• 著者: Byers LA, et al.
  • Corresponding author: Byers LA (MD Anderson Cancer Center)
  • 雑誌: Nature Medicine
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-05-07
  • Article種別: Original Article (Phase 1 Clinical Trial)
  • 試験登録番号: NCT05599984
  • PMID: 42225988

背景

再発・難治性小細胞肺癌(R/R SCLC: relapsed/refractory small cell lung cancer)は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を含む一次治療後に急速に進行し、有効な二次治療選択肢が限られる。IMpower133試験(atezolizumab+EP; OS 12.3 vs 10.3ヶ月)・CASPIAN試験(durvalumab+EP; OS 13.0ヶ月)でICI追加により一次治療は改善されたが、12ヶ月時点での奏効持続は15-23%のみと持続性が低いHorn et al. NEnglJMed 2018。二次治療のtopotecan(中央値OS 25.9週、Morgensztern et al.)・lurbinectedin(ORR 35.2%・OS 9.3ヶ月、Trigo et al. 2020)は不十分な成績にとどまり、platinum耐性患者での奏効率は20%未満という依然として不足している実態があるIO原発性耐性。SEZ6(seizure-related homolog 6)はSCLCおよび高悪性度神経内分泌腫瘍(NEN: neuroendocrine neoplasm)に選択的かつ高度に発現するI型膜貫通タンパク質であり、正常非神経内分泌組織での発現は最小限という腫瘍特異性を持つ。先行する第一世代ABBV-011(calicheamicin; DAR(drug-to-antibody ratio) 2)でORR 25%が示されたが、限定的有効性・肝毒性により開発中断となり、ペイロード最適化が不可欠という gap が明確化された(Wiedemeyer et al. 2022)。次世代設計としてDAR 6・安定リンカー・TOP1阻害薬(Top1i: topoisomerase 1 inhibitor)ペイロードを採用したABBV-706が開発され、前臨床PDXモデルでABBV-011・標準化学療法を上回る活性が確認されたが、最適用量・安全性プロファイル・R/R SCLCにおける本格的な有効性データは未確立という重要な gap が存在した。

目的

ABBV-706単剤療法の安全性・忍容性・薬物動態(PK: pharmacokinetics)・免疫原性・抗腫瘍活性をPhase 1試験で評価し、R/R SCLCにおける推奨Phase 2用量(RP2D: recommended phase 2 dose)を確立すること。

結果

安全性プロファイルと最大耐量(MTD):

全単剤療法患者(N=240)のGrade 3+治療関連有害事象(TRAE: treatment-related adverse event)は61%で用量依存性を示した(1.3mg/kg 40%→1.8mg/kg 40%→2.5mg/kg 70%→3.0mg/kg 87%→3.5mg/kg 100%)(Table 2a)。MTD(最大耐量)は3.0mg/kgに確立された(3.0mg/kgでGrade 4白血球減少・好中球減少>7日、3.5mg/kgでGrade 4血小板減少という用量制限毒性)。最頻TRAE: 貧血(61%)・疲労感(38%)。肺炎/ILD: 単剤全体n=240で10例(4%)・Grade 3+は4例(2%)、中央値発現時間96日(範囲37-291日)。治療中断率: 単剤全体n=240の6.7%(主因: 肺炎n=9(4%)・血小板減少n=2(1%))。治療関連死: 3例(血小板減少1例、肺炎2例)。PK: 1.3-3.5mg/kgで線形用量依存性PK、終末半減期は抗体コンジュゲート約7日・遊離Top1iペイロード約10日。

有効性:全R/R SCLCコホート(n=124):

全R/R SCLCモノセラピーコホート(Parts 1/2a/2c、n=124)において: ORR 52%(65/124)・中央値DOR 5.3ヶ月(95%CI 4.1-6.7)・中央値PFS 5.4ヶ月(95%CI 4.4-5.7)・中央値OS 11.3ヶ月(95%CI 9.1-14.8)・15ヶ月時点OS推定40%(95%CI 30-49)(Fig 2, Table 3)。Platinum耐性(<90日CTFI(化学療法フリー間隔: chemotherapy-free interval))および難治性(<30日CTFI)患者でも全体と同程度のORRが観察され、ABBV-706はPlatinum耐性/難治性患者でも化学療法耐性機序と独立した活性を維持した。R/R SCLC全コホートでのGrade 3+TRAEは61%で、主要毒性は貧血(54%→Grade 3+)・好中球減少(20-31%)であった(Table 2b)。ILDはABBV-706(4%)と比較しB7-H3標的I-DXd(ifinatamab deruxtecan: イフィナタマブ デルクステカン; 12.4%)より低率であった。

有効性:Part 2a用量最適化コホート:

Part 2a 1.8mg/kg(n=41): ORR 56%(23/41)・中央値DOR 5.9ヶ月(95%CI 3.6-11.1)・中央値PFS 6.4ヶ月(95%CI 4.0-8.1)・中央値OS 12.4ヶ月(95%CI 8.2-17.3)・15ヶ月OS推定44%(95%CI 27-59)(Fig 3)。2L(二次治療)専用サブセット(n=17): ORR 82%(14/17)・中央値DOR 6.6ヶ月(95%CI 3.1-12.5)・中央値PFS 6.8ヶ月(95%CI 4.0-12.5)・中央値OS 14.3ヶ月(95%CI 7.8-NE)・15ヶ月OS推定50%(95%CI 24-71)(Table 3)。Part 2a 2.5mg/kg(n=39): ORR 59%(23/39)・中央値DOR 4.9ヶ月(95%CI 3.5-6.9)・中央値OS 11.9ヶ月(95%CI 6.7-16.7)。ORRは1.8mg/kg vs 2.5mg/kgで同等だが、DOR・PFS・OSはすべて1.8mg/kgで数値的に優位だった。

探索的バイオマーカー解析:

SEZ6 IHC陽性率: 93%(108/116; 1%以上かつ1+強度以上)。中央値SEZ6細胞膜Hスコア: 145(四分位範囲58.5-190)(Extended Data)。SEZ6発現は他の既知バイオマーカー(DLL3等)と比較して高発現を示した(Fig 2f)。重要な知見として、SEZ6 Hスコアの中央値でORR・PFS・OSとの有意な相関は観察されなかった(P=0.7424 Wilcoxon test; Fig 2e)。ctDNA(循環腫瘍DNA)動態: 1.8mg/kg・2.5mg/kg両コホートでC2D1(第2サイクル1日目: cycle 2 day 1)・C3D1から急速かつ深い低下が観察され、奏効例では非奏効例と比較して有意に顕著だった(Extended Data Fig 7)。ctDNA低下の早期出現はABBV-706の迅速な抗腫瘍作用を示す。Top1i既往曝露による影響: Top1i(topoisomerase 1 inhibitor; topotecan・irinotecan等)未曝露患者のORR 62% vs 曝露患者42%、先行Top1i療法の耐性への関与が示唆された。なおADA(anti-drug antibody: 抗薬物抗体)陽性は8.3%(20/240)で低い免疫原性が確認された。

考察

先行研究のtopotecan(ORR <20%・OS 25.9週)・lurbinectedin(ORR 35%・OS 9.3ヶ月)という従来二次治療の標準と比較すると、本試験のABBV-706(全SCLCコホートORR 52%・OS 11.3ヶ月、2L専用サブセットORR 82%・OS 14.3ヶ月)はと異なる活性水準を示し、SEZ6標的TOP1阻害薬ADCという設計革新による従来化学療法では達成不可能な有効性を実証した新規なエビデンスであるADC耐性機序。特に、platinum耐性・難治性サブグループでも全体と同程度のORRが維持されたことは、SCLCにおける化学療法耐性に対しADCが独立した活性経路を持つことを示す重要な新規な知見である。

臨床応用の観点では、SEZ6 IHC陽性率93%という非常に高いユニバーサル標的発現は患者選択なしでの広い適用可能性を示し、IHCスコアとORR/OS間の相関がないことは、SEZ6発現量によるコンパニオン診断が不要である可能性を示唆する点で液体生検モニタリングの役割の観点からも重要である。2L(二次治療)でのORR 82%・OS 14.3ヶ月は、現在の二次治療標準を抜本的に塗り替える可能性を持つ。Grade 3+TRAEが1.8mg/kgで54%と管理可能である一方、肺炎/ILD 4%(Grade 3+2%)は他のTOP1阻害薬ADC(I-DXd ILD 12.4%)と比較して低率だが、早期検出プロトコルの整備は不可欠という残された課題がある。Top1i曝露歴がある患者でのORR低下(62% vs 42%)は交差耐性の可能性を示唆し、Top1i未曝露患者への優先投与戦略と、今後の残された課題として複数ペイロードADCの開発が示唆される耐性機序。SEZanne Phase 2試験(NCT07155174)での第三相規模の確認と一次治療への拡大が今後の最重要課題である。

結論

ABBV-706(SEZ6標的・TOP1阻害薬ADC)のPhase 1試験では、R/R SCLC全コホート(n=124)でORR 52%・中央値OS 11.3ヶ月を達成し、2L専用サブセット(n=17)ではORR 82%・OS 14.3ヶ月という極めて高い活性が示された。安全性・有効性・PKの総合的評価から1.8mg/kg Q3WがRP2Dとして確立され、SEZ6発現率93%というユニバーサルな標的発現と患者選択不要の広い適用可能性が確認された。

方法

非盲検Phase 1試験(NCT05599984; first-in-human試験)。ABBV-706を3週毎静脈内投与(Q3W)。試験構成: Part 1(用量漸増; 全固形腫瘍; 1.3-3.5mg/kg)・Part 2a(用量最適化・拡大; R/R SCLCのみ; 1.8mg/kgまたは2.5mg/kg無作為化)・Part 2c(中国R/R SCLC; 1.8mg/kg)・Part 4a/4b(中枢神経系腫瘍/高悪性度NEN拡大; 2.5mg/kg)。対象: 進行固形腫瘍患者(Parts 1/2/4)、計288例が登録(単剤療法n=240: R/R SCLC n=124含む; Part 2a n=80: 1.8mg/kg n=41、2.5mg/kg n=39)。データカットオフ: 2025年9月27日。主要評価項目: 安全性・忍容性・PK・免疫原性・抗腫瘍活性・RP2D決定。副次/探索的評価項目: 奏効率(ORR: objective response rate)・無増悪生存期間(PFS: progression-free survival)・全生存期間(OS: overall survival)・奏効持続期間(DOR: duration of response)・SEZ6発現とORR/PFS/OS相関・循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)動態。RECIST v1.1による腫瘍評価。Kaplan-Meier法によるPFS・OS推定、独立判定委員会による間質性肺疾患(ILD: interstitial lung disease)/肺炎の判定。