• 著者: Chiara Pozzi, Alessandro Cuomo, Ilaria Spadoni, Elena Magni, Alessio Silvola, Alexia Conte, Sara Sigismund, Paola Simona Ravenda, Tiziana Bonaldi, Maria Giulia Zampino, Carlotta Cancelliere, Pier Paolo Di Fiore, Alberto Bardelli, Giuseppe Penna, Maria Rescigno
  • Corresponding author: Maria Rescigno (Department of Experimental Oncology, European Institute of Oncology, Milan, Italy)
  • 雑誌: Nature Medicine
  • 発行年: 2016
  • Epub日: 2016-05-02
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 27135741

背景

転移性大腸癌 (mCRC) の治療は過去20年間で著しく進歩し、中央生存期間は12ヶ月から約30ヶ月に延長した。この進歩は、FOLFIRIなどの新規化学療法と、セツキシマブ(cetuximab)などの分子標的薬の導入に大きく起因する (Fakih et al. 2015, Peeters & Price 2012)。セツキシマブは、上皮成長因子受容体 (EGFR) に特異的に結合するキメラ型モノクローナル抗体であり、EGFR-リガンド間の相互作用を阻害し、下流のRAS-ERK経路の活性化を抑制することで抗腫瘍効果を発揮する (Cunningham et al. 2004, Van Cutsem et al. 2009)。しかし、その奏効は、KRASなどのRAS遺伝子の活性化変異の有無によって部分的に説明されるものの、KRAS G12DやG13D変異を有する患者の一部でも臨床的利益が観察されることが報告されており (Modest et al. 2012, Kishiki et al. 2014)、EGFRシグナル伝達経路の遮断以外の作用機序の存在が示唆されていた。また、パニツムマブ(panitumumab)は完全にヒト化されたIgG2抗体であり、抗体依存性細胞傷害 (ADCC) 活性を欠くにもかかわらず、セツキシマブと同等の臨床効果を示すことから (Price et al. 2014)、ADCCが主要な作用機序ではないと推測されていた (Arteaga et al. CancerCell 2014)。

近年、一部の抗癌剤(アントラサイクリン系薬剤、オキサリプラチン、放射線照射など)が、免疫原性細胞死 (ICD) と呼ばれる特殊な細胞死を誘導することが明らかになった (Galluzzi et al. 2012)。ICDは、死滅する腫瘍細胞の表面にカルレティキュリン (CRT) やERp57 (ER-associated protein disulfide isomerase ERp57) などの「eat me」シグナルを露出させ、高移動度群ボックス1 (HMGB1) やATPを放出することで、樹状細胞 (DC) による腫瘍細胞の貪食を促進し、強力な抗腫瘍免疫応答を惹起する (Zitvogel et al. 2010, Kepp et al. 2014)。FOLFIRI単独ではICDを誘導しないことが報告されている (Vacchelli et al. 2014)。セツキシマブの作用機序において、このような免疫学的側面が関与している可能性はこれまで十分に検討されておらず、特にEGFR経路の変異状況がICD誘導に与える影響については未解明な点が多かった。この知識のギャップを埋めることは、セツキシマブの治療効果を最大化し、個別化医療を推進する上で極めて重要である。

目的

本研究の目的は、セツキシマブ(単独およびFOLFIRI化学療法との併用)が、大腸癌 (CRC) 細胞において免疫原性細胞死 (ICD) を誘導する新たな作用機序の存在を検証することである。さらに、EGFRシグナル伝達経路の変異状況(特にKRAS、BRAF、PIK3CA変異)がICD誘導に対する感受性にどのように影響するかを解明することも目的とした。具体的には、セツキシマブが小胞体 (ER) ストレス応答、カルレティキュリン (CRT) およびERp57 (ER-associated protein disulfide isomerase ERp57) の細胞膜転座、樹状細胞 (DC) による貪食、およびin vivoでの抗腫瘍免疫応答を介してICDを誘導するかどうかを評価する。また、BRAF V600E変異がICD誘導を妨げるメカニズムを詳細に解析し、BRAFおよびMEK阻害剤によるICD感受性の回復の可能性を探ることで、セツキシマブの治療効果を予測し、個別化医療を最適化するための新たなバイオマーカーや併用療法の開発に貢献することを目指した。

結果

CetuximabによるERストレス応答とCRT/ERp57の細胞膜転座: DiFi細胞(KRAS/NRAS/BRAF/PIK3CA野生型、セツキシマブ高感受性)をFOLFIRI (F)、セツキシマブ (C)、またはF+Cで処理した結果、いずれの処理もアポトーシス(アネキシンV陽性、後期アネキシンV+7-AAD+)を誘導した (Fig. 1a)。C単独およびF+C処理は、F単独処理では見られないカルレティキュリン (CRT) およびERp57 (ER-associated protein disulfide isomerase ERp57) の細胞膜転座を免疫蛍光およびフローサイトメトリーで誘導した (Fig. 1b-d)。この転座はERストレス応答の誘導を反映しており、ERストレスの主要な指標であるeIF2α (eukaryotic initiation factor 2α) のリン酸化 (p-eIF2α) の上昇がC単独およびF+C処理で検出された (Fig. 1e)。SILACプロテオミクス解析により、2,600以上のタンパク質が定量され、セツキシマブ処理により細胞表面で特異的に発現が上昇した75のタンパク質が同定された。これらにはCRT、ERp57、および他の多くのER構成タンパク質が含まれており (Fig. 1f, Supplementary Table 2)、Gene Ontology解析では、最も濃縮された生物学的プロセスが「タンパク質フォールディング」と「ERストレス応答」であった (Fig. 1g)。これらの結果は、セツキシマブがICD (immunogenic cell death) の初期段階であるERストレス応答とERタンパク質の細胞膜転座を誘導することを示唆する。

MoDCによる貪食の促進とFcR非依存性: セツキシマブ処理が死滅細胞の樹状細胞 (DC) による貪食感受性を高めるか評価するため、F+C処理DiFi細胞と単球由来DC (MoDC) を共培養した。共焦点顕微鏡観察では、F+C処理DiFi細胞とMoDCが30分で結合し(tethering)、1時間で包囲、2時間で完全に貪食される様子が観察された (Fig. 2a-c)。C単独処理細胞も未処理またはF処理細胞よりも貪食されやすかったが、F+C処理細胞が最も効率的に貪食された (Fig. 2d)。フローサイトメトリー解析により、F+C処理DiFi細胞は未処理細胞と比較してDCによる貪食が約3倍に促進され (p<0.001)、C単独処理細胞でも有意な貪食促進が認められた (p<0.01)。DCによる貪食がFc受容体 (FcR) 依存性ではないことを確認するため、FcR結合能を欠くセツキシマブのF(ab)およびF(ab’)2断片を用いた。これらの断片もFOLFIRIとの併用下で、セツキシマブと同様にDCによる貪食を促進した (Fig. 2e, f)。このデータは、セツキシマブ処理によるDC貪食の増加がFcR非依存性であり、ICD誘導メカニズムによるものであることを強く示唆している。

in vivoにおけるCetuximab誘発ICDの免疫原性: in vivoでのセツキシマブとFOLFIRI処理の免疫原性を評価するため、ヒトEGFRを発現するマウス大腸癌細胞株 (hEGFR-CT26) を樹立した (Fig. 3a)。hEGFR-CT26細胞はEGF処理後にEGFR経路を活性化し (Fig. 3b)、in vitroでセツキシマブまたはF+C処理後にERストレス応答を受け、容易に貪食された (Supplementary Fig. 2a, b)。FOLFIRI、セツキシマブ、またはF+Cで処理したhEGFR-CT26細胞をワクチンとしてBALB/cマウス (n=5-9 animals per group) に接種し、その後hEGFRを欠く親株CT26細胞をチャレンジ接種した。その結果、セツキシマブまたはF+Cで処理したhEGFR-CT26をワクチン接種したマウスの90%が腫瘍形成から保護され、実験終了時(126日目)まで生存した (Fig. 3c, d, p<0.01)。対照的に、FOLFIRI単独処理ワクチン群では40%のマウスしか生存せず、凍結融解死滅細胞を接種した群は非ワクチン接種群と同様に腫瘍が発生した。CD8+ T細胞の役割を評価する養子移入実験では、F+C処理免疫由来のCD8+ T細胞のみがナイーブレシピエントマウスを親株CT26チャレンジから保護した (Fig. 3e, p<0.001)。また、CD107a脱顆粒アッセイでは、F+C免疫マウスの末梢血単核細胞 (PBMC) のみがCT26再刺激に対して有意な細胞傷害活性を示した (Fig. 3f, p<0.01)。F+C処理hEGFR-CT26細胞はHMGB1 (high-mobility-group box 1) を放出し (Supplementary Fig. 2e)、これが長期的な抗腫瘍応答に寄与すると推測された。これらのデータは、セツキシマブがCD8+ T細胞を介した防御的な抗腫瘍応答を誘導する「免疫原性貪食」を引き起こすことを示している。

EGFR経路の変異状況に依存するICD感受性: セツキシマブによるICD誘導の汎用性を評価するため、11種類のヒトCRC細胞株を用いて検証した (Table 1, Supplementary Fig. 5)。KRAS G12V変異を有するSK-CO-1細胞では、予想通りICD誘導は観察されなかった。しかし、KRAS G13D変異を有するHCT116細胞およびKRAS G12D変異を有するLim1215 KRAS G12D同質遺伝子株では、F+C処理によりDiFi細胞よりは低いものの、ERストレス応答と貪食が誘導された (Table 1, Supplementary Fig. 5a)。これは、KRAS G12D変異を有するマウスCT26細胞 (n=3 replicates) がF+C処理でICDを誘導したことと一致する (Supplementary Fig. 2a, b)。KRAS野生型細胞株のうち、ICDが誘導された4株(DiFi、Lim1215、OXCO-2、Caco-2)は全てBRAF野生型であった。一方、ICDが誘導されなかった4株(HT-29、COLO-205、RKO、NCI-H508)は全てBRAF V600E変異を有しており、RKOとNCI-H508はPIK3CA変異も併存していた。これらの結果は、BRAF変異がセツキシマブによるICD誘導感受性を特異的に妨げることを示唆している (Table 1, Supplementary Fig. 5b, Supplementary Table 3)。

BRAF V600E変異によるICD誘導の妨害と阻害剤による回復: BRAF V600E変異がICD誘導に果たす役割を詳細に調べるため、Lim1215細胞とそのBRAF V600E同質遺伝子株を用いた。FOLFIRIまたはF+C処理によるアポトーシス感受性には両細胞株間で差がなかったが (Fig. 4a)、F+C処理に対するDCによる貪食は親株Lim1215(野生型)でのみ誘導された (Fig. 4b)。これはBRAF V600E変異がF+C誘発ICDプロセスを妨害することを示唆する。セツキシマブ処理はBRAF V600E変異株でもEGFRリン酸化を誘導するが、RAS-MEK-ERK経路を完全に遮断することはできなかった (Fig. 4c, Supplementary Fig. 6a)。そこで、F+CにBRAF V600E阻害剤PLX4032 (PLX) および/またはMEK阻害剤トラメチニブ (trametinib) を併用することでICD感受性を回復できるかを検討した。OXCO-1およびHT-29細胞ではPLX単独でF+C誘発ICD感受性が回復したが、Lim1215 BRAF V600E細胞ではトラメチニブの併用も必要であった (Fig. 4d, Supplementary Fig. 6a, b)。ICD回復はERKリン酸化の抑制が確認された場合にのみ生じ、BRAFとMEKの同時抑制がICD誘導に必須であることを示した。また、XBP1 (X-box binding protein 1) スプライシングの阻害がICD誘導メカニズムに関与することも示唆された (Fig. 5b)。BRAF V600E細胞では、XBP1s (spliced XBP1) の転写レベルが野生型細胞と比較して約3倍高く (n=2 replicates)、F+C処理でもXBP1スプライシングが完全に阻害されなかった (Fig. 5b)。IRE1α (inositol-requiring kinase 1α) のRNAse活性阻害剤である4µ8cをF+Cと併用することで、BRAF V600E細胞におけるXBP1s転写が減少し、細胞貪食が促進された (Fig. 5c, d)。さらにトラメチニブの追加によりERKリン酸化が阻害され、貪食がさらに増強され、約2.5-foldの貪食促進が認められた (p<0.001)。これらの結果は、BRAF V600E変異がXBP1スプライシングを介して細胞適応を促進し、ICD誘導を妨げるが、BRAFおよびMEK阻害剤の併用によりICD感受性を回復できることを示している。

考察/結論

本研究は、転移性大腸癌 (mCRC) 治療に用いられる抗EGFR抗体セツキシマブの新規作用機序として、免疫原性細胞死 (ICD) の誘導を確立した。この発見は、KRAS野生型かつBRAF野生型患者におけるセツキシマブの臨床効果が、単純なEGFR-リガンド相互作用の阻害を超えた免疫介在的なメカニズムに起因することを説明するものである。ICD経路の活性化は、(1) EGFR経路の変異状態に依存し、(2) 小胞体 (ER) ストレス応答とeIF2α (eukaryotic initiation factor 2α) のリン酸化、(3) カルレティキュリン (CRT) およびERp57 (ER-associated protein disulfide isomerase ERp57) の細胞膜表面への転座、(4) 樹状細胞 (DC) による腫瘍細胞の貪食、(5) 高移動度群ボックス1 (HMGB1) の放出、そして (6) CD8+ T細胞を介した記憶免疫応答という多段階のプロセスを必要とする。FOLFIRI単独ではICDを誘導しないため、セツキシマブとFOLFIRIの併用が示す相乗効果は、ICD誘導にその基盤を持つと考えられる。

先行研究との違い: これまでの研究では、セツキシマブの作用機序は主にEGFRシグナル伝達経路の阻害に焦点が当てられていたが、本研究は、セツキシマブが免疫系を介して抗腫瘍効果を発揮する新規メカニズム、すなわちICD誘導能を持つことを初めて示した点で、これまでの理解と対照的である。特に、BRAF V600E変異がICD誘導を妨げる詳細な分子メカニズム(XBP1 (X-box binding protein 1) スプライシングとERK1/2リン酸化の関与)を解明した点は、先行研究では十分に検討されていなかった。

新規性: 本研究で初めて、セツキシマブがFOLFIRIとの併用により、ERストレス応答とCRT/ERp57の細胞膜転座を介してICDを誘導し、その結果としてDCによる腫瘍細胞の貪食とCD8+ T細胞を介した長期的な抗腫瘍免疫応答が確立されることをin vitroおよびin vivoモデルで実証した。さらに、BRAF V600E変異がXBP1スプライシングとERK1/2リン酸化を介してICD誘導を妨げることを新規に同定し、BRAFおよびMEK阻害剤の併用によりICD感受性を回復できることを示した。

KRAS G12V変異はICDを完全に阻害するが、KRAS G12D/G13D変異患者で時に観察される臨床効果は、ICDの残存によって説明できる可能性がある。BRAF V600E変異患者(mCRC全体の約10%)はセツキシマブ抵抗性であることが知られており、本研究はBRAFおよびMEK阻害剤の併用がICD感受性を回復させるという前臨床的基盤を提供した。これは、エンコラフェニブ、ビニメチニブ、セツキシマブの併用療法を評価するBEACON CRC試験(NCT02928224)の免疫学的基盤を支持するものである。パニツムマブがセツキシマブと同様にEGFRを認識するにもかかわらずHT-29細胞でICDを誘導しなかったことから、セツキシマブのキメラ型IgG1構造がICD誘導に鍵となる可能性が示唆される(ただし、F(ab)/F(ab’)2断片を用いた実験から、ADCC (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity) 依存性ではないことが確認されている)。

臨床応用: 本知見は、セツキシマブ治療応答予測マーカーの再定義(KRAS単独からKRAS、BRAF、PIK3CAを含む包括的な分子プロファイリングへ)に直結する。また、セツキシマブとFOLFIRIに抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤を併用する合理的設計の基盤を提供する。さらに、BRAF/MEK阻害剤によるセツキシマブ感受性回復のメカニズム解明は、BEACONレジメンの免疫学的機序を明らかにし、個別化医療のための分子プロファイリング強化に貢献する臨床的意義を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、ヒト患者サンプルにおけるICDマーカー(ERストレス、CRT、HMGB1)の検証、抗腫瘍免疫応答と臨床予後・治療応答との相関の確立、他のEGFR陽性癌(頭頸部癌、非小細胞肺癌など)でのICD誘導の確認、免疫チェックポイント阻害剤との併用最適化、およびICD誘導を妨げる耐性機構のさらなる解明が残されている。

方法

細胞株モデル:ヒト大腸癌細胞株として、セツキシマブ高感受性でKRAS/NRAS/BRAF/PIK3CA野生型 (WT) のDiFi細胞、KRAS WTでBRAF V600E変異を有するHT-29細胞、およびその他11種類のヒトCRC細胞株(DiFi, Lim1215, OXCO-2, Caco-2, HT-29, COLO-205, RKO, NCI-H508, SK-CO-1, HCT116, Lim1215 KRAS G12D同質遺伝子株)を用いた。また、マウス大腸癌細胞株CT26にヒトEGFR (hEGFR) を発現させたhEGFR-CT26細胞株を樹立し、in vivo実験に用いた。全ての細胞株はマイコプラズマ汚染がないことを確認し、NRAS WTであることが示された。

薬剤処理:FOLFIRI(イリノテカン、5-フルオロウラシル、レボホリナートの併用)、セツキシマブ、FOLFIRIとセツキシマブの併用 (F+C)、BRAF V600E阻害剤PLX4032 (PLX)、MEK阻害剤トラメチニブ (trametinib)、およびセツキシマブのF(ab)およびF(ab’)2断片を用いて細胞を処理した。FOLFIRIの各成分濃度は、レボホリナート 20 µM、5-フルオロウラシル 20 µM、イリノテカン 60 µMであった。セツキシマブおよびパニツムマブは10 µg/ml(66 nM)で使用した。PLX4032は0.3 µMまたは3 µM、トラメチニブは100 nM、IRE1α (inositol-requiring kinase 1α) 阻害剤III (4µ8c) は10 µM、タプシガルジンは4 µM、EGFは100 ng/mlで使用した。

ICDマーカー解析

  1. アポトーシス評価:アネキシンV/7-AAD染色によるフローサイトメトリー解析で、早期および後期アポトーシス細胞の割合を測定した。
  2. ERストレス応答および表面転座:免疫蛍光染色によりCRT、ファロイジン、DAPIを観察し、フローサイトメトリーによりCRTおよびERp57の細胞膜表面発現を定量した。ERストレス応答の指標として、eIF2α (eukaryotic initiation factor 2α) のリン酸化 (p-eIF2α) をウェスタンブロットで検出した。
  3. プロテオミクス解析:SILAC (Stable Isotope Labeling by Amino Acids in Cell Culture) 法を用いた質量分析ベースの定量的プロテオミクスにより、セツキシマブ処理細胞の細胞膜表面に特異的に発現が上昇するタンパク質を同定した。MaxQuantソフトウェア (version 1.3.0.5) を用いてMSデータ (.raw) を処理し、Andromeda検索エンジンでUniprotデータベースと照合した。
  4. HMGB1 (high-mobility-group box 1) 放出:ELISA法により細胞培養上清中のHMGB1放出量を測定した。
  5. 樹状細胞 (DC) 貪食アッセイ:単球由来樹状細胞 (MoDC) を用いて、処理済み腫瘍細胞の貪食能を共焦点顕微鏡観察およびDDAO色素を用いたフローサイトメトリーで評価した。Fc受容体 (FcR) 非依存性を確認するため、セツキシマブのF(ab)およびF(ab’)2断片も使用した。

in vivoワクチン接種モデル:BALB/cマウス (n=5-9 animals per group) に、FOLFIRI、セツキシマブ、またはF+Cで処理したhEGFR-CT26細胞をワクチンとして接種した。その後、hEGFRを発現しない親株CT26細胞をチャレンジ接種し、腫瘍形成の有無と生存期間を評価した。CD8+ T細胞の役割を評価するため、養子移入実験およびCD107a脱顆粒アッセイを実施した。

統計解析:データは正規分布を仮定し、平均値±標準誤差 (s.e.m.) または平均値±標準偏差 (s.d.) で示した。2群間の比較にはStudentのt検定を、多群間の比較には一元配置または二元配置ANOVAにBonferroniの多重比較検定を適用した。Kaplan-Meier生存曲線にはログランク検定を用いた。P値が0.05未満を有意とした。