- 著者: L. Paz-Ares, E.-H. Tan, K. O’Byrne, L. Zhang, V. Hirsh, M. Boyer, J. C.-H. Yang, T. Mok, K. H. Lee, S. Lu, Y. Shi, D. H. Lee, J. Laskin, D.-W. Kim, S. A. Laurie, K. Kölbeck, J. Fan, N. Dodd, A. Märten, K. Park
- Corresponding author: L. Paz-Ares (Hospital Universitario Doce de Octubre, Madrid, Spain)
- 雑誌: Annals of Oncology
- 発行年: 2017
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article
- PMID: 28426106
背景
EGFR変異陽性 (エクソン19欠失またはL858R) NSCLC (非小細胞肺癌) は、gefitinib、erlotinib、afatinibなどのEGFR-TKI (上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬) に高い感受性を示す。プラチナベース化学療法との比較では、IPASS (Iressa Pan-Asia Study) 試験 (Mok et al. NEnglJMed 2009)、NEJ002試験 (Maemondo 2010)、WJTOG3405試験 (Mitsudomi 2010) においてgefitinibが、EURTAC (European Randomised Trial of erlotinib versus chemotherapy) 試験 (Rosell et al. LancetOncol 2012) においてerlotinibが、それぞれPFSで有意に優越した。afatinibも、LUX-Lung (afatinib clinical trial program) 3試験 (Sequist et al. JClinOncol 2013) およびLUX-Lung 6試験 (Wu et al. LancetOncol 2014) において化学療法対比でPFS改善を示している。しかし、これらはいずれも化学療法を対照とした比較であり、EGFR-TKI同士の直接比較試験は手薄であった。特に、不可逆的ErbBファミリー阻害薬であるafatinibと可逆的EGFR-TKIであるgefitinibを治療歴なしの患者で比較したデータは存在せず、どちらの薬剤が有効性において優れるかは未解明であり、直接比較データが不足していた。2016年に発表されたLUX-Lung 7一次解析 (PFS・TTF・ORR) では、afatinibがgefitinibに対してPFS (HR 0.73、p=0.0165)、TTF (HR 0.73)、ORR (70% vs 56%) でいずれも有意に優越することが示されたが、OSデータは当時未熟であった。本報告はその成熟OS解析を主目的とする。
目的
LUX-Lung 7試験において、afatinib vs gefitinibの成熟全生存期間 (OS) データを主要解析として報告し、事前規定サブグループ (EGFR変異タイプ別、脳転移有無別など) でのOS解析および後治療 (特に第三世代EGFR-TKI) がOSに与える影響を評価する。
結果
OS主要解析:全体集団で有意差なし
2016年4月8日のデータカットオフ時点で226 OSイベント発生 (afatinib群109例 [68.1%]、gefitinib群117例 [73.6%] 死亡)。中央値フォローアップ期間42.6か月。全体集団での中央値OS:afatinib vs gefitinib = 27.9 vs 24.5か月 (HR 0.86、95% CI 0.66-1.12、p=0.2580)。afatinibで死亡リスクを数値上14%低減したが統計的有意差には至らなかった。24か月生存率60.9%、30か月生存率48.0%はafatinib群での値で、LUX-Lung 3試験 (59.6%・49.8%) と概ね一致していた (Fig 1A)。
OSサブグループ解析:変異タイプ・年齢別の動向
事前規定サブグループ解析では、いずれのサブグループでもafatinibとgefitinibのOSに統計的有意差は認められなかった (Fig 1B)。エクソン19欠失患者ではafatinib vs gefitinib = 30.7 vs 26.4か月 (HR 0.83、95% CI 0.58-1.17、p=0.2841、Fig 2A)、L858R患者では25.0 vs 21.2か月 (HR 0.91、95% CI 0.62-1.36、p=0.6585、Fig 2B) と、いずれも数値的にafatinibが上回った。脳転移なし例ではHR 0.81 (95% CI 0.61-1.07)、脳転移あり例ではHR 1.16 (95% CI 0.61-2.21) であり、年齢カットオフ<65歳 vs ≥65歳でのみ交互作用が示唆されたが (HR 0.66 vs 1.22、交互作用p=0.0228)、後のポストホック解析でカットオフを60・70・75歳と変更しても一貫した交互作用は認められなかった。
後治療と第三世代EGFR-TKI逐次投与:後治療の実態と逐次治療戦略
治療中止後に何らかの全身療法を受けた患者はafatinib群72.6%、gefitinib群76.8%と高率であった (Table 1)。多ライン治療が一般的で、≥4ライン療法を受けたのはafatinib群24.0%・gefitinib群31.1%に上った。後続EGFR-TKIはafatinib群45.9%、gefitinib群55.6%が受けており、第三世代EGFR-TKI (osimertinib・olmutinib) はそれぞれ13.7%・15.2%が受療した。第三世代EGFR-TKIを後続で使用した患者の後分析では、afatinib群の中央値OSは「評価不能」 (n=20、3年OS約90%)、gefitinib群は46.0か月 (n=23) と良好で、両群ともHR 0.51 (95% CI 0.17-1.52、p=0.22) と症例数が少なく有意差はなかったが、逐次投与戦略の可能性を示した (Fig 3)。
更新PFS・TTF・ORR:afatinibが有意に優越
更新コプライマリエンドポイントでは、一次解析からの方向性が再現された。PFS (独立評価) の中央値:afatinib vs gefitinib = 11.0 vs 10.9か月 (HR 0.74、95% CI 0.57-0.95、p=0.0178)。TTFの中央値:13.7 vs 11.5か月 (HR 0.75、95% CI 0.60-0.94、p=0.0136)。更新ORR:72.5% vs 56.0% (OR 2.121、95% CI 1.32-3.40、p=0.0018)。DCR (疾患コントロール率) は91.3% vs 87.4% (OR 1.552、p=0.2372) と差なし。治療期間中央値はafatinib群13.7か月 (範囲0-46.4)、gefitinib群11.5か月 (0.5-48.7)、24か月超治療継続はafatinib群25.0%、gefitinib群13.2%であった。
安全性プロファイル:忍容性は維持
Grade ≥3の全原因有害事象:afatinib群56.9%、gefitinib群53.5%。治療関連Grade ≥3有害事象:afatinib群31.3%、gefitinib群19.5%。Afatinib群で多かったGrade ≥3事象:下痢13.1% (vs 1.3%)、皮疹/ニキビ9.4% (vs 3.1%)、疲労5.6% (vs 0%)。Gefitinib群で多かった:ALT (alanine transaminase) 上昇8.2% (vs 0%)、ILD (間質性肺疾患) 1.9% (vs 0%)。薬剤関連死亡:gefitinib群1例 (肝・腎不全)。治療関連有害事象による中止率は両群とも6.3%と同等であった (補足Table S2)。
考察/結論
LUX-Lung 7は、EGFR変異陽性NSCLC一次治療における第一世代EGFR-TKI (gefitinib) と第二世代EGFR-TKI (afatinib) の初の直接比較ランダム化試験である。成熟OS解析において、afatinibはgefitinibに対して死亡リスクを14%低減 (HR 0.86) し中央値で3.4か月の差を示したが、統計的有意差には至らなかった。これは化学療法対比試験と異なり、EGFR-TKI同士の直接比較ではOS有意差が得られにくい特性を示しており、EURTAC・IPASS・OPTIMAL (CTONG-0802, erlotinib first-line trial)等の化学療法対比試験でもOS優越は示されなかった。
本研究で新規なのは、T790M媒介獲得耐性の発生率がafatinib投与後もerlotinib/gefitinib後 (50-60%) と同程度 (約50%) であることを踏まえ、第一・第二世代EGFR-TKIを問わず一次治療後に第三世代EGFR-TKI逐次投与が同様の効果をもたらす可能性を初めて実臨床データで示した点にある (Fig 3)。第三世代TKI受療患者での3年OS約90%という striking な成績は、EGFR変異陽性NSCLCを慢性疾患化できる逐次戦略の実現可能性を示唆している (Janne et al. NEnglJMed 2015)。
臨床応用の観点からは、afatinibがPFS・TTF・ORRの3エンドポイントで有意に優れており、OS有意差がなかった背景として後治療 (特に第一・二世代TKIのクロスオーバー) の不均衡が挙げられる。afatinib群では後続EGFR-TKI使用率がgefitinib群より低かったこと (45.9% vs 55.6%)、さらに第一・二世代TKIの逐次投与によって両群のOS差が希釈された可能性がある。臨床現場での薬剤選択においては、PFS・TTF・ORRの有意な改善を根拠にafatinibを選択することが合理的であり、OS有意差がないことは後治療効果による희釈であり薬剤固有の効果を否定しない。エクソン19欠失 (中央値OS 30.7か月) がL858R (25.0か月) より良好なOSを示した点も変異タイプ別の予後差として臨床的意義がある。
残された課題として、本試験のサンプルサイズがOS解析に十分な検出力を持たなかった点が limitation として重要である。LUX-Lung 7はフェーズIIb探索試験であり、OSに対する仮説検証を主目的として設計されておらず、サンプルサイズはPFSのHRの信頼区間幅を制御するために決定された。今後の検討として、データカットオフ時点で29%の患者が存命であり最終OS解析が計画されているほか、osimertinibが一次治療標準として確立された現在では、afatinib vs gefitinib比較の位置づけは変化しつつある。LUX-Lung 7のOS final analysisおよびosimertinib一次治療時代における逐次戦略の最適化は今後の研究課題である。
方法
LUX-Lung 7は国際多施設ランダム化オープンラベルフェーズIIb試験である (NCT01466660、64施設、13か国)。適格基準は18歳以上、治療歴なし、病理確認済みステージIIIb/IV肺腺癌、コモンEGFR変異 (エクソン19欠失またはL858R) 陽性、ECOG PS (Eastern Cooperative Oncology Group performance status) 0-1、RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) v1.1による測定可能病変を有すること。患者は1:1にランダム化され、afatinib 40 mg/日またはgefitinib 250 mg/日を疾患進行・忍容不能な有害事象・その他の中止理由まで投与された。コプライマリエンドポイントはPFS (独立中央評価)、TTF (time to treatment failure、無治療失敗期間)、OSの3つ。ORR (客観的奏効率) は副次エンドポイント。
主要OS解析は約213 OSイベント発生かつ最低32か月のフォローアップ後に計画された。OSは全ランダム化患者 (ITT集団) を対象とし、Cox比例ハザードモデルでHRと95% CIを算出、ログランク検定 (log-rank test) でEGFR変異タイプおよびベースライン脳転移有無で層別化して解析。PFS・TTFも更新解析として実施。ORR・DCR (disease control rate、疾患コントロール率) はロジスティック回帰モデルで比較。全統計検定は両側5%水準で多重性調整なし。解析ソフトはSAS version 9.4。