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The Diversity of Gut Microbiome is Associated With Favorable Responses to Anti-Programmed Death 1 Immunotherapy in Chinese Patients With NSCLC

  • 著者: Jin Y, Dong H, Xia L, Yang Y, Zhu Y, Shen Y, Zheng H, Yao C, Wang Y, Lu S
  • Corresponding author: Shun Lu, MD, PhD (Shanghai Chest Hospital, Shanghai Jiao Tong University, Shanghai, China)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-04-23
  • Article種別: Original Article (前向き観察研究)
  • PMID: 31026576

背景

進行 NSCLC は予後不良の難治性疾患であり、がん関連死の主因である。免疫チェックポイント阻害薬 (ICI; immune checkpoint inhibitor) の登場が治療の転換点となり、PD-1/PD-L1 軸を標的とした nivolumab (Opdivo) は FDA (Food and Drug Administration) で 2015 年に NSCLC 二次治療として承認、中国 NMPA (National Medical Products Administration) では CheckMate-078 の第 III 相試験結果 (全生存期間中央値: nivolumab 12 か月 vs. docetaxel 9.6 か月) を根拠に 2018 年に承認された (Borghaei et al. NEnglJMed 2015)。しかし ICI から恩恵を受ける患者は進行 NSCLC 全体の約 20% に留まり、グレード 3〜4 の免疫関連有害事象が 10% に発生するなど、恩恵を受けられる集団の同定が喫緊の課題となっている。

現時点の標準的予測バイオマーカーとして PD-L1 発現量・腫瘍変異量 (TMB; tumor mutational burden) が活用されているが、PD-L1 低発現例においても奏効が観察されること、また喫煙関連突然変異量と ICI 応答性の関連は示唆されているものの単独バイオマーカーとしての精度に限界がある (Rizvi et al. Science 2015)。このため、独立した予測バイオマーカーの探索が継続して行われてきた。

ヒト腸内には 10^13 個以上の微生物が存在し、腸内細菌叢 (gut microbiome) が全身免疫応答を調節することが明らかにされてきた。短鎖脂肪酸や胆汁酸などの代謝産物が重要な免疫修飾因子として同定されており、腸内細菌叢の乱れ (dysbiosis) が肥満・炎症性腸疾患・がんなど多様な疾患と関連することが示されている。ICI 治療との関連では、メラノーマを対象とした前向き研究で Gopalakrishnan らが腸内細菌多様性の高い患者で抗 PD-1 治療の奏効率が有意に改善することを報告し (Science 2018)、続いて Routy らは NSCLC・腎がんを含む上皮性腫瘍コホートで Akkermansia muciniphila の高豊富化が ICI 奏効と関連することを示した (Science 2018)。さらに無菌マウスへの糞便移植実験から腸内細菌が抗 PD-1 感受性を因果的に規定することが示唆されている (Topalian et al. NEnglJMed 2012)。

しかしながら、これら先行研究はほぼ全て欧米人集団を対象としており、腸内細菌組成は人種・地理的背景・食生活・宿主遺伝的因子によって著しく異なることが確立されている。中国人 NSCLC 患者においてベースライン腸内細菌多様性・組成が抗 PD-1 治療の有効性を予測するかどうかは gap in knowledge として手薄であり、東アジア集団に特有の腸内細菌プロファイルを明らかにする独立した検討が不足していた。

目的

CheckMate 078 (NCT02613507) および CheckMate 870 (NCT03195491) に登録された中国人進行 NSCLC 患者を対象として、nivolumab 開始前のベースライン腸内細菌多様性・菌種組成と無増悪生存期間 (PFS; progression-free survival) および臨床奏効の関連を前向き観察研究として評価する。あわせて末梢血免疫シグネチャーとの相関解析を通じて、腸内細菌が抗 PD-1 応答を媒介する免疫学的メカニズムを探索する。

結果

ベースライン腸内細菌多様性と奏効・PFSの関連:ベースライン糞便サンプルが採取可能だった 25 例 (R: n=13、NR: n=12) において腸内細菌α多様性を比較した (Fig. 2A)。Shannon 指数は R 群で NR 群より有意に高く (p=0.008)、Inverse Simpson 指数も同様に R 群で高値だった (p=0.0257)。治療開始後 T1 時点においても Shannon 指数の有意差が維持された (p=0.0301)。β多様性の PCoA 解析でも、ベースライン時の R 群と NR 群は明確な 2 クラスターに分離され (p=0.001)、成分 1 と成分 2 がそれぞれ分散の 10.82% と 7.69% を説明した (Fig. 2D)。

ROC 曲線解析で算出した Shannon 指数カットオフ 2.31 を用いて 37 例全例を高多様性群・低多様性群に二分し、Kaplan-Meier 法で PFS を比較すると、高多様性群 mPFS 209日 vs 低多様性群 52日 (log-rank p=0.005、Fig. 2C) と両群間で有意差を認め、高多様性群で PFS が約 4.0 倍延長した。腸内細菌多様性の高さが抗 PD-1 治療 PFS と強く関連することが示された。

Shannon指数の多変量独立予測因子としての位置づけ (Table 2):37 例全例を対象とした単変量 Cox 比例ハザード解析では、Shannon 指数 (低 vs. 高) の PFS ハザード比は HR 4.2 (95% CI 1.42-12.3、p=0.005) であった。喫煙状況も単変量で有意差を示し (p=0.016)、mPFS は喫煙者 6.0 か月 (95% CI 1.8-10.3) vs. 非喫煙者 1.5 か月 (95% CI 1.2-1.8) であった。放射線療法既往も単変量で境界域有意差を認めた (p=0.038)。

前向き逐次選択法による多変量 Cox 比例ハザードモデルでは、Shannon 指数が PFS の独立予測因子として確認された (HR 4.2、95% CI 1.42-12.3、p=0.009)。喫煙状況も独立予測因子として残存し (HR 0.30、95% CI 0.11-0.86、p=0.025)、喫煙者で奏効が良好な方向性を示した。年齢・性別・組織型・病期・EGFR 変異・LDH 値・抗生物質使用はいずれも独立予測因子にならなかった (Table 2)。

奏効群・非奏効群における腸内菌種組成の相違 (Fig. 3):ベースラインで属レベルの菌叢組成を R 群 (n=13) と NR 群 (n=12) で比較したところ、7 菌属が両群間で有意に異なっていた (p<0.05 for all genera、Fig. 3A)。R 群で豊富だった菌属は Bifidobacterium longum (p=0.0303)、Prevotella copri (p=0.0093)、Alistipes putredinis (p=0.0437)、Lachnobacterium、Lachnospiraceae、および Shigella であった一方、NR 群では Ruminococcus_unclassified が有意に多かった (p=0.0135、Fig. 3B)。Bacteroidetes・Firmicutes・Proteobacteria・Actinobacteria の 4 主要門レベルでは R/NR 群間に統計的有意差は認めなかった。

Bifidobacterium longum と Prevotella copri はベースライン時点のみならず T1 時点においても R 群での高豊富化が維持されており (Bifidobacterium longum: T1 p=0.0397、Prevotella copri: T1 p=0.0426)、両菌種が治療を通じて持続的に奏効と関連していることが示された (Fig. 3C)。

治療中の腸内細菌叢の安定性 (Fig. 4):時系列糞便サンプリングにより、nivolumab 治療期間中 (T1〜T8) の Shannon 多様性指数の推移を解析すると、Kruskal-Wallis 検定で p>0.999 と高い安定性を示した (Fig. 4A 左)。個別対応サンプルの Wilcoxon matched-pairs signed rank 検定でも、ベースライン対 T1 (p>0.05)、ベースライン対疾患進行時点 (p>0.05) いずれも有意差を認めず、10 例の縦断サンプル PCoA 解析では同一患者の異なる時点サンプルが密にクラスタリングされた (Fig. 4C)。門・属レベルの組成も治療前後で統計的に安定しており (Fig. 4D、4E)、nivolumab 治療が腸内細菌叢の多様性・組成を大きく変化させないことが明らかになった。

腸内細菌多様性と末梢免疫シグネチャーの相関 (Fig. 5):ベースライン PBMC が入手可能な 20 例でフローサイトメトリー解析を実施した。Shannon 指数と末梢血免疫パラメータの Spearman 相関分析では、Shannon 指数が複数の CD8+ 記憶 T 細胞サブセットおよびナチュラルキラー (NK; natural killer) 細胞シグネチャーと正相関した (Fig. 5A-C)。具体的には、グランザイム B (GZMB) 陽性 CD8+ 中央記憶 T 細胞 (Tcm, T central memory; r=0.5417、n=17、p=0.0267)、GZMB+CD8+ エフェクター記憶 T 細胞 (Tem, T effector memory; r=0.5074、n=17、p=0.0397)、Ki67+CD8+ 記憶 T 細胞 (r=0.5751、p=0.0174)、ICOS+CD8+ 記憶 T 細胞 (r=0.4699、n=20、p=0.0291)、TIM-3+CD8+ 記憶 T 細胞 (r=0.692) と有意な正相関を認めた。NK 細胞では総 NK 細胞比率および PD-1+GZMB+NK 細胞比率もShannon 指数と正相関した (Fig. 5C)。

高多様性群と低多様性群の直接比較では、GZMB+CD8+Tm・Ki67+CD8+Tm・CD8+Tcm の割合が高多様性群で有意に高く (Fig. 5D)、腸内細菌多様性と記憶 T 細胞の活性化・増殖能の直接的な連関が示された。

なお、抗生物質 (ATB; antibiotic) 使用は 37 例中 11 例 (29.7%) に認められたが、ATB 使用の有無で R/NR 比は変わらず (p=0.713)、mPFS も ATB 使用群 126 日 vs. ATB 非使用群 117.9 日 (p>0.05) と有意差なく、ATB が本研究の結果に与えた影響は限定的であった (Table 1)。

考察/結論

本前向き観察研究は中国人進行 NSCLC 患者において、ベースライン腸内細菌多様性 (Shannon 指数≥2.31) が nivolumab による抗 PD-1 治療の PFS 独立予測因子 (HR 4.2、95% CI 1.42-12.3、p=0.009) であることを示した。既報のメラノーマ・上皮性腫瘍コホートとは異なる人種・食文化背景の中国人集団においても「腸内細菌多様性の高さが ICI 奏効と関連する」という共通原理が再現されたことは、多様性が人種・地理を超えた普遍的な免疫賦活因子として機能することを対照的に示している。

本研究で新規に明らかにされた発見として、GZMB+CD8+ 記憶 T 細胞 (r=0.5417) および Ki67+CD8+ 記憶 T 細胞 (r=0.5751) と Shannon 多様性指数の正相関が挙げられる。これまでの研究では腸内細菌と腫瘍微小環境の局所免疫の関連が焦点とされてきたが、本研究は循環末梢血の CD8+ 記憶 T 細胞プールおよびその増殖能が腸内細菌多様性を反映するという新規のメカニズム仮説を提示する。GZMB を産生する CD8+Tcm・Tem サブセットは抗原特異的な細胞傷害活性を持つ長命な記憶細胞であり、抗 PD-1 治療後に増殖して腫瘍に浸潤する際の周辺貯留プール (リザーバー) として機能しうる。Ki67+CD8+Tm の増加は腸内細菌叢が T 細胞増殖能を直接促進する可能性を示しており、本研究で初めて中国人 NSCLC コホートで確認された。さらに TIM-3・ICOS など共刺激・疲弊マーカーとの相関も見出されており、腸内細菌が末梢血 T 細胞の機能状態を多角的に制御することが示唆される。

臨床応用の観点では、Shannon 多様性指数は腫瘍組織生検なしに糞便検体から非侵襲的に測定可能なバイオマーカーであることが重要な臨床的意義を持つ。PD-L1 発現や TMB といった既存バイオマーカーと組み合わせることで ICI 奏効予測精度の向上が期待される。さらに、プロバイオティクス投与・糞便微生物移植 (FMT; fecal microbiota transplantation) によって腸内細菌多様性を治療前に改善することで ICI 治療効果を増強できるかという臨床現場での重要な研究方向性を本研究は提示する。Tanoue ら (Nature 2019) が健康ドナー由来の 11 菌株を用いて IFN-γ産生 CD8+T 細胞誘導による抗腫瘍免疫を示したことと合わせて、カスタマイズされたマイクロバイオームが NSCLC に対する ICI 治療の新規戦略として期待される。

残された課題として、本研究の主要な limitation は n=37 という小規模単施設研究である点であり、多変量解析の精度・独立検証コホートの不在が挙げられる。また、患者全例が nivolumab 前に化学療法を受けており、化学療法の腸内細菌叢への影響が交絡因子となりうるが、最終化学療法から nivolumab 開始までの間隔は R/NR 間で有意差なく、また間隔と多様性の相関も認めなかった。特定菌種 (Bifidobacterium longum・Prevotella copri) と免疫応答の因果関係を検証するためのマウス腸内細菌移植実験・代謝産物解析 (短鎖脂肪酸等) など、さらなる機序研究が今後の検討課題として不可欠である。大規模多施設前向き試験による腸内細菌多様性指数の予測バイオマーカーとしての検証が今後の研究において必要である。

方法

研究デザイン・対象: 前向き観察研究。上海胸部病院 (Shanghai Jiao Tong University) の CheckMate 078 (NCT02613507) および CheckMate 870 (NCT03195491) の 2 臨床試験に登録された進行 NSCLC 患者 (IIIB/IV 期・前治療 1〜2 ライン後・RECIST 1.1 による measurable disease) を対象とし、最終解析対象は n=37 (奏効群 R: n=23、非奏効群 NR: n=14)。

治療・評価: nivolumab 3 mg/kg を 2 週間ごとに静脈内投与し、6 週間ごとに RECIST 1.1 で評価した (4 週間以上の確認要件)。部分奏効 (PR; partial response) または病勢安定 (SD; stable disease) を奏効群 (R)、初回評価時点での疾患進行 (PD; progressive disease) を非奏効群 (NR) と定義した。

腸内細菌叢解析 (16S rRNA 遺伝子シーケンシング): 治療開始時 (ベースライン)・nivolumab 投与ごと (2 週毎)・臨床評価時・疾患進行時に糞便サンプルを滅菌容器に採取し、4°C 保存・24 時間以内に -80°C で凍結保存した。QIAamp Fast DNA Stool Mini Kit (Qiagen) で DNA 抽出後、16S rRNA 遺伝子 V3-V4 可変領域 (variable regions 3 and 4) を特異的プライマー MI-16S-F (forward primer) / MI-16S-R (reverse primer) で増幅し、Illumina MiSeq (MiSeq Reagent Kits v3、600-cycle) でペアエンドシーケンシングを実施した。生データは QIIME (Quantitative Insights Into Microbial Ecology) で解析し、OTU (operational taxonomic unit) カウントを門・綱・目・科・属・種の分類レベルで集計した。

α多様性指標として Shannon 指数および Inverse Simpson 指数を算出し、β多様性は unweighted UniFrac 距離による主座標分析 (PCoA; principal coordinate analysis) で可視化した。Shannon 指数の最適カットオフ値は ROC (receiver operating characteristic) 曲線解析で決定した (カットオフ 2.31)。

末梢血免疫表現型解析: ベースライン PBMC (peripheral blood mononuclear cell) を密度勾配遠心分離 (Lymphoprep 試薬) で分離し、多色フローサイトメトリーで評価した。使用抗体: BV510-CD3、PECY7-CD8、FITC-CD45RO、APC-H7-CD27、BV650-ICOS、BV786-CD25、PE-CF594-FOXP3、PE-GZMB (BD Biosciences)。データ解析は FlowJo v10 (Tree Star Inc.) で実施した。蛍光色素略称: BV = Brilliant Violet, PE = Phycoerythrin, FITC = Fluorescein isothiocyanate, APC = Allophycocyanin。

統計解析: 群間比較は Mann-Whitney 検定 (2 群) または Kruskal-Wallis 検定 (多群)、PFS は Kaplan-Meier 法 + log-rank 検定、独立予測因子の同定は Cox 比例ハザードモデル (前向き逐次選択法)、多様性指数と免疫パラメータの相関は Spearman 相関係数で評価した。データは mean ± SEM (standard error of the mean) または SD (standard deviation) で表示し、有意水準は p<0.05 (両側) とした。