• 著者: Mark Ayers, Jared Lunceford, Michael Nebozhyn, Erin Murphy, Andrey Loboda, David R. Kaufman, Andrew Albright, Jonathan D. Cheng, S. Peter Kang, Veena Shankaran, Sarina A. Piha-Paul, Jennifer Yearley, Tanguy Y. Seiwert, Antoni Ribas, Terrill K. McClanahan
  • Corresponding author: Terrill K. McClanahan (Merck & Co. Inc., Kenilworth, NJ, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Investigation
  • 発行年: 2017
  • Epub日: 2017-06-26
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 28650338

背景

プログラム細胞死受容体1 (PD-1) を標的とする免疫チェックポイント阻害薬 (例えばペムブロリズマブやニボルマブ) は、悪性黒色腫、非小細胞肺癌 (NSCLC)、頭頸部扁平上皮癌 (HNSCC)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性 (MSI-H) 大腸癌など、多くの進行癌において長期的な抗腫瘍活性と奏効を可能にしてきた。しかし、これらの薬剤の奏効率は単剤療法で20%から40%にとどまっており、治療効果を予測するための患者選択バイオマーカーの確立が喫緊の課題である。現在、PD-L1免疫組織化学 (IHC) が承認され臨床で使用されているが、いくつかの限界が指摘されている。具体的には、(1) 使用される抗体 (22C3、28-8、SP142、SP263など)、カットオフ値、およびスコアリング方法の間で不一致が存在すること、(2) 腫瘍内でのPD-L1染色の不均一性、(3) PD-L1発現の動的な変動性、そして (4) PD-L1陰性であっても奏効する患者が存在すること、などが挙げられる。これらの課題は、PD-L1 IHC単独での予測能の限界を示唆している。

一方、インターフェロンガンマ (IFN-γ) は、活性化されたCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞によって産生される主要なサイトカインであり、抗腫瘍免疫応答において中心的な役割を果たす。同時に、IFN-γシグナル伝達は、PD-L1/PD-L2の発現、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1 (IDO1) の発現、およびT細胞ケモカイン (CXCL9、CXCL10、CXCL11) の誘導を介して、「T細胞炎症性表現型 (T cell–inflamed phenotype)」を形成することが知られている。このT細胞炎症性微小環境は、適応免疫抵抗性 (adaptive immune resistance) の重要なメカニズムであり、PD-1/PD-L1シグナル経路の活性化に寄与する。先行研究では、腫瘍微小環境におけるT細胞浸潤がPD-1阻害薬への応答確率を高める可能性が示唆されているが、T細胞炎症性微小環境を定量化することが、PD-1阻害薬に対する汎腫瘍的な応答予測因子として有用であるかについては、厳密な評価がこれまで不足していた。

本研究の背景には、PD-L1 IHCの限界を克服し、より堅牢で汎腫瘍的に適用可能なバイオマーカーを開発するという知識ギャップが存在する。特に、IFN-γ関連の遺伝子発現プロファイル (GEP) が、PD-1阻害薬に対する臨床的奏効を予測する上で、組織横断的なバイオマーカーとして機能するかどうかを評価することは、臨床的課題として残されていた。Tumeh et al. Nature 2014は、PD-1阻害薬の奏効が腫瘍内のT細胞浸潤と関連することを示したが、これを定量的かつ再現性のあるmRNAアッセイとして確立することが求められていた。また、Pardoll et alやChen et alなどの研究は、免疫チェックポイント阻害の概念と癌免疫サイクルを提唱し、バイオマーカー開発の重要性を強調している。これらの背景を踏まえ、本研究はIFN-γ関連mRNAプロファイルがPD-1阻害薬への臨床反応を予測し、T細胞炎症性腫瘍微小環境がPD-1チェックポイント阻害薬応答の共通の特徴であることを示すことを目指した。

目的

本研究の主たる目的は、ペムブロリズマブ治療を受けた患者のベースライン腫瘍検体から得られたRNA発現データを用いて、抗PD-1治療に対する応答を予測する免疫関連遺伝子シグネチャを、learn-and-confirm (学習と検証) パラダイムに基づいて開発することである。具体的には、以下の段階的な目的を設定した。

まず、小規模な悪性黒色腫患者コホート (n=19例) のデータを用いて、応答と相関する免疫関連遺伝子の候補を特定し、初期の遺伝子シグネチャを学習する。次に、より大規模な悪性黒色腫コホート (n=60例) で、初期シグネチャを洗練させ、IFN-γ関連遺伝子と、より広範な免疫関連遺伝子を含むシグネチャを定義する。

その後、9種類の癌種 (悪性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、尿路上皮癌、胃癌、肛門管癌、トリプルネガティブ乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌) にわたる220例超の患者データを用いて、汎腫瘍的に抗PD-1応答を予測する「T細胞炎症性遺伝子発現プロファイル (T cell–inflamed GEP)」を最終的に定義する。

さらに、独立した頭頸部扁平上皮癌患者コホート (KEYNOTE-012試験、n=96例) を用いて、このT細胞炎症性GEPの予測能を検証し、既存のバイオマーカーであるPD-L1 IHC (22C3抗体、CPSスコア) との比較評価を行う。これにより、GEPがPD-L1 IHCと比較して優位性または補完的な予測能を持つかを明らかにする。

最終的に、本研究で同定されたT細胞炎症性GEPを、臨床グレードの診断アッセイとして開発するための基盤を構築し、今後のペムブロリズマブ臨床試験での前向き評価に資することを目指す。

結果

Melanoma 19例におけるIFN-γ 10-gene signatureの同定: KEYNOTE-001試験の転移性悪性黒色腫患者19例のパイロットコホートにおいて、ペムブロリズマブ治療に対する奏効者 (n=8) と非奏効者 (n=11) の間で、IFN-γシグナル伝達に関連する10遺伝子 (IFNG、STAT1、CCR5、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IDO1、PRF1、GZMA、HLA-DRA) の発現レベルが有意に異なっていた (p < 0.01)。この10遺伝子からなる「予備的IFN-γシグネチャ」の平均z-scoreは、奏効群で有意に高値を示し、客観的奏効率 (ORR) と強い相関があることが示された (図1B)。

Melanoma 62例における28-gene preliminary expanded immune signatureの洗練: 追加の悪性黒色腫患者62例のコホートで、予備的IFN-γシグネチャと高い相関 (r > 0.9) を示す、より広範な免疫関連遺伝子を含む28遺伝子セットが定義された。この「予備的拡大免疫シグネチャ」は、細胞傷害活性 (例: GZMA/B/K、PRF1)、炎症開始のためのサイトカイン/ケモカイン (例: CXCR6、CXCL9、CCL5)、T細胞マーカー (例: CD3D、CD3E)、NK細胞活性 (例: NKG7、HLA-E)、抗原提示 (例: CIITA、HLA-DRA)、およびその他の免疫調節因子 (例: LAG3、IDO1、SLAMF6) に関連する遺伝子を含んでいた (表1)。この28遺伝子シグネチャは、悪性黒色腫患者におけるペムブロリズマブ治療後の最良総合効果 (BOR) および無増悪生存期間 (PFS) と有意な関連を示し (BOR: p=0.027、PFS: p=0.015)、IFN-γ 10-geneシグネチャと同等の予測能を持つことが確認された (図2)。

HNSCCおよび胃癌コホートにおけるシグネチャの確認: KEYNOTE-012試験のHNSCC患者40例および胃癌患者33例のコホートにおいて、IFN-γ 6-geneシグネチャとexpanded immune 18-geneシグネチャの予測能が検証された。HNSCCコホートでは、IFN-γ 6-geneシグネチャはORRとPFSの両方で統計的に有意な関連を示し (p=0.005およびp<0.001)、ROC曲線下面積 (AUC) は0.80 (95% CI 0.61–0.95) であった (図3C)。胃癌コホートでは、IFN-γ 6-geneシグネチャはPFSと有意な関連を示し (p=0.032)、AUCは0.66 (95% CI 0.47–0.83) であった (図3D、表3)。Youden指数に基づくカットオフ値を用いた場合、HNSCCでの陽性予測値 (PPV) は40.0%、陰性予測値 (NPV) は95.0%であり、胃癌ではPPVが45%、NPVが92%であった。これらの結果は、メラノーマコホートで観察された知見を裏付け、複数の腫瘍タイプにわたる抗PD-1治療に対する共通の応答予測パターンを示唆した。

9癌種220例におけるPan-tumor 18-gene T cell–inflamed GEPの定義: KEYNOTE-012およびKEYNOTE-028試験からの9種類の癌種 (膀胱癌、HNSCC、トリプルネガティブ乳癌、胃癌、肛門管癌、胆道癌、結腸直腸癌、食道癌、卵巣癌) にわたる220例の患者データを用いて、汎腫瘍的に抗PD-1応答を予測する最終的な18遺伝子セットが導出された。この「T細胞炎症性GEP」は、CCL5、CD27、CD274 (PD-L1)、CD276 (B7-H3)、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2 (PD-L2)、PSMB10、STAT1、TIGITを含んでいた。これらの遺伝子は、IFN-γ応答性遺伝子、抗原提示、細胞傷害活性、および適応免疫抵抗性に関連する生物学的経路を網羅している。このGEPスコアとORRのROC曲線下面積 (AUC) は、癌種横断的に0.65から0.85の範囲を示し、T細胞炎症性微小環境がPD-1チェックポイント阻害薬応答の共通の特徴であることを強く支持した (図4)。18遺伝子スコアとIFN-γ 6-geneシグネチャスコア間のPearson相関係数は0.89であった。

HNSCC 96例における独立検証とPD-L1 IHCとの比較: KEYNOTE-012試験のHNSCC患者96例の独立コホート (PD-L1発現で選択されていない) において、T細胞炎症性GEPスコアはORRおよびPFSと有意に関連することが示された。PFSに関するハザード比 (HR) は0.42 (95% CI 0.27-0.62, p<0.001) であり、GEP高スコア群で有意なPFS延長が認められた。ROC曲線解析では、T細胞炎症性GEPのAUCは0.75であったのに対し、PD-L1 IHCのAUCは0.65であった (図5B)。両者のAUCを比較する検定の2側P値は0.119であり、GEPがPD-L1 IHCと比較してより良好な予測能を持つ可能性が示唆された。さらに、GEPとPD-L1 IHCを組み合わせることで予測能が向上し、両者が補完的なバイオマーカーとして機能することが示唆された。

T細胞炎症性表現型の臨床的意義と非奏効の生物学: 高GEPスコアは奏効に必要であるが、必ずしも十分ではないことが示された (「necessary but not always sufficient」)。高GEPスコアにもかかわらず奏効しなかった患者 (非奏効者) では、(a) PI3K-AKT経路の活性化、(b) WNT/β-カテニン経路の活性化、(c) 過剰な免疫抑制 (Treg、MDSC、TGF-βなど) といった追加の抵抗性メカニズムが示唆された。これは、T細胞炎症性微小環境が存在しても、他の免疫抑制経路がPD-1阻害薬の効果を打ち消す可能性を示唆している (図6、図7)。T細胞炎症性GEPスコアが-0.3未満の患者は一般に急速な疾患進行を示したが、高スコアの患者では幅広い進行期間が観察された。

生物学的解釈: T細胞炎症性GEPに含まれる各遺伝子は、腫瘍微小環境における複雑な免疫応答を反映している。具体的には、(1) IFN-γ産生細胞 (CD8A、NKG7)、(2) IFN-γシグナル下流の分子 (STAT1、IDO1、CD274/PD-L1、PDCD1LG2/PD-L2)、(3) ケモカインによるT細胞誘引 (CCL5、CXCL9、CXCR6)、(4) 抗原提示 (HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-E、PSMB10)、(5) フィードバック阻害性受容体 (LAG3、TIGIT、CD276) の発現を反映しており、腫瘍内T細胞浸潤とPD-1軸活性化を統合した表現型を捕捉している (図8)。

臨床診断アッセイ化: 本研究で開発された18遺伝子アッセイは、NanoStringプラットフォーム上で臨床グレードのアッセイとして開発され、KEYNOTE-061 (胃癌)、KEYNOTE-189 (NSCLC)、KEYNOTE-426 (腎細胞癌) など、ペムブロリズマブの進行中の臨床試験で前向きに評価されている。後の研究 (Cristescu et al., Science 2018) でも、腫瘍変異負荷 (TMB) とGEPの独立性および補完的な予測能が確認されている。

考察/結論

本論文は、ペムブロリズマブに対する応答予測バイオマーカーとして、PD-L1 IHCに並ぶT細胞炎症性遺伝子発現プロファイル (GEP) を確立し、その後の免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカー研究の方向性を決定づけた基盤論文である。Tumeh et al. Nature 2014が病理組織学的所見で示した「T細胞炎症性表現型が抗PD-1効果を予測する」という概念を、定量的かつ再現性のあるmRNAアッセイとして工業化した点が決定的に重要である。

先行研究との違い: これまでのPD-L1 IHCは単一のタンパク質発現を評価するものであったが、本研究で開発された18遺伝子GEPは、IFN-γシグナル伝達、抗原提示、細胞傷害活性、ケモカイン発現、および適応免疫抵抗性といった複数の生物学的経路を統合的に評価する点で、これまでとは異なるアプローチである。これにより、単一のバイオマーカーでは捉えきれなかった腫瘍微小環境の複雑な免疫状態をより包括的に把握することが可能となった。

新規性: 本研究で初めて、9種類の異なる癌種にわたる220例超の患者データを用いて、汎腫瘍的に抗PD-1治療応答を予測する共通のT細胞炎症性GEPを同定した。この汎腫瘍的な予測能は、特定の癌種に限定されず、幅広い癌種で免疫チェックポイント阻害薬の恩恵を受ける患者を特定できるという点で新規性が高い。また、PD-L1 IHCと比較して、HNSCCコホートでより良好なROC曲線下面積 (0.75 vs 0.65) を示したことも、本研究で初めて明確に示された。

臨床応用: 本知見は、精密免疫腫瘍学の進展に大きく貢献する臨床的意義を持つ。第一に、単一のmRNAアッセイで汎腫瘍的な応答予測が可能になったことで、バスケット試験デザイン (例: KEYNOTE-158) におけるバイオマーカーによる患者層別化を可能にした。第二に、T細胞炎症性GEPがPD-L1 IHCと独立かつ補完的に作用することが示されたため、両者を組み合わせることで予測能がさらに向上し、より正確な患者選択が可能となる。第三に、低GEPスコア (immune-cold tumor) の患者には、血管内皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬 (VEGFR-TKI)、CTLA-4阻害薬、放射線療法、化学療法、抗体薬物複合体 (ADC) など、免疫応答を誘導・増強する併用療法が必要であるという合理的な患者選択戦略を提供する。これは、治療効果の最大化と不必要な治療の回避に繋がる。

残された課題: 今後の検討課題として、いくつかの点が残されている。第一に、GEPスコアの最適なカットオフ値の癌種横断的および治療レジメン横断的な標準化が必要である。第二に、immune-cold tumorをhot tumorに変換する戦略 (例: ネオアンチゲンワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、養子T細胞療法) の開発において、GEP以外のバイオマーカー (腫瘍変異負荷 (TMB)、HLAヘテロ接合性、MHC-I発現喪失、JAK1/JAK2/B2MなどのIFN-γ経路機能喪失変異) との統合が重要である。第三に、クローン性ネオアンチゲンとサブクローン性ネオアンチゲンの影響の解明、および治療経過中の動的バイオマーカー (on-treatment biopsy、循環腫瘍DNA (ctDNA)、TCRクローン性) への発展が挙げられる。本18遺伝子パネルは現在、Merck社の臨床試験で広く採用されており、精密免疫腫瘍学の代表的なバイオマーカーとしてその有用性が確立されつつある。

方法

本研究では、ペムブロリズマブ治療を受けた患者のベースライン腫瘍検体からRNA発現データを解析し、抗PD-1治療応答を予測する免疫関連遺伝子シグネチャを開発するため、厳密なlearn-and-confirmパラダイムを採用した。本研究は、非ランダム化オープンラベルの臨床試験であるKEYNOTE-001、KEYNOTE-012 (NCT01848834)、およびKEYNOTE-028 (NCT02054806) のデータを利用した。

臨床検体の品質評価とPD-L1 IHC: KEYNOTE-001、KEYNOTE-012、KEYNOTE-028試験から、局所進行または転移性癌患者の治療前FFPE (ホルマリン固定パラフィン包埋) 組織検体を収集した。各検体は病理医が腫瘍含有量、組織保存状態、アーチファクトの有無を評価し、不適格な検体は除外された。PD-L1 IHCは、非小細胞肺癌で承認されたPD-L1 IHC 22C3 pharmDxアッセイ (Agilent Technologies) を用いて、96例のHNSCC検体で実施された。スコアリングは、PD-L1陽性細胞 (腫瘍細胞、マクロファージ、リンパ球) の総腫瘍細胞数に対する割合 (%) で行われた。

RNA分離と遺伝子発現解析: FFPE切片からAmbion RecoverAllキット (Thermo Fisher Scientific) を用いて全RNAを分離し、NanoDrop ND1000分光光度計で定量した。遺伝子発現解析は、NanoString nCounter遺伝子発現プラットフォーム (NanoString Technologies) を使用して実施された。T細胞生物学、免疫調節、腫瘍浸潤リンパ球および腫瘍関連マクロファージの細胞マーカーに関連する680遺伝子パネルのカスタムコードセットが用いられた。各サンプルから50 ngの全RNAを、3’ビオチン化キャプチャプローブと5’蛍光バーコード標識レポータープローブと混合し、65°Cで12~16時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたサンプルは、高感度プロトコルを用いてNanoString nCounter調製ステーションで処理され、nCounterデジタルアナライザーでスキャンされた。

遺伝子発現データの正規化: 各サンプルの遺伝子発現データは、クォンタイル正規化によって正規化された。また、ハウスキーピング遺伝子 (11遺伝子) のセットを用いて、各患者の正規化定数を形成するハウスキーピング正規化も行われた。シグネチャスコアは、含まれる遺伝子のlog10変換された平均値として計算された。

遺伝子シグネチャの開発 (Learn-and-confirmパラダイム):

  1. 第1段階: Melanoma 19例でのIFN-γ 10-gene signatureの同定: KEYNOTE-001試験の転移性悪性黒色腫患者19例 (奏効者n=8、非奏効者n=11) のパイロットデータセットを使用し、NanoString nCounterプラットフォーム上の680の腫瘍・免疫関連遺伝子から、奏効と相関する上位遺伝子を1側t検定でランク付けした。IFN-γシグナル伝達に直接関連する10遺伝子 (IFNG、STAT1、CCR5、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IDO1、PRF1、GZMA、HLA-DRA) からなる「予備的IFN-γシグネチャ」が構築され、奏効者と非奏効者を有意に分離した (p < 0.01)。

  2. 第2段階: Melanoma 62例での28-gene preliminary expanded immune signatureの洗練: KEYNOTE-001試験の悪性黒色腫患者62例の追加コホートを用いて、予備的IFN-γシグネチャと高い相関 (r > 0.9) を示しつつ、より広範な適応免疫関連遺伝子 (HLA class I/II、抗原提示、TCRシグナル伝達など) を含む28遺伝子セットが定義された。この「予備的拡大免疫シグネチャ」は、IFN-γ 10-geneシグネチャと同等の判別精度を示した。

  3. 第3段階: 9癌種220例でのPan-tumor 18-gene T cell–inflamed GEPの定義: KEYNOTE-012 (膀胱癌、HNSCC、トリプルネガティブ乳癌、胃癌) およびKEYNOTE-028 (肛門管癌、胆道癌、結腸直腸癌、食道癌、卵巣癌) 試験からの9癌種220例のデータセットを統合し、ペナルティ付きロジスティック回帰モデル (elastic net penalized regression model) を用いて、最終的な18遺伝子セットが導出された。この「T細胞炎症性GEP」は、CCL5、CD27、CD274 (PD-L1)、CD276 (B7-H3)、CD8A、CMKLR1 (ケモカイン様受容体1)、CXCL9、CXCR6、HLA-DQA1 (ヒト白血球抗原DQA1)、HLA-DRB1 (ヒト白血球抗原DRB1)、HLA-E、IDO1、LAG3、NKG7 (ナチュラルキラー細胞グランザイム7)、PDCD1LG2 (PD-L2)、PSMB10、STAT1、TIGITを含み、IFN-γ応答性遺伝子、抗原提示、細胞傷害活性、適応免疫抵抗性に関連する遺伝子を網羅している。

  4. 独立検証: HNSCC 96例でのPD-L1 IHCとの比較: KEYNOTE-012試験のHNSCC患者96例の独立コホート (PD-L1発現で選択されていないall-comersコホート) を用いて、T細胞炎症性GEPスコアと客観的奏効率 (ORR) および無増悪生存期間 (PFS) との関連が評価された。また、PD-L1 IHC (22C3、CPS) との予測能の比較も行われた。

統計解析: ORRの評価にはロジスティック回帰モデル、PFSおよび全生存期間 (OS) の評価にはCox比例ハザードモデルが使用された。PFSは治療開始から病勢進行または死亡までの期間と定義された。OSは治療開始からあらゆる原因による死亡までの期間と定義された。ROC曲線下面積 (AUC) は判別能力の指標として用いられ、Youden指数に基づいて最適なカットオフ値が決定された。統計的有意性は、1側P値 < 0.05を基準とした。