• 著者: Paz-Ares L, Luft A, Vicente D, Tafreshi A, Gümüş M, Mazières J, Hermes B, Çay Şenler F, Csőszi T, Fülöp A, Rodríguez-Cid J, Wilson J, Sugawara S, Kato T, Lee KH, Cheng Y, Novello S, Halmos B, Li X, Lubiniecki GM, Piperdi B, Kowalski DM
  • Corresponding author: Luis Paz-Ares, MD (Hospital Universitario 12 de Octubre, Madrid, Spain)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-09-25
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 30280635

背景

扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)は、全肺癌の約20〜30%を占める組織型であり、非扁平上皮NSCLCと比較して予後が不良であると報告されている。歴史的に、扁平上皮NSCLCではEGFRやALKなどのドライバー遺伝子変異に対する標的療法が適用できないため、治療選択肢が限られており、一次治療は白金製剤ベースの化学療法が標準であった。この化学療法単独での全生存期間(OS)中央値は約10〜11ヶ月と報告されており、特に非扁平上皮NSCLCでペメトレキセド(pemetrexed)が使用可能な状況と比較して、治療成績の改善が喫緊の課題であった。PD-1/PD-L1免疫チェックポイント阻害薬は、扁平上皮および非扁平上皮NSCLCの両方で有効性を示しており、PD-L1腫瘍細胞比率(TPS)が50%以上の扁平上皮NSCLC患者に対しては、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)単剤療法が一次治療の選択肢として確立されていた(Reck et al. NEnglJMed 2016)。しかし、PD-L1 TPSが50%未満の多くの扁平上皮NSCLC患者には、免疫療法を含む一次治療の選択肢が不足していた。

非扁平上皮NSCLCにおいては、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法がOSを有意に延長することが示され(Gandhi et al. NEnglJMed 2018)、この成功を受けて、扁平上皮NSCLCにおいても同様の化学免疫療法の有効性を検証する必要性が高まった。扁平上皮NSCLCでは組織型選択性からペメトレキセドの使用が不可であるため、本試験ではカルボプラチン(carboplatin)とパクリタキセル(paclitaxel)またはnab-パクリタキセル(nab-paclitaxel)を組み合わせた化学療法にペムブロリズマブを上乗せする効果が未解明であった。先行研究では、ネシツムマブ(necitumumab)とゲムシタビン(gemcitabine)およびシスプラチン(cisplatin)の併用が扁平上皮NSCLCの一次治療においてOSをわずかに延長したが、その効果は限定的であった。本試験は、未治療の転移性扁平上皮NSCLC患者において、ペムブロリズマブと化学療法の併用が化学療法単独と比較して、OSおよびPFSを改善するかどうかを評価することを目的とした。これにより、扁平上皮NSCLCにおける一次治療の新たな標準を確立し、治療選択肢の不足を解消することが期待された。

目的

本KEYNOTE-407試験(NCT02775435)は、未治療の転移性扁平上皮NSCLC(Stage IV)患者を対象に、ペムブロリズマブ200mgを3週間に1回(最長35サイクル)とカルボプラチンおよびパクリタキセルまたはnab-パクリタキセル(最初の4サイクル)の併用療法が、プラセボと同一化学療法の併用と比較して、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善するかどうかを評価することを主要目的とした。副次目的としては、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、および安全性を評価することであった。さらに、PD-L1発現レベルがOS、PFS、およびORRに与える影響を探索的エンドポイントとして事前に規定し、PD-L1発現レベルに関わらずペムブロリズマブ併用療法の有効性を検証することも目的とした。本研究は、扁平上皮NSCLCにおける化学免疫療法の有効性を確立し、新たな標準治療を確立することを目指した。

結果

全生存期間(OS)の有意な延長: 中央値追跡期間7.8ヶ月の時点で、主要エンドポイントであるOS中央値は、ペムブロリズマブ併用群で15.9ヶ月(95% CI, 13.2〜未到達)であったのに対し、プラセボ併用群では11.3ヶ月(95% CI, 9.5〜14.8)であった。これにより、ペムブロリズマブ併用群はプラセボ併用群と比較して、死亡リスクを36%有意に減少させた(HR 0.64; 95% CI, 0.49-0.85; P<0.001)。1年OS率はペムブロリズマブ併用群で65.2%、プラセボ併用群で48.3%であり、16.9%ポイントの絶対差が認められた。このOSベネフィットは、事前に規定された全てのサブグループで一貫して観察された(Figure 1A, 1B)。

PD-L1発現レベル別のOSベネフィット: OSの利益はPD-L1発現レベルに関わらず一貫して観察された。PD-L1 TPSが1%未満の患者群では、HR 0.61(95% CI, 0.38-0.98)であり、1年OS率はペムブロリズマブ併用群で64.2% vs プラセボ併用群で43.3%であった。PD-L1 TPSが1〜49%の患者群では、HR 0.57(95% CI, 0.36-0.90)であり、1年OS率は65.9% vs 50.0%であった。PD-L1 TPSが50%以上の患者群では、HR 0.64(95% CI, 0.37-1.10)であり、1年OS率は63.4% vs 51.0%であった。PD-L1 TPSが50%以上のサブグループのHRの95% CI上限が1を超えているものの、点推定値は利益を示唆しており、全てのPD-L1サブグループでOS改善の傾向が認められた。これは、PD-L1発現レベルに依存しない化学免疫療法の利益を示唆する重要な所見である(Figure S3)。

無増悪生存期間(PFS)の有意な延長: 主要エンドポイントであるPFS中央値は、ペムブロリズマブ併用群で6.4ヶ月(95% CI, 6.2-8.3)であったのに対し、プラセボ併用群では4.8ヶ月(95% CI, 4.3-5.7)であった。これにより、ペムブロリズマブ併用群はプラセボ併用群と比較して、疾患進行または死亡のリスクを44%有意に減少させた(HR 0.56; 95% CI, 0.45-0.70; P<0.001)。このPFSベネフィットも全ての事前に規定されたサブグループで観察された(Figure 2A, 2B)。PD-L1発現レベル別に見ると、PD-L1 TPSが1%未満の患者群ではHR 0.68(95% CI, 0.47-0.98)、1〜49%の患者群ではHR 0.56(95% CI, 0.39-0.80)、50%以上の患者群ではHR 0.37(95% CI, 0.24-0.58)であり、PD-L1高発現群でPFSの利益が最大であった(Figure S5)。

客観的奏効率(ORR)と奏効持続期間(DOR)の改善: 客観的奏効率(ORR)は、ペムブロリズマブ併用群で57.9%(95% CI, 51.9-63.8)であったのに対し、プラセボ併用群では38.4%(95% CI, 32.7-44.4)であり、ペムブロリズマブ併用群で有意に高かった(19.5%ポイントの差)。奏効までの期間中央値は両群ともに1.4ヶ月であった。奏効持続期間(DOR)中央値は、ペムブロリズマブ併用群で7.7ヶ月(範囲 1.1+〜14.7+)であったのに対し、プラセボ併用群では4.8ヶ月(範囲 1.3+〜15.8+)であった。PD-L1発現レベル別のORRも、全てのサブグループでペムブロリズマブ併用群がプラセボ併用群よりも高かった(PD-L1 TPS <1%群: 63.2% vs 40.4%; 1〜49%群: 49.5% vs 41.3%; ≥50%群: 60.3% vs 32.9%)。

安全性プロファイル: Grade 3以上の有害事象(AE)は、ペムブロリズマブ併用群で69.8%、プラセボ併用群で68.2%に発生し、両群間で大きな差は認められなかった(Table 2)。これは、化学療法骨格の毒性が全体的な毒性を支配していることを示唆する。全治療成分の中止に至ったAEは、ペムブロリズマブ併用群で13.3%、プラセボ併用群で6.4%と、ペムブロリズマブ併用群でやや高かった。AEによる死亡は、ペムブロリズマブ併用群で8.3%(n=23)、プラセボ併用群で6.4%(n=18)であった。免疫関連有害事象(irAE)は、あらゆるグレードでペムブロリズマブ併用群の28.8%(Grade 3以上は10.8%)に発生したのに対し、プラセボ併用群では8.6%(Grade 3以上は3.2%)であった(Table 3)。特に、肺臓炎はペムブロリズマブ併用群で6.5%(Grade 3以上は2.5%)、プラセボ併用群で2.1%(Grade 3以上は1.1%)に発生した。免疫関連AEによる死亡は、両群でそれぞれ1例(いずれも肺臓炎)であった。

考察/結論

KEYNOTE-407試験は、未治療の転移性扁平上皮NSCLC患者において、ペムブロリズマブとカルボプラチンおよびタキサン系薬剤(パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)の併用療法が、化学療法単独と比較してOSおよびPFSを有意に延長することを示した画期的な第III相試験である。OS中央値は15.9ヶ月 vs 11.3ヶ月(HR 0.64; 95% CI, 0.49-0.85; P<0.001)、PFS中央値は6.4ヶ月 vs 4.8ヶ月(HR 0.56; 95% CI, 0.45-0.70; P<0.001)であり、死亡リスクを36%、疾患進行または死亡リスクを44%それぞれ減少させた。

先行研究との違い: 本研究は、非扁平上皮NSCLCを対象としたKEYNOTE-189試験(Gandhi et al. NEnglJMed 2018)と同様の化学免疫療法アプローチが、扁平上皮型NSCLCにおいても有効であることを初めて示した点で重要である。これまで扁平上皮NSCLCの一次治療は化学療法単独に限られており、ネシツムマブ併用療法もOS延長効果は限定的であった(Thatcher et al. Lancet Oncol 2015)。本試験の結果は、扁平上皮NSCLCの治療パラダイムを大きく変えるものである。

新規性: 本研究で初めて、PD-L1発現レベルに関わらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用が扁平上皮NSCLC患者のOSおよびPFSを改善することが新規に同定された。特に、PD-L1 TPSが1%未満の患者群においてもOSの有意な利益(HR 0.61; 95% CI, 0.38-0.98)が認められたことは、PD-L1を必須の選択基準とせず、全ての扁平上皮NSCLC患者にこの併用療法を適用できる可能性を示唆する。これは、PD-L1発現レベルが低い患者群に対する免疫療法の選択肢がこれまで不足していた状況を大きく改善する知見である。

臨床応用: 本知見は、未治療の転移性扁平上皮NSCLC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブとカルボプラチンおよびパクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法を新たな標準治療として確立する臨床的意義を持つ。パクリタキセルとnab-パクリタキセルのどちらを選択しても同様の有効性が確認されたことは、実臨床での薬剤選択の幅を広げ、患者の併存疾患や毒性プロファイルを考慮した個別化医療に貢献する。Grade 3以上の有害事象の発生率が両群で同程度であったことは、ペムブロリズマブの上乗せが全体的な毒性を大きく増加させないことを示しており、化学免疫療法の実施可能性を支持する。

残された課題: 本試験のlimitationとしては、追跡期間が中央値7.8ヶ月と比較的短かったことが挙げられる。これは中間解析がイベント駆動型であったためであり、長期的な有効性や安全性プロファイルについては今後の検討課題として、さらなる追跡調査が必要である。また、プラセボ併用群からのクロスオーバー率が42.8%であったため、プラセボ単独群のOSが過小評価されている可能性も考慮する必要がある。今後の研究では、PD-L1発現レベルに応じた最適な治療戦略のさらなる検討や、他の免疫チェックポイント阻害薬との比較、さらには腫瘍変異負荷(TMB)などの新たなバイオマーカーの臨床的有用性の評価が残された課題である。

方法

本試験は、未治療の転移性扁平上皮NSCLC患者を対象とした第III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験(1:1割り付け)である。世界17カ国の125施設で実施された。適格基準は、18歳以上、病理学的に確認されたStage IV扁平上皮NSCLC、前治療歴なし、ECOGパフォーマンスステータス0または1、RECIST version 1.1に基づく測定可能病変が少なくとも1つ存在すること、およびPD-L1発現状態評価のための腫瘍検体提出であった。症候性の中枢神経系転移、ステロイド治療を要する非感染性肺炎の既往、活動性自己免疫疾患、全身性免疫抑制療法を受けている患者は除外された。

合計559名の患者が無作為に割り付けられ、ペムブロリズマブ併用群にn=278名、プラセボ併用群にn=281名が登録された。治療レジメンは、ペムブロリズマブ200mgまたは生理食塩水プラセボを3週間に1回、最長35サイクル投与し、最初の4サイクルは両群ともにカルボプラチン(AUC=6)とパクリタキセル(200mg/m²、Day 1)またはnab-パクリタキセル(100mg/m²、Days 1, 8, 15)を併用した。その後、ペムブロリズマブまたはプラセボ単剤維持療法に移行した。無作為化は、PD-L1 TPS(≥1% vs <1%)、タキサン系薬剤の選択(パクリタキセル vs nab-パクリタキセル)、および地域(東アジア vs その他)で層別化された。

治療は、放射線学的病勢進行、許容できない毒性、治験責任医師の判断による中止、または患者の同意撤回まで継続された。病勢進行後も臨床的に安定している患者は、治験責任医師の裁量で治療を継続することが許可された。プラセボ併用群の患者は、盲検下独立中央画像評価(BICR)により病勢進行が確認された場合、プロトコルで規定された基準を満たせば、治験内でペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーが許可された(有効クロスオーバー率42.8%)。

PD-L1発現は、診断時のホルマリン固定腫瘍検体を用いてPD-L1 IHC 22C3 pharmDxアッセイにより評価された。治験責任医師および患者はPD-L1 TPSを知らされなかった。有害事象はNCI-CTCAE version 4.03に従って評価された。腫瘍画像評価は、6週目、12週目、18週目、その後45週目まで9週間ごと、それ以降は12週間ごとに実施された。奏効はRECIST version 1.1(Eisenhauer et al. EurJCancer 2009)に従って評価された。

統計解析は、OSおよびPFSを主要エンドポイントとし、BICRによって評価された。副次エンドポイントはORR、DOR、および安全性であった。PD-L1発現がOS、PFS、ORRに与える影響は事前に規定された探索的エンドポイントであった。有効性はintention-to-treat(ITT)集団で評価され、安全性はas-treated集団で評価された。Kaplan-Meier法を用いてOS、PFS、DORを推定し、層別ログランク検定(log-rank test)を用いて群間差を評価した。層別Cox比例ハザードモデル(Cox proportional-hazards model)を用いてハザード比(HR)を算出した。データカットオフは2018年4月3日であり、中央値追跡期間は7.8ヶ月であった。第2回中間解析(PFSイベント349件、死亡205件)で有効性の境界を超えたため、結果が報告された。