- 著者: Paz-Ares L, Vicente D, Tafreshi A, Robinson A, Soto Parra H, Mazières J, Hermes B, Cicin I, Medgyasszay B, Rodríguez-Cid J, Okamoto I, Lee SS, Ramlau R, Vladimirov V, Cheng Y, Deng X, Zhang Y, Bas T, Piperdi B, Halmos B
- Corresponding author: Luis Paz-Ares, MD, PhD (Hospital Universitario 12 de Octubre, Madrid, Spain)
- 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
- 発行年: 2020
- Epub日: 2020-06-26
- Article種別: Original Article
- PMID: 32599071
背景
転移性扁平上皮非小細胞肺がん (NSCLC) は、EGFR/ALK/ROS1などのドライバー変異が少ないため、分子標的薬の恩恵を受けにくい疾患である。従来の化学療法単独では、5年生存率が15%以下と極めて予後不良であり、新たな治療戦略の確立が喫緊の課題であった。非扁平上皮NSCLCにおいては、既にPaz-Ares et al. NEnglJMed 2018でペムブロリズマブと化学療法の併用による有効性が示されていたが、扁平上皮NSCLCにおける一次治療の標準化は未確立であった。
ペムブロリズマブは、T細胞の免疫応答を促進する抗PD-1モノクローナル抗体であり、PD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害する。一次治療において、ペムブロリズマブ単剤療法は、EGFR変異やALK転座のない進行/転移性NSCLC患者で、PD-L1腫瘍細胞割合スコア (TPS) が1%以上の患者において全生存期間 (OS) を改善することが報告されている Mok et al。特にPD-L1 TPSが50%以上の患者では、より大きな治療効果が認められている Reck et al。また、化学療法剤は、直接的および間接的な免疫応答の刺激を通じて免疫学的効果を媒介することが報告されており、プラチナ製剤ベースの化学療法による免疫原性細胞死の誘導、PD-L1およびPD-L2の発現抑制、骨髄由来抑制細胞数の減少、樹状細胞による抗原提示の強化、制御性T細胞活性の低下などにより、免疫療法と化学療法の併用が患者の転帰を改善する可能性が示唆されている。しかし、これらのメカニズムが扁平上皮NSCLCにおいて、PD-L1発現状況に関わらず一貫した臨床的利益をもたらすかについては、依然として未解明な部分が残されていた。特に、プラセボ群からのクロスオーバーがOS評価に与える影響を調整した解析は不足しており、一次治療における真の治療効果を正確に評価するための詳細なデータが求められていた。
KEYNOTE-407試験は、転移性扁平上皮NSCLCの未治療患者を対象に、ペムブロリズマブ (抗PD-1モノクローナル抗体200mgを3週間ごと) とカルボプラチンおよびパクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法を、プラセボと化学療法の併用療法と比較する第3相二重盲検ランダム化試験として設計された Paz-Ares et al. NEnglJMed 2018。第2中間解析 (2018年、追跡期間中央値7.8ヶ月) では、OSのハザード比 (HR) が0.64 (95% CI 0.49-0.85, p<0.001)、無増悪生存期間 (PFS) のHRが0.56 (95% CI 0.45-0.70, p<0.001) と、統計学的に有意な改善が示された。この結果を受け、米国食品医薬品局 (FDA) は2018年10月に、PD-L1発現状況に関わらず、転移性扁平上皮NSCLCの一次治療としてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を承認した。本論文は、事前規定最終解析 (データカットオフ2019年9月20日、追跡期間中央値14.3ヶ月) として、長期的なOS、次治療までの無増悪生存期間 (PFS-2)、PD-L1発現状況別の有効性、およびクロスオーバー補正解析の結果を報告するものである。これにより、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法の長期的な有効性と安全性プロファイルをさらに詳細に評価し、臨床的意義を明確にすることが目的である。
目的
本研究は、KEYNOTE-407試験の事前規定最終解析として、転移性扁平上皮NSCLCの一次治療におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法(ペムブロリズマブ群)とプラセボと化学療法の併用療法(プラセボ群)の有効性および安全性を最終的に評価することを目的とする。具体的には、以下の3つの主要な目的を掲げた。
- 主要評価項目および副次評価項目の最終確認: 全生存期間 (OS)、無増悪生存期間 (PFS)、客観的奏効率 (ORR)、奏効期間 (DOR)、および次治療までの無増悪生存期間 (PFS-2: 無作為化から次治療での客観的腫瘍進行または死亡までの期間) について、ペムブロリズマブ群のプラセボ群に対する優位性を最終的に確認する。
- PD-L1発現状況別の有効性評価: PD-L1腫瘍細胞割合スコア (TPS) のサブグループ(PD-L1 TPS <1%、PD-L1 TPS ≥1%、PD-L1 TPS 1-49%、PD-L1 TPS ≥50%)におけるOS、PFS、ORR、PFS-2の治療効果を評価し、PD-L1発現状況が治療効果に与える影響を詳細に解析する。
- クロスオーバー補正解析による真の治療差の推定: プラセボ群からペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーがOSの評価に与える影響を統計的に補正し、一次治療におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法の真の生存利益を推定する。
これらの解析を通じて、転移性扁平上皮NSCLC患者に対するペムブロリズマブと化学療法の併用療法の長期的な臨床的意義と、PD-L1発現状況に関わらないその役割を明確にすることを本研究の目的とする。
結果
患者背景と治療継続状況: 2016年8月19日から2017年12月28日までに、17カ国137施設で779例がスクリーニングされ、559例がペムブロリズマブ群 (n=278) またはプラセボ群 (n=281) に無作為に割り付けられた。両治療群間でベースラインの患者背景および疾患特性はバランスがとれていた (Table 1)。全登録患者559例中、353例 (63.1%) がPD-L1 TPS ≥1%であり、336例 (60.1%) でパクリタキセルがタキサンとして選択された。データカットオフ時点 (2019年5月9日) での無作為化から死亡またはデータカットオフまでの追跡期間中央値は14.3ヶ月 (範囲0.1-31.3ヶ月) であった。ペムブロリズマブ群の40例 (14.4%) とプラセボ群の5例 (1.8%) が、データカットオフ時点で割り付けられた治験薬を継続していた。後続治療は、ペムブロリズマブ群の89例 (32.0%) とプラセボ群の167例 (59.4%) で実施された。プラセボ群で治験薬を中止した273例中、114例がBICRによる病勢進行後にオンスタディでペムブロリズマブ単剤療法へクロスオーバーした。さらに、プラセボ群の29例が治験外で抗PD-1/PD-L1療法 (ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、ニボルマブ) を後続治療として受けた。これにより、プラセボ群で治験薬を中止した患者の合計50.5% (273例中138例) が、後続治療としてチェックポイント阻害薬を投与された。プラセボ群の83例は、死亡前にペムブロリズマブへのクロスオーバーまたは他の抗癌治療を受けなかった。ペムブロリズマブ群では、23例が2年間の治療を完了し、21例が病勢進行後も治験薬の投与を継続した。
全生存期間 (OS) の最終解析: データカットオフ時点で、ITT集団において365例の死亡が発生した。これは、前回の主要解析からさらに160例の死亡が両治療群で発生したことを意味する。ペムブロリズマブ群では、プラセボ群と比較してOSの臨床的に意義のある改善が継続して認められた。OS中央値は、ペムブロリズマブ群で17.1ヶ月 (95% CI 14.4-19.9) であったのに対し、プラセボ群では11.6ヶ月 (95% CI 10.1-13.7) であり、HRは0.71 (95% CI 0.58-0.88) であった (Figure 1A)。OS率は、12ヶ月時点でペムブロリズマブ群64.7% vs プラセボ群49.6%、18ヶ月時点で48.0% vs 36.5%、24ヶ月時点で37.5% vs 30.6%であった。PD-L1 TPS別のOSのHRは、PD-L1 TPS ≥1%の患者で0.67 (95% CI 0.51-0.87) (Figure 1B)、PD-L1 TPS <1%の患者で0.79 (95% CI 0.56-1.11) (Figure 1C) であった。PD-L1陽性腫瘍患者のうち、PD-L1 TPS ≥50%の患者ではOSのHRが0.79 (95% CI 0.52-1.21)、PD-L1 TPS 1%〜49%の患者では0.59 (95% CI 0.42-0.84) であった。
無増悪生存期間 (PFS) の一貫した改善: データカットオフ時点で、PFSイベントはペムブロリズマブ群の217例 (78.1%) とプラセボ群の252例 (89.7%) で発生した。PFS中央値は、ペムブロリズマブ群で8.0ヶ月 (95% CI 6.3-8.4) であったのに対し、プラセボ群では5.1ヶ月 (95% CI 4.3-6.0) であり、HRは0.57 (95% CI 0.47-0.69) であった (Figure 2A)。PFS率は、12ヶ月時点でペムブロリズマブ群35.8% vs プラセボ群17.7%、24ヶ月時点で18.6% vs 6.3%であった。PD-L1 TPS別のPFSのHRは、PD-L1 TPS ≥1%の患者で0.50 (95% CI 0.39-0.63) (Figure 2B)、PD-L1 TPS <1%の患者で0.67 (95% CI 0.49-0.91) (Figure 2C) であった。PD-L1陰性患者においても有意なPFSの改善が確認された。
客観的奏効率 (ORR) と奏効期間 (DOR): BICR評価によるRECIST 1.1に基づくと、客観的奏効を達成した患者は、ペムブロリズマブ群で174例 (62.6%, 95% CI 56.6-68.3%) であったのに対し、プラセボ群では108例 (38.4%, 95% CI 32.7-44.4%) であった (Table 2)。主要解析と比較して、ペムブロリズマブ群ではさらに13例の患者で確認された客観的奏効が認められたが、プラセボ群では追加の奏効は発生しなかった。奏効患者におけるDOR中央値は、ペムブロリズマブ群で8.8ヶ月 (範囲1.3+〜28.4+)、プラセボ群で4.9ヶ月 (範囲1.3+〜28.3+) であった (Table 2)。ORRの改善は、全てのPD-L1 TPSサブグループで認められた。ペムブロリズマブ群で2年間の治療を完了した23例中、解析時点で病勢進行が認められたのは4例であった。
次治療までの無増悪生存期間 (PFS-2) の延長: ペムブロリズマブ群の患者は、プラセボ群の患者と比較してPFS-2 (次治療までの無増悪生存期間) が有意に長かった。PFS-2中央値は、ペムブロリズマブ群で13.8ヶ月 (95% CI 12.2-15.9) であったのに対し、プラセボ群では9.1ヶ月 (95% CI 8.2-10.2) であり、HRは0.59 (95% CI 0.49-0.72) であった (Figure 2D)。PFS-2率は、12ヶ月時点でペムブロリズマブ群56.5% vs プラセボ群36.2%、24ヶ月時点で32.3% vs 19.0%であった。PFS-2の利益は、PD-L1発現状況に関わらずペムブロリズマブ群で認められた (Figure 2E, 2F)。
クロスオーバー補正OS解析: オンスタディでのクロスオーバーによって導入されるバイアスの程度を評価するため、二段階モデルを用いたOSの追加解析が実施された。プラセボ群の281例中、114例がRECIST 1.1に基づく病勢進行後にオンスタディでクロスオーバーし、さらに73例が病勢進行を経験したがオンスタディでクロスオーバーしなかった。94例は病勢進行を経験せず、クロスオーバーの対象とならなかった。推定された加速因子は2.904 (95% CI 2.143-3.936) であった。プラセボ群の調整後OS中央値は9.1ヶ月 (95% CI 8.6-10.3) であったのに対し、未調整解析では11.6ヶ月 (95% CI 10.1-13.7) であった。二段階モデルによる調整後OSのHRは0.59 (95% CI 0.42-0.81) であった (Figure 3A)。クロスオーバー効果の大きさは、PD-L1陽性腫瘍 (TPS ≥1%) の患者で大きく、PD-L1陰性腫瘍 (TPS <1%) の患者では小さかった。PD-L1陰性腫瘍患者の加速因子は1.872 (95% CI 1.204-2.911) であったのに対し、PD-L1陽性腫瘍患者では3.838 (95% CI 2.531-5.82) であった。その結果、プラセボ群のOS中央値の調整幅は、PD-L1陽性腫瘍患者で大きく (未調整12.8ヶ月 vs 調整後8.8ヶ月, 95% CI 7.6-10.5) (Figure 3B)、PD-L1陰性腫瘍患者では小さかった (未調整11.0ヶ月 vs 調整後9.5ヶ月, 95% CI 8.6-13.0) (Figure 3C)。調整後OSのHRは、PD-L1陽性腫瘍患者で0.52 (95% CI 0.34-0.80)、PD-L1陰性腫瘍患者で0.70 (95% CI 0.42-1.17) であった。
安全性プロファイル: 本解析時点での治験薬 (プラセボを含む) への曝露期間中央値は、ペムブロリズマブ群で7.1ヶ月 (範囲0.03-26.3ヶ月)、プラセボ群で4.6ヶ月 (範囲0.03-24.1ヶ月) であった。いずれかのAEを経験した患者は、ペムブロリズマブ群で274例 (98.6%)、プラセボ群で275例 (98.2%) であった。前回の解析と同様に、両治療群で最も頻繁に発生したAEは、貧血、脱毛症、好中球減少症、悪心であった (Table 3)。いずれかの治療中止に至ったAEは、ペムブロリズマブ群で76例 (27.3%) とプラセボ群の37例 (13.2%) よりも高頻度であった。全ての治療中止に至ったAEは、それぞれ45例 (16.2%) と20例 (7.1%) であった。全原因によるグレード3-5のAEは、ペムブロリズマブ群で206例 (74.1%)、プラセボ群で195例 (69.6%) で発生した。治療関連のグレード3-5のAEは、ペムブロリズマブ群で157例 (56.5%)、プラセボ群で156例 (55.7%) で発生した。治療関連のAEによる死亡は、ペムブロリズマブ群で12例 (4.3%) であり、敗血症 (n=3)、死因不明 (n=2)、心停止、心不全、肝不全、壊死性筋膜炎、肺臓炎、肺出血、呼吸不全 (各n=1) が含まれた。プラセボ群では、治療関連のAEによる死亡は5例 (1.8%) であり、敗血症性ショック (n=2)、肺炎、急性腎障害、肺出血 (各n=1) が含まれた。免疫関連AEおよび輸注反応は、ペムブロリズマブ群で98例 (35.3%) とプラセボ群の25例 (8.9%) よりも高頻度で発生した (Table 3)。免疫関連AEによる追加の死亡は、前回の解析以降は認められなかった。ほとんどの免疫関連AEおよび輸注反応はグレード1/2の重症度であったが、グレード3-5の免疫関連AEおよび輸注反応は、ペムブロリズマブ群で37例 (13.3%)、プラセボ群で9例 (3.2%) で発生した。ペムブロリズマブ群で最も頻繁に発生した免疫関連AEは、甲状腺機能低下症 (n=34, 12.2%)、肺臓炎 (n=23, 8.3%)、甲状腺機能亢進症 (n=19, 6.8%) であった。輸注反応は15例 (5.4%) で発生した。
考察/結論
最終解析が示す長期生存利益の意義: KEYNOTE-407試験の事前規定最終解析は、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法が、転移性扁平上皮NSCLCの一次治療において、プラセボと化学療法の併用療法と比較して、持続的な臨床的利益をもたらすことを最終的に確認した。OS中央値はペムブロリズマブ群で17.1ヶ月 (95% CI 14.4-19.9) であったのに対し、プラセボ群では11.6ヶ月 (95% CI 10.1-13.7) であり、HRは0.71 (95% CI 0.58-0.88) であった。前回の主要解析 (追跡期間中央値7.8ヶ月) からさらに16ヶ月の追跡期間を経てもOSの利益が維持され、2年OS率がペムブロリズマブ群で37.5% vs プラセボ群で30.6%という明確な差が維持された点は、一部の患者が長期生存を達成していることを強く示唆する。この結果は、プラチナ製剤ベースの化学療法を受けた扁平上皮NSCLC患者の歴史的データと比較しても大幅な改善であり、例えば、CA031試験におけるカルボプラチン-nab-パクリタキセル群のOS中央値10.7ヶ月や、SQUIRE試験におけるゲムシタビン-シスプラチン群のOS中央値9.9ヶ月と比較して優位性を示している。
PD-L1非依存的な利益の意義: 本研究の特に重要な知見は、PD-L1 TPS <1%の患者においてもPFSのHRが0.67 (95% CI 0.49-0.91) と有意な改善が示されたことである。PD-L1発現は、ペムブロリズマブ単剤療法の有効性予測因子として確立されており、Reck et al. NEnglJMed 2016やKEYNOTE-042試験ではPD-L1陽性患者でのOS改善が報告されている。しかし、化学療法との組み合わせでは、PD-L1陰性患者でも一貫した有効性が認められ、扁平上皮NSCLCにおいてはPD-L1発現状況に関わらず化学免疫療法を一次治療として適用する強力な根拠となる。この結果は、非扁平上皮NSCLCを対象としたKEYNOTE-189試験の結果とも整合する。
クロスオーバーとPFS-2の含意: プラセボ群の患者の約半数 (50.5%) が後続治療としてPD-1/PD-L1阻害薬を受けたにもかかわらず、OSのHR 0.71 (95% CI 0.58-0.88) という利益が維持されたことは注目に値する。さらに、クロスオーバー補正解析後のOSのHRが0.59 (95% CI 0.42-0.81) であったことは、一次治療におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法の真の生存利益が、観察された値よりもさらに大きいことを示唆する。これは、ペムブロリズマブを二次治療まで遅らせることが患者にとって機会損失となる可能性があり、一次治療でペムブロリズマブと化学療法の併用療法を開始することの優位性を強く支持する。PFS-2のHRが0.59 (95% CI 0.49-0.72) であった結果も、一次治療でのペムブロリズマブの優位性が二次治療後も持続することを示している。実臨床では、進行NSCLC患者の50%未満しか二次治療を受けないことが報告されており、治療を遅らせることで多くの患者がペムブロリズマブの恩恵を受ける機会を失う可能性がある。
先行研究との違いと新規性: IMpower131試験 (アテゾリズマブとカルボプラチンおよびnab-パクリタキセルの併用療法) ではPFSの改善は認められたものの、OSの改善には至らなかった (HR 0.88, 95% CI 0.73-1.05)。また、CheckMate 227 Part 2試験 (ニボルマブと化学療法の併用療法) では、扁平上皮サブグループのOSのHRは0.69 (95% CI 0.50-0.97) であったが、全体では有意差は認められなかった (HR 0.86, 95% CI 0.69-1.08)。これらの試験結果と異なり、KEYNOTE-407試験は、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法が扁平上皮NSCLCにおいて、PD-L1発現状況に関わらずOS、PFS、ORR、DOR、およびPFS-2の全てにおいて持続的な臨床的利益をもたらすことを新規に確認した。特に、PD-L1陰性患者におけるPFSの有意な改善は、これまでの報告では必ずしも明確ではなかった知見であり、本研究で初めて包括的に示された。
臨床応用と残された課題: 本知見は、転移性扁平上皮NSCLCの一次治療において、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法が、PD-L1発現に関わらず標準治療として確立されるべきであることを強く支持する。臨床的意義として、患者の長期生存の可能性を高め、後続治療の選択肢を広げることが挙げられる。特に、実臨床における二次治療へのアクセスが限られる状況を考慮すると、一次治療での強力な治療介入は患者の転帰に大きく寄与する。安全性プロファイルは既報と一貫しており、適切な管理下で忍容可能である。 残された課題としては、免疫関連有害事象 (AE) の個別化された管理戦略のさらなる最適化、および長期的な治療効果の予測バイオマーカーの特定が挙げられる。また、本試験ではタキサン系薬剤としてパクリタキセルとnab-パクリタキセルが選択可能であったが、それぞれの薬剤がペムブロリズマブとの併用において異なる効果や安全性プロファイルを示す可能性については、今後の検討が必要である。Limitationとして、プラセボ群からのクロスオーバーがOSの真の治療効果を過小評価している可能性があり、二段階モデルによる補正解析はその影響を軽減する試みであったが、完全に排除することはできない点に留意する必要がある。
方法
試験デザインと参加者: KEYNOTE-407 (ClinicalTrials.gov, NCT02775435) は、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の第3相臨床試験であり、転移性扁平上皮NSCLCの未治療患者を対象に、ペムブロリズマブとカルボプラチンおよびパクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法の安全性と有効性を評価した。試験は2016年8月19日から2017年12月28日まで、17カ国137施設で実施され、合計779例がスクリーニングされた。適格な患者559例が、ペムブロリズマブ群 (n=278) またはプラセボ群 (n=281) に1:1で無作為に割り付けられた。
対象患者: 適格患者は、18歳以上で、組織学的または細胞学的に確認されたStage IV扁平上皮NSCLCと診断され、局所施設担当医/放射線科医の評価によるRECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) バージョン1.1に基づく測定可能病変を有し、転移性NSCLCに対する全身治療歴がなく、PD-L1発現状況評価のための腫瘍組織を提供可能であり、余命が少なくとも3ヶ月、ECOG Performance Status (PS) が0または1、および適切な臓器機能を有していた。除外基準には、非扁平上皮NSCLC、転移性疾患に対する以前の細胞傷害性化学療法、治療前3週間以内の主要外科手術、治療前6ヶ月以内に30Gyを超える肺への放射線治療または治療前7日以内の緩和的放射線治療の完了、その他の抗腫瘍療法、悪性腫瘍の既往歴、活動性中枢神経系転移または癌性髄膜炎、グレード2以上の末梢神経障害、過去2年以内に全身治療を要する活動性自己免疫疾患、長期全身性ステロイド使用、他の抗PD-1、PD-L1、またはPD-L2薬による治療歴、間質性肺疾患またはステロイド治療を要する肺炎の既往歴が含まれた。
治療レジメン: 患者は、カルボプラチン (AUC 6 mg/mL/min) と、治験責任医師が選択したパクリタキセル (200 mg/m²、各サイクル1日目) またはnab-パクリタキセル (100 mg/m²、各サイクル1、8、15日目) に加え、ペムブロリズマブ200mgまたは生理食塩水プラセボを3週間ごとに1日目に静脈内投与された。最初の4サイクル後、患者はペムブロリズマブまたはプラセボを3週間ごとに継続し、最大35サイクル(約2年間)または病勢進行、同意撤回、許容できない毒性、治験責任医師の判断による中止のいずれかが発生するまで治療が継続された。プラセボ群の患者は、盲検下独立中央判定 (BICR) による病勢進行が確認された場合、プロトコル規定の適格基準を満たせば、ペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーが可能であった。第2中間解析で陽性結果が得られた後、プラセボを継続中の患者は、確認された病勢進行時にオープンラベルでペムブロリズマブ単剤療法へクロスオーバーすることが許可された。
層別化因子: 無作為化は、タキサン選択 (パクリタキセル vs nab-パクリタキセル)、地域 (東アジア vs その他の地域)、およびPD-L1 TPS (≥1% vs <1%) によって層別化された。PD-L1評価不能な患者は、PD-L1 TPS <1%のグループに含められた。
評価項目: 主要評価項目はOSとPFSであった。PFSはBICR評価によるEisenhauer et al. EurJCancer 2009に基づいた。副次評価項目はORR、DOR、および安全性であった。探索的評価項目として、PFS-2 (無作為化から次治療での客観的腫瘍進行または死亡までの期間) が設定された。安全性評価は、治験薬の初回投与から最終投与後30日まで、重篤な有害事象 (SAE) は治療中止後90日まで記録された。有害事象 (AE) は、Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) バージョン4.03を用いてグレード分類された。
統計解析: 本最終解析は、約361例の死亡が発生した時点で実施されることが規定されていた。研究全体のα値は、Maurer and Bretzのグラフィカル法を用いて0.025 (片側) に厳密に管理された。第2中間解析で統計的有意性が達成されたため、本最終解析にはα値は割り当てられず、記述的解析として実施された。主要有効性解析はintention-to-treat (ITT) 集団に基づいた。PD-L1評価不能な患者は、PD-L1 TPSサブグループ別の有効性解析からは除外された。OS、PFS、DORはKaplan-Meier法を用いて推定され、治療差のHRおよび95%信頼区間 (CI) は、層別Cox比例ハザードモデルとEfron法によるタイ処理を用いて評価された。PFS-2の解析は記述的であり、多重性の調整は行われなかった。PFS-2の打ち切りは、生存しており、かつ二次治療を受けていないか、二次治療を病勢進行なしで中止し、三次治療を開始していない時点で行われた。安全性解析には、治験薬を少なくとも1回投与された全無作為化患者が含まれた。クロスオーバー後のペムブロリズマブ治療中に発生したAEは、治療群間の主要安全性比較からは除外された。
OSの追加解析として、簡略化された二段階モデル Latimer et al を用いて、プラセボ群からペムブロリズマブ単剤療法へのプロトコル規定の治療クロスオーバーを調整したOSの治療差が推定された。このモデルでは、まず病勢進行が確認された患者を対象に、クロスオーバーした患者とそうでない患者のOSに対する効果を推定し、その加速因子を用いてクロスオーバー患者のOS時間を調整した。その後、調整されたOS時間とペムブロリズマブ群のOS時間を層別Cox比例ハザードモデルで比較した。