• 著者: H. Sugimura, F.C. Nichols, P. Yang, M.S. Allen, S.D. Cassivi, C. Deschamps, B.A. Williams, P.C. Pairolero
  • Corresponding author: F.C. Nichols (Mayo Clinic, Rochester, MN, USA)
  • 雑誌: Annals of Thoracic Surgery
  • 発行年: 2007
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 17257962

背景

非小細胞肺癌(NSCLC)の完全切除後の再発率は、病理病期に応じて30%から75%に達することが報告されており、再発の80%以上が術後2年以内に発生する (Martini et al. 1995; Al-Kattan et al. 1997; Martin et al. 2002)。再発後のNSCLC患者に対する最適な治療方針は依然として未解明な点が多く、手術を含む積極的な治療介入の有益性を裏付ける客観的なエビデンスは限られていた。再発後生存(PRS: postrecurrence survival)に影響を与える予後因子を同定することは、再発NSCLC患者の個別化された治療戦略を立案する上で重要な意義を持つが、この領域における包括的な研究は不足していた。

目的

本研究の目的は、完全切除後にNSCLCが再発した患者を対象に、再発後生存(PRS)に関連する独立した予後因子を同定し、さらに各種治療介入がPRSに与える効果を詳細に評価することである。

結果

コホート特性と全体的なPRS: 初期の1,361例中、完全なフォローアップが達成された1,073例(79%)において、445例(41%)に再発が認められた。このうち、詳細な情報が得られた390例(男性262例、女性128例)が解析対象となった。再発時の年齢中央値は69歳(範囲33〜90歳)であった。初回手術から再発までの無病期間中央値は11.5ヶ月であり、PRSの中央値は8.1ヶ月であった。1年PRS率は37%、2年PRS率は17%であった。

再発部位と予後: 初回再発部位は胸腔内が171例(44%)、胸腔外が172例(44%)、胸腔内外合併が47例(12%)であった (Table 1)。胸腔外再発の主な部位は脳(55例)、骨(40例)、肝臓(16例)、副腎(11例)であった。1年PRS率は胸腔内再発で50%、胸腔外再発で26%、合併再発で28%であり、再発部位間で有意な差が認められた (p < 0.01) (Figure 1)。再発部位別の中央値PRSは、肺のみの再発が15.5ヶ月と最も長く、次いで脳のみの再発が8.0ヶ月、肝臓のみの再発が4.2ヶ月であった。多変量解析では、骨転移再発が最も高い死亡リスクと関連しており、調整ハザード比(RR: relative risk)は2.7(95% CI 1.7-4.5, p < 0.01)であった。

治療介入別のPRS: 再発後の治療内容別にPRSを評価したところ、無治療群と比較して、すべての治療介入群でPRSが有意に延長した (Table 3)。PRS中央値は、手術単独群で22.9ヶ月(2年PRS率49%)、化学療法と放射線療法の併用群で14.9ヶ月(2年PRS率26%)、化学療法単独群で10.9ヶ月(2年PRS率18%)、放射線単独群で6.4ヶ月(2年PRS率2%)であった。無治療群のPRS中央値は3.2ヶ月(2年PRS率7%)であった。多変量解析では、無治療群を基準とした場合、手術単独(RR 0.2, 95% CI 0.1-0.3, p < 0.01)、手術と放射線療法の併用(RR 0.2, 95% CI 0.1-0.3, p < 0.01)、化学療法と放射線療法の併用(RR 0.2, 95% CI 0.1-0.3, p < 0.01)、化学療法単独(RR 0.3, 95% CI 0.2-0.5, p < 0.01)のいずれも死亡リスクを有意に低下させた (Table 4)。

多変量解析による独立した予後不良因子: 多変量Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、再発後生存期間の独立した予後不良因子として以下の7つが同定された (Table 4)。再発時の症状あり(調整RR 2.2, 95% CI 1.5-3.1, p < 0.01)、再発時のECOG-PS ≥2(調整RR 1.8, 95% CI 1.4-2.3, p < 0.01)、無病期間 ≤1年(調整RR 1.4, 95% CI 1.1-1.9, p = 0.01)、初回治療における術前化学療法施行歴(調整RR 1.6, 95% CI 1.1-2.3, p < 0.01)、初回治療における術後放射線療法施行歴(調整RR 1.8, 95% CI 1.3-2.6, p < 0.01)がPRSの短縮と有意に関連していた。再発部位では肺のみの再発が最も良好なPRSを示し(参照群)、骨転移が最も不良であった(調整RR 2.7, 95% CI 1.7-4.5, p < 0.01)。再発後の治療介入も独立した予後因子であり、無治療群と比較してすべての治療群でPRSが有意に延長した。術前化学療法や術後放射線療法が予後不良因子として検出されたのは、これらが高ステージ疾患の代替変数として機能しているためと解釈された。

肺のみ再発における外科的切除の優位性: 肺のみの再発患者において、外科的治療は非外科的治療や無治療と比較して有意に良好なPRSを示した (Table 5)。孤立性病変に対する外科的切除では2年PRS率が67%であり、多発性病変に対する外科的切除でも2年PRS率が75%と高かった。外科的治療の調整RRは0.2(95% CI 0.1-0.5)であり、無治療群と比較して有意な生存延長効果が認められた。これは、多発肺再発であっても外科的切除を積極的に検討すべきであることを示唆する。

脳転移再発における外科的切除: 脳のみの再発患者においても、外科的治療が最長のPRSをもたらした (Table 6)。手術群のPRS中央値は11.9ヶ月(1年PRS率50%)であり、非手術治療群(6.6ヶ月)や無治療群(1.0ヶ月)と比較して、手術の調整RRは0.1(95% CI 0.1-0.2, p < 0.01)と有意に良好であった。これは、選択された脳転移再発患者に対する外科的アプローチの有効性を支持するデータである。

考察/結論

本研究は、完全切除後に再発したNSCLC患者において、再発後生存(PRS)に影響を与える7つの独立した予後因子を同定した。これらの因子は、再発時の症状、ECOG-PS、無病期間、再発部位という再発そのものに関連する4因子、初回治療時の術前化学療法と術後放射線療法という2因子、そして再発後の治療介入であった。術前化学療法および術後放射線療法が予後不良因子として同定されたのは、これらが高ステージ疾患の代替変数として機能しているという解釈が妥当である。

先行研究との違い: 過去の研究では再発後生存の予後因子に関する報告は限られていたが、本研究は大規模な前向きコホートを用いて、再発時の臨床的特徴、初回治療、および再発後治療の包括的な影響を評価した点で、これまでの研究とは異なる知見を提供した。特に、再発部位ごとの治療効果を詳細に分析した点は新規性がある。Westeel et al. (2000) や Walsh et al. (1995) の報告では症状の有無が予後予測因子とされていたが、本研究では再発部位との関連性も踏まえ、より詳細な分析を行った。

新規性: 本研究で初めて、再発時の症状、ECOG-PS、無病期間、再発部位、初回治療としての術前化学療法および術後放射線療法、そして再発後治療が、完全切除後のNSCLC再発患者におけるPRSの独立した予後因子であることを明確に示した。特に、多発肺再発や選択された脳転移再発においても外科的切除が生存期間を延長させる可能性を示唆したことは、これまで報告されていない重要な知見である。

臨床応用: 本知見は、再発NSCLC患者の治療戦略を個別化するための臨床応用に直結する。再発時の患者の状態(症状、ECOG-PS)や再発部位、無病期間を考慮することで、予後予測が可能となり、より適切な治療選択が可能となる。特に、肺のみ、脳のみ、その他胸腔内再発においては外科的治療が最長のPRSを示したことから、これらの患者群では積極的に外科的切除を検討すべきであるという臨床的意義を持つ。化学療法と放射線療法の併用も無治療群と比較して有意な生存延長効果を示しており、全身治療の重要性も強調される。

残された課題: 本研究の限界として、前向き観察研究であるため、無治療群には予後不良例が集中している可能性があり、治療選択における選択バイアスが残された課題として挙げられる。また、初期コホートの21%で完全なフォローアップ情報が得られなかったことも、研究結果の一般化に影響を与える可能性がある。今後の検討課題として、治療群間のバイアスを調整するためのプロペンシティスコアマッチングなどの統計手法を用いた検証や、より大規模な多施設共同研究、あるいはランダム化比較試験による治療効果の検証が望まれる。

方法

本研究は、1997年1月から2001年12月にかけてMayo Clinicで完全切除術を受けた連続NSCLC患者1,361例を対象とした前向きコホート研究である。このうち、再発を認めた患者の中から、再発部位と治療に関する完全な情報が得られた390例を解析対象とした。患者背景(ECOG-PS: Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status、症状、喫煙歴)、初回腫瘍特性(病期、組織型、術前後補助療法)、再発特性(無病期間、再発部位・巣数)、および再発後治療(手術、化学療法、放射線治療、併用療法)に関するデータを詳細に収集した。追跡期間中央値は23.3ヶ月(範囲1.6〜81.7ヶ月)であった。PRSの解析にはKaplan-Meier法およびログランク検定を用い、多変量解析にはCox比例ハザードモデルを適用した。統計解析には、最終モデルに含めるためのp値閾値を0.05とする前方ステップワイズ選択手順が用いられた。本研究はMayo Foundation Institutional Review Boardの承認を得て実施された。