IL-35 (インターロイキン-35)
一行要約
IL-35 は Treg 由来の免疫抑制性サイトカイン (EBI3/IL-12α ヘテロダイマー) であり、TME における T 細胞疲弊の促進・effector T 細胞の抑制・Treg/Breg の拡大を介して腫瘍免疫逃避を駆動する。
産生と制御
IL-35 は EBI3 (Epstein-Barr virus induced 3) と IL-12α (p35) のヘテロダイマーであり、IL-12 ファミリー (IL-12、IL-23、IL-27、IL-35) に属する。IL-12 (p35/p40) や IL-27 (p28/EBI3) とサブユニットを共有するが、IL-35 は同ファミリーで唯一の 免疫抑制性 メンバーである。
主要産生源は以下の通り:
- Treg (制御性 T 細胞) : Foxp3+ Treg が主要な IL-35 産生源。Foxp3 依存的に EBI3 と p35 の co-expression が制御される。IL-35 は Treg の suppressive 機能の一部 (in vivo での homeostasis 制御・移植免疫寛容) に不可欠
- Breg (制御性 B 細胞) : IL-35 産生 B 細胞 (i35-Breg) が TME で同定されており、IL-10 / IL-35 dual 産生により強力な免疫抑制を発揮
- 腫瘍細胞: 一部のがん種 (膵癌・大腸癌・肺癌) で腫瘍細胞自身が IL-35 を産生
受容体は IL-12RB2/gp130 (IL6ST) ヘテロダイマーであるが、IL-12RB2/IL-12RB2 ホモダイマーや gp130/gp130 ホモダイマーを介したシグナルも報告されている。下流シグナルは STAT4 (特異な STAT1:STAT4 ヘテロダイマー形成) であり、EBI3 / p35 の転写誘導を介した positive feedback で IL-35 産生をさらに増幅する。
がんにおける役割
Treg-mediated 免疫抑制の増幅
IL-35 は Treg の免疫抑制メカニズムの主要エフェクターの一つである (IL-10、TGF-β、CTLA-4 と並列)。TME では Treg 由来 IL-35 が以下の免疫抑制効果を発揮する:
- Effector T 細胞の増殖抑制: CD4+ / CD8+ T 細胞の cell cycle arrest を誘導
- CD8+ T 細胞疲弊の促進: PD-1、Tim-3、LAG-3 等の exhaustion marker の upregulation を介して terminal exhaustion への移行を加速
- iTr35 細胞の誘導: conventional T 細胞を IL-35 産生型 induced Treg (iTr35) に変換する “infectious tolerance” を駆動。iTr35 は Foxp3 非依存的に IL-35 を産生し、免疫抑制を拡散する
Breg 拡大と抗腫瘍 B 細胞応答の抑制
IL-35 は Breg の分化・拡大を促進し、抗腫瘍抗体応答と B 細胞依存的 T 細胞 priming を抑制する。TME 内 Breg (IL-35+ / IL-10+ B 細胞) は TLS 内の胚中心反応を阻害し、抗腫瘍 B 細胞応答を functional に無効化する可能性がある。
血管新生の促進
IL-35 は内皮細胞に直接作用して血管新生を促進する。IL-35 → STAT1 → Angiopoietin-2 / VEGF 経路が報告されており、腫瘍の neovascularization に寄与する。
腫瘍転移の促進
IL-35 は EMT 促進・MMP 発現誘導を介して腫瘍の浸潤・転移能を増強する。大腸癌・膵癌モデルで IL-35 の高発現が肝転移・腹膜転移と正の相関を示す。
バイオマーカーとしての価値
血清 IL-35 レベルは多くのがん種 (肺癌・大腸癌・膵癌・胃癌・乳癌) で健常対照と比較して上昇しており、高 IL-35 血清レベルは予後不良因子として報告されている。腫瘍浸潤 Treg の IL-35 発現レベルは CD8+ T 細胞浸潤の密度と逆相関する。
治療標的化
| 標的 / 戦略 | 薬剤 | 状態 | 文脈 |
|---|---|---|---|
| Anti-IL-35 中和抗体 | 研究用抗体 | 前臨床 | マウスモデルで腫瘍増殖抑制・CD8+ T 浸潤増加 |
| Anti-EBI3 | EBI3 特異的抗体 | 前臨床 | IL-27 (EBI3/p28) も阻害するリスク |
| Treg depletion (上流) | Anti-CCR4 (Mogamulizumab)、低用量 cyclophosphamide | 承認 / Phase II | IL-35 産生源の除去 |
| Anti-PD-1 + anti-IL-35 | 併用 | 前臨床 | IL-35 阻害で CD8+ T 疲弊を抑制 → anti-PD-1 応答増強 |
| STAT1/STAT4 阻害 | 下流遮断 | 前臨床 | IL-35 正のフィードバック遮断 |
臨床的課題: IL-35 は比較的最近発見されたサイトカインであり (2007 年に Treg 由来抑制性サイトカインとして同定)、臨床開発は初期段階にある。anti-IL-35 の課題は EBI3 標的時の IL-27 cross-inhibition (IL-27 は抗腫瘍的側面を持つ) と、p35 標的時の IL-12 cross-inhibition (IL-12 は強力な抗腫瘍サイトカイン) を回避する特異性の確保である。EBI3/p35 ヘテロダイマー特異的な阻害戦略が理想的。
Open Questions
- IL-35 特異的阻害の実現: EBI3/p35 ヘテロダイマーのみを標的とし、IL-12 / IL-27 を温存する抗体・小分子の開発
- iTr35 の in vivo 生物学: infectious tolerance (iTr35 誘導) の速度・範囲と IO 抵抗性への定量的寄与
- IL-35+ Breg と TLS の関係: Breg が TLS 内 GC 反応を阻害するメカニズムの解明
- 血清 IL-35 の IO バイオマーカー: anti-PD-1 応答予測における血清 IL-35 レベルの前向き検証
- IL-35 と IL-10 の redundancy: Treg の抑制メカニズムにおける IL-35 vs IL-10 の相対的寄与
- 肺がんにおける IL-35: NSCLC TME での Treg IL-35 発現と IO 応答の correlation
関連エンティティ・概念
- 経路: JAK-STAT-pathway
- 産生細胞: Treg / B-cell
- 関連サイトカイン: IL-10 / IL-12 / IL-27 / TGF-beta
- 関連概念: Tertiary-lymphoid-structure / T-cell-exhaustion
- 治療: PD-1-inhibitor / Mogamulizumab
- MOC: cancer-biology