• 著者: Borghaei H, Gettinger S, Vokes EE, Chow LQM, Burgio MA, de Castro Carpeno J, Pluzanski A, Arrieta O, Frontera OA, Chiari R, Butts C, Wojcik-Tomaszewska J, Coudert B, Garassino MC, Ready N, Felip E, Garcia MA, Waterhouse D, Domine M, Barlesi F, Antonia S, Wohlleber M, Gerber DE, Czyzewicz C, Spigel DR, Crino L, Eberhardt WE, Li A, Marimuthu S, Brahmer J
  • Corresponding author: Hossein Borghaei, DO, MS (Fox Chase Cancer Center, Philadelphia, PA, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-01-15
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33449799

背景

進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、免疫療法は近年大きな変革をもたらした。歴史的に、進行NSCLC患者の化学療法による5年生存率は5%未満であった。特に、一次治療のプラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した患者に対する効果的な治療選択肢は限られていた。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により、臨床的に意義のある生存ベネフィット、持続的な奏効、および良好な安全性プロファイルが示され、これらの患者に対する標準治療となった。ICIは一次治療としても効果的であり、化学療法との併用または単独で、未治療の進行NSCLC患者の標準治療として推奨されている。

ニボルマブは、完全ヒト型モノクローナル抗PD-1抗体であり、NSCLCにおいて臨床的に意義のある活性を示した最初のPD-1阻害薬であるとTopalian et al. NEnglJMed 2012が報告している。ニボルマブは、プラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した進行扁平上皮NSCLC患者を対象としたCheckMate 017試験、および進行非扁平上皮NSCLC患者を対象としたCheckMate 057試験において、ドセタキセルと比較して全生存期間(OS)の改善と良好な安全性プロファイルを示したことに基づき、米国、欧州連合、およびその他の国々で進行NSCLCの二次治療として承認された。これらの試験の主要解析は、それぞれBrahmer et al. NEnglJMed 2015およびBorghaei et al. NEnglJMed 2015によって報告されている。

2年、3年、および4年の追跡調査では、これらの試験におけるOS率および無増悪生存期間(PFS)率は、ドセタキセルと比較してニボルマブで一貫して優位であり、ニボルマブの新たな安全性シグナルは特定されなかった。しかし、5年というさらに長期の追跡でのOS成績、奏効持続性、および安全性は、免疫療法による「長期生存」の実現を評価する上で極めて重要であった。化学療法の歴史的5年OS率が1〜5%程度であることを考えると、ニボルマブの5年OS成績は、治療パラダイムを変える可能性のある重要な知見となりうる。これまでの報告では、長期的なアウトカムデータは限られており、既治療進行NSCLCにおけるPD-1阻害薬のランダム化第III相試験から得られた5年追跡結果は不足していた。特に、免疫チェックポイント阻害薬による長期生存のメカニズムや、治療中止後の病勢制御の持続性に関する知見は未解明な部分が多く、この知識のギャップを埋めることが今後の課題であった。本研究は、既治療進行NSCLCにおけるPD-1阻害薬のランダム化第III相試験から得られた最長の追跡期間であり、この知識のギャップを埋めることを目的とした。

目的

本研究の目的は、既治療進行NSCLC患者を対象としたCheckMate 017(扁平上皮NSCLC)およびCheckMate 057(非扁平上皮NSCLC)のランダム化第III相試験の統合解析(n=854)において、中央値追跡期間60ヶ月での5年全生存率(OS)、5年無増悪生存率(PFS)、奏効持続性(DOR)、および長期安全性を評価し、報告することである。特に、ニボルマブがドセタキセルと比較して、組織型やPD-L1発現レベルに関わらず、長期的な生存ベネフィットと良好な安全性プロファイルを維持するかどうかを検証することを目的とした。また、無増悪状態がその後の長期生存に与える影響を評価するための探索的なランドマーク解析も実施した。これらのデータは、免疫チェックポイント阻害薬による長期生存の可能性を確立し、臨床現場での意思決定に役立つ重要な情報を提供すると考えられる。

結果

本解析のデータベースロック時(CheckMate 017は2019年5月8日、CheckMate 057は2019年5月16日)において、最小追跡期間はそれぞれ64.2ヶ月および64.5ヶ月であり、中央値追跡期間はそれぞれ69.5ヶ月および69.4ヶ月であった。ニボルマブ群にランダムに割り付けられた427例中50例、ドセタキセル群にランダムに割り付けられた427例中9例が5年時点で生存していた。

5年全生存率(OS)の改善: 統合されたCheckMate 017/057集団において、ニボルマブ群のOSはドセタキセル群と比較して有意に長かった(HR 0.68; 95% CI 0.59-0.78)。統合された5年OS率は、ニボルマブ群で13.4%(95% CI 10.4-16.9)、ドセタキセル群で2.6%(95% CI 1.4-4.5)であり、ニボルマブ群で約5倍の改善が認められた(図1A)。ニボルマブ群のOS中央値は12.2ヶ月(95% CI 10.3-14.5ヶ月)、ドセタキセル群では9.4ヶ月(95% CI 8.2-10.8ヶ月)であった。1年OS率はニボルマブ群で42.6% vs ドセタキセル群で24.8%、2年OS率はニボルマブ群で26.5% vs ドセタキセル群で13.7%であった。

組織型およびPD-L1発現別のOSベネフィット: 5年OS率は、扁平上皮NSCLC(CheckMate 017)および非扁平上皮NSCLC(CheckMate 057)の両方でニボルマブ群がドセタキセル群を上回った。扁平上皮NSCLCでは、ニボルマブ群の5年OS率は15.8% vs ドセタキセル群の2.9%であり、OS中央値は13.6ヶ月 vs 9.4ヶ月(HR 0.63; 95% CI 0.50-0.80)であった(図1B)。非扁平上皮NSCLCでは、ニボルマブ群の5年OS率は11.3% vs ドセタキセル群の2.3%であり、OS中央値は12.5ヶ月 vs 9.4ヶ月(HR 0.72; 95% CI 0.60-0.87)であった(図1C)。PD-L1発現レベルに関わらず、ニボルマブによるOSベネフィットが継続して観察された。PD-L1発現が1%以上の患者では、5年OS率はニボルマブ群で18.3%(95% CI 13.0-24.2) vs ドセタキセル群で3.4%(95% CI 1.4-6.8)であった。PD-L1発現が1%未満の患者では、5年OS率はニボルマブ群で8.0%(95% CI 4.4-13.0) vs ドセタキセル群で2.0%(95% CI 0.5-5.3)であった(図1D, 1E)。

無増悪生存期間(PFS)および奏効持続性(DOR): PFS率は、ニボルマブ群がドセタキセル群と比較して一貫して優位であった(図2A)。統合された5年PFS率は、ニボルマブ群で8.0%(95% CI 5.4-11.2)、ドセタキセル群で0%であった。PFS中央値はニボルマブ群で3.5ヶ月(HR 0.62; 95% CI 0.53-0.72)であった。1年PFS率はニボルマブ群で22% vs ドセタキセル群で3%であった。客観的奏効率(ORR)は、ニボルマブ群で19.7%(95% CI 16.0-23.8)、ドセタキセル群で11.2%(95% CI 8.4-14.6)であった。奏効期間(DOR)中央値は、ニボルマブ群で19.9ヶ月(95% CI 11.4-30.8)、ドセタキセル群で5.6ヶ月(95% CI 4.4-7.0)であり、ニボルマブ群で有意に長かった(HR 0.26; 95% CI 0.16-0.40)。統合された5年DOR率はニボルマブ群で32.2%(95% CI 21.9-43.0)であったが、ドセタキセル群では5年時点で奏効が継続している患者はいなかった(図2B)。

ランドマーク生存解析: 2年、3年、および4年時点での無増悪状態に基づくPFSおよびOSのランドマーク解析では、ニボルマブ治療を受けた患者の大部分がその後の数年間も無増悪状態を維持し、長期的なOSベネフィットを得ていることが示された(図3)。ニボルマブ群において、2年時点で無増悪であった患者(n=45)は、5年時点で59.6%が無増悪であり、82.0%が生存していた。同様に、3年時点で無増悪であった患者(n=29)は、5年時点で78.3%が無増悪であり、93.0%が生存していた。4年時点で無増悪であった患者(n=25)は、5年時点で87.5%が無増悪であり、100.0%が生存していた。一方、ドセタキセル群では、2年時点で無増悪であった患者(n=4)および3年時点で無増悪であった患者(n=1)は、5年時点での無増悪率および生存率が0%であった。4年時点で無増悪であった患者はいなかった。

安全性プロファイル: ドセタキセル群の患者で2年以上治療を受けた者はいなかったため、5年追跡時点での安全性データはニボルマブ群の患者についてのみ更新された。ニボルマブ群の418例中284例(67.9%)で治療関連有害事象(TRAE)が報告され、45例(10.8%)でグレード3-4のイベントが発生した。新たな安全性シグナルは観察されなかった。3年から5年の追跡期間中、ニボルマブ治療を継続していた31例中8例(25.8%)でTRAEが報告され、そのうち1例(3.2%)でグレード3イベント(リパーゼ増加)が発生し、グレード4イベントはなかった(表1)。ニボルマブ群では、27例(6.5%)の患者でTRAEにより治療中止に至った。最も一般的なTRAEは、肺炎(n=6; 1.4%)および間質性肺疾患(n=3; 0.7%)であった。データベースロック時までに、主要解析以降に新たな治療関連死は発生していなかった(ニボルマブ群で1例、ドセタキセル群で4例)。

考察/結論

CheckMate 017および057試験の統合5年解析(n=854、中央値追跡60ヶ月)は、既治療進行NSCLCにおけるニボルマブの長期的な生存ベネフィットを初めて第III相試験で確認した。ニボルマブ群の5年OS率13.4%は、ドセタキセル群の2.6%と比較して約5倍の改善を示し、これは化学療法の歴史的5年OS率1〜5%を大きく上回る画期的な結果である。このことは、一定割合の患者において、実質的な長期制御または治癒に相当するアウトカムが達成される可能性を示唆する。

先行研究との違い: これまでの免疫チェックポイント阻害薬の長期データは、主に単群の第I相試験(例: KEYNOTE-001のペムブロリズマブ5年OS率15.5%)や、ニボルマブの第I相CheckMate 003試験(5年OS率15.6%)から得られていた。本研究は、ランダム化第III相試験から得られたPD-1阻害薬の初の5年追跡結果であり、より強固なエビデンスを提供する点でこれまでの報告と異なる。また、ニボルマブによるOSベネフィットは、組織型(扁平上皮および非扁平上皮)やPD-L1発現レベル(1%以上および1%未満)に関わらず観察され、多様な患者集団においてニボルマブがアウトカムを改善する可能性を示した。

新規性: 本研究で初めて、ニボルマブ治療を受けた患者において、2年、3年、および4年時点で無増悪状態であった患者の大部分が5年時点でも無増悪状態を維持し、長期生存していたことが示された。特に、2年時点で無増悪であった患者の82.0%が5年時点で生存しており、3年時点で無増悪であった患者の93.0%が5年時点で生存していたことは、免疫療法による奏効が極めて持続的であることを新規に実証した。奏効者(ORR 19.7%)の約3分の1が5年を超えて奏効を維持していたことは、「durable response」というICI特有の現象を強力に支持する。

臨床応用: これらの知見は、既治療進行NSCLCにおけるニボルマブの臨床的有用性をさらに確立するものである。5年という長期にわたる生存ベネフィットと、ドセタキセルと比較して圧倒的に良好な安全性プロファイル(Grade 3/4 TRAE 18.3% vs 50.8%)は、臨床現場でのニボルマブの選択を強く支持する。一部の患者では、ニボルマブ治療中止後も長期にわたる病勢制御が維持されることが示されており、これは治療期間の最適化に関する議論に重要な含意を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、ニボルマブおよびPD-1阻害薬の最適な治療期間が残されている。CheckMate 153試験の探索的データでは、1年間の固定期間治療と比較して継続的なニボルマブ治療が生存ベネフィットをもたらす可能性が示唆されているが、進行NSCLC患者における最適な治療期間は未だ完全に解明されていない。また、5年以上の長期生存者における治療中止後の病態生理学的メカニズムや、長期生存を予測するバイオマーカーの特定も今後の研究でさらに深掘りされるべき課題である。

方法

本研究は、国際共同、ランダム化、非盲検第III相試験であるCheckMate 017(NCT01642004)およびCheckMate 057(NCT01673867)の統合5年フォローアップ解析である。対象患者は、ECOG PSが0または1の進行NSCLC患者で、一次プラチナ製剤ベースの化学療法中または後に病勢進行した者であった。CheckMate 057では、既知のEGFR変異またはALK再構成を有する患者には、チロシンキナーゼ阻害薬による追加の先行治療が許容された。

患者は1:1の割合で、ニボルマブ(3 mg/kgを2週間ごとに1回)またはドセタキセル(75 mg/m²を3週間ごとに1回)のいずれかの治療群にランダムに割り付けられた。治療は病勢進行、許容できない毒性、またはその他のプロトコルで規定された理由により中止されるまで継続された。ニボルマブ群の患者は、プロトコルで定義された基準を満たせば、初期の病勢進行後も治療を継続することが許可された。ドセタキセル群の患者は、治療中止後3週間のウォッシュアウト期間を経て、クロスオーバーまたは延長フェーズでニボルマブの投与を受けることが可能であった。プロトコル改訂後、ニボルマブ群の患者はニボルマブ480 mgを4週間ごとに1回投与に移行することが許可され、ドセタキセル群の患者はニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに1回、または480 mgを4週間ごとに1回の投与にクロスオーバーすることが可能であった。

腫瘍評価は、Eisenhauer et al. EurJCancer 2009に基づき、ベースライン時、9週時、その後1年目までは6週間ごと、それ以降は病勢進行または治療中止まで12週間ごとに実施された。安全性評価は、治療期間中および最終投与後100日以内、またはクロスオーバー治療開始前に行われた2回のフォローアップ受診時に実施された。治療関連有害事象(TRAE)の重症度は、NCI-CTCAE v4.0に基づき評価された。PD-L1発現は、アーカイブまたは最近の前治療腫瘍生検検体を用いて、検証済みの自動免疫組織化学アッセイ(PD-L1 IHC 28-8 pharmDx; Dako)により中央検査室で評価された。

有効性および安全性は、CheckMate 017および057試験の統合データを用いて、すべてのランダム化された患者および少なくとも1回治験薬を投与されたすべての患者でそれぞれ評価された。主要評価項目はOSであり、副次評価項目には客観的奏効率(ORR)、PFS、および腫瘍PD-L1発現による有効性が含まれた。長期生存への無増悪状態の影響を調査するため、2年、3年、および4年時点での無増悪状態に基づいた5年OSの探索的ランドマーク解析が実施された。また、2年、3年、および4年時点での無増悪状態に基づいた、その後の時点での無増悪状態を維持する患者の確率も評価された。生存曲線、生存率、ランドマーク解析、および奏効期間(DOR)は、カプラン・マイヤー法を用いて推定された。ハザード比(HR)および信頼区間(CI)は、Cox比例ハザードモデルを用いて推定された。