- 著者: Ulas EB, Purcell ND, Houda I, et al. (第1著者: Ezgi B Ulas, Nora D Purcell (共同); 最終著者: Famke L Schneiders, Idris Bahce (共同))
- Corresponding author: Idris Bahce (Department of Pulmonary Medicine, Amsterdam UMC Location VUmc, Amsterdam, The Netherlands)
- 雑誌: Journal for ImmunoTherapy of Cancer
- 発行年: 2026
- Epub日: 2026-06-03
- Article種別: Phase II 単群前向き試験 (Original Research)
- DOI: 10.1136/jitc-2025-014724
背景
転移性NSCLCのうちPD-L1低発現 (1-49%) または陰性 (<1%) の症例は、抗プログラム死タンパク1 (PD-1) 免疫療法に対する奏効が限定的であり、一次治療化学療法+抗PD-1後に進行した際の確立された免疫再感作戦略は存在しない。現行の二次化学療法 (ドセタキセル・ペメトレキセド等) の奏効率は7-11%に留まり、治療の乏しさが根本的課題である。放射線療法 (RT) は、免疫原性細胞死の誘導・腫瘍抗原放出・cGAS (環状GMP-AMP合成酵素) -STING (インターフェロン遺伝子刺激因子) 経路の活性化を介して免疫抑制的腫瘍微小環境を免疫活性化状態へ変換しうることが基礎的・臨床的に示されている。さらに抗CTLA-4療法は、抗原提示細胞の活性化・制御性T細胞 (Treg) の減少・エフェクターT細胞の増殖増強というPD-1阻害と相補的なメカニズムを介してT細胞プライミングを増強する。二重免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) であるIPI (イピリムマブ、抗CTLA-4抗体) +NIVO (ニボルマブ、抗PD-1抗体) は、PD-L1発現に依存しない生存ベネフィットを転移性NSCLCの一次治療で示しており (Hellmann et al. NEnglJMed 2019)、二次治療での抗PD-1耐性克服戦略としての潜在性が注目される。抗PD-1後の免疫療法再チャレンジや組み合わせ戦略の体系的な整理も近年進んでいるが (Marinelli et al. CancerTreatRev 2026)、エピゲノム修飾薬 (エンチノスタット) +ペンブロリズマブ等の二次治療試験でも奏効率は限定的であった (Hellmann et al. ClinCancerRes 2021)。IPI/NIVO+RTの三者併用をPD-L1低発現/陰性・抗PD-1耐性転移性NSCLCで前向きに評価した試験は存在せず、この組み合わせの有効性・安全性・免疫学的メカニズムが未解明のまま残されており、前向きエビデンスが不足していた。
目的
PD-L1低発現 (1-49%) または陰性 (<1%) で一次治療の化学療法+抗PD-1療法後に進行した転移性NSCLC患者を対象に、IPI/NIVO+サブアブレーティブRT (3×8 Gy、1-4病変照射) の第II相試験 (RECLAIM試験、EudraCT 2020-001097-29) として、非照射病変での6週・12週時点の奏効率 (ORR) および疾患制御率 (DCR)・安全性・免疫プロファイルを評価すること。
結果
患者特性・試験デザイン: PD-L1低発現/陰性の抗PD-1耐性NSCLC 31例 (intention-to-treat (ITT) 集団): 2020年9月〜2022年2月にAmsterdam UMC (Universitair Medische Centra) で32例が登録され、31例 (97%) が評価可能なITT集団とされた (Fig. 2)。1例は照射後に測定可能病変が消失し除外。平均年齢66.3±9.9歳、97%が現在または過去の喫煙者、組織型は腺癌74%、88%がペンブロリズマブ+プラチナ2剤の一次治療から進行。PD-L1発現: 陰性 (<1%) 55% (n=17例)・低 (1-49%) 42% (n=13例)・高 (≥50%) 3% (n=1例)。東部協同腫瘍学グループ (ECOG) performance scoreは0-2が適格。71% (n=22例) が単一病変への3×8 Gy照射を受け、29% (n=9例) が複数病変に照射された。EGFR・ALK等のドライバー変異陽性例は除外された。6週評価前に3例が急速進行により投与中止、12週評価前にさらに8例 (進行n=6・毒性n=1・同意撤回n=1) が中止した (Fig. 2)。
主要エンドポイント: ORR・DCR・最良奏効 (非照射病変のRECIST v1.1評価): ITT集団 (n=31例) において、客観的奏効率 (ORR) は6週時点で7%、12週時点で10%であったが、最良奏効率は29% (8例PR + 1例CR = 9例) に達した (Fig. 3A)。疾患制御率 (DCR) は6週58%、12週39%であった。初回奏効確認までの期間中央値は4.13ヶ月 (範囲1.4-7.0ヶ月) と遅発性を示し、奏効持続期間中央値は13.3ヶ月 (範囲3.1-42.9ヶ月) に及んだ。奏効9例中6例 (67%) では最大の SLD (sum of longest diameters) 減少が4ヶ月以降に観察された。PD-L1発現別ORRは陰性 (<1%) 35%・低 (1-49%) 23%・高 (≥50%) 0%と数値上差異を示したが統計的有意差は認めなかった (p=0.665)。照射病変は6週・12週でSLD変化が不均一であった (Fig. 3A)。
生存アウトカム: 最良奏効別OS・PFSの顕著な差異と予後規定因子: ITT集団の全生存期間 (OS) 中央値は10.1ヶ月であったが、最良奏効別では進行病変 (PD) 3.1ヶ月 (95% CI 1.6-4.6、n=13例)・安定病変 (SD) 13.5ヶ月 (95% CI 8.8-18.3、n=9例)・部分/完全奏効 (PR/CR) 22.5ヶ月 (95% CI 16.1-28.8、n=9例) と有意に異なった (p<0.001、Fig. 3B)。無増悪生存期間 (PFS) 中央値は全体3.0ヶ月であり、最良奏効別ではPD 1.4ヶ月・SD 4.0ヶ月・PR/CR 9.7ヶ月と有意差が認められた (p<0.001)。PD-L1発現別中央PFS・OS: 陰性群 (<1%) 4.2ヶ月・10.1ヶ月、陽性群 (≥1%) 2.9ヶ月・8.6ヶ月。PR/CR群とPD群のベースライン比較では、ベースライン最長径和 (bSLD)・年齢・炎症マーカー (CRP・好中球・白血球・好中球リンパ球比 (NLR))・アルブミン値が有意に異なり、腫瘍負荷と全身炎症が予後規定因子として同定された (Table 1)。
安全性プロファイル: Grade 3 TRAEs 26%、Grade 4-5 TRAEs なし: ITT集団全31例に治療関連有害事象 (TRAEs) が認められた。Grade 3 TRAEsは8例 (26%) で、主に電解質異常・皮疹・貧血・トランスアミナーゼ上昇であった (Table 2)。Grade 4・5 TRAEsは観察されなかった。免疫関連有害事象 (irAEs) は21例 (68%) に認められ (主に皮疹・甲状腺機能異常)、最高重症度はGrade 3が1例のみであった。irAEによる投与中止は5例 (16%) に至った。重篤な有害事象 (SAEs) は20例 (65%) に報告されたが、Grade 5 SAEs 13例 (疾患進行による死亡12例・大腸穿孔1例) はいずれも治療と無関係であった。TRAEsの内訳はCheckMate 227で報告されたIPI/NIVO一次治療でのGrade 3-4 TRAEs (32.8%) と概ね一致し、RTの追加が毒性プロファイルを大幅に悪化させるものではないことが示された。
末梢血免疫モニタリング: Day 8の早期T細胞活性化と奏効との相関: 末梢血単核球 (PBMC) サンプルが十分確保できた24例においてフローサイトメトリーによる免疫モニタリングをベースライン (BL)・TP1 (Day 8)・TP2 (Day 15)・TP3 (Day 42) で実施した。全体として、エフェクターメモリー (EM) CD4+Tヘルパー細胞の頻度が治療後即時かつ持続的に増加し (Fig. 4A)、セントラルメモリー (CM) および EM CD4+/CD8+T細胞サブセットでKi67 (増殖) ・HLA-DR (活性化) が有意に上昇したが、いずれも一過性であった (Fig. 4C-D、ranked linear mixed model + post hoc Bonferroni、*p≤0.05, **p≤0.01, ***p≤0.001)。RT後 (TP2) にはnaive CD8+T細胞の減少とEM CD8+T細胞へのシフトが観察された。奏効例 (PR/CR、n=9例) は非奏効例 (PD、n=9例) と比較して、CD39+発現がEM CD4+Tヘルパー細胞で一過性により顕著に増加し、CM/EM CD4+・CM/EM CD8+T細胞サブセットのKi67・HLA-DR・CTLA-4発現上昇が一貫して強かった (Fig. 5A-B)。Tregは全症例で一過性の増殖・活性化増加を示したが、PR/CD群間で差はなかった (Fig. 5C)。照射病変数 (単一vs複数) や照射リンパ節の有無による免疫活性化差異は認められなかった。
腫瘍内免疫プロファイル: IDO1高発現が奏効例の特徴: ベースライン腫瘍生検が利用可能だった20例について、免疫組織化学染色 (IHC) によるIDO1 (インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1)・VISTA・LAG3・TIM3・CD8・FOXP3・CD20・HLA1・PD-L1+CD68・Ki67の多重解析を実施した (QuPath解析、Olympus VS200)。奏効例 (PR) は非奏効例 (PD) と比較してIDO1発現が腫瘍全体で有意に高く (Mann-Whitney U検定)、その他の免疫マーカーには有意差が認められなかった。IDO1高発現は免疫抑制的微小環境を反映するが、CTLA-4/PD-1二重遮断+RTによる多角的免疫活性化によってより効果的に打破された可能性がある。ベースラインのT細胞サブセット頻度は奏効との関連を示さなかった。
考察/結論
① 先行研究との違い: 二次化学療法の奏効率は7-11% (最近の多施設コホートでORR 16%・DCR 42%・OS中央値8.1ヶ月) であるのと異なり、RECLAIM試験ではこの困難な集団において最良奏効率29%・奏効例でのOS中央値22.5ヶ月を達成した。免疫療法後の再チャレンジ戦略は奏効率が限定的とされており (Marinelli et al. CancerTreatRev 2026)、その枠組みと対照的に、RTの追加により二重ICI単独より高い免疫応答を引き出しえる可能性を示した。またCheckMate 227における一次治療IPI/NIVO (ORR 35.9%、OS中央値17.1 vs 14.9ヶ月、HR 0.79、95% CI 0.65-0.96、Grade 3-4 TRAEs 32.8%) と比較すると、RECLAIM試験の患者集団は抗PD-1耐性後という重い前提にあるにもかかわらず、29%という最良奏効率と匹敵しうる奏効の深度を示した (Hellmann et al. NEnglJMed 2019)。
② 新規性: 本RECLAIM試験は、PD-L1低発現/陰性で抗PD-1後に進行した転移性NSCLC患者を対象として、サブアブレーティブRT+二重ICI (IPI/NIVO) の組み合わせを前向きに評価した初の第II相試験である。非照射病変でのRECIST評価という厳密な試験設計でabscopal効果を評価した点が新規な方法論的貢献である。さらに、CD39+CD4+/CD8+T細胞の発現増強が奏効例で顕著であったことを示したのもこれまで報告されていない知見であり、CD39発現が腫瘍反応性T細胞の指標となるとする先行研究を、RT+二重ICI療法という新たな文脈で初めて実証した。またIDO1高発現が奏効例の腫瘍微小環境の特徴として同定され、バイオマーカー開発への道を新規に開いた。
③ 臨床的意義: 本研究は限られた治療選択肢しか持たないPD-L1低発現/陰性・抗PD-1耐性NSCLC患者に対して、RT+IPI/NIVOの三者併用レジメンが最良奏効率29%・奏効例でのOS中央値22.5ヶ月というdurable responseをもたらしうる臨床的意義の高いデータを提供した。RT+ICI in lung cancerのメタ解析 (PFS HR 0.68、95% CI 0.62-0.75、p<0.00001; OS HR 0.70、95% CI 0.62-0.79、p<0.00001; AEオッズ比 1.09、95% CI 0.80-1.50、p>0.05) ともコンシステントであり (Zhu et al. IntJRadiatOncolBiolPhys 2026)、RTの追加が毒性を有意に増悪させず有効性を高めることを実臨床で裏付けた。IDO1高発現・低bSLD・低炎症マーカー等のベースライン因子による患者選択の臨床現場への実装が、今後の治療応用に向けて重要な方向性となる。
④ 残された課題: 今後の課題として、小規模単群試験の限界を踏まえたランダム化比較試験での確認が不可欠である。RTのタイミング (PD-1暴露前vs後)・線量・分割数・照射部位数・照射順序の最適化も未解決であり、免疫原性を最大化するRTシーケンスの体系的検証が今後の検討として必要である。さらに、異質な患者集団における腫瘍負荷・PD-L1発現・IDO1・bSLD・NLRを用いた層別化前向き試験が将来の研究の方向性として残されている。治療中断率 (irAEによる16%) の低減に向けた個別化投与戦略も今後の重要な検討課題である。
方法
単施設・単群・前向き第II相試験 (RECLAIM (Rescue radioimmunotherapy Clinically Applied In Metastatic-NSCLC) 試験、EudraCT 2020-001097-29)。Amsterdam UMCにて2020年9月〜2022年2月に登録。適格基準: 転移性 (Stage IV) NSCLC・一次治療化学療法+抗PD-1後の進行・PD-L1陰性 (<1%) または低発現 (1-49%)・RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) v1.1で測定可能病変・RT適格病変 (3×8 Gy照射可能) ≥1・ECOG performance score 0-2。EGFR/ALK等のドライバー変異陽性例は除外。全例でMDT (多職種チーム) による事前レビュー実施。
治療: Phase 1 (Day 1-42) — IPI 1 mg/kg IV (Day 1) + NIVO 240 mg IV (Day 1/15/29) + サブアブレーティブRT 3×8 Gy (Day 8/10/12、1-4病変照射)。Phase 2 (Day 43以降) — IPI 1 mg/kg Q6W + NIVO 360 mg Q3W継続 (PD・許容不能毒性・2年完了まで)。
エンドポイント: 主要 (1) ORRおよびDCR (6週・12週、非照射病変RECIST v1.1) + (2) 安全性 (NCI (National Cancer Institute) CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events) v5、informed consent取得〜最終IPI/NIVO後100日)。副次: PFS・OS・PD-L1別奏効差。探索的: 腫瘍生検IHC (QuPath・Olympus VS200) + PBMC免疫モニタリング (フローサイトメトリー)。
統計: Simonの2段階デザイン (H0: ORR≤10%、片側α=5%、検出力80%; Stage 1: n=22で≥1奏効→Stage 2追加n=8で≥2奏効ならH0棄却)。Kaplan-Meier法・log-rank検定、χ²/t検定 (ベースライン比較)、ranked linear mixed model + post hoc Bonferroni検定 (PBMC解析)、Mann-Whitney U検定 (IHC)。R v4.2.1・GraphPad Prism v10.6.0。倫理: Amsterdam UMC METc (Medical Ethics Committee) 2020.336承認、全例informed consent取得。研究支援: Bristol-Myers Squibb (CA209-7T4)。最終追跡日: 2025年10月15日。