• 著者: Nakamichi S, Horinouchi H, Asao T, Goto Y, Kanda S, Fujiwara Y, Nokihara H, Yamamoto N, Ito Y, Watanabe S, Ohe Y
  • Corresponding author: Hidehito Horinouchi, MD (Department of Thoracic Oncology, National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan)
  • 雑誌: Clinical Lung Cancer
  • 発行年: 2017
  • Epub日: 2017-05-10
  • Article種別: Original Article (Retrospective)
  • PMID: 28583380

背景

非小細胞肺がん (NSCLC) は全肺がんの約85%を占め、切除可能例の標準治療は外科手術であるが、根治術後も約半数の患者が再発を来す。術後再発は局所再発と遠隔転移に分類され、局所再発単独の頻度は施設・報告によって8〜37%とばらつきがある。日本における大規模手術レジストリデータでも術後再発が重要な臨床課題であることが示されており (Sawabata et al. JThoracOncol 2011)、術後局所再発後の生存については独立した解析が重要である (Sugimura et al. AnnThoracSurg 2007)。完全切除後に再発した NSCLC における再発パターンとその予後については (Taylor et al. AnnThoracSurg 2012)、外科的切除後の局所制御と生存に対する放射線療法 (RT) の役割が繰り返し報告されてきた。

術後局所再発に対しては RT がしばしば選択されており、良好な局所制御率と生存延長が複数の後向き研究で報告されている (Jeremic 1999、Leung 1995、Tada 2005 等)。一方、化学放射線療法 (CRT) は切除不能 stage III NSCLC における標準治療概念に準じて施行されることもある。切除不能 stage III NSCLC では concurrent CRT が sequential CRT や RT 単独に比べ生存を有意に改善することが第 III 相試験およびメタ解析で確立されており、CRT は広く使用されている。Bar ら (2013) は術後局所再発 NSCLC に対する CRT の後向きデータを報告したが症例数が少なかった。

このように、術後局所再発 NSCLC に対する RT 単独と CRT を直接比較した前向き試験は報告されておらず、最適治療戦略の確立に必要なエビデンスが手薄であった。特に多変量解析を用いて両治療法を比較し独立した予後因子を検討したデータはこれまで存在しなかったという gap in knowledge が本研究の出発点である。

目的

術後根治切除後に局所再発をきたした NSCLC 患者に対する RT 単独と CRT の有効性 (無増悪生存期間 [PFS]、全生存期間 [OS]、奏効率) および安全性を比較し、生存に影響を与える独立した予後因子を多変量解析で同定すること。

結果

患者選択と背景 (Table 1、Figure 1):2000年1月から2010年4月の間に当院で術後再発をきたした NSCLC 251例のうち、局所再発単独と判定された98例 (39%) を同定した。このうち LCNEC 11例、化学療法単独5例、SRT 2例、治療詳細不明4例、同時多発がん合併2例を除外した結果、最終解析対象は74例 (RT 群56例、CRT 群18例) であった (Figure 1)。

全体の患者背景 (Table 1): 中央年齢66歳 (範囲41-85歳)、男性57例 (77%)、腺癌49例 (66%)、扁平上皮癌25例 (34%)、初回手術時の術後病期は stage I 21例 (28%)、stage II 18例 (24%)、stage III 35例 (47%)。術後補助化学療法施行は RT 群のみ8例 (14%): 白金製剤3例・テガフール/ウラシル5例。術後から再発までの中央期間は全体で20.7ヶ月 (範囲2.9-157.4ヶ月) であった。

群間比較 (Table 1): CRT 群は RT 群と比較して中央年齢が有意に低く (61歳 [範囲41-73歳] vs 68歳 [範囲46-85歳]、p=0.02)、PS (performance status) 0の割合が有意に高かった (7/18例 [39%] vs 5/56例 [9%]、p=0.006)。再発部位の N 因子については N3 の割合が CRT 群50% (9/18例) に対して RT 群25% (14/56例) と高い傾向を示したが (p=0.08)、統計的有意差は認めなかった。T 因子 (T0: CRT 群83% vs RT 群68%、p=0.25)、性別 (男性: CRT 群72% vs RT 群79%、p=0.75)、組織型 (p=0.39)、術後病期 (p=0.43)、補助化学療法施行率 (p=0.19)、再発までの期間 (p=0.31) に有意な群間差は認めなかった。

治療実施状況と奏効率・生存成績 (Table 2・3、Figure 2):全74例で RT が完遂された。RT 群の94% (53/56例) が60 Gy/30分割を受けた (Table 2)。CRT 群の全18例が60 Gy RT を施行し、concurrent CRT 群 (n=13) の化学療法レジメンは全例 CDDP+VNR であり、そのうち9例が concurrent CRT 後に追加化学療法を受けた。

奏効率 (Table 3): 全体の客観的奏効率 (ORR、objective response rate) は70% (完全奏効 [CR、complete response] 13例 [17%]、部分奏効 [PR、partial response] 39例 [53%])。RT 群の ORR は68% (CR 9例 [16%]、PR 29例 [52%]、疾患安定 [SD] 11例 [20%]、疾患進行 [PD、progressive disease] 7例 [13%]) に対して、CRT 群は78% (CR 4例 [22%]、PR 10例 [56%]、SD 4例 [22%]、PD 0例 [0%]) と CRT 群で高い傾向を示した。

PFS (Table 3、Figure 2A・B): 全体の mPFS は11.6ヶ月 (95% CI 9.0-14.2ヶ月)。mPFS は CRT 群19.0ヶ月 (95% CI 0-41.9ヶ月) vs RT 群10.6ヶ月 (95% CI 8.7-12.9ヶ月) と CRT 群で大幅に良好であり、2年 PFS 率も CRT 群44.4% vs RT 群25.0%であった。全体の2年 PFS 率は30%であった。

OS (Table 3、Figure 2C・D): 全体の mOS は34.4ヶ月 (95% CI 25.2-43.6ヶ月)。mOS は CRT 群79.6ヶ月 (95% CI 8.2-151.0ヶ月) vs RT 群33.1ヶ月 (95% CI 17.9-48.3ヶ月) と46.5ヶ月の差を認め (Fig 2C・D)、2年 OS 率も CRT 群82% vs RT 群55%、5年 OS 率も CRT 群53% vs RT 群35%と全時点で CRT 群が良好であった。

有害事象プロファイル (Table 4):両群とも治療関連死亡は発生しなかった (Table 4)。RT 群 (n=56) では早期放射線肺炎が grade 1: 31例 (55%)、grade 2: 4例 (7%)、grade 3: 3例 (5%) で認められた。晩期放射線肺炎は grade 1: 8例 (14%)、grade 3: 1例 (2%) であった。食道炎は grade 1が45例 (80%) と高頻度であったが grade 3以上は0例 (0%) であった。その他の非血液毒性として grade 3が1例 (食欲不振) 認められた。

CRT 群 (n=18) では発熱性好中球減少症 grade 3が3例 (17%)、grade 4は0例であった (CDDP+VNR レジメン使用例に集中)。食道炎は grade 1: 13例 (72%)、grade 2: 2例 (11%)、grade 3: 1例 (5%) であった。早期放射線肺炎は grade 1: 7例 (39%)、grade 2: 4例 (22%)、grade 3: 1例 (5%) で、晩期肺炎 grade 3は0例であった。その他の非血液毒性として grade 3が1例 (貧血) 認められたが、治療完遂に支障を来すものはなかった。早期放射線肺炎 grade 3の頻度 (5%) は両群で同等であり、CRT の追加による肺炎リスクの顕著な増加は認めなかった。

多変量 Cox 解析による独立予後因子の同定 (Table 5):Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析の結果、PFS に対する独立した有意な予後因子として CRT 施行 (HR 0.43、95% CI 0.21-0.86、p=0.016)、N3 再発 (HR 2.17、95% CI 1.17-4.03、p=0.014)、および男性性別 (HR 2.04、95% CI 1.02-4.06、p=0.043) が同定された。OS に対しても同様に、CRT (HR 0.43、95% CI 0.19-0.97、p=0.042)、N3 再発 (HR 3.44、95% CI 1.66-7.12、p=0.001)、男性性別 (HR 4.48、95% CI 1.51-13.2、p=0.007) が独立した有意な予後因子として同定された。CRT の調整後 HR はPFS・OS 双方で0.43と同値であり、多変量調整後も強い治療効果が再現された。年齢 (≥70歳: PFS HR 0.89 [p=0.707]、OS HR 1.37 [p=0.373])、組織型 (扁平上皮癌: PFS HR 1.4 [p=0.268]、OS HR 1.91 [p=0.056])、再発までの期間 (<24ヶ月: PFS HR 1.26 [p=0.393]、OS HR 1.04 [p=0.913]) はいずれも有意な予後因子ではなかった。

考察/結論

本研究は、術後局所再発 NSCLC に対する RT と CRT を直接比較した当時最大規模の連続症例後向き解析であり、多変量調整後においても CRT が RT 単独に比べ PFS・OS 双方において独立した有意な生存改善効果をもたらすことを本研究で初めて明確に示した。mOS での79.6ヶ月対33.1ヶ月という46.5ヶ月の差、および Cox 解析での HR 0.43 (OS、p=0.042) という強い効果量は、規模・デザインの制約を超えて注目に値する知見である。

既報の切除不能 stage III NSCLC における CRT 試験とは異なり、本研究は術後局所再発という独自の臨床設定を対象としており、対象患者の疾患状態 (再発病態・前治療歴・残存肺機能) は初発 stage III 例と相違する。特に注目すべき点として、CRT 群は RT 群と比較して N3 再発の割合が高く (50% vs 25%) より不良な予後因子を持つ患者が多かったにもかかわらず、顕著に良好な mOS を示した。交絡調整後の HR 0.43 という強い効果量は、CRT の選択が単なる患者選択バイアスでは説明しきれない本質的な治療効果を反映していると考えられる。これまでの研究では RT 単独が主に使用されてきたが、本研究の多変量解析結果は CRT が局所制御の増強と遠隔転移の抑制を通じて生存を改善する可能性を支持する。

安全性については、CRT 群に発熱性好中球減少症 grade 3が17%と比較的高率に認められたが、治療関連死亡は両群ともゼロであった。早期放射線肺炎の grade 3頻度 (5%) は RT 群・CRT 群で同等であり、晩期肺炎 grade 3も CRT 群では0例であった。これらの安全性プロファイルは切除不能 stage III NSCLC 試験での既報と概ね一致しており、術後局所再発例においても CRT が臨床現場で実施可能な治療選択肢であることの臨床的意義を支持している。

本研究にはいくつかの残された課題と limitation が存在する。第一に、後向き研究の性質上、治療選択が PS・年齢・N 因子等の患者背景に影響されており (CRT 群は若年・PS 良好の傾向)、ランダム化されていないための選択バイアスが内包される。第二に、フォローアップが前向き試験のように画一化されておらず、血液毒性等の一部有害事象の評価が不完全である可能性がある。第三に、術後補助化学療法 (研究期間前半は未普及) の影響が研究期間にわたって異なり、今後の検討を要する要素となっている。第四に CRT 群が n=18 と少数であり統計的検出力に制約がある。著者らはこれらの limitation を踏まえ、術後局所再発 NSCLC に対する CRT と RT を比較するランダム化比較試験の実施が最適治療戦略の確立に必要であると提言しており、更なる検討が臨床応用の根拠を確立する上で不可欠である。

現代の免疫療法時代においては、CRT 後の免疫チェックポイント阻害薬維持療法 (切除不能 stage III NSCLC における PACIFIC 試験で確立された概念の応用) が術後局所再発例においても検討されうる可能性があり、本研究が示す CRT の有効性はそのような新規治療戦略の理論的根拠の一部となりうる。

方法

研究デザイン・対象: 国立がん研究センター病院において2000年1月から2010年4月の間に根治切除後の局所再発 NSCLC に対して RT または CRT を施行した連続74例を後向きに解析した。局所再発の定義は、気管支断端・隣接部位または所属リンパ節 (同側肺門・縦隔・鎖骨上窩) のみの再発とした。対側肺門リンパ節転移や別葉への腫瘍結節は遠隔転移として除外した。本研究は施設倫理委員会の承認 (承認番号: 2012-180) のもとで施行された。

除外基準: 大細胞神経内分泌癌 (LCNEC、large cell neuroendocrine carcinoma)、遠隔転移合併例、化学療法単独例、SRT (stereotactic radiotherapy、定位放射線照射) 施行例、治療詳細不明例、同時多発がん合併例を除外した。

治療内容: RT はメガボルテージ (≥6 MV) による3次元計画照射を全例に施行し、肺病変・転移リンパ節・周辺領域リンパ節を含む範囲に照射後、肺病変・転移リンパ節へブースト照射を追加した。RT 群 (n=56) の大部分 (94%、53例) が60 Gy/30分割 (2 Gy/分割/日、週5日) を受け、50 Gy 2例 (大照射野・肺機能考慮)、70 Gy 1例 (気管ステント症例) であった。CRT 群 (n=18) は全例が60 Gy RT を施行し、concurrent CRT (同時併用) 13例 (72%)、sequential CRT (逐次的) 5例 (28%) であった。化学療法レジメンは CDDP (シスプラチン、cisplatin) 80 mg/m² (day 1) + VNR (ビノレルビン、vinorelbine) 20 mg/m² (day 1, 8) が最多 (14/18例、78%)、次いで CBDCA (カルボプラチン、carboplatin) AUC 6 + PTX (パクリタキセル、paclitaxel) 200 mg/m² が3例 (17%)、CDDP + PTX が1例 (5%) であった。化学療法サイクル数は2サイクル5例 (28%)、3サイクル8例 (44%)、4サイクル5例 (28%) であった。

評価・統計: 腫瘍奏効は RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) ver.1.1 で評価した。PFS は治療開始日から再再発または死亡日まで、OS は治療開始日から死亡または最終生存確認日までとした。データカットオフは2015年4月30日。生存解析は Kaplan-Meier 法で実施し、群間比較は log-rank 検定で行った。独立した予後因子の同定には Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析を用いた。解析変数は年齢 (<70歳 vs ≥70歳)、性別、組織型 (腺癌 vs 扁平上皮癌)、再発までの期間 (≥24ヶ月 vs <24ヶ月)、再発部位の N 因子 (N0-2 [N0 to N2 nodal stage, ipsilateral or mediastinal] vs N3)、治療法 (RT vs CRT) であった。群間の患者背景比較は Fisher exact 検定と Mann-Whitney U 検定で行い、統計解析は IBM SPSS ver.21.0 を使用した。有害事象は CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events) v4.0、晩期肺毒性は RTOG (Radiation Therapy Oncology Group)/EORTC late radiation morbidity scoring scheme で評価した。