• 著者: Hellmann MD, Paz-Ares L, Bernabe Caro R, Zurawski B, Kim SW, Carcereny Costa E, Park K, Alexandru A, Lupinacci L, de la Mora Jimenez E, Sakai H, Albert I, Vergnenegre P, Syrigos K, Barlesi F, Reck M, Borghaei H, Brahmer JR, O’Byrne KJ, Geese WJ, Bhagavatheeswaran P, Rabindran SK, Kasinathan RS, Nathan FE, Ramalingam SS
  • Corresponding author: Matthew D. Hellmann, MD (Thoracic Oncology Service, Department of Medicine, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-09-28
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31562796

背景

進行非小細胞肺癌(NSCLC)の一次治療において、PD-L1(programmed death ligand 1)発現レベルが50%以上の患者に対しては、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ単剤療法が標準治療の一つとして確立されていたが、PD-L1発現が50%未満の患者、特にPD-L1陰性(<1%)の患者群における長期的な全生存期間(OS)の改善は依然として大きな課題として残されていた。先行研究では、PD-1阻害薬と化学療法の併用療法もPD-L1発現レベルに関わらずOSを改善することが示されているものの、これらの治療法でも長期生存を達成できる患者は少数であり、さらなる治療選択肢が不足していた。

ニボルマブ(抗PD-1抗体)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)の併用療法は、それぞれ異なるが相補的な免疫活性化機序を持つ。PD-1阻害は主に末梢組織におけるT細胞の疲弊を回復させ、CTLA-4阻害はリンパ節における初期T細胞の活性化を増強すると考えられている。このデュアルチェックポイント阻害は、悪性黒色腫や腎細胞癌において、既存の標準治療と比較して長期的なOSの改善を示しており、NSCLCにおいても有望な治療戦略として期待されていた。CheckMate 227試験の早期解析では、高い腫瘍変異負荷(TMB ≥10 mut/Mb)を有するNSCLC患者において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善することが報告され、TMBが予測バイオマーカーとして注目された。しかし、PD-L1発現レベル別のOSに関する最終的なデータは未解明であり、特にPD-L1低発現または陰性患者における併用療法の有効性と安全性に関する詳細な評価が不足していた。本報告は、CheckMate 227 Part 1試験における、PD-L1発現レベル別のOSに関する最終解析結果を提示するものである。

目的

本研究の目的は、未治療の進行非小細胞肺癌(Stage IVまたは再発、EGFR変異・ALK転座陰性)患者において、ニボルマブ(3mg/kgを2週間ごと)とイピリムマブ(1mg/kgを6週間ごと)の併用療法が、プラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、PD-L1発現レベルが1%以上の患者集団における全生存期間(OS)を改善するかを評価することであった(CheckMate 227試験、NCT02477826)。また、PD-L1発現レベルが1%未満の患者集団におけるOSの評価、およびニボルマブ単剤療法やニボルマブと化学療法の併用療法との比較も副次的に評価対象とした。さらに、腫瘍変異負荷(TMB)がOSの予測バイオマーカーとして機能するかどうかも検討された。

結果

OS(主要エンドポイント・PD-L1≥1%集団): PD-L1発現レベルが1%以上の患者(n=793)において、ニボルマブ+イピリムマブ群のOS中央値は17.1ヶ月(95% CI, 15.0-20.1)であったのに対し、化学療法群では14.9ヶ月(95% CI, 12.7-16.7)であった。ニボルマブ+イピリムマブ群は化学療法群と比較して統計学的に有意なOSの延長を示し(HR 0.79, 97.72% CI 0.65-0.96, P=0.007)、2年OS率はそれぞれ40.0%と32.8%であった。生存曲線は初期に化学療法群が一時的に優位であったが、その後ニボルマブ+イピリムマブ群が逆転し、長期にわたる持続的な生存利益を示した。この生存曲線の形状から、比例ハザード仮定は満たされないと判断されたが、HR 0.79は全体的な効果の推定値として提示された (Figure 1A)。

PD-L1発現レベル別のOS(全サブグループで利益): PD-L1発現レベルが1%未満の患者(n=373)においても、ニボルマブ+イピリムマブ群のOS中央値は17.2ヶ月(95% CI, 12.8-22.0)であり、化学療法群の12.2ヶ月(95% CI, 9.2-14.3)と比較して有意な改善が認められた(HR 0.62, 95% CI 0.48-0.78)。この群における2年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群で40.4%、化学療法群で23.0%であった。全患者集団(PD-L1発現レベル問わず、n=1166)では、ニボルマブ+イピリムマブ群のOS中央値は17.1ヶ月(95% CI, 15.2-19.9)であり、化学療法群の13.9ヶ月(95% CI, 12.2-15.1)と比較して良好な結果であった。2年OS率はそれぞれ40.1%と29.7%であった (Figure 2A, 2B)。

ORRおよび奏効持続性(PD-L1≥1%集団): PD-L1発現レベルが1%以上の患者における客観的奏効率(ORR)は、ニボルマブ+イピリムマブ群で35.9%(完全奏効CR 5.8%)であったのに対し、化学療法群では30.0%(CR 1.8%)であった。奏効期間中央値(mDOR)は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23.2ヶ月(95% CI, 15.2-32.2)と、化学療法群の6.2ヶ月(95% CI, 5.6-7.4)と比較して約4倍長く、長期的な奏効維持が顕著であった。1年奏効維持率は64.2% vs 27.9%、2年奏効維持率は49.5% vs 11.0%であった。PD-L1発現レベルが1%未満の患者集団でも、ニボルマブ+イピリムマブ群のORRは27.3%であり、奏効期間中央値は18.0ヶ月であった。

TMBとの関係: TMBが評価された患者(n=679、全体の58.2%)において、ニボルマブ+イピリムマブ群のOS利益は、TMB高値(≥10 mut/Mb)およびTMB低値(<10 mut/Mb)のいずれのサブグループでも同程度に観察された。例えば、TMB高値患者におけるOS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群で23.0ヶ月、化学療法群で16.4ヶ月であり、HR 0.68 (95% CI 0.51-0.91) であった。これは、以前のPFS解析でTMB高値患者におけるPFS利益が示された結果とは対照的であり、TMBがOSの予測バイオマーカーとしては機能しない可能性が示唆された。PD-L1発現レベルとTMBを組み合わせた解析でも、特定のサブグループで併用療法の効果が著しく増強されることは確認されなかった (Figure 3)。

安全性: Grade 3または4の治療関連有害事象(AE)の発生率は、ニボルマブ+イピリムマブ群で32.8%であり、化学療法群の36.0%と類似していた (Table 2)。しかし、重篤な治療関連AEはニボルマブ+イピリムマブ群で24.5%、化学療法群で13.9%と、併用療法群で多く報告された。治療関連AEによる治療中止率は、ニボルマブ+イピリムマブ群で18.1%、化学療法群で9.1%であった。免疫関連の選択的AE(any grade)として最も多く報告されたのは、ニボルマブ+イピリムマブ群における皮膚反応(34.0%)と内分泌イベント(23.8%)であった。治療関連死はニボルマブ+イピリムマブ群で8例、化学療法群で6例発生した。これらの安全性プロファイルは、PD-L1発現レベルに関わらず全体集団と同様の傾向を示し、長期追跡によって新たな安全性の懸念は認められなかった。

考察/結論

CheckMate 227 Part 1試験の最終解析により、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が、未治療の進行NSCLC患者において、PD-L1発現レベルに関わらず化学療法と比較して全生存期間(OS)を延長することが示された。特に、PD-L1発現レベルが1%未満の患者群においても、併用療法群の2年OS率が40.4%と、化学療法群の23.0%を大きく上回ったことは、この患者集団に対する治療選択肢として極めて重要な新規知見である。これは、PD-L1陰性腫瘍において抗PD-1単剤療法が十分な効果を示さないというこれまでの報告と異なり、CTLA-4阻害がPD-L1発現に依存しない免疫応答を誘導する可能性を示唆する。

本研究で初めて、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がPD-L1発現レベルに関わらず、NSCLC患者の長期生存を改善するデュアルチェックポイント阻害療法として確立された。奏効期間中央値がニボルマブ+イピリムマブ群で23.2ヶ月と、化学療法群の6.2ヶ月と比較して大幅に延長されたことは、併用療法がより耐久性のある免疫記憶を形成し、長期的な疾患コントロールを可能にすることを示唆する。

TMBがOSの予測バイオマーカーとならなかったことは、以前のPFS解析結果と対照的であり、PFSとOSの予測因子が異なる可能性を示す。この点は、TMBの臨床応用における残された課題であり、さらなる検討が必要である。安全性プロファイルに関しては、Grade 3または4の治療関連AE発生率は化学療法と同程度であったが、重篤なAEや治療中止率は併用療法群で増加する傾向が認められた。これは、免疫関連AEの管理が臨床現場で重要であることを示唆する。

本試験の結果は、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が、PD-L1発現レベルに関わらず、未治療進行NSCLC患者に対する新たな標準治療選択肢となることを強く支持するものであり、臨床的意義は大きい。今後の研究では、特定の患者サブグループにおける併用療法の最適な適用を特定し、免疫関連AEの管理戦略をさらに最適化することが残された課題である。

方法

本研究は、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第3相無作為化オープンラベル試験であるCheckMate 227 Part 1として実施された。患者は、PD-L1発現レベルに基づいて2つのコホートに分けられた。PD-L1発現レベルが1%以上の患者(Part 1a)は、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単剤、または化学療法に1:1:1の比率で無作為に割り付けられた。PD-L1発現レベルが1%未満の患者(Part 1b)は、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法、または化学療法単独に1:1:1の比率で無作為に割り付けられた。

適格基準は、ECOGパフォーマンスステータス0〜1、EGFR変異またはALK転座陰性、および以前に進行または転移性疾患に対する全身性抗がん治療を受けていない成人患者であった。合計1739名の患者が無作為化され、ニボルマブ+イピリムマブ群には583名、化学療法群には583名が割り付けられた(PD-L1≧1%集団では各群396名)。治療は病勢進行または許容できない毒性が生じるまで継続され、免疫療法群では最長2年間継続された。

主要エンドポイントは、PD-L1発現レベルが1%以上の患者におけるニボルマブ+イピリムマブと化学療法とのOSの比較であった。統計的有意性の基準は、階層的検定戦略(Lan-DeMets O’Brien-Fleming spending functionを使用)に基づき、両側P値<0.023と設定された。OSおよびPFSの期間推定にはカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)解析が用いられ、群間比較にはログランク(log-rank)検定が適用された。ハザード比(HR)は層別Cox比例ハザードモデルを用いて算出され、97.72%信頼区間(CI)が付記された。客観的奏効率(ORR)はClopper-Pearson法により95%CIとともに算出された。有害事象はNCI-CTCAE v4.0に基づき評価された。最小追跡期間は29.3ヶ月であり、データカットオフは2019年7月2日であった。腫瘍組織におけるPD-L1発現レベルはDako PD-L1 IHC 28-8 pharmDxアッセイを用いて評価され、TMBはFoundationOne CDxアッセイを用いて評価された。