KDM5A (Lysine Demethylase 5A / JARID1A)

一行要約

KDM5A (JARID1A/RBP2) は H3K4me3/me2 を脱メチル化する Jumonji 型ヒストン demethylase で、活性プロモーターの転写マークを除去して遺伝子発現を抑制し、クロマチン状態と細胞運命を制御する。EGFR 変異肺がんなどで可逆的な薬剤耐性 persister (drug-tolerant persister, DTP) 状態の確立に必須であり、肺がんの epigenetic 治療耐性・DTP の文脈で wiki に登場する。

主要エビデンス

  • がん細胞亜集団のクロマチン介在性可逆的薬剤耐性状態 (DTP) が IGF1R シグナルと KDM5A (RBP2) 依存的クロマチン変化で確立される (Sharma et al. Cell 2010)
  • 薬剤耐性 persister 細胞のランドスケープと臨床的含意の総説で KDM5A 依存的 DTP 機構が整理される (Mikubo et al. JThoracOncol 2021)
  • 腫瘍進化の源としての epigenomic heterogeneity の文脈でヒストン demethylase が論じられる (Laisne et al. NatRevCancer 2025)
  • プラチナ系治療の再発見の総説で KDM5 系を含むエピジェネティック耐性因子が議論される (Rottenberg et al. NatRevCancer 2021)

メカニズム

KDM5A は Jumonji C ドメインで α-ケトグルタル酸/Fe2+ 依存的に H3K4me3/me2 を脱メチル化し、活性転写マークを除去して遺伝子を抑制する。PHD finger でヒストン修飾を読み取り、SIN3/HDAC など抑制複合体と協調してクロマチンを凝縮させる。EGFR-TKI 等の薬剤曝露下で一部の癌細胞が IGF1R シグナルと KDM5A 依存的に H3K4/H3K27 メチル化を再編成し、増殖を停止した可逆的薬剤耐性 (persister) 状態に入る。この状態は HDAC 阻害や KDM5 阻害で解消されうる。

臨床位置づけ

KDM5A は薬剤耐性 persister 細胞の標的として注目され、HDAC 阻害・KDM5 阻害・IGF1R 阻害を併用して DTP プールを枯渇させ獲得耐性の出現を遅らせる戦略の基盤となる。肺がんでは EGFR-TKI 等の標的治療における残存細胞・再発の源として重要だが、KDM5A 阻害剤の臨床応用は前臨床/早期段階にとどまる。

Open Questions

  • KDM5A/DTP を標的化して肺がんの標的治療耐性を遅延/克服できるか
  • 選択性の高い KDM5 阻害剤の開発と既存治療との併用最適化