• 著者: Awad MM, Gadgeel SM, Borghaei H, Patnaik A, Yang JC, Powell SF, Gentzler RD, Martins RG, Stevenson JP, Altan M, Jalal SI, Panwalkar A, Gubens M, Sequist LV, Saraf S, Zhao B, Piperdi B, Langer CJ
  • Corresponding author: Mark M. Awad, MD, PhD (Lowe Center for Thoracic Oncology, Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, USA)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-09-27
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33069888

背景

進行非扁平上皮非小細胞肺がん (NSCLC) の一次治療において、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) と化学療法の併用は標準治療として確立されている。特に、PD-1阻害薬であるペムブロリズマブとプラチナ製剤・ペメトレキセドの併用療法は、その有効性から広く用いられている。この併用療法の有効性を示す先駆的な研究の一つが、無作為化第II相試験であるKEYNOTE-021 Cohort Gである。本試験の初回解析では、未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者において、ペムブロリズマブとペメトレキセド・カルボプラチン (PC) の併用療法が、PC単独療法と比較して、客観的奏効率 (ORR) および無増悪生存期間 (PFS) を有意に改善することが示された (Langer et al. LancetOncol 2016)。具体的には、ORRは併用群で55%に対し単独群で29%であり、PFSのハザード比 (HR) は0.53であった。この結果は、免疫療法と化学療法の併用が進行NSCLCの治療パラダイムを大きく変える可能性を示唆するものであった。

その後、この知見は大規模な第III相試験であるKEYNOTE-189試験によって追認された。KEYNOTE-189試験では、ペムブロリズマブとペメトレキセド・プラチナ製剤の併用療法が、プラセボと化学療法の併用と比較して、全生存期間 (OS)、PFS、およびORRの全てにおいて統計学的に有意な改善を示すことが報告された (Gandhi et al. NEnglJMed 2018)。この結果に基づき、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法は、PD-L1発現レベルに関わらず、進行非扁平上皮NSCLCの一次治療における標準治療としての地位を確立した。

しかしながら、KEYNOTE-021 Cohort G試験の長期的な追跡データ、特に3年以上のOSデータや、2年間ペムブロリズマブ維持療法を完遂した患者の転帰に関する詳細な情報は、これまでの報告では不足していた。先行研究では24ヶ月時点でのOSデータが報告されているものの (Borghaei et al. J Thorac Oncol 2019)、免疫療法特有の長期的な奏効持続性や生存ベネフィットを評価するためには、より長期の追跡期間が必要であると考えられていた。特に、免疫療法における「治癒相当」の長期生存を達成する患者群の特性や、その持続的な治療効果のメカニズムについては、依然として未解明な点が残されていた。本研究は、この知識ギャップを埋めることを目的とし、KEYNOTE-021 Cohort G試験の最終的な長期追跡データを提供することで、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法の持続的な有効性と安全性をさらに明確にすることを目指した。

目的

本研究の目的は、KEYNOTE-021 Cohort G試験において、未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者に対するペムブロリズマブとペメトレキセド・カルボプラチン併用療法(ペムブロリズマブ群)と化学療法単独(化学療法群)の長期的な有効性および安全性を評価することである。具体的には、中央値49.4ヶ月の追跡期間における最終的な全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)のデータを報告し、両治療群間の比較を行う。さらに、2年間ペムブロリズマブ維持療法を完遂した患者群の長期転帰に焦点を当て、その臨床的ベネフィットの持続性を詳細に評価することを目的とする。これにより、ペムブロリズマブ併用療法の長期的な有効性と、特定の患者群における持続的な奏効の可能性を明らかにすることを目指した。

結果

全生存期間(OS)の最終解析: 中央値49.4ヶ月の追跡期間において、ペムブロリズマブ併用群のOS中央値は34.5ヶ月(95% CI 24.0ヶ月-NR)であったのに対し、化学療法単独群では21.1ヶ月(95% CI 14.9-35.6ヶ月)であった。ハザード比(HR)は0.71(95% CI 0.45-1.12, p=0.133)であり、統計的有意差には達しなかった。しかし、3年OS率はペムブロリズマブ併用群で50%であったのに対し、化学療法単独群では37%であり、臨床的に意義のある差が認められた。化学療法群からのペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバー率は70%(試験内28例、試験外15例、合計43例)と高かったにもかかわらず、HR 0.71という効果量が維持されたことは注目に値する。この高いクロスオーバー率が、OSにおける統計的有意差の検出を困難にした可能性が示唆される (Fig 1B)。

無増悪生存期間(PFS)の最終解析: PFS中央値は、ペムブロリズマブ併用群で24.5ヶ月(95% CI 9.7-36.3ヶ月)であったのに対し、化学療法単独群では9.9ヶ月(95% CI 6.2-15.2ヶ月)であった。ハザード比(HR)は0.54(95% CI 0.35-0.83)であり、ペムブロリズマブ併用群で統計学的に有意なPFSの延長が確認された。3年PFS率は、ペムブロリズマブ併用群で37%であったのに対し、化学療法単独群では16%であり、長期にわたる病勢コントロールの優位性が示された (Fig 1A)。

客観的奏効率(ORR)および奏効持続期間(DOR): ORRは、ペムブロリズマブ併用群で58%(95% CI 45-71%)であったのに対し、化学療法単独群では33%(95% CI 22-46%)であり、一次解析と同様にペムブロリズマブ併用群で有意に高い奏効率が維持された。完全奏効(CR)は併用群で8%(n=5)、単独群で3%(n=2)に認められた。部分奏効(PR)は併用群で50%(n=30)、単独群で30%(n=19)であった。DOR中央値は、ペムブロリズマブ併用群で36.3ヶ月(95% CI 1.4ヶ月以上-NR)であったのに対し、化学療法単独群では22.8ヶ月(95% CI 2.8ヶ月以上-NR)であり、併用群でより長い奏効持続性が示された。3年DOR率は、併用群で51%、単独群で47%であった (Table 2)。

2年間ペムブロリズマブ治療完遂者の転帰: 2年間(35サイクル)のペムブロリズマブ治療を完遂した患者は12例であった。これらの患者のうち、データカットオフ時点で11例(92%)が生存していた。また、これら12例の患者全員(100%)が客観的奏効を達成しており、推定3年DOR率は100%であった。この群の患者は、長期にわたる持続的な臨床的ベネフィットを示し、そのうち7例はデータカットオフ時点で奏効が継続していた (Fig 1C)。これらの患者の多く(83%)は女性であり、75%がPD-L1 TPS ≥1%であった(Supplementary Table 1)。

PD-L1発現サブグループ解析(探索的): PD-L1 TPS ≥1%の患者群では、ORRはペムブロリズマブ併用群で54%に対し化学療法単独群で43%であった。PFS中央値は併用群で16.6ヶ月(95% CI 6.2-40.9ヶ月)に対し、単独群で14.9ヶ月(95% CI 6.2-27.5ヶ月)であった(HR 0.70, 95% CI 0.40-1.22)。PD-L1 TPS <1%の患者群では、ORRはペムブロリズマブ併用群で67%に対し化学療法単独群で17%と、PD-L1陰性例におけるペムブロリズマブ追加による奏効率の大幅な改善が認められた。PFS中央値は併用群で24.5ヶ月(95% CI 11.1-42.9ヶ月)に対し単独群で8.8ヶ月(95% CI 2.0-11.8ヶ月)と大幅に延長され(HR 0.35, 95% CI 0.17-0.72)、OS中央値が併用群で34.5ヶ月(95% CI 22.8ヶ月-NR)に対し単独群で16.7ヶ月(95% CI 9.3-24.7ヶ月)と、併用療法の大きなベネフィットが示された (Table 2)。

安全性プロファイル: 治療関連有害事象(TRAE)は、ペムブロリズマブ併用群で93%の患者に発生し、Grade 3以上のTRAEは39%であった。化学療法単独群では94%の患者にTRAEが発生し、Grade 3以上のTRAEは31%であった。一次解析以降、新たなGrade 5のTRAEは報告されなかった。免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ併用群で17例に発生した。2年間治療を完遂した12例の患者では、全員にTRAEが認められたが、Grade 3以上のTRAEは8例であり、免疫関連AEは4例(全てGrade 1-2)であった。長期追跡においても、新たな安全性シグナルは認められず、安全性プロファイルは管理可能であった。

考察/結論

KEYNOTE-021 Cohort G試験の最終長期解析は、未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者に対するペムブロリズマブと化学療法の併用療法が、化学療法単独と比較して持続的な臨床的ベネフィットを提供することを明確に示した。中央値49.4ヶ月の追跡期間において、ペムブロリズマブ併用群はOS中央値34.5ヶ月、3年OS率50%を達成し、化学療法単独群のOS中央値21.1ヶ月、3年OS率37%を上回った。PFS中央値も併用群で24.5ヶ月と、単独群の9.9ヶ月と比較して大幅な延長が認められ(HR 0.54, 95% CI 0.35-0.83)、長期的な病勢コントロールの優位性が確認された。

先行研究との違い: 本研究のOS解析では、化学療法群からの高いクロスオーバー率(70%)があったにもかかわらず、HR 0.71(95% CI 0.45-1.12)という効果量が維持された。これは、KEYNOTE-189試験のような大規模な第III相試験で示されたOSベネフィット(HR 0.56)と比較すると統計的有意差には達しなかったものの、臨床的には意義深い結果である。この高いクロスオーバー率が、OSにおける統計的有意差の検出を困難にした可能性が考えられる。また、本研究のPFS中央値は、KEYNOTE-189試験の更新解析で観察されたPFS中央値よりも両群ともに長かったが、進行または死亡のリスク絶対減少率は類似していた。この違いは、KEYNOTE-021 Cohort Gの患者数が少ないことや、予後良好な患者(女性の割合が高い、治療済み脳転移患者の組み入れなど)が含まれていた可能性に起因すると考えられる。

新規性: 本研究で初めて、2年間ペムブロリズマブ治療を完遂した患者群の長期転帰が詳細に報告された。この12例の患者のうち92%がデータカットオフ時点で生存しており、全員が客観的奏効を達成し、3年DOR率が100%であったことは、免疫療法が一部の患者において「長期寛解」あるいは「治癒相当」の転帰をもたらす可能性を示す重要な新規知見である。これは、免疫療法特有の長期的な記憶効果によるものであり、従来の化学療法では見られなかったフェノタイプである。

臨床応用: これらの結果は、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法が、進行非扁平上皮NSCLCの一次治療において、PD-L1発現レベルに関わらず、持続的な奏効と長期生存ベネフィットを提供する強力な根拠となる。特に、PD-L1 TPS <1%の患者群においても、PFS中央値が2倍以上、OS中央値が約2倍に延長されたことは、この併用療法がPD-L1陰性患者にも大きな臨床的有用性を持つことを示唆する。この知見は、現在の非扁平上皮NSCLCの一次治療における標準治療としての地位をさらに強固にするものである。

残された課題: 本研究は第II相試験であり、患者数が比較的少ないため、サブグループ解析における結論には限界がある。特に、PD-L1 TPSのさらなるカットポイントによる詳細な解析や、他のバイオマーカーとの関連性については、より大規模な研究での検証が今後の課題として残されている。また、オープンラベルデザインであったことも一つのlimitationであるが、盲検下独立中央判定による奏効評価が行われたため、結果への影響は限定的であると考えられる。今後、KEYNOTE-189試験からのさらなる長期追跡データが、より堅牢な長期有効性データを提供し、この患者集団におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法のベネフィットをさらに評価するであろう。

方法

本研究は、無作為化オープンラベル第II相試験であるKEYNOTE-021 Cohort G(NCT02039674)の長期フォローアップ解析として実施された。対象患者は、以前に治療歴のない進行非扁平上皮NSCLC患者で、EGFRまたはALK遺伝子変異陰性、ECOGパフォーマンスステータス0または1、およびPD-L1発現評価のための腫瘍検体を有する患者であった。合計123名の患者が登録され、ペムブロリズマブ併用群(n=60)と化学療法単独群(n=63)に1:1で無作為に割り付けられた。無作為化はPD-L1腫瘍細胞比率(TPS)(<1% vs ≥1%)によって層別化された。

治療プロトコルは以下の通りである。ペムブロリズマブ併用群の患者は、ペムブロリズマブ200mg、ペメトレキセド500mg/m²、カルボプラチン(AUC 5mg/mL/min)を3週間ごとに4サイクル投与された後、ペムブロリズマブ200mgとペメトレキセド維持療法を最大2年間(31サイクル)継続した。一方、化学療法単独群の患者は、ペメトレキセド500mg/m²とカルボプラチン(AUC 5mg/mL/min)を3週間ごとに4サイクル投与された後、ペメトレキセド維持療法を受けた。

病勢進行が確認された化学療法単独群の適格患者は、ペムブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーが許容された。本解析のデータカットオフは2020年1月であり、無作為化からの追跡期間中央値は49.4ヶ月(範囲: 43.5~55.4ヶ月)であった。

主要評価項目は、RECIST version 1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による客観的奏効率(ORR)であった。副次評価項目には、PFS、奏効持続期間(DOR)、およびOSが含まれた。PFSおよびOSのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は、層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定された。また、探索的評価項目として、PD-L1発現レベル別の有効性、および2年間ペムブロリズマブ治療を完遂した患者の転帰が評価された。安全性評価は、有害事象(AE)の発生率と重症度に基づいて行われた。統計解析には、Clopper-Pearson法によるORRの推定、Miettinen and Nurminen’s法による治療差の推定、Efron’s法によるタイ処理を用いたCox比例ハザードモデルなどが用いられた。