• 著者: O’Leary B, Finn RS, Turner NCT
  • Corresponding author: Nicholas C.T. Turner (The Institute of Cancer Research / Royal Marsden Hospital, London, UK)
  • 雑誌: Nature Reviews Clinical Oncology
  • 発行年: 2016
  • Epub日: 2016-03-31
  • Article種別: Review
  • PMID: 27030077

背景

がんの中心的特徴のひとつは制御されない細胞増殖であり、この増殖を駆動する細胞周期制御機構は長年の創薬標的として注目されてきた。細胞周期の各ステージ移行を制御するサイクリン依存性キナーゼ (CDK: cyclin-dependent kinase) のうち、CDK4とCDK6はG1期からS期への移行 (G1/S移行) において中心的役割を果たす構造的・機能的に類似したキナーゼペアである。CDK4/6はD型サイクリン (Cyclin D1/D2/D3) と複合体を形成し、網膜芽細胞腫タンパク (RB1: retinoblastoma-associated protein 1) を多段階にリン酸化することでE2F (E2 promoter binding factor) 転写因子を解放し、S期移行に必要な遺伝子群の転写を開始させることが基礎研究で確立されていた (Sherr & Roberts, Genes Dev 1999; Kastan & Bartek, Nature 2004)。

しかし1990年代から2000年代にかけて開発された第一世代の非選択的CDK阻害薬、すなわちalvociclib (フラボン系、CDK1/2/4/6/7/9を広域阻害) およびseliciclib (プリン系、CDK1/2/5/7/9阻害、CDK4/6に対するIC50 (50% inhibitory concentration) >10 µM) は、正常細胞への毒性の高さと有効性の乏しさから臨床開発が困難であった (Malumbres & Barbacid, Nat Rev Cancer 2009)。Alvociclibは血液悪性腫瘍の早期試験で一部の応答を示したものの、用量制限毒性 (疲労・下痢・骨髄抑制) が障壁となった。失敗の根本原因として、CDK1阻害を含む広域CDK阻害が正常体細胞にも不可避な毒性をもたらすという「治療窓 (therapeutic window) の手薄さ」が特定された。

こうした背景から、CDK4とCDK6に高度に選択的な第二世代阻害薬として palbociclib・ribociclib・abemaciclibの3剤が台頭した。ER陽性 (エストロゲン受容体 [ER: estrogen receptor] 陽性) 乳癌、特に管腔型 (luminal) サブタイプではERシグナリングがCCND1プロモーターを活性化してサイクリンD1を高発現させ、CDK4/6-RB1軸への顕著な依存性が前臨床的に確立されていた。palbociclibとletrozoleの組み合わせで初期臨床有効性シグナルが確認されつつあり (Finn et al. LancetOncol 2015)、内分泌療法後進行症例でも有望なデータが得られ始めた (Turner et al. NEnglJMed 2015)。しかし、耐性バイオマーカーの前向き同定、乳癌以外のがん種での適用根拠、そして3剤 (palbociclib・ribociclib・abemaciclib) の差別化指標という点で先行研究には重要な知識ギャップ (knowledge gap) が存在していた。CCND1増幅・RB1発現・CDKN2A欠失が患者選択指標として臨床的に検証されておらず、さらにTCGAコホートのゲノム解析で明らかになったがん種横断的な細胞周期異常の全体像 (CancerGenomeAtlasNetwork et al. Nature 2012) を選択的CDK4/6阻害薬の設計に結びつける統合レビューが強く求められていた。具体的に不足していたのは、(1) どの腫瘍型・バイオマーカー背景の患者が最大の恩恵を受けるかの前向き検証基盤、(2) 3剤間の臨床的差別化に必要なCDK選択性・毒性・中枢神経移行性に関する比較データ、(3) 耐性出現後に有効な治療シーケンスを構築するための耐性機序の体系的解析、の3点であり、これらの未解決の問いに答えるための統合的な論考が欠如していた。

目的

本論文は、選択的CDK4/6阻害薬 (palbociclib・ribociclib・abemaciclib) について (1) 細胞周期G1/S移行における分子機序と治療標的としての生物学的根拠、(2) 初期臨床試験から第III相試験までの最新臨床エビデンス (特にPALOMA-1/3)、(3) CDK4/6阻害薬耐性機序とその克服戦略、(4) 乳癌以外のがん種への適用拡大における課題と展望を包括的に論じることを目的とする。

結果

CDK4/6の分子機序:Cyclin D-CDK4/6-RB1-E2F軸の制御と古典的・非古典的モデル

細胞がG0/G1静止期から増殖を開始するには制限点 (restriction point) の通過が必要であり、この過程はRB1タンパクとE2F転写因子ファミリーの相互作用によって制御される (Fig. 1a)。増殖因子シグナル (ERシグナリング・PI3K経路・MYCなど) によってD型サイクリン (cyclin D1/cyclin D2/cyclin D3) の発現が誘導され、CDK4またはCDK6と複合体を形成してRB1をリン酸化する。低リン酸化型RB1はE2F転写因子のトランス活性化ドメインに結合してS期移行遺伝子群 (サイクリンE・DHFR [dihydrofolate reductase: ジヒドロ葉酸還元酵素] 等) の転写を抑制しているが、CDK4/6複合体によるRB1過リン酸化によりE2F転写因子が解放される (Fig. 1b)。解放されたE2F転写因子はさらにサイクリンEを転写し、サイクリンE-CDK2がRB1を過リン酸化することで不可逆的なポジティブフィードバックループが形成されS期移行が確定する。RB1はhistone deacetylase (HDAC: ヒストン脱アセチル化酵素) やSWI/SNF (switch/sucrose non-fermentable) クロマチンリモデリング複合体を通じたクロマチンレベルの制御も担い、100を超えるタンパクと相互作用する多機能制御因子である。

INK4ファミリー (p16INK4A [CDKN2AがコードするCDK阻害タンパク]・p15INK4B・p18INK4C・p19INK4D) はCDK4/6に選択的に結合して触媒活性を阻害する内因性ブレーキとして機能し、中でもp16INK4Aは発がんシグナル・細胞老化・TGFβ (transforming growth factor beta) シグナリング・接触阻害によって誘導される主要なCDK4/6制動因子である。CIP/KIP (CDK inhibitor 1/kinase inhibitory protein) ファミリー (p21CIP1・p27KIP1・p57KIP2) は逆にCDK4複合体の形成を安定化してCIP/KIPタンパクを「捕捉」し、CDK2の活性化閾値を下げる促進的な役割も持つ複雑な制御素子である。なおCDK4/CDK6ダブルノックアウトマウスでは多くの非造血細胞が正常増殖できることが示され (Fig. 1c)、D型サイクリンがCDK2と直接複合体を形成してG1/S移行を駆動できる「非古典的モデル」の存在が確認されている。この知見は一部のがん種でCDK4/6に対する依存性が低い可能性、すなわちCDK4/6阻害薬に対する内因性耐性を予測する上で重要な示唆を持つ。

3剤 (palbociclib・ribociclib・abemaciclib) のCDK選択性プロファイルと前臨床有効性の差異

Palbociclib・ribociclib・abemaciclibはいずれもCDK4/6のATP結合ポケットに競合的に結合するが、選択性プロファイルと追加標的に差異がある。IC50値の比較では、CDK4に対してabemaciclib 2 nM・palbociclib 9-11 nM・ribociclib 10 nM であり、CDK6に対してabemaciclib 5 nM・palbociclib 15 nM・ribociclib 39 nM。対してCDK1に対しては palbociclib >10 µM・ribociclib >100 µMと数百〜数千倍の選択性差がある。Abemaciclibはさらにそれ自体がCDK9 (IC50 57 nM) を阻害し、CDK4対CDK6比での選択性も他剤より高い。CDK9阻害が細胞機能にどう影響するかは2016年時点では不明であった。前臨床的にはpalbociclibがマントル細胞リンパ腫 (mantle cell lymphoma: MCL) 異種移植モデル、CDKN2A/CDKN2C共欠失神経膠芽腫 (glioblastoma) 細胞株、RB1陽性卵巣癌で抗腫瘍活性を示した。Ribociclibは神経芽腫および脂肪肉腫細胞株でG1停止とRB1リン酸化 (Ser780・Ser807/811) の抑制を誘導し、異種移植腫瘍量を有意に減少させた。

早期臨床試験データ:第I相・第II相の有効性と安全性シグナル

第I相試験ではいずれも管理可能な毒性プロファイルと有効性の初期シグナルが示された。Abemaciclibの第I相試験 (n=55) では52%が下痢を経験し (grade 3: 5%)、好中球減少は少なく持続投与スケジュールが可能であった。ER陽性乳癌コホート36例では中央値PFS 9.1ヶ月・部分奏効率33%を達成しており、大半が多ライン治療済みの患者群での結果として注目された。Palbociclibの単剤第I相試験のマントル細胞リンパ腫コホート (n=17) では5例がPFS >12ヶ月を達成し、grade 3-4好中球減少が最頻毒性として確認された (125 mg/日、3週on/1週off投与)。Ribociclibの第I相試験 (n=132、RB1陽性固形腫瘍・リンパ腫) では好中球減少・白血球減少が用量制限毒性となり、CCND1増幅の2例 (黒色腫・乳癌各1例) が部分奏効を達成した。また、NRAS変異黒色腫を対象とするribociclib+binimetinib (MEK: mitogen-activated ERK kinase 阻害薬) 試験 (n=14) では6例が部分奏効を達成し、CDK4/6+MAPK (mitogen-activated protein kinase) 阻害の組み合わせ戦略の可能性を示した。

ER陽性乳癌に対するpalbociclib単剤第II相試験 (n=37、RB1陽性) では2例が部分奏効・さらに5例が安定疾患 (≥6ヶ月) を達成し、多ライン前治療済みの集団での有効性を確認した。脂肪肉腫コホート (n=29) では12週時点での非進行率が66%であった。

PALOMA試験:第II相・第III相エビデンス (Table 1)

本レビューで最も重要な臨床データはPALOMA-3試験から得られた。HR陽性 (hormone receptor陽性)/HER2陰性進行乳癌で既存内分泌療法後に進行したn=521例を対象に、palbociclib (125 mg/日、3週on/1週off) +fulvestrant (選択的エストロゲン受容体分解薬 [SERD: selective estrogen receptor degrader]) 対 placebo+fulvestrantに2:1比でランダム化した二重盲検第III相試験において、主要エンドポイントの中央値PFSはpalbociclib群9.5ヶ月 (95% CI 9.2-11.0) 対 placebo群4.6ヶ月 (95% CI 3.5-5.6)、HR 0.46 (95% CI 0.36-0.59)、P<0.0001と有意かつ臨床的に意義のある延長を示した。プレメノポーザル女性が21%含まれ、卵巣抑制のためGnRHアゴニスト (gonadotropin-releasing hormone agonist: 性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト) を追加投与された。Grade 3-4好中球減少は65%に生じたが、発熱性好中球減少症はわずか1%と希少であった。感染症 (40% vs 27%、主にgrade 1-2) はpalbociclib群で多かったが、治療中止例は4% (placebo群2%) のみ。QOLはpalbociclib群で有意に改善し (QLQ-C30評価)、循環腫瘍DNAで検出されたPIK3CA活性化変異の有無によらず同等のPFS延長が得られた。PALOMA-3結果はpalbociclibのFDA (Food and Drug Administration: 米国食品医薬品局) 承認拡大の根拠となった (Turner et al. NEnglJMed 2015)。

先行するPALOMA-1/TRIO-18試験 (n=165、ランダム化第II相) では未治療ER陽性/HER2陰性進行乳癌においてletrozole単独対letrozole+palbociclib比較が行われ、中央値PFS 10.2ヶ月 (95% CI 5.7-12.6) 対 20.2ヶ月 (95% CI 13.8-27.5)、HR 0.49 (片側P=0.0004) という同様のパターンが確認され、2015年2月のFDA加速承認の根拠となった (Finn et al. LancetOncol 2015)。なお、CCND1増幅またはCDKN2A欠失による患者選択は一次コホートと追加的な差異をもたらさず、早期にプロトコルが修正された (Fig. 3a)。

薬剤間の毒性プロファイルの差異

Palbociclibおよびribociclibでは好中球減少がgrade 3-4で約50-70%に生じる一方、発熱性好中球減少症は<1-2%と極めて稀であった。この特異なパターンは、CDK4/6が造血前駆細胞の増殖シグナル応答に関与する一方でCDK1/2のような細胞分裂完了に必須な役割を持たないという生物学的根拠から予測可能であり、CDK4/6への高選択性が正常造血幹細胞への障害を最小化していることを示す。好中球最低値は投与開始後14-21日頃に達するが、次サイクル開始前に多くの症例で回復する。Abemaciclibは相対的に骨髄抑制が軽度であるため持続投与 (連日投与) スケジュールが可能であり、一方で下痢 (grade 1-2が主体、grade 3: 約5%) が特徴的な有害事象として出現する。この毒性プロファイルの差異は、abemaciclibのCDK9 (IC50 57 nM) 追加阻害が腸管上皮に与える影響と関連する可能性があり、治療スケジュールおよび組み合わせ戦略の選択に実際的な影響を持つ。RibociclibはQTc (corrected QT interval: 補正QT間隔) 延長が観察されており心電図モニタリングが推奨される。Blood-brain barrier (血液脳関門) 透過性においてもabemaciclibはpalbociclibより高い可能性があり、脳転移への潜在的適用が示唆されたが、2016年時点では前臨床データが限定的であった。

CDK4/6阻害薬への原発性・獲得耐性機序とバイパス経路

CDK4/6阻害薬耐性機序として2016年時点で以下が提唱された。第一はRB1機能喪失 (変異・欠失・タンパク欠損) であり、in vitroで最も強固な原発性耐性機序として確立されているが、ER陽性乳癌での変異頻度は低く、臨床生検での耐性サンプルでも約15-20%にとどまる。第二はCCNE1増幅によるサイクリンE1過剰発現であり、CDK2がCDK4/6非依存的にRB1をリン酸化するバイパス経路を形成する。Palbociclib耐性獲得細胞株ではRB1喪失とCCNE1増幅が選択的に観察され、これらはCDK4/6+CDK2複合阻害に対して感受性を示した。第三はCDK4/6増幅・過剰発現 (CDK4増幅がin vitroで耐性と関連する報告あり) である。第四はE2F増幅またはCDKN1A (p21CIP1) 欠失であり、タモキシフェン耐性とも関連するとして提唱された。第五はPI3K/AKT/mTOR経路の活性化 (PTEN喪失・PIK3CA変異) であり、CDK4/6阻害薬との併用でmTOR阻害薬 (everolimusなど) が候補戦略として検討された。

乳癌以外のがん種への適用課題と組み合わせ戦略 (Table 2)

CDK4/6阻害薬はRB1陽性腫瘍全般への適用が理論的に期待されるが、がん種ごとの前臨床根拠と臨床エビデンスの成熟度には大きな差がある。マントル細胞リンパ腫 [t(11;14)転座によるCCND1過剰発現] ではCDK4/6+ibrutinib (BTK: Bruton’s tyrosine kinase 阻害薬) またはPI3K阻害薬との組み合わせが前臨床で支持されている。脂肪肉腫 (CDK4増幅が高頻度) では第II相で12週非進行率66%が示された。KRAS変異NSCLC (non-small cell lung cancer) ではCDK4ノックダウンがKRAS変異細胞で特に有効であること、またKRAS活性とCDK4の間の合成致死 (synthetic lethality) 的関係が示唆された。NRAS変異黒色腫ではCDK4/6+MEK/BRAF阻害薬の組み合わせが前臨床・第I相で支持され、vemurafenib耐性黒色腫モデルでabemaciclibが再感受性化を誘導した (CDK4/6阻害がサイクリンD低下を介してCDK2バイパスを抑制)。ER陽性乳癌での PI3K阻害薬・mTOR阻害薬との3剤併用、HER2増幅乳癌でのtrastuzumabとの組み合わせも前臨床で支持されている (Fig. 4)。しかし乳癌以外での大規模ランダム化試験でのPFS延長は2016年時点では達成されておらず、患者選択のためのバイオマーカー (RB1タンパク発現・CCNE1 FISH [fluorescence in situ hybridization: 蛍光in situハイブリダイゼーション]・CDKN2A/CDK4コピー数) の標準化が適用拡大の前提課題として挙げられた (CancerGenomeAtlasNetwork et al. Nature 2012)。

考察/結論

本レビューは選択的CDK4/6阻害薬の分子生物学的根拠から最新臨床エビデンスまでを体系的に統合した、2016年時点での代表的論考である。最も重要な臨床的転換点はPALOMA-3試験でのPFS延長 (HR 0.46、中央値9.5 vs 4.6ヶ月) であり、内分泌療法不応HR+/HER2-乳癌に対する新たな治療選択肢の確立を明示した。既報の非選択的CDK阻害薬開発の失敗と本レビューの知見と異なる点として、CDK4/6への高選択性が毒性プロファイルを根本的に変え、従来のpan-CDK阻害薬では到達できなかった治療窓を実現したことが挙げられる。特に好中球減少の頻度 (grade 3-4で65%) は高いものの発熱性好中球減少症が<1%にとどまるという特異な毒性パターンは、CDK4/6ノックアウトマウスの造血系表現型から予測されていた知見と一致しており、新規な観点ではないが本研究において初めて大規模無作為化試験データとして確認された。

臨床応用の観点から最も重要な課題は耐性克服戦略の確立である。RB1喪失はin vitroでは最強の耐性機序として確立されているが、臨床生検での頻度が低いことから、CCNE1増幅・PIK3CA変異・E2F増幅を含む多因子耐性機序の並行追跡が臨床的意義を持つ。CCNE1増幅を持つ細胞株がCDK4/6+CDK2複合阻害に感受性を示すという前臨床知見は、耐性後の治療シーケンスとして臨床現場への直接的な橋渡し研究として位置づけられ、CDK2阻害薬やmTOR阻害薬との組み合わせ戦略の根拠を提供した。対照的に、基底細胞様TNBC (triple-negative breast cancer) はRB1機能喪失とCCNE1高発現により内因性CDK4/6阻害薬耐性を呈することは既報として確立されており、本レビューはHR陽性サブタイプへの選択集中の分子的根拠を補強した。

今後の検討として、乳癌以外のがん種への適用拡大にはバイオマーカーの標準化が必須であり、Lung-MAP試験 (CDK4/CCND1-3異常を選択基準とする扁平上皮癌でpalbociclib群) やSIGNATURE試験 (ribociclibのCCND/CDKN2A/CDK4異常選択) といった遺伝子異常ガイデッドアプローチが検討されていた。なお本レビューはあくまで2016年時点の知識を反映しており、limitation として、その後のribociclib (MONALEESA-2)・abemaciclib (MONARCH-2/monarchE) の大規模承認データ、OS (overall survival: 全生存期間) 最終解析、また術後補助療法設定 (monarchE: IDFS [invasive disease-free survival: 浸潤性疾患無再発生存期間] HR 0.664) での適用は包含されていない。さらなる検討として、耐性バイオマーカーの前向き検証・CDK2阻害薬との組み合わせ・免疫療法との相互作用も重要な future research として残されており、本レビューはそれらの研究基盤となった。

方法

本論文はNature Reviews Clinical Oncologyに掲載された招待総説であり、PubMed・MEDLINE (Medical Literature Analysis and Retrieval System Online) を中心とするデータベースを系統的に検索し、著者らの臨床・前臨床データへの直接アクセスを補完的に活用した。検索語はCDK4/6 inhibitor・palbociclib・ribociclib・abemaciclib・cell cycle・RB1 phosphorylation・breast cancer endocrine therapy resistance等を含み、2016年3月までの英文原著論文・総説・会議抄録を対象とした。文献選択基準は (1) 細胞周期G1/S移行の分子機序に関する基礎研究、(2) 選択的CDK4/6阻害薬の前臨床薬理データ [IC50 (50% inhibitory concentration)・選択性プロファイル]、(3) ヒト腫瘍細胞株および動物モデルを用いたin vitro/in vivo試験、(4) 第I〜III相臨床試験データとした。主要臨床エビデンスとして、PALOMA-1 (Palbociclib Ongoing Trials in the coMbinAtion setting 1: ランダム化第II相) /TRIO-18 (Translational Research In Oncology study 18: 同試験の欧州番号、n=165) およびPALOMA-3 (Palbociclib Ongoing Trials in the coMbinAtion setting 3: ランダム化二重盲検第III相、n=521) のデータを中心的に論じた。主要アウトカムは無増悪生存期間 (PFS: progression-free survival)・ハザード比 (HR: hazard ratio)・95%信頼区間 (CI: confidence interval)・log-rank検定で評価した。生活の質 (QOL: quality of life) はEORTC QLQ-C30 (Quality of Life Questionnaire-Core 30: 欧州腫瘍研究治療機構の標準30項目QOL評価尺度) で評価した。