• 著者: Tae Min Kim, Stephen K. Williamson, Kyriakos P. Papadopoulos, Omid Hamid, Grace K. Dy, Ray McDermott, Ariel Birnbaum, John M. Kaczmar, Nehal Lakhani, Danny Rischin, Debashis Sarker, Afshin Dowlati, Xin-Hua Zhu, Jyoti Malhotra, Jean-Francois Pouliot, Jayakumar Mani, Laura Brennan, Fang Fang, Shuquan Chen, Mark Salvati, Israel Lowy, Ahmed Khaled, Karl D. Lewis, Glenn Kroog, Matthew G. Fury, Byoung Chul Cho
  • Corresponding author: Byoung Chul Cho (Yonsei Cancer Center, Yonsei University College of Medicine, Seoul, Korea)
  • 雑誌: Cancer
  • 発行年: 2026
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 42028885

背景

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、進行性悪性腫瘍の治療において劇的な変化をもたらした。リンパ球活性化遺伝子-3 (LAG-3) は、活性化されたCD4+およびCD8+ T細胞、ならびにナチュラルキラー細胞の一部に発現するI型膜貫通タンパク質である。LAG-3は主要組織適合性複合体 (MHC) クラスIIにCD4よりも高い親和性で結合し、CD4とMHCクラスIIの結合を阻害することでT細胞活性化を抑制する Workman et al. EurJImmunol 2002。腫瘍浸潤リンパ球におけるLAG-3発現の増加はT細胞疲弊に関与し、PD-1経路との同時阻害は抗PD-1単剤療法の有効性を増強しうることが示唆されている Wherry et al. NatImmunol 2011

Fianlimab(抗LAG-3完全ヒト抗体)とcemiplimab(抗PD-1完全ヒト抗体)の併用療法は、先行する第1相用量漸増試験および進行メラノーマの拡大コホート (n=98) において、許容可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示した。メラノーマコホートでは、盲検独立中央評価 (BICR) による客観的奏効率 (ORR) が57%、完全奏効 (CR) 率が25%であり、無増悪生存期間 (mPFS) は24か月であった。これらの良好な初期データに基づき、fianlimabとcemiplimabの併用療法は、現在メラノーマを対象とした複数の第2/3相試験 (NCT05352672, NCT05608291, NCT06246916, NCT06190951) で検討されている。

しかしながら、抗PD-1療法既治療例における耐性克服や、メラノーマ以外の腫瘍型における有効性は未確立であり、依然として知識のギャップが残されている。特に、非小細胞肺癌 (NSCLC)、淡明細胞型腎細胞癌 (ccRCC)、頭頸部扁平上皮癌 (HNSCC)、皮膚扁平上皮癌 (CSCC) といった主要な固形癌における本併用療法の有効性と安全性に関するデータが不足している。先行研究ではこれらの腫瘍型における詳細なデータが十分に報告されておらず、本併用療法の最適な適用範囲を特定するための情報が足りなかった。本研究は、これらの腫瘍型におけるfianlimabとcemiplimab併用療法の抗腫瘍活性を探索することを目的とした。

目的

本研究の目的は、進行NSCLC、ccRCC、HNSCC、CSCC患者を対象としたfianlimab 1600 mgとcemiplimab 350 mgの3週毎併用療法の抗腫瘍活性(主要評価項目:RECIST 1.1に基づくORR)と安全性を評価することである。評価は、抗PD-1/PD-L1未治療(N)および既治療(E)の各コホート別に実施された。

結果

NSCLCコホートにおける抗腫瘍活性: 抗PD-1/PD-L1未治療のNSCLC-Nコホート (n=15) では、ORRが27% (95% CI 8-55) であり、4例の部分奏効 (PR) が認められた (Table 2, Figure 1A)。病勢コントロール率 (DCR) は60%、mPFSは3か月 (95% CI 1-10)、mOSは13か月 (95% CI 7-NE) であった。4例のPRは全て前治療歴のない患者に観察され、そのうち3例はPD-L1発現が50%以上であった (Table 4)。LAG-3発現が1%以上の患者ではORRが38% (3/8) であり、これらの患者は全てPD-L1発現も1%以上であった。一方、抗PD-1/PD-L1既治療のNSCLC-Eコホート (n=15) ではORRが7% (1 PR) に留まり、DCRは60%、mPFSは4か月 (95% CI 1-8)、mOSは12か月 (95% CI 5-NE) であった (Table 2, Figure 1B)。バイオマーカーとの相関は確立されなかった。

ccRCCコホートにおける抗腫瘍活性: 抗PD-1/PD-L1未治療のccRCC-Nコホート (n=15) では、ORRが20% (95% CI 4-48) であり、3例のPRが観察された (CRなし) (Table 2, Figure 1C)。DCRは80%、mPFSは6か月 (95% CI 1-10)、mOSは26か月 (95% CI 10-35) であった。3例のPRは全て24か月以上の奏効持続が推定された。抗PD-1/PD-L1既治療のccRCC-Eコホート (n=15) ではORRが7% (1 PR) であり、DCRは73%、mPFSは4か月 (95% CI 1-7)、mOSは24か月 (95% CI 15-48)、DORは6か月であった (Table 2, Figure 1D)。ccRCC-Nコホートでは、LAG-3発現が1%未満の患者でORRが25% (1/4) であったが、LAG-3またはPD-L1発現が1%以上の患者では奏効は認められなかった (Table 5)。

HNSCCコホートにおける抗腫瘍活性: 抗PD-1/PD-L1未治療のHNSCC-Nコホート (n=15) では、ORRが33% (95% CI 12-62) であり、5例のPRが観察された (Table 2, Figure 1E)。DCRは47%、mPFSは2か月 (95% CI 1-14)、mOSは21か月 (95% CI 4-NE) であった。HNSCC-Nコホートの6例はHPV関連腫瘍であり、そのうち4例で持続的な奏効が認められた。抗PD-1/PD-L1既治療のHNSCC-Eコホート (n=15) ではORRが7% (1 PR) に留まり、DCRは67%、mPFSは4か月 (95% CI 1-7)、mOSは15か月 (95% CI 8-18) であった (Table 2, Figure 1F)。両コホートでmedian DORは未到達であった。PD-L1発現が1%未満またはLAG-3発現が1%未満の患者では奏効は認められず、PD-L1発現が1%以上の患者は全てLAG-3発現も1%以上であった (Table 5)。

CSCCコホートにおける抗腫瘍活性: 抗PD-1/PD-L1既治療のCSCC-Eコホート (n=15) では、ORRが20% (95% CI 4-48) であり、2例のCRと1例のPRが観察された (Table 2, Figure 1G)。DCRは53%、mPFSは3か月 (95% CI 1-4)、mOSは12か月 (95% CI 4-NE) であった。抗PD-1/PD-L1既治療集団でCRが2例観察された点は、他の既治療コホートと比較して特筆すべき所見である。LAG-3発現が1%未満かつPD-L1発現が1%未満の患者で奏効がより多く見られた (Table 5)。

安全性プロファイル: 全コホート横断的に、あらゆるグレードの治療下で発現した有害事象 (TEAE) は80-100%の患者に発現し、グレード3以上のTEAEは27-53%であった (Table 3)。治療関連有害事象 (TRAE) のあらゆるグレードは47-80%の患者に発現し、グレード3以上のTRAEは7-27%であった。最も高頻度で報告されたTRAEは、疲労 (15%)、発疹 (12%)、掻痒 (10%)、注入関連反応 (10%)、副腎機能不全 (10%) であった。免疫関連AEで10%以上の頻度で発生したものは、NSCLC-Nコホートの副腎機能不全 (27%) とHNSCC-Nコホートの甲状腺機能低下症 (33%) であった。グレード3以上の重篤な事象として、腸穿孔や虚血性大腸炎(致死的なものを含む)が報告された。NSCLC-Nコホートでは1例の死亡(ヒトメタニューモウイルスによる慢性閉塞性肺疾患増悪)が、ccRCC-Nコホートでは1例の死亡(大腸炎に起因する腸穿孔、敗血症、呼吸不全)が、HNSCC-Eコホートでは1例の死亡(抗リン脂質抗体症候群既往患者における治療関連虚血性大腸炎合併症による急性低酸素性呼吸不全)が報告された。全体として、安全性プロファイルはメラノーマコホートと類似しており、管理可能であった。

考察/結論

本研究は、fianlimabとcemiplimabの併用療法が、メラノーマ以外の固形癌(NSCLC、ccRCC、HNSCC、CSCC)においても投与可能であり、許容可能な安全性プロファイルを示すことを明らかにした。しかし、抗腫瘍活性はメラノーマコホートのORR 57%と比較して概ね控えめであり、各コホートで10-33%の範囲であった。特に、抗PD-1/PD-L1既治療コホートでの活性は7%前後と限定的であった点が、先行研究と対照的である。

新規性: 本研究で初めて、PD-1/PD-L1未治療の進行NSCLC、ccRCC、HNSCC、CSCC患者におけるfianlimabとcemiplimab併用療法の抗腫瘍活性と安全性が詳細に評価された。特に、抗PD-1/PD-L1未治療のNSCLC-Nコホートでは、PD-L1発現が50%以上の患者3例中3例(100%)が奏効し、HNSCC-NコホートではHPV陽性腫瘍患者で持続的な奏効が観察されたことから、特定のバイオマーカー定義集団において活性増強の可能性が示唆される。このLAG-3とPD-L1の共発現が奏効と相関する所見は、Tawbi et al. NEnglJMed 2022によって報告されたrelatlimabとnivolumabの併用療法におけるパターンと一部整合する。

臨床応用: これらの結果は、PD-1/PD-L1未治療の進行悪性腫瘍患者における本併用療法のさらなる検討を支持する臨床的意義を持つ。特に、NSCLC-NコホートにおけるORR 27%は、Garon et al. NEnglJMed 2015によるペムブロリズマブ単剤療法(ORR 24.8%)や、Hellmann et al. NEnglJMed 2019によるニボルマブとイピリムマブの併用療法(ORR 33.1%)と比較して遜色ない結果であり、本併用療法が新たな治療選択肢となる可能性を示唆する。また、ccRCC-NコホートのORR 20%は、Motzer et al. NEnglJMed 2015によるニボルマブ単剤療法(ORR 25%)に匹敵する。

残された課題: 本試験の限界としては、各コホートのサンプルサイズが15例と限定的であること、単群デザインであり比較対照がないこと、およびデータカットオフからのフォローアップ期間が比較的短いことが挙げられる。これらの要因により、結果の一般化には注意が必要である。今後の検討課題として、LAG-3およびPD-L1高発現集団に焦点を絞った無作為化比較試験の実施、バイオマーカー駆動型の併用戦略の開発、あるいは他の免疫チェックポイント阻害薬や化学療法との3剤併用療法の検討が必要となる。抗PD-1/PD-L1既治療例における抵抗性克服は依然として大きな課題であり、単剤でのLAG-3阻害ではバイパス可能な代償経路の影響が示唆されるため、さらなるメカニズム解明と新規治療戦略の開発が求められる。

方法

本研究は、first-in-human、非盲検、非無作為化、並行コホート割り付けの第1相試験(ClinicalTrials.gov identifier: NCT03005782)の用量拡大パートとして実施された。各腫瘍型(NSCLC、ccRCC、HNSCC)の抗PD-1/PD-L1未治療(NSCLC-N、ccRCC-N、HNSCC-N)および既治療(NSCLC-E、ccRCC-E、HNSCC-E)コホート、ならびにCSCCの抗PD-1/PD-L1既治療(CSCC-E)コホートに、それぞれ15例の患者が登録された。患者はfianlimab 1600 mgとcemiplimab 350 mgを3週毎に最大17サイクル(51週)静脈内投与され、その後24週間のフォローアップ期間が設けられた。

主要評価項目は、治験責任医師評価によるRECIST 1.1(Eisenhauer et al. EurJCancer 2009)に基づくORRであった。副次評価項目には、奏効期間 (DOR)、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、および安全性が含まれた。NSCLC患者はEGFR変異、ALK再配列、ROS1再配列が除外された。CSCC患者は抗PD-1/PD-L1既治療例のみが登録された。

サンプルサイズは、Simonの二段階ミニマックスデザインを用いて決定され、片側有意水準5%、検出力80%が設定された。データカットオフ日は2023年10月31日であった。LAG-3およびPD-L1の腫瘍発現は、免疫組織化学 (IHC) 法を用いてサブセット解析された。統計解析には、Kaplan-Meier法による生存曲線推定などが用いられた。