、急性腎障害の追加報告もなかった。免疫関連有害事象および注入反応は、ペムブロリズマブ群で110例 (27.2%)、プラセボ群で26例 (12.9%) に発生した。ペムブロリズマブ群で最も一般的な免疫関連有害事象は甲状腺機能低下症 (7.9%)、甲状腺機能亢進症 (4.9%)、および肺炎 (4.9%) であった。グレード3-5の免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で49例 (12.1%)、プラセボ群で9例 (4.5%) に発生した。

考察/結論

KEYNOTE-189試験のプロトコル規定最終解析により、ペムブロリズマブとペメトレキセドおよびプラチナ製剤の併用療法が、未治療転移性非扁平上皮NSCLC患者において、プラセボと化学療法の併用療法と比較して、長期にわたる臨床的に意義のある生存ベネフィットを示すことが確認された。OS中央値22.0ヶ月対10.6ヶ月 (HR 0.56、95% CI 0.46-0.69) という改善は、プラセボ群からの実効クロスオーバー率が55.8%に達したにもかかわらず維持されており、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法の真のベネフィットを強く示唆する。

先行研究との違い: 本研究の長期有効性データは、以前の中間解析および更新解析の結果を裏付け、さらに延長するものである Gandhi et al. NEnglJMed 2018Gadgeel et al. JClinOncol 2020。特に、プラセボ群からの高頻度なクロスオーバーにもかかわらずOSの有意な改善が維持された点は、他の免疫チェックポイント阻害剤併用化学療法試験と比較しても注目に値する。例えば、IMpower132試験ではアテゾリズマブ併用群でOSの非有意な改善が示されたに過ぎず、CheckMate-227試験の非扁平上皮NSCLCサブグループではOS HRが0.85であったことと対照的である。

新規性: 本研究で初めて、35サイクル (約2年間) のペムブロリズマブ治療を完遂した患者の長期アウトカムが詳細に報告された。この集団ではORRが85.7%と極めて高く、データカットオフ時点で94.6%の患者が生存していた。これは、長期治療の完遂が非常に良好な長期予後と関連することを示す新規の知見である。また、PD-L1発現レベルにかかわらずOSおよびPFSの改善が認められたことは、PD-L1 TPS <1%の患者においてもペムブロリズマブと化学療法の併用が有効であることを改めて示唆する。

臨床応用: 本試験の結果は、ペムブロリズマブとペメトレキセドおよびプラチナ製剤の併用療法が、未治療転移性非扁平上皮NSCLC患者に対する標準治療として確立されていることを強力に支持するものである。PD-L1発現レベルにかかわらず有効性が示されたことは、臨床現場での治療選択において重要な含意を持つ。特に、長期治療を完遂した患者における優れた奏効と生存率は、このレジメンが患者に持続的なベネフィットをもたらす可能性を示しており、治療継続の意義を強調する。

残された課題: 本研究の安全性プロファイルは管理可能であり、長期追跡においても新たな安全性シグナルは確認されなかったが、免疫関連有害事象の長期的な管理戦略については、今後の検討課題として残されている。また、プラセボ群からのクロスオーバーがOSに与える影響を完全に排除することは困難であり、真のOSベネフィットをより正確に評価するための統計的手法や、実臨床における長期的な費用対効果に関する研究も今後の方向性として重要である。

方法

本研究は、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験 (KEYNOTE-189、NCT02578680) として実施された。対象患者は、18歳以上、組織学的または細胞学的に確認された未治療のステージIV非扁平上皮NSCLC、EGFR/ALK遺伝子異常なし、ECOGパフォーマンスステータス0-1、RECIST v1.1に基づく測定可能病変を有し、PD-L1評価のための腫瘍検体を提供した。臨床的に安定した既治療脳転移患者および無症状の未治療脳転移患者 (直径1.5 cm以下) は適格とされた。患者は、活動性脳転移または癌性髄膜炎、過去2年間に全身治療を要する活動性自己免疫疾患、ステロイドを要する非感染性肺炎の既往または現病、試験治療初回投与前6ヶ月以内に肺への30 Gyを超える放射線治療、または全身性免疫抑制療法を受けている場合は除外された。

患者はペムブロリズマブ200 mg群 (n=410) またはプラセボ群 (n=206) に2:1で無作為に割り付けられた。両群とも3週ごとに最大35サイクル (約2年間) 投与された。全患者は最初の4サイクルでペメトレキセド500 mg/m²と、治験責任医師が選択したシスプラチン75 mg/m²またはカルボプラチンAUC 5 mg・min/mLを併用し、その後は病勢進行または許容できない毒性が生じるまでペメトレキセド維持療法を継続した。無作為化はPD-L1腫瘍細胞比率 (TPS; 1%以上 vs 1%未満)、プラチナ製剤の選択 (シスプラチン vs カルボプラチン)、および喫煙状況 (非喫煙者 vs 既喫煙者/現喫煙者) で層別化された。

プラセボ + ペメトレキセド + プラチナ群の患者は、盲検下独立中央判定によるRECIST v1.1に基づく病勢進行が確認された場合、安全性基準を満たし、新たな脳転移または進行性の脳転移がなく、割り付けられた化学療法以外の全身性抗がん治療を受けておらず、クロスオーバー治療初回投与前7日以内に緩和的放射線治療 (30 Gy以下) を完了していれば、ペムブロリズマブ単剤療法にクロスオーバーすることが可能であった。

主要評価項目はOSおよびPFSであり、RECIST v1.1に基づき盲検下独立中央判定により評価された。副次評価項目にはORR、奏効期間 (DOR)、および安全性プロファイルが含まれた。探索的評価項目には、PFS2 (無作為化から次治療での二次/それ以降の病勢進行またはあらゆる原因による死亡までの期間) および、プラセボ群からペムブロリズマブ単剤療法にクロスオーバーした患者におけるPFS (治験責任医師評価) およびOSが含まれた。有効性はITT集団で評価され、安全性は1回以上の治験薬投与を受けたas-treated集団で評価された。OS、PFS、PFS2はKaplan-Meier法を用いて推定され、治療効果の大きさ (HRおよび95% CI) は層別Cox比例ハザードモデルを用いて算出された。