• 著者: Curran KJ, Brentjens RJ
  • Corresponding author: Kevin J. Curran, MD / Renier J. Brentjens, MD, PhD (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2015
  • Epub日: 2015-04-20
  • Article種別: Review (Understanding the Pathway)
  • PMID: 25897155

背景

キメラ抗原受容体 (CAR: chimeric antigen receptor) T細胞療法は、T細胞を遺伝子改変することでモノクローナル抗体 (mAb: monoclonal antibody) が持つ腫瘍特異的な抗原認識能力を付与する養子細胞療法 (adoptive cell therapy) の一形態である。CARの基本構造は、mAbから派生した単鎖可変断片 (scFv: single-chain variable fragment) を細胞外結合ドメインとし、CD3ζ鎖の免疫受容体チロシン活性化モチーフ (ITAM: immunoreceptor tyrosine-based activation motif) などの細胞内シグナルドメインを組み合わせた組換え受容体であり、主要組織適合性複合体 (MHC: major histocompatibility complex) 非依存的に腫瘍細胞表面の抗原を直接認識・攻撃できる。初期の第1世代 CAR はCD3ζ鎖のみをシグナルドメインとしたが、T細胞の増殖・持続性が不十分で臨床的有用性は示されなかった (Curran et al. J Gene Med 2012)。共刺激ドメイン (CD28 または 4-1BB) を加えた第2世代 CAR の登場で、T細胞の活性化・増殖・持続性が著明に改善された (Savoldo et al. JCI 2011; Brentjens et al. Blood 2011)。

特に画期的だったのは、CD19を標的とした第2世代 CAR T細胞が再発/難治性 B細胞性急性リンパ性白血病 (B-ALL: B-cell acute lymphoblastic leukemia) において完全奏効率 (CR) 70-90%という前例のない臨床成績を達成したことである (Maude et al. NEnglJMed 2014; Lee et al. Lancet 2015; Davila et al. Sci Transl Med 2014)。この成功により、CAR T細胞療法を固形腫瘍へ拡大応用する研究への関心が急速に高まった。

しかしながら、固形腫瘍へのCAR T細胞療法は血液腫瘍ほどの成果が得られていない。炭酸脱水酵素IX (CAIX: carbonic anhydrase IX) 特異的 CAR T細胞による腎細胞癌治療では正常胆管上皮への攻撃 (オンターゲット・オフ腫瘍毒性、on-target/off-tumor toxicity) が、癌胎児性抗原 (CEA: carcinoembryonic antigen) 特異的 CAR T細胞による大腸癌治療では重篤な大腸炎が生じた (Lamers et al. J Clin Oncol 2006; Parkhurst et al. Mol Ther 2011)。さらに HER2 (ERBB2: human epidermal growth factor receptor 2) 特異的 CAR T細胞の初期試験では肺上皮の低レベル HER2 発現を高親和性 CAR T細胞が認識し、肺障害・多臓器不全による死亡例が発生した (Morgan et al. Mol Ther 2010)。固形腫瘍での標的抗原選択の複雑さ、免疫抑制的な腫瘍微小環境 (TME: tumor microenvironment)、CAR T細胞の腫瘍内浸潤障害といった血液腫瘍とは質的に異なる課題が重なり、固形腫瘍への効果的な応用設計指針は手薄であった。本稿は Ahmed et al. (J Clin Oncol 2015, doi:10.1200/JCO.2014.58.0225) による HER2 特異的 CAR T細胞を用いた骨肉腫治療試験の Commentary として発表された、CAR T細胞療法の設計原理と将来展望を体系化した Review である。

目的

本 Review の目的は、CAR T細胞療法の設計を構成する標的腫瘍関連抗原 (TAA: tumor-associated antigen) の選択原則、細胞内シグナルドメインの世代別進化、CAR T細胞の持続性と治療効果の相関、安全機構の実装、および免疫抑制TMEの克服戦略を体系的に論じることである。CD19標的 CAR T細胞の B-ALL での革新的成果を出発点として、固形腫瘍への応用拡大に必要な次世代 CAR 設計の要件を特定することが中心的な問いである。著者らが提唱する「armored CAR (装甲CAR)」— プロ炎症性サイトカイン (IL-12等) を腫瘍局所で分泌する遺伝子改変 CAR T細胞 — の概念と前臨床エビデンスを示し、免疫チェックポイント阻害薬との合理的な組み合わせ戦略を論じる。最終的に、最適な CAR T細胞設計のための7段階アルゴリズム (Fig 1) を提示し、固形腫瘍への CAR T細胞療法の発展方向を示すことを目指した。

結果

標的腫瘍抗原 (TAA) 選択の原則とオンターゲット・オフ腫瘍毒性の管理 (Fig 1A-B): CAR T細胞療法の成否を最初に規定するのは、標的とする TAA の適切な選択である。著者らが示す理想的 TAA の4条件は、(1) がん幹細胞を含む全腫瘍細胞への発現、(2) 腫瘍細胞表面への局在、(3) 腫瘍細胞の生存・増殖への関与、(4) 正常組織への発現がないこと、である。しかし現実にはこの4条件を完全に満たす TAA は極めて稀であり、多くの TAA は正常組織にも程度の差はあれ発現しており、これが mAb と比較してはるかに高い感度を持つ CAR T細胞でのオンターゲット・オフ腫瘍毒性の根本的原因となる。実際に CAIX 特異的 CAR T細胞は腎細胞癌患者で正常胆管への毒性を、CEA 特異的 CAR T細胞は大腸癌患者で重篤な大腸炎を引き起こしており、いずれも正常組織での抗原発現が原因であった (Lamers et al. J Clin Oncol 2006; Parkhurst et al. Mol Ther 2011)。本 Review の伴論文であるAhmed et al.では、HER2 陽性の再発/難治性骨肉腫患者 (n=19) に対し安全性を最適化した HER2 特異的 CAR T細胞を投与し、安全に実施可能であることを示した (Fig 1F)。過去にHER2 特異的 CAR T細胞が肺上皮の低レベル HER2 発現を認識して多臓器不全死を引き起こした先例と比較して、Ahmed et al.の設計ではより低親和性の CAR を用いたことが安全性の鍵であった。また、同じ HER2 を標的とするトラスツズマブ (trastuzumab) では心毒性が問題となる一方、HER2 特異的 CAR T細胞では心毒性が生じなかったことは、mAb と CAR T細胞は同一エピトープを標的としても安全性プロファイルが根本的に異なることを示す重要な知見である。オンターゲット・オフ腫瘍毒性の克服戦略として、mAb による正常臓器側の抗原部位ブロック、または2種の TAA を同時認識する組み合わせ抗原認識 (combinatorial CAR) 設計が提唱されている (Kloss et al. Nat Biotechnol 2013)。

CAR 構造と世代別進化:細胞内シグナルドメインの設計原理: CARの設計は細胞外の抗原結合ドメイン (scFv) と細胞内シグナルドメインの2要素からなり、後者の設計が CAR T細胞の機能を規定する。第1世代 CAR (CD3ζ鎖のみ) では、抗原認識後の T細胞活性化シグナルが不十分で増殖・持続性に欠け、早期臨床試験での臨床的有用性は示されなかった (Curran et al. J Gene Med 2012)。第2世代 CAR は CD3ζ 鎖に加えて CD28 または 4-1BB (CD137) の共刺激ドメインを含み、T細胞の活性化・増殖・持続性・抗腫瘍活性を著明に改善した。とりわけ CD19 特異的第2世代 CAR T細胞が成人・小児の再発/難治性 B-ALL で完全奏効率70-90%を達成したことが、この領域への注目を決定的に高めた (Maude et al. NEnglJMed 2014; Lee et al. Lancet 2015; Davila et al. Sci Transl Med 2014)。前臨床データは、CD28 ドメインが短期的な増殖と活性化の速やかな発揮に優れ、4-1BB ドメインが長期的な持続性とメモリー形成に優れる傾向を示唆しているが、最適な組み合わせは状況依存である。2つの共刺激ドメインを含む第3世代 CAR (例: CD3ζ + CD28 + 4-1BB) も開発・試験されているが、最適設計は未確立である。Ahmed et al.の骨肉腫試験ではCD28含有第2世代 HER2 特異的 CAR が採用され、固形腫瘍に対して安全に投与可能であることが確認されたが、臨床的有用性は限定的であった。

CD19 CAR T細胞の臨床実績:持続性・拡大増殖と治療効果の相関 (Fig 1D-F): CAR T細胞投与後の持続性 (persistence) と治療効果の相関は、血液腫瘍領域の複数の臨床試験で明確に示されている。Brentjens et al. Blood 2011 は再発/難治性 B細胞白血病患者 (n=8) に対する CD19 特異的 CAR T細胞の安全性と持続性を報告した主要な初期試験であり、リンパ球除去 (lymphodepletion) 前処置との組み合わせで T細胞の長期持続が確認された。Davila et al. (Sci Transl Med 2014) は 19-28z CAR T細胞を用いた試験 (n=16) で高い完全奏効率と持続性を報告し、Maude et al. NEnglJMed 2014 および Lee et al. Lancet 2015 がそれぞれ独立した施設で CD19 CAR T細胞の有効性を再現した。持続性向上の重要因子として、(1) 共刺激ドメインの組み込み、(2) 投与前リンパ球除去化学療法、(3) セントラルメモリー T細胞 (Tcm: central memory T cell) 表現型の選択が挙げられる (Berger et al. J Clin Invest 2008)。一方、内因性の抗 CAR 免疫応答 — 特にマウス由来 scFv に対する宿主免疫反応 — が CAR T細胞の持続性を制限することがあり (Lamers et al. Blood 2011)、ヒト化または完全ヒト scFv ファージディスプレイライブラリーからの CAR 設計 (Fig 1C) が推奨される。持続性はしかし「もろ刃の剣」でもあり、過度の持続は CD19 特異的 CAR T細胞における長期 B細胞無形成症 (B-cell aplasia) などのオンターゲット・オフ腫瘍毒性の遷延化につながる。最大の臨床的有益性をもたらす最適持続期間は2015年時点では未確立であった。Louis et al. Blood 2011 は神経芽腫患者への CAR T細胞試験で長期の T細胞残存を確認する一方、固形腫瘍での持続性確立が血液腫瘍と比較してより困難であることも示した。

固形腫瘍における免疫抑制腫瘍微小環境 (TME) と CAR T細胞の機能限界: 固形腫瘍での CAR T細胞療法が血液腫瘍ほどの成果をあげられていない最大の要因として、免疫抑制的な TME が挙げられる。固形腫瘍の TME には CD4+ 制御性 T細胞 (Treg: regulatory T cell)、骨髄由来抑制細胞 (MDSC: myeloid-derived suppressor cell)、形質細胞様樹状細胞 (pDC: plasmacytoid dendritic cell)、腫瘍関連マクロファージ (TAM: tumor-associated macrophage) といった内因性免疫抑制細胞群が充満している。さらに、免疫チェックポイント分子 (PD-1/PD-L1、CD80/CTLA-4等) や免疫抑制性サイトカイン — インターロイキン-10 (IL-10) やトランスフォーミング増殖因子β (TGF-β: transforming growth factor β) — が高濃度に存在し、CAR T細胞の活性・増殖・持続性を多面的に抑制する (Vesely et al. Annu Rev Immunol 2011)。Ahmed et al.の骨肉腫試験で観察された CAR T細胞の限定的な効果も、この TME による CAR T細胞の疲弊 (exhaustion) と機能不全が主因として著者らは推定した。また固形腫瘍では、不全な血管新生、化学誘引物質 (chemokine) の不足、細胞外マトリックス (ECM: extracellular matrix) による物理的バリアなどが CAR T細胞の腫瘍内浸潤を阻害する。これらの課題の解決なしに固形腫瘍での CAR T細胞療法の実用化は困難であり、TME を正面から克服する次世代設計が求められた。

安全機構の設計:自殺遺伝子と除去遺伝子 (Fig 1E): CAR T細胞が予期しないオンターゲット・オフ腫瘍毒性やリンパ腫様増殖を生じた場合の緊急停止機構として、自殺遺伝子 (suicide vector) または除去遺伝子 (elimination gene) の CAR T細胞への組み込みが強く推奨される。誘導性カスパーゼ9 (iCASP9: inducible caspase 9) システムは、小分子二量化剤 (AP1903) の投与によって選択的にアポトーシスを誘発する安全スイッチであり、Di Stasi et al. (N Engl J Med 2011; n=10) が同種造血幹細胞移植 (HSCT: hematopoietic stem cell transplantation) 後の患者を対象にその臨床実装を報告した。iCASP9 システムは CAR T細胞が腫瘍を除去した後に残存する T細胞を選択的に排除でき、長期的なオンターゲット毒性 (例: B細胞無形成症) を制御する手段として有望である。切断型 EGFR (huEGFRt: truncated human EGFR transgene) は CAR と共発現させた場合、セツキシマブ (cetuximab, EGFR mAb) による CAR T細胞のin vivo トラッキングと選択的除去を同時に可能にする除去遺伝子として機能する (Wang et al. Blood 2011)。これらの安全機構は初期臨床試験段階にあったが、固形腫瘍への CAR T細胞療法の臨床応用を安全に進める上で不可欠な要件として位置づけられた。

Armored CAR と免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせ戦略 (Fig 1G): 著者らが提唱する次世代設計「armored CAR (装甲 CAR)」は、CAR T細胞に免疫抑制 TME への耐性を付与するための追加的な遺伝子改変戦略である。最も代表的な実装例は IL-12 分泌型 armored CAR T細胞であり、Pegram et al. (Blood 2012) はこの設計が前処置なしで全身腫瘍を根絶できることをマウスモデルで実証した。IL-12 の TME 内局所分泌は、(1) Treg 介在性の CAR T細胞抑制からの保護、(2) 内因性腫瘍浸潤リンパ球 (TIL: tumor-infiltrating lymphocyte) のアネルギー解除と再活性化、(3) エピトープスプレッディング (epitope spreading) の誘導、という多重メカニズムで抗腫瘍効果を増強する。エピトープスプレッディングは、CD19 陰性クローンの出現 (抗原逃避) による再発 B-ALL 症例 (Lee et al. Lancet 2015) に対する克服機序としても重要であり、複数の TAA を内因性免疫系に攻撃させることで単一抗原消失による治療失敗を回避できる可能性を持つ。その他に IL-15 分泌型 CAR T細胞 (Hoyos et al. Leukemia 2010) なども前臨床探索段階にある。単剤 CAR T細胞療法で十分な臨床的有用性が得られない場合は、mAb 介在性の免疫チェックポイント阻害薬 — 抗PD-1/PD-L1 抗体、抗CD80/CTLA-4 抗体等 — との合理的組み合わせが次の選択肢として提案された (Fig 1G)。チェックポイント阻害薬は CAR T細胞の疲弊を防ぐと同時に、内因性の免疫エフェクター細胞 (T細胞、NK細胞等) も追加的に動員することで、CAR T細胞単独療法の限界を補完する可能性がある。

最適 CAR T細胞設計アルゴリズム (2015年時点、Fig 1): 著者らは本 Review において、腫瘍免疫療法のための最適な CAR T細胞を設計する7段階アルゴリズムを Fig 1 に示した。ステップA (Fig 1A): 適切な TAA の同定。ステップB (Fig 1B): 正常組織での発現を基準とした最適標的抗原の二次選択。ステップC (Fig 1C): 免疫原性低減のためヒト scFv ファージディスプレイライブラリーから CAR 構築物を設計。ステップD (Fig 1D): 異種移植マウスモデル (xenotransplantation murine tumor model) での有効性検証。ステップE (Fig 1E): 同系腫瘍モデルでの評価・armored CAR 改良・自殺遺伝子/除去遺伝子の組み込みと検証。ステップF (Fig 1F): 安全性と臨床効果の評価を目的とした CAR T細胞またはarmored CAR T細胞による最初の臨床試験実施。ステップG (Fig 1G): 単剤で不十分な場合に免疫チェックポイント阻害薬等との組み合わせ試験へ進む。このアルゴリズムは、CAR T細胞療法を他の血液腫瘍や固形腫瘍へ外挿するために必要な段階的アプローチを体系化したものであり、将来の臨床試験結果に基づき継続的に修正・更新されることを前提としている。20年超の前臨床評価を経て到達した2015年時点の最先端 CAR T細胞技術を俯瞰するロードマップとして機能する。

考察/結論

本 Review は MSKCC の CAR T細胞プログラムの知見を軸に、2015年時点における CAR T細胞療法の技術的基盤と臨床展望を体系的に論じた。血液腫瘍 — とりわけ再発/難治性 B-ALL への CD19 CAR T細胞療法 — が完全奏効率70-90%という成績を達成したことは、これまでの研究での養子免疫療法の成果と根本的に異なり、免疫療法が一部の血液腫瘍において標準治療を書き換えうることを初めて明確に実証した点で歴史的意義を持つ。

本Reviewが臨床応用の観点から特に重要なのは、固形腫瘍という次なる応用標的に向けて、(1) IL-12分泌型 armored CAR T細胞という新規な設計コンセプト、(2) iCASP9/huEGFRt による安全機構の必要性、(3) 免疫チェックポイント阻害薬との合理的組み合わせという3つの具体的解決策を提示した点にある。これらは免疫抑制 TME という固形腫瘍特有の障壁を克服し、CAR T細胞療法を血液腫瘍から固形腫瘍へ橋渡し (bench-to-bedside) するための重要なアプローチであり、臨床的意義は大きい。既報の CAIX・CEA 特異的 CAR T細胞試験でのオフターゲット毒性の経験と対照的に、Ahmed et al.の試験がより慎重に設計された HER2 特異的 CAR で毒性管理を可能にしたことは、TAA 親和性の最適化が安全性確保の鍵となることを示すものであり、新規な設計知見として今後の固形腫瘍 CAR T細胞試験の礎となる。

残された課題として、固形腫瘍での理想的 TAA 選択 (オフターゲット毒性ゼロの TAA は稀)、免疫抑制 TME の克服戦略のさらなる精緻化、および CAR T細胞の腫瘍内浸潤促進が引き続き重要な今後の検討事項として位置づけられる。CAR T細胞の持続期間の最適化 — 長すぎると毒性が遷延し、短すぎると再発を招く — も未解決の課題であり、より高度な制御機構の開発が求められる。また、本 Review が対象とした B-ALL 以外の血液腫瘍および固形腫瘍への拡大を見据えると、腫瘍ごとの TAA 選択と免疫微小環境の理解に基づく個別最適化された CAR T細胞設計が今後の展望として不可欠である。本稿刊行後の2017年には axicabtagene ciloleucel (Yescarta) と tisagenlecleucel (Kymriah) が FDA 承認を取得し、CD19 CAR T細胞療法は DLBCL および B-ALL の標準治療の一部となった。本 Review はそのマイルストーンへの重要な概念的・技術的基盤を整理した先駆的文献として位置づけられる。

方法

本稿は Review 論文であり、独自の臨床試験データを報告するものではない。CAR T細胞療法に関する既存の臨床試験報告・前臨床研究・関連総説を対象とした文献考察を通じて、設計原理と臨床応用を統合的に論じた。文献検索は PubMed、Embase 等の主要医学データベースを用い、“chimeric antigen receptor T cells”、“adoptive cell therapy”、“B-ALL”、“CD19”、“HER2”、“solid tumor”、“tumor microenvironment”、“IL-12”、“immune checkpoint blockade” 等のキーワードを組み合わせた。本稿のデザインは、同時発表の Ahmed et al. (J Clin Oncol 2015) による HER2 特異的 CAR T細胞を用いた再発/難治性骨肉腫 (osteosarcoma) 第1相臨床試験報告を主要な議論の起点としており、Commentary 形式を取る。対象文献 (n=27) は CAR 設計の各要素 — 標的抗原、シグナルドメイン、持続性、安全機構、TME克服 — を構成する根拠として系統的に検討した。引用された臨床試験では、Kaplan-Meier 法による生存解析、Cox 比例ハザードモデル (Cox regression) による hazard ratio の算出、および標準的な安全性評価基準 (CTCAE) が用いられている。統計手法の適用は本 Review 自体の範囲外であるが、引用データの解釈においてこれらの手法を参照した。本稿の著者は Memorial Sloan Kettering Cancer Center (MSKCC) の CAR T細胞プログラムの知見を軸に論考を展開しており、前臨床データ (異種移植マウスモデル・同系腫瘍モデル) と臨床試験データの両方を統合して議論している。