- 著者: Jabbour SK, Berman AT, Decker RH, Lin Y, Feigenberg SJ, Gettinger SN, Aggarwal C, Langer CJ, Simone CB, Bradley JD, Aisner J, Malhotra J
- Corresponding author: Salma K. Jabbour, MD (Rutgers Cancer Institute of New Jersey, Robert Wood Johnson Medical School, Rutgers University, New Brunswick, NJ, USA)
- 雑誌: JAMA Oncology
- 発行年: 2020
- Epub日: 2020-02-20
- Article種別: Original Investigation (Phase 1 nonrandomized controlled trial)
- PMID: 32077891
背景
局所進行非小細胞肺がん (NSCLC; non-small cell lung cancer) はNSCLC全診断例の20-25%を占め、根治的同時化学放射線療法 (cCRT; concurrent chemoradiotherapy) が標準治療として確立されているが、歴史的な5年全生存 (OS; overall survival) 率は25-30%にとどまり、長期予後は依然として不良であった (Bradley et al. LancetOncol 2015)。この状況を打開したのがPACIFIC試験であり、cCRT後の逐次durvalumab (PD-L1阻害薬) 維持療法が無増悪生存 (PFS; progression-free survival) を延長し、3年OS率を57.0% (vs cCRT単独43.5%) へ改善することで、Stage III NSCLCの新標準治療として確立された (Antonia et al. NEnglJMed 2018)。
一方、進行・転移NSCLCの分野では、pembrolizumab (抗PD-1モノクローナル抗体) がPD-L1腫瘍割合スコア (TPS; tumor proportion score) ≥50%の患者において化学療法単独を上回るOS改善を示し (Reck et al. JClinOncol 2019)、さらに組織型別の化学療法との併用でもPD-L1発現を問わず有意なOS改善が確認されていた (Gandhi et al. NEnglJMed 2018、Paz-Ares et al. NEnglJMed 2018)。
放射線療法は主要組織適合性複合体 (MHC; major histocompatibility complex) クラスI介在性の抗原提示増強とICD (immunogenic cell death; 免疫原性細胞死) 誘導を通じてCD8陽性T細胞の腫瘍認識を促進し、免疫抑制性腫瘍微小環境の克服に寄与する。肺がんマウスモデルでは放射線+PD-L1阻害の組み合わせがCD8陽性T細胞浸潤を相乗的に増強し、骨髄由来抑制細胞 (MDSC; myeloid-derived suppressor cells) の蓄積を抑制することが示されている。こうした前臨床エビデンスはcCRTとPD-1/PD-L1遮断の相乗効果を強く示唆するが、両者の同時投与によって生じる肺炎毒性の重複・増強が最大の安全性上の懸念となっていた。PACIFIC試験はcCRT後の逐次投与戦略の有効性を確立したものの、ICIをcCRTと同時に開始することで微小転移に対する早期の全身免疫制御が実現可能かどうかという問いに答える前向きデータは不足しており、同時投与における安全性を体系的に評価した多施設試験は存在しないという重大な gap in knowledge が残されていた。
目的
Stage III局所進行・切除不能NSCLCを対象として、pembrolizumabをcCRTと同時投与する際の安全性・忍容性を確認し、DLT (dose-limiting toxicity; 用量制限毒性)・MTD (maximum tolerated dose; 最大耐量) および推奨Phase 2用量を決定すること。副次的に、PFS・OS・奏効率・肺炎発生率を評価すること。
結果
患者背景と治療完遂状況:計23例が登録され、うち21例がpembrolizumabを1コース以上投与された (女性52%、男性48%、中央値年齢69.5歳、range 53.0-85.0歳)。Stage IIIA 8例 (38%)、IIIB 13例 (62%)。組織型は腺癌11例 (52%)、扁平上皮癌+その他10例 (48%)。PD-L1 MPS (mean proportion score) <1%が4例 (21%)、1-49%が10例 (53%)、≥50%が5例 (26%)。放射線モダリティはIMRT (intensity-modulated radiotherapy; 強度変調放射線治療) 13例 (62%)、VMAT (volumetric-modulated arc therapy; 容積変調回転照射) 5例 (24%)、陽子線3例 (14%) (Table 2)。肺線量パラメータは、V20中央値27.8% (range 6.5-31.2%)、平均肺線量中央値16.01 Gy (range 5.55-18.44)、平均心臓線量中央値9.19 Gy (range 0.27-25.86)。中央値追跡期間は16.0ヶ月 (95% CI 12.0-22.6)。20例が60 Gyの放射線療法を完遂し、15例 (71%) がカルボプラチン+パクリタキセルの全サイクルを完遂。pembrolizumabの中央値投与サイクル数は7回 (range 0-17) であった。
安全性・DLT (主要エンドポイント):事前定義のDLT (DLT評価期間内のGrade 4以上肺炎) は全コホートを通じていずれの症例でも観察されなかった (0/21例)。全グレードの irAE (immune-related adverse events; 免疫関連有害事象) ≥Grade 2は14例 (67%) に発生した (Figure 1)。肺炎≥Grade 2は7例 (33%) に発生し、Grade 2が5例 (24%)、Grade 3が1例 (5%)、Grade 4が0例、Grade 5 (治療関連死) が1例 (5%) であった (Table 3)。Grade 5肺炎の1例は登録から3.4ヶ月後に発症し、高線量放射線照射野の外側にまで及ぶ両側肺野の炎症性変化を呈した (Figure 1B-D)。Grade 3以上のirAEは4例 (18%) に発生し、Grade 3間質性腎炎 (コホート1の1例)、Grade 3 1型糖尿病 (コホート5の1例)、Grade 2甲状腺機能亢進症 (各コホートから1例ずつ) を含んだ。また、Grade 3気管食道瘻が1例 (コホート5) に発生し、40 Gyで放射線療法を中止してpembrolizumab単独継続となった。肺炎発症リスクはcCRT 1日目同時開始コホート4・5・安全性拡大コホートで、逐次開始コホート1-3と比較して統計的に有意に高く (P=0.045)、pembrolizumab開始タイミングが肺炎リスクに影響することが示された。
奏効と生存成績 (副次エンドポイント):評価可能な19例 (pembrolizumab ≥2コース投与) における最良全奏効率 (ORR; overall response rate) は90%であり、CR (complete response; 完全奏効) 3例 (16%)、PR (partial response; 部分奏効) 14例 (74%)、SD (stable disease; 安定) 1例 (5%)、局所進行1例 (5%) であった。最良奏効までの中央値期間は12.6ヶ月 (95% CI 7.0-15.4)。pembrolizumab ≥1コース投与例 (n=21) の中央値PFSは18.7ヶ月 (95% CI 11.8-29.4);6ヶ月PFS率81.0% (95% CI 64.1%-97.7%)、12ヶ月PFS率69.7% (95% CI 49.3%-90.2%) (Figure 2A)。pembrolizumab ≥2コース投与例 (n=19) では中央値PFS 21.0ヶ月 (95% CI 15.3ヶ月-到達せず);12ヶ月PFS率78.2% (95% CI 59.2%-97.2%)。コホート別12ヶ月PFS率 (Figure 2B): delayed群 (コホート1-3, n=9) 77.8% (95% CI 50.6-100%) vs concurrent群 (コホート4・5+安全性拡大コホート, n=12) 66.7% (95% CI 40.0-93.3%)。中央値OSは29.4ヶ月 (95% CI 26.9ヶ月-到達せず);6ヶ月OS率95.2% (95% CI 86.1%-100%)、12ヶ月OS率85.2% (95% CI 70.0%-100%) であった (Figure 2C)。局所再発は3/19例 (16%)、転移性病変を来した6例での転移までの中央値期間は14.7ヶ月 (95% CI 6.6-29.4) であった。
探索的解析:バイオマーカーと放射線量指標:PD-L1 MPSおよびTILとPFSとの間には統計的有意な関連は認められなかった。単変量・多変量解析において全肺V2.5 (lung volume receiving ≥2.5 Gy)、V5、V20、平均肺線量 (中央値16.01 Gy)、平均心臓線量 (中央値9.19 Gy) のいずれも肺炎発症との統計的有意な関連は示されなかった。肺炎≥Grade 2発症群と非発症群の間で放射線モダリティ・PD-L1 MPS・TIL・線量体積パラメータに有意差はなく、dosimetric因子による肺炎リスク層別化は本試験の規模では困難であることが示された。PD-L1 MPSに関わらず良好な有効性が得られたことは、放射線と化学療法によるMHC抗原提示増強がPD-L1非依存的な免疫活性化を実現するという理論と整合する知見であった。
考察/結論
本試験は、Stage III切除不能NSCLCに対するpembrolizumab+cCRTの同時投与が、事前定義DLT評価期間内においてDLT 0/21例という忍容可能な安全性プロファイルを示すことを、本研究で初めて多施設前向き試験として実証した点で新規な意義を持つ。ORR 90%・中央値PFS 18.7ヶ月・中央値OS 29.4ヶ月という有望な有効性は、cCRT開始と同時の早期PD-1遮断による放射線誘導性免疫原性の最大化という理論的根拠を支持するものであった。
これまでの研究との違い:本試験の12ヶ月PFS率69.7%はPACIFIC試験における12ヶ月PFS率55.7%と対照的に良好な成績であった。ただし両試験はデザインが大きく異なり、PACIFIC試験がcCRT完遂後に肺炎≥Grade 2を除いた患者を対象としたのに対し、本試験ではcCRT開始前から登録した点が重要な相違である。肺炎毒性の面では、PACIFIC試験の全グレード肺炎/放射線肺炎33.9%/24.8%・Grade 3-4率3.4%/2.6%と比べ、本試験では全グレード33%・Grade 3および5各5%と、重篤な肺炎の割合がやや高かった。Hoosier Cancer Research試験 (cCRT後consolidative pembrolizumab n=93) でもGrade ≥2肺炎17.2%・Grade 3-4肺炎5.4%・肺炎関連死1例が既報として報告されており、同様の傾向が確認されている。NICOLAS (Nivolumab and Concurrent chemoradiotherapy in Locally Advanced NSCLC Stage III) 試験—ETOP (European Thoracic Oncology Platform) 主導のphase 2試験、nivolumabのcCRTへの同時追加 (Stage IIIA/IIIB NSCLC n=80) でも初期報告でGrade 3肺炎が8例に認められており、PD-1/PD-L1阻害薬のcCRTへの同時追加に伴う肺炎リスク上昇は複数のこれまでの研究で一貫して確認されている。
臨床応用と示唆:本試験の有望な有効性データはKEYNOTE-799 Phase 2試験 (NCT03631784) の設計根拠となり、大規模な無作為化検証へとつながった。Grade 2以上の肺炎の半数以上が高線量放射線野外に炎症変化を来していたことは、PD-1阻害が肺炎のグレードアップに寄与したことを示唆しており、放射線照射野の最適化と肺線量制約遵守が重要な臨床的意義を持つ。コホート1 (cCRT後逐次投与) では肺炎が1例も発症しなかった一方、cCRT同時開始コホートで肺炎リスクが有意に高かった (P=0.045) という結果は、投与タイミングが安全性に直接影響することを示す。V20 ≤31%という厳格な肺線量制約が採用されたことが肺炎発生率の抑制に貢献した可能性があり、今後のcCRT+PD-1/PD-L1同時投与試験ではV20 ≤31%の採用が合理的な戦略として提案される。PD-L1 MPSに関わらず有効性が得られたことは、この治療戦略が幅広い患者集団に適用できることを示す臨床的含意を持ち、臨床現場における患者選択の方針に重要な示唆を与える。
残された課題:試験の小サンプルサイズ (n=21) と限られた追跡期間が主要な limitation であり、今後の検討が不可欠である。実施が3施設のみであること、使用化学療法レジメンがカルボプラチン+パクリタキセルの1種類に限定されている点も限界として挙げられる。cCRTへのpembrolizumab同時開始タイミングの最適化 (Day 1 vs Day 29 vs cCRT後逐次)、肺炎リスクを予測するバイオマーカーの同定、長期OS転帰への影響については future research として大規模前向き試験での検証が引き続き求められる。また、シスプラチン+エトポシドを含む他のcCRTレジメンへの適用可能性も未解決であり更なる検討が必要であり、pembrolizumab+cCRT同時投与の至適設計については現在進行中のKEYNOTE-799を含む大規模試験の結果を待つ必要がある。
方法
3施設共同Phase 1非無作為化対照試験 (3+3デザイン)。登録期間:2016年8月30日〜2018年10月24日、データロック2019年7月25日、試験登録番号:NCT02621398。対象はECOG PS (performance status) 0-1、組織学的または細胞学的に確認されたStage IIIA/IIIB NSCLC (American Joint Commission on Cancer第7版)、RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) 1.1による測定可能病変、肺実質への放射線照射量V20 (volume of lung receiving ≥20 Gy) ≤31%を満たす21例を登録した。
cCRTはカルボプラチン (AUC; area under the curve 2、毎週) +パクリタキセル (50 mg/m²、毎週) +胸部放射線療法 (60 Gy/30分割、2 Gy/日) を全コホート共通で実施した。pembrolizumabは5コホートで投与タイミングと用量を段階的に変化させる設計とした (Table 1):コホート1 (200 mg・cCRT終了2-6週後)、コホート2 (100 mg・cCRT 29日目から)、コホート3 (200 mg・cCRT 29日目から)、コホート4 (100 mg・cCRT 1日目から同時)、コホート5 (200 mg・cCRT 1日目から同時)。MTDでの安全性拡大コホートとして6例を追加 (コホート5と同一レジメン)。pembrolizumabは3週ごと最大1年間投与を継続した。
DLTはpembrolizumab投与サイクル1以内に発生したGrade 4以上の肺炎と事前定義した。毒性評価はCTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events) version 4.0を用いた。PFS・OSはKaplan-Meier法で推定し、有意水準は両側P < 0.05とした。探索的解析としてPD-L1 MPS (mean proportion score) とTIL (tumor-infiltrating lymphocytes) レベルがPFSに与える影響を検討した。肺炎リスクとdosimetric指標との関連は単変量・多変量解析で評価した:V2.5 (lung volume receiving ≥2.5 Gy)・V5 (lung volume receiving ≥5 Gy)・V20・平均肺線量・平均心臓線量。