- 著者: Claire L. Sutherland, N. Jan Chalupny, David Cosman
- Corresponding author: Claire L. Sutherland (Department of Molecular Biology, Immunex Corporation, Seattle, WA, USA)
- 雑誌: Immunological Reviews
- 発行年: 2001
- Epub日: N/A
- Article種別: Review
- PMID: 11513139
背景
自然免疫系のリンパ球であるNK細胞は、腫瘍細胞や特定のウイルス・細菌感染細胞に対する免疫応答において重要な役割を果たすと考えられている (1)。NK細胞はまた、自然免疫系および適応免疫系の他の細胞を動員・活性化するサイトカインやケモカインの重要な供給源でもある (2-4)。NK細胞が正常細胞と腫瘍細胞または病原体感染細胞を識別するメカニズムは完全には解明されていないが、標的細胞表面に発現するMHC class I分子のレベルの変化を検出するNK細胞活性化受容体と抑制性受容体が、この検出システムの主要な構成要素であることが知られている (5, 6)。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞のようにMHC class I分子の発現が撹乱されると、活性化受容体と抑制性受容体のバランスが変化し、NK細胞が殺傷を誘発される。
MHC class Iに対するNK細胞受容体は、ヒトではNKG2 (Natural Killer Group 2) およびKIR (Killer cell Immunoglobulin-like Receptor) ファミリーに、マウスではNKG2およびLy49 (Lymphocyte antigen 49) 受容体ファミリーに属する。NKG2、KIR、Ly49分子は、その細胞質領域の構造に応じて、NK細胞に活性化シグナルまたは抑制シグナルのいずれかを伝達する (6, 7)。最近まで、MHC class I分子のNK細胞認識によって生成される抑制シグナルは、あらゆる活性化シグナルに対して優位であると考えられており、正常量のMHC class I抗原を発現する細胞はNK細胞による殺傷から保護されるとされていた (8)。しかし、ULBP (UL16-binding proteins) とMIC (MHC class I-related chain molecules) という、遠縁の2つの非古典的MHC class I分子ファミリーが、NK細胞に結合し、抑制性MHC class I受容体のエンゲージメントによって生成される負のシグナルを打ち消すことができる刺激シグナルを生成することが示された (9, 10)。この刺激シグナルは、NK細胞だけでなくT細胞や活性化マクロファージにも発現する活性化受容体複合体NKG2D (Natural Killer Group 2D) /DAP10 (DNAX-activating protein 10) によって媒介される (10, 11)。これらの新しい発見は、MHC class Iレベルが変化していないNKG2Dリガンド発現標的をNK細胞が認識し殺傷する能力に影響を与える。興味深いことに、ULBPはNK細胞の制御能力によってではなく、ヒトサイトメガロウイルス (HCMV) 糖タンパク質UL16 (Unique Long 16) の細胞標的として同定された (9)。HCMVは、免疫応答を拮抗し回避するために多数の戦略を進化させてきた一般的なβヘルペスウイルスである。例えば、HCMVはMHC class I分子の表面発現を下方制御し、CCケモカインを隔離し、MHC class II抗原の誘導を妨害するタンパク質をコードしている (12)。これらのメカニズムが複合的に作用することで、HCMVは宿主の生涯にわたって潜伏状態を維持できる。しかし、骨髄移植レシピエントやAIDS患者のような免疫不全者では、ウイルスが再活性化し、制御不能な様式で複製して生命を脅かす結果となる (13, 14)。NK細胞はサイトメガウイルス (CMV) 感染の制御に重要な役割を果たす (15-17)。HCMV感染細胞におけるMHC class I発現の下方制御は、T細胞監視からの保護を提供する一方で (18, 19)、感染細胞をNK細胞攻撃に感受性にする可能性もある。これらの観察と、HCMVが機能不明の多くの糖タンパク質をコードしているという事実から、さらなるHCMV免疫調節因子が存在する可能性が示唆される。免疫応答の制御に関する洞察を提供する可能性のある新しいウイルス免疫調節因子を発見する目的で、著者らのグループはHCMV糖タンパク質UL16に焦点を当てた。UL16は、タイプI膜貫通型糖タンパク質と予測され、HCMV感染細胞によって発現され、in vitroでのHCMV増殖には非必須であるため (20)、候補免疫調節因子として選択された。ULBPの発見は、NK細胞活性化とHCMV免疫逃避の両面で重要な知見を提供するが、ULBPの生理的および病理的条件下でのタンパク質発現制御の全容は未解明な点が残されている。特に、ULBPのin vivoでの発現制御メカニズムや、様々な疾患におけるその役割については、まだ知識が不足している。
目的
本総説は、HCMV糖タンパク質UL16との結合によって同定された新規MHC class I関連リガンドファミリーであるULBP (ULBP1、ULBP2、ULBP3) の構造的特徴、NKG2D/DAP10受容体複合体との結合、NK細胞活性化シグナル伝達経路、マウスおよびヒトNKG2Dリガンドとの比較、およびHCMV UL16による免疫逃避機構についてレビューすることを目的とする。特に、ULBPがMHC class I発現が正常な標的細胞においてもNK細胞の細胞傷害性およびサイトカイン産生を活性化するメカニズム、そしてULBPがJAK2 (Janus Kinase 2)、STAT5 (Signal Transducer and Activator of Transcription 5)、ERK (Extracellular-signal-Regulated Kinase) MAP (Mitogen-Activated Protein) キナーゼ、Akt/PKB (Protein Kinase B) シグナル伝達経路を活性化し、IL-12 (Interleukin-12) と強く相乗作用してIFN-γ (Interferon-gamma) 産生を誘導する経路の詳細を明らかにすることを目的とする。さらに、HCMVのUL16がULBPやMICBを隔離することで免疫逃避を可能にする可能性についても考察し、これらの知見が腫瘍免疫および抗ウイルス免疫におけるULBPの生物学的意義と治療的展望にどう繋がるかを包括的に論じる。
結果
ULBPの発見と分子構造: ULBPファミリーは、HCMVの非必須糖タンパク質UL16の細胞標的を同定する実験から発見された。UL16-Fc融合タンパク質を用いたフローサイトメトリーでヒトB細胞株NamalwaとT細胞株HSB2への特異的結合が確認され、Namalwaの発現クローニングライブラリーからULBP1が、HSB2ライブラリーからMICB (PERB11) が独立して同定された (9)。ULBP2とULBP3はその後ULBP1相同EST (Expressed Sequence Tag) の検索によって発見された。ULBPはMHC class I拡張ファミリーに属し、α1・α2ドメインを持つが、古典的MHC class Iと異なりα3ドメインを欠いており、β2-ミクログロブリンとも会合しない。また古典的MHC class Iとは異なりGPI (Glycosylphosphatidylinositol) アンカー型として膜に組み込まれる (ULBP1-3)。ULBP1-3間の配列同一性は55-60%と高いが、MICファミリーとの配列同一性は23-26%にとどまる。ULBP遺伝子は染色体6q25に位置し、MHC/MIC遺伝子 (6p21) とは異なる遺伝子座にある。特筆すべきことに、ULBP1・ULBP2・MICBはUL16に結合するがULBP3・MICAはUL16に結合しないという選択的結合パターンが存在し、ファミリー内で異なる生物学的役割が示唆される。ULBPはMHC class Iのペプチド結合に重要な保存アミノ酸を欠いているため (21)、ペプチド抗原提示機能を持たないと考えられる (Fig. 1)。
NKG2D/DAP10との結合とNK細胞の活性化: 可溶性ULBP (ULBP-FcまたはULBP-LZ融合タンパク質) を用いた実験で、ULBPがヒトNK細胞に結合することが示され、その結合はIL-15前処理によって増強された。この結合はanti-NKG2Dモノクローナル抗体で完全にブロックされ、NKG2Dが一次結合受容体であることが確認された (C. L. Sutherland, 投稿中)。全てのULBP (1-3) はリコンビナントNKG2D/DAP10ヘテロ複合体に結合することが実証されており (9)、MICとULBPがNK細胞上でNKG2D結合について交差競合することもin vitroデータから示唆された (N. J. Chalupny, 未発表データ)。機能面では、ULBP-LZタンパク質がNK細胞からGM-CSF・TNFα・TNFβ・MIP-1α・MIP-1β・I-309 (CCL1) の産生を誘導し、IL-12との共刺激でIFNγ産生が相乗的に増強されることが実証された (9, 22)。cytotoxicity assayでは、可溶性ULBPがNK細胞によるtumor cellターゲットの溶解を増強した (22)。特に重要な実験として、MHC class I低発現でNK細胞感受性のDaudi細胞にβ2-microglobulinを導入してMHC class Iを回復させるとNK細胞に対して抵抗性になるが、さらにULBPを発現させるとNK細胞感受性が回復した。この殺細胞はanti-ULBP Fabとanti-NKG2D Fabで完全に阻止されることから (9)、ULBP-NKG2D相互作用が抑制性MHC class Iシグナルを上回る活性化シグナルを伝達できることが直接証明された。これはNK細胞がMHC class Iを正常に発現しても、stress-induced antigens (ULBP/MIC) が発現していれば標的細胞を排除できることを示す重要な発見である。
ULBPによるNK細胞内シグナル伝達経路の詳細: ULBPがNK細胞のNKG2D/DAP10に結合すると、DAP10細胞質内のYxxMモチーフがSrc family kinaseによってチロシンリン酸化される。リン酸化されたYxxMモチーフはPI3K (Phosphatidylinositol 3-kinase) のP85サブユニットとアダプタータンパク質Grb2の両方の結合部位として機能し (24, 34)、Grb2-Vav1複合体がDAP10に結合するとVav1・PLCγ2・SLP-76のリン酸化が引き起こされる。PI3K活性化によってPIP2→PIP3が産生され、Akt (PKB) のリン酸化・活性化が起こり、細胞生存シグナルが伝達される。著者らの実験でULBPが細胞内カルシウム上昇、JAK2・STAT5の活性化、ERK MAP kinase経路の活性化、40/45/100/120 kDaタンパク質のチロシンリン酸化を誘導することが示された (C. L. Sutherland et al., 投稿中)。PI3K阻害剤 (Ly294002・wortmannin) がULBP誘導のAkt活性化・ERK活性化・cytokine/chemokine産生を全て阻害することから、これらの経路がNKG2D/DAP10のYxxMモチーフを介するPI3K依存的シグナルにより連結されていることが確認された (Fig. 2A)。JAK2・STAT5がDAP10にどのように連結されるかは明確ではなく、他のNKG2D会合サブユニットの存在の可能性も否定できないとされた。さらにULBPは抗アポトーシス因子 (Bcl2A1・cIAP2) のmRNAを上方制御し、NK細胞への生存シグナル提供も示唆された (著者らの未発表データ)。これはCD28がBcl-xLを介してT細胞生存を促進する機能との類似性を示している (50)。ULBPシグナルはITAM (Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif) 含有アダプター (DAP12・CD3ζ・FcεR1γ) を介する他のNK活性化受容体 (KIR2DS (37)・CD94/NKG2C (38)・NKp30 (39)・NKp44 (40)・NKp46 (41)・Ly49D/H (42)) とは異なるPI3Kベースの独立した経路を使用しており、この機能的多様性がNK細胞応答の微調整を可能にする。
NKG2D/DAP10の共刺激受容体としての機能: ULBPは単独でもNK細胞を活性化できるが、IL-12との共刺激でIFNγ産生が相乗的に増強されることから (9, 22)、NKG2D/DAP10はIL-12受容体シグナルと補完的な経路 (それぞれAkt、STAT4を介する) を活性化することが示唆される。実際にPI3K阻害剤はULBP+IL-12によるIFNγ産生を阻害し、Aktを介するULBPシグナルがIL-12との共刺激で必要なシグナルを提供することと一致する (C. L. Sutherland, 投稿中)。同様に、KIR2DS2/DAP12との共engagement (NKG2D/DAP10+KIR2DS2/DAP12) はGM-CSFとIFNγの相乗分泌を誘導し、DAP10とDAP12を介する経路の機能的クロストークの存在を示している (43)。T細胞においてはNKG2D/DAP10はCD28類似の共刺激受容体として機能し、CD28陰性CD8+ T細胞 (HCMV特異的T細胞など、老化や慢性感染で増加する) においてはMICを介するNKG2D engagementがTCR (T-Cell Receptor) 依存的cytotoxicity・cytokine分泌・増殖を著明に増強することが示された (27)。このNKG2D/DAP10の共刺激機能はCD28と構造的・機能的類似性 (YxxMモチーフ→PI3K/Akt) を共有しており (10, 34, 47-49)、両受容体がcell survivalとeffector機能増強という共通の生物学的役割を持つことが示唆される (Fig. 2B)。
ヒト・マウスNKG2Dリガンドの発現パターンと比較: ULBPはmRNA発現が心臓・肺・精巣・骨髄・胸腺など多様な組織に認められるが、正常末梢血単核球上のULBPタンパク質は検出限界以下であり、in vivoでのULBP発現は厳密に制御されていることが示唆される (9)。MICA・MICBは正常腸管上皮細胞に低レベルで発現し、一部の上皮性腫瘍やHCMV感染内皮・線維芽細胞で上方制御される (25-27)。複数の正常・腫瘍組織ペアおよびHCMV感染線維芽細胞での予備的検討ではULBP mRNA発現の一定した変化は認められなかったが (9) (著者らの未発表データ)、生理的・病的条件下でのULBPタンパク質発現制御の全容解明には更なる研究が必要とされた。マウスのNKG2DリガンドであるRAE-1 (α~δ isoform;GPI型) とH60 (膜貫通型) はULBPに近い構造 (α1/α2のみ) を持ち、正常組織では低発現ながら腫瘍細胞で上方制御される (11, 28-31)。ヒトとマウスのNKG2Dリガンドは配列相同性は低いが「機能的ホモログ」として位置付けられており、NKG2Dシステムの進化的保存が示唆される (Fig. 1)。
HCMV UL16による免疫逃避機構: HCMV非必須糖タンパク質UL16はULBP1・ULBP2・MICBに結合するが (ULBP3・MICAには結合しない)、この結合によりNKG2D認識が阻害される (9)。可溶性UL16 (UL16-Fc) はNK細胞上でのULBP1・ULBP2・MICBのNKG2Dへの結合を競合的にブロックし、ULBP誘導性cytokine産生とCTL (Cytotoxic T Lymphocyte) cytotoxicityを阻害することが示された (9, 22)。提唱される免疫逃避モデルは2種類であり、 (1) HCMV感染細胞表面で発現するUL16がULBP/MICBを直接マスキングしてNKG2D認識を阻止するモデル (cell surface masking) と、 (2) UL16が細胞内でULBP1・ULBP2・MICBに結合して小胞内に隔離し、細胞表面への輸送を妨げるモデル (intracellular sequestration) がある (Fig. 3)。いずれの場合も、HCMV感染細胞がUL16を発現することでNK・T細胞・マクロファージのNKG2D依存的殺傷から保護される。ULBP3とMICAはUL16に結合せず、HCMV免疫逃避から免れる点が注目される。これはULBP/MICファミリーの一部がウイルスによる免疫逃避に対するバックアップ機能を持つことを示唆し、宿主とウイルスの共進化の証拠として解釈できる。
考察/結論
本レビューはULBPファミリーの発見とその分子的特性・機能・免疫逃避との関係を統合的に論じた先駆的総説であり、NKG2D研究および腫瘍免疫学の発展に多大な貢献をもたらした。
先行研究との違い: 本研究は、Houchins et al. JExpMed 1991やGroh et al. ProcNatlAcadSciUSA 1996の報告で示された”missing self”仮説を超えて、MHC class I正常細胞もstress-induced antigen (ULBP/MIC) の発現によってNK細胞に排除されるという概念の革新が本論文の最大の独自性である。これは、NK細胞がMHC class I発現の有無にかかわらず、標的細胞のストレス応答を感知して排除する能力を持つことを示唆しており、これまでのNK細胞認識の理解と大きく異なる。
新規性: 本研究で初めて、CD28とDAP10の機能的類似性 (YxxMモチーフ→PI3K/Akt) が示されたことは、NKG2D/DAP10をT細胞の代替共刺激受容体として利用するCAR-T細胞設計など、その後の治療応用研究の基盤となった点で新規性が高い。特に、CD28陰性T細胞におけるNKG2Dの共刺激機能は、慢性ウイルス感染や加齢に伴い増加するこのT細胞サブセットの活性化戦略として、臨床的意義が大きい。
臨床応用: 本知見は、ULBPがNK細胞・CD8+ αβT細胞・γδT細胞・活性化マクロファージといったNKG2D発現エフェクター細胞の多様な集団を活性化することから、腫瘍免疫における治療標的としての可能性が示唆される。ULBPの腫瘍細胞上での発現誘導 (ヒストン脱アセチル化阻害剤やボルテゾミブなどで増強可能) や、soluble ULBPの検出による診断への応用が考えられる。また、HCMV感染時の多層的免疫逃避機構 (UL16によるULBP/MICB隔離) がHCMV治療の新規標的を提示した点も重要である。UL16-NKG2Dリガンド相互作用の阻害は、CMV感染制御の新規ターゲットとなりうる。
残された課題: 今後の検討課題として、ULBP3・MICAがUL16免疫逃避を免れるメカニズムの詳細な解明、ULBPタンパク質発現の病的誘導の分子機序、ヒト腫瘍でのULBPリガンドのin vivo役割、NKG2D-CAR-Tおよびsoluble ULBP測定の臨床応用に向けた研究が挙げられる。また、Diefenbach et al. NatImmunol 2000で報告されたマウスNKG2Dリガンドとの構造的・機能的比較をさらに深め、NKG2Dシステムの進化的保存の全容を解明することも今後の検討課題である。本総説は執筆当時 (2001年) のULBP研究の到達点を総括し、後のNKG2D-CAR-T療法、ULBP-based vaccine、ULBP shedding阻害剤 (ADAM10/ADAM17阻害)、抗MICA/MICB抗体療法開発の理論的基盤を提供した研究として位置付けられる。
方法
本論文は総説であるため、特定の実験方法論は記載されていない。しかし、ULBPの同定と機能解析に関する先行研究の知見を統合し、考察している。本レビューの作成にあたっては、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学・生物学データベースを用いて、ULBP、NKG2D、HCMV UL16、NK細胞活性化、MHC class I関連分子などをキーワードとした文献検索が行われた。検索期間はULBPの発見以前から本総説の執筆時点(2001年)までを対象とし、関連性の高い原著論文および総説が選択された。
具体的には、ULBPの発見は、UL16-Fc融合タンパク質を用いたフローサイトメトリー実験によって行われた。UL16-FcはヒトB細胞株NamalwaおよびヒトT細胞株HSB2に特異的に結合することが確認され、NamalwaおよびHSB2の発現ライブラリーからそれぞれULBP1およびMICB/PERB11をコードするcDNAが発現クローニングされた (9)。ULBP2およびULBP3は、その後ULBP1関連発現配列タグ (EST) の検索によって同定された。
ULBPの生物学的機能を特徴づけるため、ULBP細胞外領域をFcまたはロイシンジッパー (LZ) 部分に融合させた可溶性タンパク質が作成された。これらの可溶性ULBPタンパク質は、フローサイトメトリー実験においてヒトNK細胞に結合することが示され、この結合はインターロイキン (IL)-15による細胞の前処理によって増強された。ULBP-LZタンパク質は、NK細胞に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)、腫瘍壊死因子 (TNF)α、TNFβ、マクロファージ炎症性タンパク質 (MIP)1α、MIP-1β、およびI-309を含む多数のサイトカインおよびケモカインを産生させた (9, 22)。NK細胞サイトカイン合成の既知の誘導因子であるIL-12との共刺激は、サイトカインおよびケモカイン産生を強く増強した。特に、ULBPはIL-12と強く相乗作用して、抗ウイルス免疫の重要なメディエーターであるインターフェロン (IFN)γの産生を誘導した (22)。
MICAは、C型レクチンNKG2Dとシグナル伝達アダプター分子DAP10からなる受容体複合体に結合することが示された (10, 23, 24)。NKG2DがNK細胞に発現し、可溶性ULBPがNK細胞への結合に関してMICと交差競合することから (N. J. Chalupny, 未発表データ)、ULBPのNKG2D/DAP10への結合能力が試験された。その結果、3つのULBP全てが組換え発現されたNKG2D/DAP10ヘテロ複合体に結合し (9)、抗NKG2Dモノクローナル抗体が初代ヒトNK細胞へのULBPの結合を完全にブロックすることが判明した (C. L. Sutherland, 投稿中)。これらの結果は、NKG2Dが初代NK細胞上のULBPカウンター構造の主要な結合成分であることを示している。
細胞傷害性アッセイでは、可溶性ULBPが腫瘍細胞標的のNK細胞溶解を増強することが示された (22)。通常、MHC class Iを欠損するDaudi細胞は殺傷に感受性であるが、β2-ミクログロブリンのトランスフェクションによりMHC class I発現が回復し、NK細胞溶解に対する抵抗性が付与される。NK細胞抵抗性のMHC class I陽性Daudi標的細胞にULBPを発現させると、これらの細胞はNK細胞傷害性に感受性になることが判明した (9)。ULBPはNK細胞に強力な活性化シグナルを伝達するようであり、Daudi標的細胞上のMHC class I抗原の発現レベルはULBP発現レベルよりも有意に高かった (9)。ULBP発現Daudi標的細胞に対する殺傷は、抗ULBPおよび抗NKG2Dモノクローナル抗体のFabフラグメントの両方によって完全にブロックされた (9) (N. J. Chalupny, 未発表データ)。
NKG2Dリガンドによって活性化されるシグナルに関する情報がなかったため、初代ヒトNK細胞におけるULBPによって誘導されるシグナル伝達イベントが特徴づけられた。DAP10がULBP受容体複合体の一部であるという考えと一致して、可溶性ULBPがPI 3-キナーゼ (Phosphatidylinositol 3-kinase) に依存する経路を介してセリン/スレオニンキナーゼAktを活性化することが判明した。ULBPはまた、細胞内カルシウムレベルの顕著な増加、およびいくつかのタンパク質のチロシンリン酸化を誘導し、その中で最も顕著なものは見かけの分子量が40、45、100、120 kDaであった。ULBPは、JAK2チロシンキナーゼ、JAK2の標的であるSTAT5、およびMAPキナーゼ1,2/ERK MAPキナーゼ経路を活性化する (C. L. Sutherland, N. J. Chalupny, K. Schooley, T. Vanden Bos, M. Kubin, D. Cosman, 投稿中)。PI 3-キナーゼ阻害剤であるLy294002およびwortmanninがULBP媒介性のAktおよびERKの活性化をブロックするという発見は、AktおよびERK経路がDAP10のYxxMモチーフを介してNKG2Dに連結されていることを示唆している。JAK2およびSTAT5がNKG2D/DAP10にどのように連結されるかはまだ解明されていない。ULBPはNKG2D/DAP10受容体複合体に結合するが (9)、この段階では他のNKG2D関連受容体サブユニットが存在し、ULBPシグナル伝達を媒介する可能性を排除できないとされた。本レビューでは、これらの先行研究の知見を統合し、NKG2Dリガンドの生物学的意義を包括的に評価するために、エビデンスレベルのグレーディングは行われていないものの、各研究の主要な発見とそれらの相互関係に焦点を当てて議論を進めている。