- 著者: Louis CU, Savoldo B, Dotti G, Pule M, Yvon E, Myers GD, Rossig C, Russell HV, Diouf O, Liu E, Liu H, Wu MF, Gee AP, Mei Z, Rooney CM, Heslop HE, Brenner MK
- Corresponding author: Louis CU (Baylor College of Medicine, Texas Children’s Hospital, Houston, TX)
- 雑誌: Blood
- 発行年: 2011
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article (Phase I clinical trial、長期追跡報告)
- PMID: 21984804
背景
神経芽腫はGD2 (disialoganglioside、ジシアロガングリオシド) 抗原を高発現する小児固形腫瘍であり、高リスク症例の再発後予後は極めて不良で、抗GD2モノクローナル抗体ch14.18+GM-CSF+IL-2併用療法 (Yu et al. NEnglJMed 2010) で2年無イベント生存率66%まで改善したが、再発例の救援療法は確立されていない。MHC非依存的に腫瘍関連抗原を認識できるキメラ抗原受容体 (CAR) を発現するT細胞による養子免疫療法は固形腫瘍への有望なアプローチだが、それまでのCAR-T細胞試験では体内持続性と抗腫瘍活性が一貫して不十分であった (Kochenderfer et al. Blood 2010; Lamers et al. Blood 2011)。著者らはこれ以前に、GD2-CARを発現するEpstein-Barrウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球 (EBV-CTL、以下CAR-CTL) およびポリクローナル活性化T細胞 (ATC、以下CAR-ATC) の11例の神経芽腫患者での短期 (6週間) データを (Pule et al. NatMed 2008) として報告し、CAR-CTLが初期はCAR-ATCより高レベルで循環するが6週後には両者とも低レベル/検出不能になることを示していた。これまでに足りなかったのは、(1) 6週以降のCAR-T細胞の長期動態が記述されていないこと、(2) どのような細胞組成の製品が長期持続をもたらすのかが定量的に同定されていないこと、(3) 持続性と臨床転帰 (TTP・OS) との関連が示されていないこと、の三点であった。本研究は19例まで拡大した症例群で最長5年間の追跡を行い、これら未解明領域を体系的に検証する。
目的
高リスク神経芽腫患者におけるGD2-CAR発現T細胞 (CAR-ATC: 活性化T細胞由来; CAR-CTL: EBV特異的CTL由来) の長期体内動態と抗腫瘍活性を評価し、長期持続性を規定する注入製品の細胞特性を回帰分析で同定するとともに、持続性と無増悪期間および全生存期間の関連を明らかにする。
結果
長期体内持続性の実証と検出動態:以前の報告 (Pule et al. NatMed 2008) では投与後6週時点でCAR-T細胞は両細胞型ともにほぼ検出不能とされていたが、本研究で定量的リアルTime PCRを継続することにより、CAR-ATC由来PCRシグナルが最長192週 (約4年)、CAR-CTL由来シグナルが最長96週 (約2年) 後まで末梢血中に低レベルで検出されることが明らかとなった (Figure 2)。投与後6週以上にわたりPCRシグナルが検出されたのは、評価可能19例中11例 (58%) であった。11例の内訳はCAR-CTL単独持続が3例 (27%)、CAR-ATC単独持続が6例 (55%)、両者ともに持続したのが2例 (18%) で、CAR-ATC優位の傾向が示された。PCR検出レベルは腫瘍細胞株を用いた標準曲線換算で陽性細胞0.0001-0.002%相当と極めて低かった。全44製品で複製コンピテントレトロウイルスは陰性であった。注入製品の表現型解析 (Figure 1) では、CAR-CTL製品はCD8+エフェクターメモリー細胞が80%以上を占めCD4:CD8比は中央値16.9:53.4と末梢分化型優位、これに対してCAR-ATC製品はエフェクターメモリー59.4%、中央記憶 (CD45RO+CD62L+) 12.9%、ナイーブ (CD45RA+CD3+) 13.9%、CD4:CD8比は中央値15.8:75.6と分化段階および記憶サブセットがより多様であった。両製品に少数のNK様 (CD3-CD56+) 細胞も検出された (Figure 1A-B)。
持続性を規定する細胞組成 — CD4+割合と中央記憶細胞割合の量的寄与:注入製品の細胞組成と体内持続期間との関連を、被験者内相関を考慮した一般化推定方程式 (GEE) による線形回帰モデルで定量解析した結果、強い線形相関が確認された (Figure 3)。注入製品中のCD4+細胞割合の1単位 (1%) 増加につき、CAR-CTLの持続期間の対数は2.28倍増加 (P=0.0005) し、CAR-ATCではこれよりはるかに大きな9.83倍増加 (P<0.0001) が認められた (Figure 3A-B)。中央記憶細胞 (CD45RO+CD62L+) 割合の1単位 (1%) 増加につき、CAR-CTLの持続期間の対数は6.1倍増加 (P=0.055、境界有意) し、CAR-ATCでは6.63倍増加 (P<0.0001) と強い関連を示した (Figure 3C-D)。これは霊長類モデルで養子移入T細胞の長期生存にはヘルパー細胞 (CD4+) と中央記憶サブセットの両者が必要との報告と一致し、TIL療法でもCD4+細胞を含む製品で持続性が優れるとの知見と整合した。CAR-CTL中央記憶細胞割合のみP値が境界域だったのは、CTL製品中の中央記憶細胞割合自体が低く (CD8+エフェクターメモリー優位)、分散が小さかったためと推察される。
抗腫瘍活性 — 11例中3例の完全奏効と長期持続CR:中央追跡期間329日 (範囲39-1740日、最長は1740日=4年9ヶ月超) においてn=19 patients全体の中央生存期間 (OS) は931日 (Kaplan-Meier法、Figure 4A) であった。投与時無疾患 (NED) の8例は活動性疾患n=11 patientsと比較して有意に良好なOSを示した (p=0.04、log-rank検定、Figure 4B)。活動性疾患11例中3例 (27%) が完全奏効 (CR) を達成した — 患者CAGT 1035 (DL2、骨髄病変) は骨髄病変が6週以内に消失したが6ヶ月後に再発・死亡。患者CAGT 1144 (DL1、難治性骨病変、6週時点ではpartial response) は治療開始後4年10ヶ月超のCRを維持、患者CAGT 1290 (DL1、再発骨病変) は1年9ヶ月超のCR維持と、計2例がbest response CRを長期維持した (Table 1)。これら3例ではCAR-ATCもしくはCAR-CTLが全例で6週以上検出された。さらに患者CAGT 1361 (DL3、bulky disease) ではSDからPRへの遅延奏効が観察され、CAR-T細胞は72週まで検出された。GEE線形回帰モデル (cohort n=19 patients) における持続期間の対数とCD4+細胞割合は強い正の関連を示し (CAR-ATCで9.83-fold増加/単位、p<0.0001)、これはGEE回帰によるrobust effect estimateで確認された相関である。
持続性と無増悪期間 — TTPの有意な延長:活動性疾患患者11例において、CAR-T細胞 (ATCまたはCTLのいずれか) が6週以上検出された persistent群は、検出されなかったnonpersistent群と比較して、有意に長い無増悪期間 (TTP) を示した (P=0.02、Gray法の累積発生関数、死亡を競合リスクとして処理、Figure 4C)。この差は追跡期間の違い (持続群中央値329日範囲39-1740日 vs 非持続群中央値219日範囲76-413日) によるアーティファクトではなく、真の無増悪期間延長を反映した。Bulky disease 7例ではbest responseが2例で腫瘍壊死 (CAGT 1253とCAGT 1237) にとどまるなど効果は限定的であった一方、低腫瘍量症例 (限局性骨病変または骨髄病変4例) では3例 (75%) でCRが得られた。
安全性プロファイル — 5年追跡で重篤毒性なし:19例への計44製品投与で、用量制限毒性 (dose-limiting toxicity, DLT) およびGrade 4以上の有害事象は一切認められなかった。3例 (16%) でGrade 1-3の局所疼痛 (2例は腫瘍壊死部位の局所反応、1例は無病巣の下肢痛) が発症後約2週時点で観察されたのみで、National Cancer Institute Common Toxicity Criteria Version 2.0で評価した。特にGD2モノクローナル抗体療法 (ch14.18等) で問題となる補体活性化依存性の重度神経毒性 (severe pain、痛覚過敏) は1例も認めなかった (Figure 4の安全性データ)。これはCARがFcドメインを欠くため補体カスケード活性化が起こらないことに帰結し、CAR-T細胞療法のGD2抗体療法に対する安全性上の理論的優位性を実証した。
考察/結論
① 先行研究との違い: 既存報告のCAR-T細胞臨床試験では持続期間が一貫して短く (数日から数週)、固形腫瘍への効果は限定的とされてきた (Lamers et al. Blood 2011) のと対照的に、本研究は前処置 (リンパ枯渇化学療法) なしでも第一世代CAR-T細胞が最長192週持続し得ることを示した点で先行報告と決定的に異なる。これまでの単一プラットフォーム試験とも相違している。また従来は無増悪期間と持続性の関連は短期間データから推測されていたが、本研究は5年規模の長期追跡データで両者の有意な関連を統計的に確認した最初の報告である。さらにCAR-CTL (EBV-CTL基盤) とCAR-ATC (ポリクローナル活性化T細胞基盤) を同一患者で同時投与し直接比較した点も、これまでの単一プラットフォーム試験と相違している。② 新規性: 本研究で初めて、固形腫瘍に対するCAR-T細胞の長期持続性 (4年超) と臨床効果 (持続的CR) が前向きに実証された。新規な発見として、注入製品中のCD4+割合および中央記憶細胞 (CD45RO+CD62L+) 割合が体内持続期間と量的に強く相関すること (回帰係数2.28-9.83、P<0.0001) が同定された。これまで報告されていない知見として、6週以上の持続性が活動性神経芽腫患者のTTP延長と有意に関連する (P=0.02) novel evidenceが提示された。③ 臨床応用と意義: 本研究は固形腫瘍CAR-T療法の臨床応用に向けた重要な指針を示した。製造段階でCD4+ヘルパー細胞およびCD62L+中央記憶細胞をエンリッチした製品設計 (Wang et al. Blood 2011) を行うことで、臨床的に長期持続率を高めTTPを延長できる可能性を示しbench-to-bedside translationalな実装課題を明確化した。臨床的有用性として、抗GD2抗体療法と比較した安全性上の優位性 (神経毒性なし) とCR持続例の存在 (4年超) が確認され、再発神経芽腫の救援療法選択肢としての臨床的意義が確立された。④ 残された課題と今後の検討: limitationとして、(1) 19例というサンプルサイズは持続性と臨床効果の因果関係を立証するには不十分であり、CD4+/中央記憶富化製品を用いた前向き比較試験が今後の研究として必要、(2) 末梢血中CAR-T細胞低レベル持続が腫瘍部位や所属リンパ節での実際の免疫監視を反映するか否かは未解明、(3) 第一世代CAR (CD3ζのみ) を使用したため、CD28や41BBの共刺激ドメインを持つ第二/三世代CAR (Pule et al. MolTher 2005) との直接比較は今後の課題、(4) Bulky diseaseへの効果は限定的であり前処置・併用療法の最適化が今後の展望として残された。これら future studyへの示唆は、現在進行中のGD2-CAR第二世代試験 (CD28-41BBドメイン搭載) の設計に直接反映されている。本研究は固形腫瘍CAR-T療法の長期動態と製品最適化指針を初めて体系的に示した先駆的clinical evidenceである。
方法
試験設計: 単施設第I相用量漸増安全性試験 (NCT00085930、Baylor College of Medicine IRB (Institutional Review Board)・FDA (Food and Drug Administration)・RAC (Recombinant DNA Advisory Committee) 承認下、Declaration of Helsinki遵守)。EBV血清陽性の高リスク神経芽腫患者19例 (女性10例、男性9例、年齢中央値7歳、範囲3-20歳、Stage IV 17例、Stage III 1例、Stage IIa 1例) を組み入れた。8例が投与時に無疾患 (NED) 状態 (うち5例は再発歴あり、3例は初回治療後)、11例が活動性疾患 (うち4例は限局性骨病変または骨髄病変、7例はbulky disease)。製品作製: 患者自家末梢血単核球からlymphoblastoid cell line (LCL)、EBV-CTL、ATCをGMP基準で作製し、それぞれに識別可能な異なるシグナル配列タグを持つ第一世代GD2-CAR (CD3ζのみ、共刺激ドメインなし) をレトロウイルスベクター (PG13パッケージング細胞) で導入。製品は無菌性・表現型・GD2およびEBV特異的細胞傷害活性 (chromium release assay) を出荷前検査。投与プロトコル: 用量漸増3レベル — DL1 (2×10^7 cells/m^2)、DL2 (5×10^7 cells/m^2)、DL3 (1×10^8 cells/m^2)。各患者にCAR-CTLとCAR-ATCを同日投与 (前処置なし)、3例には2回投与し計44製品。モニタリング: 投与後経時的に末梢血単核球サンプルを採取し、real-time quantitative PCR (タグ配列を標的、複製コンピテントレトロウイルス検査はIndiana University Viral Production Laboratoryに委託) でCAR-T細胞数を定量。検出感度は1透導入細胞:1000-6000非導入細胞 (0.0001-0.002%)。85%以上の検体は3重測定。注入製品は表面マーカーCD45RO、CD45RA、CD3、CD4、CD8、CD62L、CCR7をBD FACSCalibur+CellQuest 5.2.1で解析、ナイーブをCD45RA+CD3+、中央記憶をCD45RO+CD62L+、エフェクターメモリーをCD45RO+CCR7-CD62L-と定義。統計: 持続期間とCD4+/中央記憶細胞割合の関連は被験者内相関を考慮した一般化推定方程式 (generalized estimating equations, GEE) を用いた線形回帰モデルで解析 (持続期間は対数変換)。全生存 (OS) はKaplan-Meier法、無増悪期間 (time to progression, TTP) はGray法による累積発生関数 (死亡を競合リスクとする) で評価、群間比較はlog-rank検定。P<0.05を有意とした。臨床効果はInternational Recommendations for Neuroblastoma Response Criteria (Brodeur 1993) で判定した。