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Successful resection of mediastinal mediastinal seminoma evaluated the response to induction chemotherapy with fluorodeoxyglucose-positron emission tomography

  • 著者: Yasuto Sakaguchi, Noritaka Isowa
  • Corresponding author: Noritaka Isowa (Division of Thoracic Surgery, Matsue Red Cross Hospital, Matsue, Shimane, Japan)
  • 雑誌: Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery
  • 発行年: 2012
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Case Report
  • PMID: 21881343

背景

原発性縦隔セミノーマは、全縦隔腫瘍の中でも比較的稀な悪性腫瘍であり、診断後速やかに適切な化学療法、特に BEP (bleomycin + etoposide + cisplatin) 療法を開始することが標準的な治療戦略とされている。しかし、化学療法を施行した後に残存する腫瘍(残存腫瘤)に対する至適な管理方針や追加治療介入のタイミングについては、依然として世界的なコンセンサスが得られていないのが現状である。

従来、Motzer et al らは、化学療法後に 3 cm 以上の残存腫瘤を有する進行性セミノーマ患者においては、生存腫瘍細胞が残存している可能性が高いため追加の外科的切除が推奨されると報告している。一方で、Schultz et al. (1989) らの先行研究においては、導入化学療法後に画像上の残存影を有する症例に対しても、即座の切除は行わず綿密な経過観察を行い、再発が確認された時点でサルベージ治療を施行する方針を推奨している。このように、先行研究の間でも残存腫瘤の管理におけるアプローチには大きな乖離が存在しており、最適な治療方針は未確立のままである。

近年、FDG-PET (fluorodeoxyglucose-positron emission tomography) は、化学療法後の残存セミノーマにおける生存腫瘍組織(活性腫瘍細胞)の有無を予測するための極めて有用な非侵襲的ツールとして臨床応用されるようになった。deoxy et al. 2 18fluoro らの多施設共同前向き試験 (SEMPET trial) や、Becherer et al. (2005) らの報告によれば、精巣セミノーマの化学療法後残存病変において、FDG-PET は生存腫瘍の予測において従来の CT よりも高い精度を示すことが実証されている。

しかしながら、原発性縦隔セミノーマにおける化学療法前後の FDG-PET/CT を用いた応答評価に関する報告はきわめて限定的であり、精巣セミノーマで得られた知見が解剖学的環境の異なる縦隔セミノーマにそのまま外科的に外挿可能であるかについては未解明な点が残されている。特に、化学療法後の残存腫瘤における FDG の異常集積が、必ずしも活性を持つ腫瘍細胞の存在を意味しない可能性については十分な検証がなされておらず、臨床現場における判断材料が著しく不足しているという知識ギャップ (knowledge gap) が存在していた。本症例は、縦隔セミノーマに対する BEP 療法後に FDG-PET/CT で残存集積を認めたものの、外科的切除後の病理組織学的検査で完全壊死であることが証明された極めて貴重な一例であり、この未解明な課題に対して重要な知見を提供するものである。

目的

本研究の目的は、極めて稀な疾患である原発性縦隔セミノーマの症例を対象とし、導入化学療法である BEP 療法に対する治療反応性評価において FDG-PET/CT を適用した際の臨床的意義と限界を検証することである。具体的には、化学療法後に縮小したものの残存した腫瘍における FDG 集積 (SUVmax: maximum standardized uptake value) の程度と、外科的に完全切除された組織の病理組織学的所見(生存腫瘍細胞の有無、壊死、石灰化、線維化の程度)を直接対比することにより、FDG 集積が残存活性細胞の存在をどの程度正確に反映しているかを評価する。これにより、縦隔セミノーマ治療後の残存腫瘤管理における意思決定プロセスを最適化するための学術的基盤を提供することを目指す。

結果

初診時における巨大前縦隔腫瘍の同定: 患者は既往歴のない 26 歳男性 (n=1) で、左上肢および顔面の腫脹、胸部圧迫感を主訴に受診した。胸部 X 線写真にて著明な縦隔拡大が認められ (Fig. 1)、胸部 CT にて前縦隔に直径 8.0 cm の巨大な分葉状腫瘍が確認された (Fig. 2A)。FDG-PET/CT 検査を施行したところ、同腫瘍に SUVmax 9.00 という極めて高度な FDG 集積を認めた (Fig. 2B)。血清腫瘍マーカーである CEA、CYFRA、Pro-GRP、AFP、HCGβ はすべて正常範囲内であった。全身麻酔下で腫瘍の部分切除(生検術)を施行し、得られた組織の H&E 染色では、小型の成熟リンパ球と巨核細胞が密に凝集する特徴的な像が観察された。免疫染色プロファイルは LCA (+), AE1/AE3 (+), c-kit (+), PAP (+), CD-30 (-), AFP (-) であり、病理学的に原発性縦隔セミノーマの診断が確定した (Fig. 3A)。

BEP化学療法による形態学的縮小効果: 診断確定後、直ちに BEP 化学療法を開始した。1 コースの治療終了後、患者が訴えていた左上肢・顔面腫脹および胸部圧迫感の臨床症状は完全に消失した。計 3 コースの BEP 療法を完了した時点で治療効果判定のための画像評価を実施した。胸部 CT において、前縦隔腫瘍の最大径は初診時の 8.0 cm から 2.5 cm へと著明に縮小しており、形態学的には極めて良好な部分奏効 (PR: partial response) を示した (Fig. 2C)。腫瘍径の縮小率は 68.7% に達していた。

残存腫瘤におけるFDG集積持続と外科的切除: 化学療法により腫瘍径は 3 cm 未満(2.5 cm)にまで縮小したものの、治療後に施行した FDG-PET/CT では、残存する腫瘤組織に SUVmax 2.73 の異常集積が依然として持続していることが示された (Fig. 2D)。この持続的な FDG 集積所見から、腫瘍内に生存している活性がん細胞 (viable cells) が残存している可能性が強く疑われたため、根治を目指して外科的切除を計画した。手術は正中胸骨切開にて施行され、腫瘍は大動脈弓およびその分枝に強固に癒着していた。特に左腕頭静脈と上大静脈の合流部における癒着が激しく、剥離困難と判断されたため、上大静脈の接線切除を施行するとともに、浸潤が疑われた左腕頭静脈を腫瘍と一括して en bloc にて切除した (Fig. 3C, 3D)。切除された組織の総重量は 55 g、全体のサイズは 10 x 7 x 2 cm であり、その内部に 4.5 x 3.5 x 1.7 cm の分葉状を呈する壊死性黄色調腫瘍が確認された。術後経過は極めて良好であり、合併症なく退院した。

切除標本の病理組織学的解析と無再発生存: 切除された残存腫瘤の全割標本を作製し、詳細な顕微鏡学的検索を行った。その結果、SUVmax 2.73 の FDG 集積を示していた領域を含め、切除された腫瘍組織内には生存しているセミノーマ細胞 (viable cells) は全く認められず、生存細胞割合は 0% であった (Fig. 3B)。腫瘍組織の大部分は完全な凝固壊死に陥っており、壊死組織内には広範な石灰化 (calcification) と線維化 (fibrillation) の変化が確認された。この病理組織学的結果は、化学療法後の FDG-PET/CT で観察された SUVmax 2.73 の異常集積が、残存する活性腫瘍細胞によるものではなく、腫瘍が急速に崩壊した後の組織修復過程において生じたマクロファージ等の浸潤を伴う炎症性変化を反映していたものであることを強く示唆している。術後、患者は追加治療を行うことなく経過観察され、術後 16 ヶ月が経過した時点においても臨床的・画像的に再発の兆候は一切認められず、無再発生存 (NED: no evidence of disease) を維持している (Fig. 4)。

考察/結論

先行研究との違い: 本症例は、原発性縦隔セミノーマに対する導入化学療法(BEP 療法)後の残存腫瘤評価において、FDG-PET/CT 所見と実際の病理組織学的所見との間に顕著な乖離が存在することを明確に示した。精巣セミノーマを対象とした先行研究である deoxy et al. 2 18fluoro らの報告(SEMPET trial)では、化学療法後の残存腫瘤における生存腫瘍の予測において FDG-PET が極めて高い信頼性(感度 80%、特異度 100%)を有すると報告されている。しかし、本症例における経過はこれら精巣セミノーマでの良好な予測能に関する報告とは対照的であった。本症例では、化学療法後に腫瘍径が 2.5 cm に縮小したものの、SUVmax 2.73 の異常集積が持続したため生存細胞の存在が疑われたが、病理組織学的には生存腫瘍細胞は 0% であり、完全壊死組織と石灰化・線維化のみが確認された。

新規性: 本研究の新規性は、原発性縦隔セミノーマの化学療法後評価において、FDG-PET/CT による持続的な FDG 集積が、活性を有する残存腫瘍細胞ではなく、腫瘍崩壊後の組織修復過程における炎症性変化(肉芽腫形成や線維化、石灰化に伴うマクロファージの集積など)を反映している可能性を、実際の切除標本の全割病理検索によって本研究で初めて具体的に実証した点にある。これは、縦隔セミノーマにおける化学療法後の PET 陽性所見の解釈において、偽陽性のリスクを十分に考慮すべきであるという警鐘を鳴らす重要な知見である。

臨床応用: 本知見は、縦隔セミノーマ治療後の画像評価および治療戦略決定における重要な臨床的含意を持つ。臨床現場においては、Motzer et al. JClinOncol 1987 が提唱した「3 cm 以上の残存腫瘤に対する外科的切除」という従来の基準や、PET 陽性という単一の指標のみに基づいて、安易に追加の化学療法や放射線治療などの侵襲的治療を選択することの限界を認識すべきである。一方で、本症例のように腫瘍が大血管構造に高度に癒着している場合、外科的切除を施行することは、残存病変の完全な制御(根治)と、確実な病理学的確定診断(生存細胞の有無の確認)を同時に達成できるため、極めて有用な臨床的選択肢となり得る。

残された課題: 今後の検討課題 (limitation) として、縦隔セミノーマにおける化学療法後の適切な画像評価時期(炎症が消退する十分な待機期間の策定)の確立が挙げられる。また、炎症性変化と残存活性腫瘍をより正確に鑑別するために、FDG 以外の新規 PET トレーサー(例えば増殖能を反映する FLT など)の導入や、より大規模な多施設共同前向き研究による SUVmax 閾値の再検証が必要である。

方法

本研究は、当院において経験された 26 歳男性の原発性縦隔セミノーマ症例を対象とした単一症例報告 (Case Report) である。患者は左上肢および顔面の腫脹、胸部圧迫感を主訴に来源し、画像診断および病理組織学的診断を経て原発性縦隔セミノーマと診断された。

診断確定後、患者に対して bleomycin、etoposide、cisplatin を組み合わせた標準的な BEP 化学療法を計 3 サイクル施行した。化学療法の治療効果判定は、胸部造影 CT による腫瘍径の形態学的変化の測定、および FDG-PET/CT による SUVmax の定量評価を組み合わせて実施した。化学療法終了後の FDG-PET/CT において、腫瘍径は縮小したものの残存腫瘤に持続的な FDG 異常集積が認められたため、生存腫瘍細胞の残存を疑い、外科的完全切除の適応と判断した。

外科手術は、仰臥位での標準的正中胸骨切開 (median sternotomy) アプローチにより施行された。腫瘍が大動脈弓やその主要分枝、上大静脈 (SVC: superior vena cava) などの大血管構造に高度に癒着・浸潤している可能性を考慮し、術中に人工血管置換術や人工心肺 (cardiopulmonary bypass) の導入が必要となった場合に備えて、直ちに人工心肺を確立できる準備を整えた上で手術を開始した。腫瘍と周囲の大血管との慎重な剥離を試み、剥離困難な部位については上大静脈の接線切除 (tangential resection) および左腕頭静脈 (left brachiocephalic vein) の en bloc 共同切除を施行した。

切除されたマクロ標本は、直ちに固定処理を施した後に詳細な病理組織学的検査に供された。ヘマトキシリン・エオジン (H&E) 染色を用いて、組織内の生存腫瘍細胞 (viable cells) の有無、凝固壊死、石灰化、および線維化の程度を詳細に顕微鏡下で観察した。また、初回生検時の組織に対しては、LCA (leukocyte common antigen)、AE1/AE3、c-kit、PAP (prostatic acid phosphatase)、CD-30、AFP (alpha-fetoprotein) に対する免疫組織化学 (IHC) 染色を施行し、セミノーマの確定診断を行った。本研究は単一症例の経過を詳細に追跡した記述的評価であり、統計学的解析には記述統計のみを用いた。