- 著者: Jacob V. Gorman, Gabriel Starbeck-Miller, Nhat-Long L. Pham, Geri L. Traver, Paul B. Rothman, John T. Harty, John D. Colgan
- Corresponding author: John D. Colgan (University of Iowa, Iowa City, IA, USA)
- 雑誌: The Journal of Immunology
- 発行年: 2014
- Epub日: 2014-02-24
- Article種別: Original Article
- PMID: 24567532
背景
T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子3 (Tim-3) は、Tim蛋白質ファミリーの一員であり、CD4 Th1細胞、CD8 T細胞、樹状細胞、NK細胞、マクロファージなど広範な免疫細胞に発現し、複雑な免疫制御機能を持つ。従来の報告ではTim-3は主に阻害性分子として機能し、Th1応答の抑制やCD8+ T細胞の疲弊 (exhaustion) に関与するとされてきた。例えば、Sakuishi et al. JExpMed 2010やWherry et al. NatImmunol 2011の研究では、PD-1とTim-3の併用阻害により慢性感染や腫瘍免疫下の疲弊CD8+ T細胞機能が回復することが示され、がん免疫治療の標的として注目されている。しかし、急性かつ一過性の刺激状況におけるTim-3の役割は未解明であり、この領域には知識のギャップが残されている。特に、Tim-3が疲弊促進因子としてだけでなく、急性感染における刺激性因子として機能する可能性については、これまで十分な検討が不足していた。また、Chen et al. NatRevImmunol 2013も共刺激と共抑制のバランスの重要性を指摘しているが、Tim-3の急性感染における具体的な役割は不明なままであった。
目的
急性Listeria monocytogenes (LM)感染モデルを用いて、Tim-3がCD8+ T細胞応答に与える影響を解析し、Tim-3が疲弊促進因子としてだけでなく、急性感染における刺激性因子として機能するか否かを明らかにすること。
結果
Tim-3は活性化CD8+ T細胞に一過性に発現しエフェクター表現型を特徴づける: attLM-OVA感染後のWTマウスにおいて、day 7のCD8α^lo CD11a^hi活性化CD8+ T細胞の約75%がTim-3+となった (n=4 mice)。この発現はday 14・day 50と時間経過で低下した。二次感染day 6では約71%が再びTim-3+となった (Figure 1A)。KLRG1+CD127- (エフェクター前駆体) のday 7ではほぼ全て (約92%) がTim-3+であり、KLRG1-CD127+ (メモリー前駆体) では約34%であった (Figure 1C)。OVAp刺激で活性化されCD107a・IFNγを発現するAg特異的CD8+ T細胞はほぼ全てTim-3+であった (Figure 1D)。これらのデータは、Tim-3発現が活性化CD8 T細胞のエフェクター表現型獲得と関連していることを示唆する。
Tim-3欠損は一次・二次CD8+ T細胞応答を損なう: Tim-3 KOマウスではattLM-OVA感染後day 6-8の末梢血CD8α^lo CD11a^hi活性化CD8+ T細胞頻度が有意に低下した (p<0.05、n=4-8 mice) (Figure 2A)。day 7・14の脾臓でもCD8α^lo CD11a^hi細胞数およびOVA tetramer+CD8+ T細胞数が有意に減少した (p<0.01、n=4-8 mice) (Figure 2B, 2D)。OVApのex vivo刺激でのIFNγ産生細胞数およびCD107a+細胞数も有意に減少し (p<0.01、n=4-8 mice)、Ag特異的CD8+ T細胞応答の全般的低下が確認された (Figure 2F, 2G)。二次感染応答でも同様の欠損が観察され、virLM-OVA感染後day 6の末梢血OVA tetramer+CD8 T細胞頻度はTim-3 KOマウスで有意に低かった (p<0.05、n=4-5 mice) (Figure 6A)。
Tim-3 KO CD8+ T細胞はWTホスト内でも応答が損なわれる (細胞内在性): WT OT-IとTim-3 KO OT-Iを1:1でWTホストに共移入し、同一環境下で比較した (n=12 mice)。Tim-3 KO OT-I細胞ではday 6でKLRG1+CD127-比率がやや高く、KLRG1-CD127+比率が低下した (p<0.01) (Figure 3E)。day 6-7のOVAp刺激でIFNγおよびTNF発現細胞頻度が有意に減少した (p<0.01、n=12 mice) (Figure 3F, 3G)。末梢血および脾臓でのWT:KO比はday 8からday 20、day 68まで経時的に上昇し、最終的に約4:1に達した (n=4-16 mice) (Figure 4C, 4E)。これはTim-3がCD8 T細胞の機能に細胞内在的に影響を与えることを示している。
Tim-3欠損は増殖性低下を引き起こすが生存には影響しない: Bim (プロアポトーシス)、Bcl-xL (アンチアポトーシス)、活性型caspase 3/7の発現レベルはWTおよびTim-3 KO OT-I細胞で同等であった (n=4 mice) (Figure 5A-D)。一方、BrdU取り込みはday 6およびday 7でTim-3 KO細胞で有意に低下し (p<0.01、n=8 mice)、KLRG1+CD127-およびKLRG1-CD127+両方のサブセットで増殖性低下が確認された (p<0.05、n=8 mice) (Figure 5E-G)。これらの結果は、Tim-3欠損が細胞死ではなく増殖不全を介してCD8+ T細胞応答を損なうことを示唆する。
Tim-3欠損は記憶CD8 T細胞の二次応答を細胞内在的に障害する: WTおよびTim-3 KO記憶OT-I細胞をWTホストに共移入し、二次感染応答を評価した。二次感染後day 6の脾臓において、Tim-3 KO OT-I細胞のIFNγおよびTNF産生細胞頻度はWT細胞と比較して有意に減少した (p<0.001、n=6 mice) (Figure 7E-G)。また、脾臓におけるWTとTim-3 KO OT-I細胞の比率は平均約10:1であり (p<0.001、n=6 mice)、Tim-3欠損が記憶CD8 T細胞の蓄積または持続性を著しく損なうことが示された (Figure 7H, 7I)。
考察/結論
先行研究との違い: 本研究は、従来Tim-3が阻害性/疲弊関連分子と認識されていた見方に対し、急性感染環境下ではCD8+ T細胞応答を促進する刺激性共受容体としても機能するという新規なパラダイムを提示した点で、これまでの報告と異なる重要な知見である。例えば、Chen et al. NatRevImmunol 2013が提唱する共刺激・共抑制受容体のバランスモデルにおいて、Tim-3が急性感染時には共刺激側に寄与する可能性を示唆する。
新規性: 特に、coadoptive transfer系を用いた解析により、Tim-3の欠如がCD8+ T細胞の増殖を減少させ、エフェクター機能(IFN-γおよびTNF産生)を損なうことが細胞内在性の効果として示された点は、本研究で初めて明確に示された新規な発見である。
臨床応用: 本研究の知見は、Tim-3が急性感染時のCD8+ T細胞応答を正に制御する役割を持つことを示唆する。このことは、Tim-3阻害によるがん免疫治療(PD-1/Tim-3の共阻害など)が慢性疲弊T細胞機能回復を狙う一方で、同時に急性感染防御能の低下リスクがあることを臨床的意義として示唆する。実際、Tim-3標的薬(sabatolimabなど)の臨床開発においては、感染症副作用の監視が必要となる可能性がある。
残された課題: 今後の検討課題として、Tim-3の刺激性シグナル伝達経路(Srcファミリーキナーゼによるチロシンリン酸化の下流など)の解明が挙げられる。また、リガンド特異性(Galectin-9、CEACAM1、phosphatidylserine、HMGB1)の各状況における寄与、および急性・慢性シグナル切り替えの分子機構解明も今後の検討課題である。さらに、細胞傷害機能以外へのTim-3の寄与、Treg制御、自然免疫細胞活性化との相互作用も未解明であり、今後のがん免疫治療開発における詳細な文脈依存性評価が重要となる。
方法
マウスモデル:C57BL/6 WT、Thy1.1 (Thy1 a) congenic、OT-I TCR transgenic、およびHavcr2遺伝子破壊により作製したTim-3 KOマウス (Regeneronと共同、129系ESセルから作製後C57BL/6に10世代back-cross) を使用した。Thy1.1/1.2 OT-IマウスおよびTim-3 KO OT-Iマウスも作製した。全ての動物実験はUniversity of Iowa Institutional Animal Care and Use Committeeのガイドラインに従って実施された。感染プロトコル:actA欠損LM-OVA (attLM-OVA、1×10^7 CFU i.v.) による一次感染、または一次感染50日後のvirulent LM-OVA (virLM-OVA、1×10^5 CFU) による二次感染を行った。Coadoptive transfer:WT (Thy1.1/1.2) とTim-3 KO (Thy1.2/1.2) OT-I細胞を1:1で混合し、計2000細胞をThy1.1/1.1 WTホストに移入した。記憶応答評価のためには10,000 OT-I細胞を各個別に移入し43日後に再回収して混合・二次移入した。フローサイトメトリー解析:CD8, CD11a, CD107a, CD127, IFNγ, KLRG1, Thy1.1, Thy1.2, TNF, Tim-3, H-2Kb-OVA257-264 tetramer等の抗体を使用し、LSR II (BD Biosciences) でデータ収集後、FlowJo (TreeStar) で解析した。Ex vivoペプチド刺激と細胞内サイトカイン染色:脾臓細胞をOVA257-264ペプチド (1 μM) とGolgiPlugまたはGolgiStopと共に5時間培養後、細胞内サイトカイン染色を行った。アポトーシス・増殖解析:Bim、Bcl-xL染色、活性型caspase 3/7 (FLICA)、BrdU取り込みを評価した。BrdU取り込みは、BrdUを腹腔内投与後15時間で脾臓細胞を回収し、フローサイトメトリーで解析した。統計解析:データはPrismソフトウェア (GraphPad Software) を用いてunpaired two-tailed Student’s t testで解析された。