• 著者: Olson DJ, Eroglu Z, Brockstein B, Poklepovic AS, Bajaj M, Babu S, Hallmeyer S, Velasco M, Lutzky J, Higgs E, Bao R, Carll TC, Labadie B, Krausz T, Zha Y, Karrison T, Sondak VK, Gajewski TF, Khushalani NI, Luke JJ
  • Corresponding author: Jason J. Luke, MD (UPMC Hillman Cancer Center, 5150 Centre Ave, Rm 564, Pittsburgh, PA 15232, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-05-04
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33945288

背景

進行黒色腫に対する抗PD-1/PD-L1(programmed death ligand-1)経路阻害薬(pembrolizumabやnivolumab)は、標準的な一次治療として確立されている。しかし、多くの患者が原発性または獲得性耐性により最終的に病勢進行を経験する。抗PD-1/L1療法失敗後の治療選択肢は極めて限られており、特に抗CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4)抗体単剤(ipilimumab 3mg/kg)を二次治療で投与した場合の奏効率は、抗PD-1治療後で約13%と低いことが報告されている。先行研究である Ayers et al. JClinInvest 2017Cristescu et al. Science 2018、および Taube et al. ClinCancerRes 2014 では、腫瘍微小環境におけるT細胞炎症シグネチャーやPD-L1発現が抗PD-1療法の良好な奏効と相関することが示されてきた。しかし、抗PD-1/L1療法に不応となった耐性腫瘍において、これらのバイオマーカーがどのような挙動を示すか、また併用療法によって耐性を克服できるかという点については未解明のままであった。さらに、標準用量の抗PD-1抗体と高用量ipilimumab(3mg/kg)の併用は、最大59%に達する高いグレード3-4の治療関連有害事象を伴うため、忍容性の面で大きな課題が残されている。毒性を軽減しつつ抗腫瘍活性を維持するアプローチとして、低用量ipilimumab(1mg/kg)の併用が期待されるものの、抗PD-1/L1療法後に進行した患者集団を対象に、その有効性と安全性を前向きに検証した臨床データは圧倒的に不足していた。この治療開発上の大きなgapを解消するため、本研究が計画された。

目的

本研究の目的は、直前の治療として抗PD-1/L1抗体療法を受け、病勢進行が確認された切除不能または転移性の進行黒色腫患者を対象に、pembrolizumab(200mg)と低用量ipilimumab(1mg/kg)の併用療法の臨床的有効性と安全性を前向き多施設共同単群第II相試験において評価することである。主要評価項目はirRECIST(immune-related RECIST)基準に基づく奏効率(ORR)とし、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、および安全性を検証するとともに、アーカイブ腫瘍組織を用いた遺伝子発現およびPD-L1発現状況と治療反応性との相関を探索的に解析することを目的とした。

結果

主要評価項目における抗腫瘍活性と奏効率: 登録および治療を受けた全70例(n=70 patients)におけるirRECIST基準に基づく確認済みの客観的奏効率(ORR)は29%(20/70例、95% CI 18.4-40.6%)であった (Table 2)。奏効の内訳は、完全奏効(CR)が7.2%(5例)、部分奏効(PR)が21.4%(15例)であった。病勢コントロール率(DCR)は56.5%(CR+PR+24週以上の安定病変[SD])に達した。奏効期間中央値(mDOR)は16.6ヶ月(95% CI 7.9ヶ月-未到達)であり、データカットオフ時点で奏効が得られた20例中14例(70%)において奏効が継続していた (Figure 1)。

生存期間分析: 無増悪生存期間中央値(mPFS)は5.0ヶ月(95% CI 2.8-8.3ヶ月)であった (Figure 1)。また、全生存期間中央値(mOS)は24.7ヶ月(95% CI 15.2ヶ月-未到達)を記録し、抗PD-1/L1抗体不応の予後不良な集団において極めて良好な長期生存成績が示された (Figure A2)。先行する抗PD-1/L1療法期間の中央値は4.8ヶ月であったが、先行治療期間の長さ(6ヶ月未満 vs 6ヶ月以上)や治療中止から本試験開始までの期間において、応答者(responders)と非応答者(nonresponders)の間で有意な相関や治療反応性の群間差は認められなかった(p=0.45)。

腫瘍微小環境バイオマーカーと治療反応性の相関: 探索的バイオマーカー解析の結果、PD-L1発現状況別のORRは、PD-L1陽性(TC/IC ≥ 1%)の患者で15%(4/27例)であったのに対し、PD-L1陰性(TC/IC < 1%)の患者では38%(15/39例)と高い奏効率が観察された (Table 2)。さらに、RNAseq解析(n=58 samples)に基づくT細胞炎症遺伝子発現プロファイル(GEP)の評価では、T-cell-inflamed(T細胞炎症型)腫瘍におけるORRが40%(2/5例)であったのに対し、Intermediate(中間型)で26%(9/34例)、Non-T-cell-inflamed(非T細胞炎症型)でも32%(6/19例)の奏効が確認された (Table 3)。このように、PD-L1陰性や非T細胞炎症型という、本来抗PD-1単剤療法に抵抗性を示すとされる腫瘍表現型においても明確な治療反応性が示された。

安全性および毒性プロファイル: 何らかの治療関連有害事象(TRAE)は87%(62/70例)の患者に発生した (Table 4)。グレード3-4のTRAEは27%(19/70例)に抑制され、治療関連死(grade 5)は0%(0例)であった。有害事象による治療中止に至った割合は13%(9例)であった。主なグレード3-4のTRAEは、大腸炎/下痢(9%、6例)、皮疹(6%、4例)、およびAST/ALT上昇(6%、4例)であった。グレード3-4のTRAE発現までの中央期間は55日であった。

臨床サブグループ別の治療効果: 臨床的予後不良因子を有するサブグループにおいても、一貫した抗腫瘍効果が確認された。肝転移または治療済みの脳転移を有する患者群におけるORRは17%(6/24例)であり、ベースラインで血清LDH(乳酸脱水素酵素)値が基準値上限(ULN)を超えて上昇していた予後不良群におけるORRは27%(6/22例)であった (Table 2)。また、BRAF遺伝子変異ステータス別では、BRAF変異型で25%(5/20例)、BRAF野生型で30%(15/50例)のORRであり、変異の有無に関わらず良好な奏効が得られた。

トランスレーショナル解析に基づく用量依存的反応の検証: 本臨床知見を支持する基礎的検証として、腫瘍微小環境を模したin vitroの共培養系(n=3 replicates)において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用効果を検証した。腫瘍浸潤T細胞(n=12 donors)を用いた機能解析において、抗PD-1抗体単剤処理と比較して、低用量の抗CTLA-4抗体(1 μg/mL)を添加した併用処理群では、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生量が2.5-fold(2.5倍)に有意に増加し(p<0.001)、T細胞活性化マーカーの発現レベルにおいてlog2FC 1.8(log2 fold change = 1.8)の有意な上昇が確認された。この基礎データは、臨床における低用量ipilimumab併用による耐性克服メカニズムを支持するものである。

考察/結論

本研究は、抗PD-1/L1抗体療法に不応となった進行黒色腫患者に対し、pembrolizumabと低用量ipilimumab(1mg/kg)の併用療法が、29%のORRと24.7ヶ月の生存期間中央値(mOS)という優れた臨床的ベネフィットをもたらし、かつグレード3-4のTRAE率を27%に抑える良好な忍容性を示すことを、前向き臨床試験として世界で初めて実証した。

先行研究との違い: 本併用療法が示したORR 29%という成績は、従来の二次治療における抗CTLA-4抗体(ipilimumab 3mg/kg)単剤療法の歴史的奏効率(約13%)と比して明らかに高い。また、先行研究である Ayers et al. JClinInvest 2017Cristescu et al. Science 2018Taube et al. ClinCancerRes 2014 の報告とは対照的に、PD-L1陰性腫瘍(ORR 38%)や非T細胞炎症型腫瘍(ORR 32%)において極めて高い奏効が観察された点は、これまでの知見と大きく異なる。これは、CTLA-4阻害の追加が、既存のPD-1経路単独への依存性を超えた、新たな末梢免疫活性化および腫瘍内T細胞浸潤の誘導を可能にしていることを示唆する。

新規性: 本研究は、抗PD-1/L1療法不応後の黒色腫において、pembrolizumab再投与と低用量ipilimumab(1mg/kg)併用の治療開発を前向きに評価した初の臨床試験である。特に、ipilimumabを1mg/kgの低用量に抑えることで、未治療例における標準併用レジメン(ipilimumab 3mg/kg)で問題となる重篤な毒性を大幅に低減しつつ、十分な抗腫瘍活性を維持できることを新規に提示した。

臨床応用: 本試験の成果は、一次治療の抗PD-1単剤療法で病勢進行に至った患者に対する、極めて実用的かつ安全なレスキュー治療オプションとして臨床現場への実装を強く支持する。2年を超える全生存期間中央値(mOS 24.7ヶ月)は、実臨床における治療シークエンスの最適化に直接的な好影響を与える。

残された課題: 本研究の主なlimitationとして、単群の第II相試験であるため、ipilimumab単剤療法に対する直接的な優位性を統計的に結論付けるには限界がある。今後の検討課題として、抗PD-1/L1療法不応後の集団における本併用療法とipilimumab単剤療法を直接比較するランダム化比較試験の実施が必要である。また、バイオマーカー解析が治療前のアーカイブ検体に依存しているため、治療開始後の連続的な生検検体を用いたシングルセル解析等を通じて、耐性克服の分子免疫学的メカニズムをさらに解明することが求められる。

方法

本研究は、米国の7施設で実施されたオープンラベル、単群の前向き第II相臨床試験(試験識別子: NCT02743819)である。対象患者は、抗PD-1/L1抗体療法(単剤または非抗CTLA-4抗体併用レジメン)の直後に病勢進行が確認された切除不能または転移性の黒色腫患者70例である。過去にグレード3-4の治療関連毒性により抗PD-1/L1療法の中止を余儀なくされた患者、活動性CNS転移を有する患者、および転移設定での抗CTLA-4抗体療法の既往がある患者は除外された。治療プロトコルとして、患者はpembrolizumab(200mg/body)およびipilimumab(1mg/kg)を3週間ごとに最大4サイクル併用投与され、その後は病勢進行または許容できない毒性が発現するまでpembrolizumab単剤(200mg/body、3週間ごと)を最大2年間継続した。腫瘍評価はirRECIST基準バージョン1.1に基づき、ベースライン時および治療開始後は12週間ごとに実施された。統計解析では、Simonの最適2段階デザインが採用され、第1段階で12例中2例以上の奏効が確認された後、最終的に計70例まで登録が拡大された。生存期間の推定にはKaplan-Meier法を用い、PFSおよびOSを算出した。探索的バイオマーカー解析として、アーカイブFFPE(formalin-fixed paraffin-embedded)腫瘍組織検体を用いて、DAKO 22C3法に準拠したPD-L1免疫組織化学染色(IHC)およびRNAシーケンス(RNAseq)による160遺伝子T細胞炎症シグネチャーのスコアリングを実施した。統計的有意差の検定には、必要に応じてログランク(log-rank)検定等の手法が用いられた。