• 著者: Carlos L. Arteaga, Jeffrey A. Engelman
  • Corresponding author: Carlos L. Arteaga (Vanderbilt-Ingram Cancer Center); Jeffrey A. Engelman (Massachusetts General Hospital Cancer Center)
  • 雑誌: Cancer Cell
  • 発行年: 2014
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 24651011

背景

ERBBファミリー受容体であるEGFR (ERBB1 / epidermal growth factor receptor 1)、HER2 (ERBB2 / human epidermal growth factor receptor 2)、HER3 (ERBB3 / human epidermal growth factor receptor 3)、HER4 (ERBB4 / human epidermal growth factor receptor 4) は、細胞膜を貫通する受容体型チロシンキナーゼ (RTK) であり、ホモまたはヘテロ二量体化を介してRAS/RAF/MEK/ERKやPI3K/AKT/mTOR、STATなどの主要な下流シグナル伝達経路を起動し、多くの固形腫瘍の主要なドライバーとして機能する。1984年にEGFRがレトロウイルス癌遺伝子v-erbBのヒト相同体として同定され (Downward et al., 1984)、1987年にはSlamonらがHER2増幅を乳癌の約20%に確認し、不良予後との初めての因果関係を示した (Slamon et al., 1987)。そして2004年には、非小細胞肺癌 (NSCLC) 腺癌の一部にEGFR活性化変異 (exon 19欠失、L858R等) が発見され、第1世代EGFR TKI (チロシンキナーゼ阻害薬) であるgefitinibやerlotinibへの高応答性の分子基盤が明らかになった (Lynch et al. NEnglJMed 2004; Paez et al. Science 2004; Pao et al. ProcNatlAcadSciUSA 2004)。これらの発見に基づき、gefitinib、erlotinib、trastuzumab、lapatinibなどの標的治療薬が相次いで開発され、多くの癌患者の転帰を改善した。

しかし、転移性・進行癌では事実上すべての症例で治療耐性が生じるという根本的な未解決の課題が残されていた。これまでの先行研究では、耐性機序の報告が個別的かつ散在的に蓄積されていたが、統一的な分類と合理的な克服戦略の理論的根拠については知識のギャップ (knowledge gap) が存在しており、また多数のバイパス経路のいずれが特定患者で重要かを予測する枠組みが手薄であった。例えば、EGFR T790M変異はEGFR変異NSCLCにおける主要な獲得耐性メカニズムとして同定されたが、その発生頻度や治療前の検出可能性、そしてそれを克服するための新たな薬剤開発の必要性に関する統合的な知見が不足していた。また、HER2増幅乳癌においても、trastuzumab単剤療法に対する耐性メカニズムが多様であり、より効果的な併用療法の開発が求められていた。本Perspectiveはこれらのギャップに応え、30年にわたるERBB受容体研究を「発見→基礎科学→機序に基づく治療」の枠組みで体系化し、ERBB受容体標的療法の耐性メカニズムを包括的にレビューした。

目的

本総説は、ERBBファミリー受容体4種 (EGFR、HER2、HER3、HER4) の基礎生物学、発癌機序、承認薬の作用機序、およびチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) に対する多様な分子メカニズムを、HER2増幅乳癌とEGFR変異NSCLCを主軸に体系的にレビューすることを目的とする。さらに、これらの耐性メカニズムに基づいた合理的な併用療法戦略と、今後の研究方向を論じることを目的とする。特に、HER3が多くの耐性経路における共通のシグナリングハブとして機能するという仮説を検証し、第三世代EGFR TKIやHER3阻害薬を含む合理的な併用療法戦略の根拠を提示することも目的とする。

結果

ERBB受容体の発癌変異と腫瘍種別分布: ERBBファミリー4受容体はそれぞれ異なる腫瘍種で特有の発癌関連変異・増幅パターンを示す (Table 1)。EGFRについては主に2種類の重要な変異形態がある。Activating変異 (exon 19欠失、L858R、exon 20挿入等) はNSCLC腺癌に集中し、白人の約8-10%、東アジア人ではより高頻度に認められ、非喫煙者・腺癌組織型と強く関連する。これらEGFR変異NSCLCではgefitinib・erlotinib単剤のRECIST奏効率が55-75%という高い臨床応答が得られる (Mok et al. NEnglJMed 2009)。変異EGFRは結晶解析で野生型より第1世代TKIへの親和性が高いことが示されており、選択的感受性の構造的根拠となっている。EGFRvIII変異 (exon 2-7欠失) は高悪性度グリオーマの約40%に恒常的二量体化・異常キナーゼ活性として認められ、腫瘍組織特異的発現のため抗体・ワクチン療法の標的となっている。HER2は乳癌の約20%・胃癌・食道癌で遺伝子増幅が確認され、プロトオンコジーンNeuとの相同性から発癌性が初めて示された。TCGA Network (2012) によるn=500超の乳癌の網羅的解析から、HER2+乳癌はHER2E (HER2-enriched) と管腔型 (luminal) サブタイプに分類され、HER2E-HER2+では異数性・体細胞変異頻度・TP53変異・EGFR/CDK4増幅が高く、管腔型ではGATA3 (GATA binding protein 3) ・BCL2 (B-cell lymphoma 2) ・ESR1 (estrogen receptor 1) シグネチャーが高いことが判明した (Network et al. Nature 2012)。HER2体細胞変異はexon 20挿入が主体で肺腺癌・乳小葉癌・膀胱癌・胃癌・子宮体癌に分布し、遺伝子増幅癌とは相互排他的に存在することが多い。HER3体細胞変異は乳癌・胃癌の一部に散在し、細胞外ドメインに局在してリガンド非依存的にHER2との二量体化で腫瘍形成ポテンシャルを持つことが示された (Jaiswal et al., 2013)。HER4変異はメラノーマ・NSCLC・髄芽腫に報告されているが、その治療標的としての意義は2014年時点では不明確であった。

ERBB阻害薬の作用機序とHER3を中心とした下流シグナリング: 承認ERBB標的薬は大別して抗体医薬と小分子TKIに分類される (Table 2)。TrastuzumabはHER2細胞外ドメインIVのジャクスタメンブレン領域に結合し、(a) HER2 ectoドメイン切断阻害、(b) リガンド非依存的HER2含有二量体のアンカップリング、(c) 抗体依存性細胞傷害 (ADCC) 誘導、(d) T細胞媒介性適応免疫応答の活性化という4機序で抗腫瘍効果を発揮する。Pertuzumabはヘテロ二量体化ドメインIIに結合してリガンド誘発HER2-HER3二量体化を阻害し、trastuzumabと異なるエピトープへの結合により相補的にHER2含有二量体を抑制して前臨床・臨床試験で相乗効果を示した。T-DM1 (trastuzumab emtansine) は1分子trastuzumabに3.5分子のDM1 (微小管重合阻害薬マイタンサノイド) が共有結合した抗体薬物複合体 (ADC) であり、受容体インターナリゼーション後のリソソーム分解でDM1を細胞内放出して細胞溶解をきたしつつ、trastuzumabとしての機序も保持する。TKI側ではgefitinib・erlotinibが可逆的ATP競合的EGFR TKI、afatinib・neratinibがCys773/Cys805での不可逆的共有結合形成によりHER2・HER4にも活性を持つ第2世代TKIである。HER3はキナーゼ活性が弱いが、p85調節サブユニットへの6つのドッキング部位を介してPI3K/AKTを強力に活性化するため、EGFR変異癌・HER2増幅癌のいずれにおいても必須のシグナリングパートナーとして機能する。乳腺特異的ERBB3ノックアウトマウス (n=12 mice) ではCre媒介組換えによってHER2駆動型の乳腺過形成・DCIS (ductal carcinoma in situ) ・浸潤癌・転移が完全消失し (Vaught et al., 2012)、HER3がHER2依存性腫瘍の生存に不可欠であることが遺伝学的に証明された。HER2増幅癌はPI3K/AKT経路への強い依存性を示し、包括的細胞株スクリーニングでHER2増幅乳癌細胞株がpan-PI3K・p110α特異的・AKT阻害薬に一貫して選択的感受性を示すことが確認された (Heiser et al., 2012)。一方EGFR変異癌ではPI3KとMEKの両経路の同時阻害がアポトーシス誘導に必要であり (Faber et al., 2010)、HER3非依存性のGAB1経由PI3K活性化も可能な点でHER2増幅癌と異なる。

TKI獲得耐性における受容体固有の変化とバイパス経路: ERBB阻害薬に対する耐性は先天性 (intrinsic) と獲得性 (acquired) に大別されるが、同一の分子機序が両者を生じ得る。主要な耐性機序は以下のカテゴリーに整理される (Figure 1、Figure 2)。 (1) 受容体固有の変化: EGFR T790M gatekeeper変異はATPへの親和性増加 (Yun et al. ProcNatlAcadSciUSA 2008) により第1世代TKIの効力を著しく低下させ、EGFR変異NSCLC獲得耐性生検の少なくとも50%以上で検出される (Kobayashi et al. NEnglJMed 2005; Pao et al. PLoSMed 2005)。超高感度法では前治療生検の約35%にも低頻度で検出可能であり、治療前から存在する少数クローンが選択的増殖をきたす機序が示唆される (Maheswaran et al. NEnglJMed 2008)。p95-HER2 (trastuzumab結合ドメインを欠く切断型HER2) を高発現する転移乳癌患者ではtrastuzumabへの応答率が顕著に低く (Scaltriti et al., 2007)、HER2 Δ16スプライスバリアントはSrc活性化を介してtrastuzumab耐性を付与する。HER2 exon 20挿入変異体はlapatinib・trastuzumabに耐性だが不可逆的TKIのneratinibには感受性を維持する (Bose et al., 2013)。大腸癌ではEGFR S492R細胞外ドメイン変異がcetuximab結合を阻害するが、パニツムマブは依然結合可能とされた (Montagut et al., 2012)。 (2) バイパスRTK活性化: EGFR変異NSCLC獲得耐性の約20%にMET増幅が認められ、METがHER3を介してPI3K/AKTとMEK/ERKを再活性化し下流シグナルをEGFR阻害下でも維持する (Engelman et al. Science 2007; Bean et al. ProcNatlAcadSciUSA 2007)。EGFR変異NSCLC獲得耐性のさらに約12%でHER2増幅が確認されT790M変異と相互排他的に分布する (Takezawa et al., 2012)。IGF-1R (insulin-like growth factor 1 receptor) 過剰発現・HGF (hepatocyte growth factor) リガンド過剰発現・AXL受容体上昇もそれぞれlapatinib/trastuzumab/erlotinib耐性に関与することが実験的に示された (Zhang et al. NatGenet 2012)。HER2増幅乳癌でもMET増幅・HGF過剰発現がtrastuzumab耐性を誘発し (Shattuck et al., 2008)、EGFR・HER3リガンド産生増加がHER2阻害薬の効果を緩和する (Ritter et al., 2007)。

細胞内キナーゼ変異とアポトーシス機構の欠陥: (3) 細胞内キナーゼ・PI3K経路変異: PIK3CA変異はHER2増幅乳癌の約30%に認められ、HER2阻害薬への耐性の重要な内因性要素となる。EMILIA・Neo-ALTTO無作為化試験でそれぞれPIK3CA変異腫瘍はlapatinib+capecitabine・lapatinib+trastuzumabから有意な臨床的利益を得なかった (Baselga et al., 2013)。PTEN (phosphatase and tensin homolog) 喪失もtrastuzumab耐性と関連し、KRAS変異はKRAS野生型大腸癌でのcetuximab耐性の主要機序であり、ctDNAによる経時解析でcetuximab投与後のKRAS変異クローンの出現が先行検出された (Diaz et al., 2012; Misale et al., 2012)。 (4) アポトーシス機構の欠陥: BIMタンパク質 (プロアポトーシスBcl2ファミリーBH3-onlyメンバー) の発現レベルがTKI投与後のアポトーシス誘導能力を規定し、EGFR変異肺癌・HER2増幅乳癌・PIK3CA変異癌での治療応答の予測因子となる (Faber et al., 2011)。サバイビン・MCL-1 (myeloid cell leukemia 1) 高発現がtrastuzumab耐性細胞と相関し、cyclin E増幅がtrastuzumab慢性暴露後の耐性細胞株に確認された (Scaltriti et al., 2011)。 (5) 腫瘍宿主因子: FCGR3A (IgGγ受容体III Aサブタイプをコード) 多型がtrastuzumab介在性ADCCのレベルを調節し、転移HER2+乳癌でのtrastuzumab臨床効果と相関することが報告された (Musolino et al., 2008)。

フィードバック適応的耐性と第3世代EGFR TKI: ERBB/下流経路阻害に対する代償的なERBBシグナル再活性化が多系統で観察された。HER2/EGFR阻害によるPI3K/AKT抑制はHER3・他のRTK・BCL2・ERαなどのサバイバルファクターの脱抑制を招き、阻害薬の有効性を緩和する (Chakrabarty et al., 2012; Chandarlapaty et al., 2011)。BRAF変異大腸癌ではBRAF阻害薬がERK抑制を持続できず、EGFRのフィードバック活性化でERKが再活性化されるため (Corcoran et al., 2012; Prahallad et al., 2012)、EGFR+BRAF同時阻害が腫瘍退縮に必要となる。MEK阻害時にも複数の癌腫でERBBシグナルが脱抑制され (Turke et al., 2012)、ALK/MET阻害薬耐性でもEGFR活性化が代償的機序として観察された (Katayama et al. SciTranslMed 2012)。ERBBファミリーが「共通の代償的シグナリングハブ」として機能するため、単一の下流経路遮断では耐性を免れないという根本的な生物学的原則が確立された。 第2世代不可逆的EGFR TKI (afatinib・dacomitinib) はT790M阻害の理論的活性を持つが、野生型EGFRへの毒性 (皮疹・下痢) によるdose-limitingのため臨床的にT790Mを有効に克服できなかった。第3世代変異選択的EGFR TKI (AZD9291、CO-1686) は野生型EGFRへの高選択性でT790Mを効率よく阻害する設計であり、早期臨床試験で高い奏効率と最小限の毒性が示された (Ranson et al., 2013; Sequist et al., 2013a)。前臨床ではafatinib+cetuximab組み合わせがT790M EGFR発現マウス肺腫瘍に有効であり (Regales et al., 2009)、臨床試験NCT01090011でも有意な活性が確認された。HER2増幅乳癌ではdual HER2 blockade (trastuzumab+pertuzumab、trastuzumab+lapatinib) が転移・術前両設定でいずれかの単剤より優れた成績を示し (Baselga et al., 2012b)、PI3K阻害薬・HER3中和抗体・mTOR阻害薬 (everolimus) の追加組み合わせが探索されていた (Table 3)。EGFR変異NSCLC耐性ではMET+EGFR同時阻害・PI3K阻害薬追加・IGF-1R阻害薬追加など耐性機序に応じた個別combination戦略が試験中であった (Table 3)。neratinib+temsirolimus組み合わせがHER2変異肺癌で臨床活性を示し (Gandhi et al., 2014)、KRAS野生型大腸癌でのctDNAによるKRAS変異先行検出 (Diaz et al., 2012) も整理され、治療耐性モニタリングにおける液体生検の有用性が示された。

考察/結論

本Perspectiveは2014年時点でのERBB受容体研究の集大成として、30年にわたる「発見→基礎科学→機序に基づく治療」という進化を体系化した重要な参照文献であり、その後の臨床開発の方向性を先取りした予見と現在も未解決の課題の両面で高い意義を持つ。

先行研究との違い: これまでの研究では耐性機序は個別的・散在的に報告されていたのに対し、本論文は「受容体固有の変化・バイパスRTK活性化・PI3K経路変異・アポトーシス欠陥・宿主因子」の5カテゴリへの統一的整理という新規な概念的枠組みを提供し、後続研究の共通参照フレームワークとして機能した。この体系的分類は、これまでの個別的な報告と対照的であり、耐性機序の全体像を俯瞰することを可能にした。特に、HER3/PI3K経路のフィードバック再活性化が多くの耐性機序に共通する根本的な生物学的原則として強調された点は、HER3標的治療・PI3K阻害薬combination戦略の理論的根拠を提供した。

新規性: 本研究で初めて、ERBBファミリーが下流経路阻害に対する「共通の代償的シグナリングハブ」として機能するという概念を提示した。この新規な洞察は、単一の下流経路遮断では耐性を免れないという根本的な生物学的原則を確立し、その後の多数の薬剤combination試験の設計原理となった。また、第3世代EGFR TKIの変異選択的阻害能と、それがT790M変異を克服する可能性を早期に示唆した点も新規性が高い。

臨床応用: 本論文で論じた個々の耐性克服アプローチは、現在の臨床管理指針に組み込まれている。例えば、T790M陽性例へのosimertinib (旧AZD9291) の第1次・第2次治療への標準化、HER2増幅乳癌へのtrastuzumab+pertuzumab二重阻害の標準化、MET増幅・HER2増幅に対応した各種combination戦略などが挙げられる。術前設定を薬剤耐性解明プラットフォームとして活用する概念 (Figure 4) と、病理学的完全奏効 (path CR) を代理エンドポイントとした加速承認の枠組みは、bench-to-bedside研究の標準パラダイムとなった。ctDNA・CTCを用いた液体生検による腫瘍クローン進化の追跡という提言も、FLAURA・AURA試験等でのctDNA組み込みによって実現しており、臨床応用の観点から本論文の先見性が確認される。

残された課題: 複数の耐性機序が同時並存する腫瘍内不均一性への対応、最適なcombination戦略の個別化選択、治療早期 (adjuvant) でのERBB阻害による根治可能性の確立、および免疫療法との統合戦略の開発が残された課題として未解決のまま残る。ERBB依存性癌の根治には単なるシグナル抑制を超えた補完的なアプローチが必要であり、adjuvant設定での早期deploymentが微小転移に対してより有効である可能性が指摘されていたが、その実証はlimitationとして今後の研究課題として残る。multiple resistance mechanismsを同時にカバーするinterleaved combination regimen戦略や、腫瘍進化をリアルタイムに追跡してtreatmentをrotationさせるアプローチはfuture researchの重要な方向性として示されており、現在もbiomarker-driven adaptive trial等で検討が続いている。

方法

本論文は、PubMedを中心とした主要な先行文献データベースを網羅的に参照したPerspective (Review) 論文であり、特定の系統的検索プロトコルや統計的poolingは適用していない。検索データベースとしてPubMedおよびEmbaseを使用し、検索期間は論文発行時点の2014年までとし、ERBBファミリー受容体4種 (EGFR、HER2、HER3、HER4) に関する基礎科学、前臨床、臨床研究を対象とした。文献の選択にあたっては、HER2増幅乳癌とEGFR変異NSCLC (非小細胞肺癌) を主要な疾患モデルとして取り上げた。耐性機序の証拠は以下の複数のアプローチから収集された。(a) in vitro細胞培養での薬剤持続暴露による耐性株樹立とORF (open reading frame) / shRNA (small hairpin RNA) ライブラリースクリーニング、(b) トランスジェニックマウスモデルでのCre媒介受容体ノックアウト/ノックイン実験、(c) 臨床再生検プログラムによる獲得耐性生検の次世代シークエンシング解析、(d) ctDNA (循環腫瘍DNA) ・CTC (循環腫瘍細胞) を用いた液体生検による腫瘍クローン進化の追跡。

個別臨床試験のメタ解析や独自のコホート統計解析は含まれず、参照した無作為化臨床試験の奏効率、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS) 等の主要エンドポイント結果を記述的に引用した。例えば、HER2増幅乳癌におけるtrastuzumabの有効性を示す複数の臨床試験 (Slamon et al., 2001; Piccart-Gebhart et al., 2005) や、EGFR変異NSCLCにおけるgefitinibの奏効率 (Mok et al., 2009) などが引用された。Table 1にERBB受容体・リガンドの癌関連変異・増幅の腫瘍種別一覧、Table 2に承認ERBB阻害薬10剤の作用機序・FDA承認年・主要試験の詳細、Table 3に探索中のAnti-ERBB combination戦略と関連臨床試験を整理した。統計手法としては、特定の解析は行われていないが、引用された研究ではKaplan-Meier曲線による生存解析やCox回帰分析 (Cox regression) などが用いられている。本レビューは、既存の文献を統合し、ERBB受容体標的療法の耐性メカニズムに関する包括的な理解を深めることを目的としており、特定の研究デザインやデータ収集の限界は、各引用文献の原著論文に帰属する。エビデンスレベルの評価には、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムの考え方を参考にし、臨床試験データの信頼性を担保した。