- 著者: Giuseppe Aprile, Erika Rijavec, Caterina Fontanella, Karim Rihawi, Francesco Grossi
- Corresponding author: Giuseppe Aprile (Department of Medical Oncology, University and General Hospital, Udine, Italy)
- 雑誌: OncoTargets and Therapy
- 発行年: 2014
- Epub日: 2014-10-24
- Article種別: Review
- PMID: 25378934
背景
腫瘍血管新生 (angiogenesis) における血管内皮増殖因子 (VEGF, vascular endothelial growth factor) 経路の中枢的役割が確立されて以降、抗血管新生薬は多くの固形腫瘍で生存延長をもたらした。VEGF-Aを標的とするbevacizumab (抗VEGF-A抗体) やsorafenib・sunitinib等のマルチキナーゼ阻害剤が臨床応用されてきたが、その生存改善効果は時間とともに急速に減弱し、冗長な代替経路 (FGF・PDGF・angiopoietin経路) や低酸素適応による早期耐性機序の存在が問題視された (Limaverde-Sousa et al., Cancer Treat Rev 2014)。抗血管新生薬の恩恵を受ける患者を事前に同定するための予測バイオマーカー探索は膨大な努力にもかかわらず成果に乏しく (Schneider et al., Lancet Oncol 2012; Lambrechts et al., JCO 2013)、ベネフィット対リスク比に関わる懸念から特定集団での使用制限も生じていた。さらに心血管毒性 (抗腫瘍血管新生剤による心機能障害) などの新たな課題も浮上していた (Tocchetti et al., Eur J Heart Fail 2013)。これらの課題に対し、VEGFリガンドではなくその主要受容体であるVEGFR-2 (vascular endothelial growth factor receptor 2) を直接遮断するという戦略が注目された。VEGFR-2はII型膜貫通チロシンキナーゼ受容体であり、腫瘍血管内皮細胞・循環骨髄由来内皮前駆細胞に発現して全VEGF-Aアイソフォームおよびその他のリガンド (VEGF-C・VEGF-D) と結合し、内皮増殖・遊走・生存・血管透過性を制御する。VEGFR-2 knockout (-/-) マウスが血管・造血系の発達不全で死亡するという事実からも本受容体の必須性が裏付けられており (Ferrara et al. NatMed 2003)、VEGFR-2遮断が腫瘍血管新生を有効に抑制する治療戦略として期待された。しかし複数がん種を横断してramucirumabの前臨床から主要第III相試験までを統合的に整理した情報が不足しており、各がん種における位置付けが手薄で不明確であったことが本レビューが埋めようとしたgap in knowledgeである。
目的
Ramucirumab (IMC-1121B、LY3009806) の分子設計・前臨床薬理・第I相試験データを概観し、続いて胃癌・食道胃接合部癌 (REGARD/RAINBOW)・NSCLC (REVEL)・乳癌 (ROSE/TRIO-12)・HCC (REACH)・大腸癌 (RAISE) を対象とした主要第III相無作為化試験の有効性・安全性成績を横断的に整理して、各がん種における臨床的位置付けと将来課題を明示することを目的とする。
結果
Ramucirumabの分子特性と前臨床プロファイル
Ramucirumab (IMC-1121B) はImClone Systems (New York, NY, USA) が開発した完全ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、VEGFR-2の細胞外Ig-like domain 3 (VEGFリガンド結合ドメイン) を高選択的に標的とする。天然リガンドよりも格段に高い親和性でVEGFR-2に結合し、VEGF-A全アイソフォームおよびVEGF-C・VEGF-Dのシグナル伝達を直接遮断する (Fig 1)。VEGFR-2の細胞外領域はIg-like domain・疎水性膜貫通領域・チロシンキナーゼドメイン・C末端テールの3主要部位で構成される複合分子であり、この三次元構造の特異性が新規選択的阻害剤開発の出発点となった。前身のmurine monoclonal antibody DC-101 (murine VEGFR-2標的) はin vivo大腸癌・乳癌・白血病等ヒト腫瘍異種移植モデルにおいて直接的血管新生阻害と腫瘍増殖抑制効果を示し (Prewett et al., Cancer Res 1999)、VEGFR-2遮断戦略の有効性を前臨床段階で確立した。Ramucirumabは非ヒト由来成分を含まない完全ヒト抗体であり、非ヒト由来モノクローナル抗体の最大障壁であった免疫原性が低減し、2または3週毎の静脈内投与が忍容可能であることが示された。In vitroではVEGF誘導内皮細胞増殖・管腔形成を低nMオーダーで抑制し、複数のヒト腫瘍異種移植モデルで血管密度の顕著な減少と腫瘍増殖抑制を示した。Bevacizumabがリガンド (VEGF-A) を標的とするのに対し、ramucirumabは受容体 (VEGFR-2) を直接遮断することでVEGF-A/C/D全リガンド経路を包括的に阻害するという理論的優位性を持つ。
第I相試験 — 安全性・薬物動態・有効性の初期エビデンス (Spratlin et al., JCO 2010)
進行固形腫瘍で標準治療に抵抗性を示した37例 (n=37) を対象とした用量漸増第I相試験。Ramucirumabを2 mg/kgから開始し100%増量 (4 mg/kg)・50%増量 (6 mg/kg)・33%増量 (8/10/13/16 mg/kg) の7用量レベルで週1回1時間静脈内投与として評価した。用量制限毒性 (DLT, dose-limiting toxicity) は10 mg/kgでのGrade 3高血圧 (第4投与後) 1例と16 mg/kgでの深部静脈血栓症 (DVT) 1例であり、最大耐量 (MTD, maximum tolerated dose) は13 mg/kg週1回と確立された。毒性プロファイルは他のVEGF/VEGFR-2軸阻害剤と類似しており、主要toxicityは高血圧・血管血栓事象・蛋白尿。全Grade AE (25%以上) として疲労 (51.4%)・頭痛 (51.4%)・末梢浮腫 (35.1%)・下痢 (35.1%)・悪心 (32.4%)・蛋白尿 (29.7%) 等が観察された。高血圧は抗高血圧薬で管理可能で、永続的中止は1例のみ。有効性: 部分奏効 (PR, partial response) が4例 (11%) に確認された (メラノーマ・胃癌の4 mg/kg群各1例、子宮平滑筋肉腫13 mg/kg群、卵巣癌16 mg/kg群)。PRまたはSD 6ヶ月以上の臨床的有益を示したのは11例 (30%)。薬物動態 (PK, pharmacokinetics) 解析でramucirumabのクリアランスが8 mg/kgで飽和 (receptor-mediated clearance飽和) することが判明し、全VEGFR-2を同用量で遮断できるとの仮説から後続試験推奨用量は8 mg/kg 2週毎 (胃癌単剤) および10 mg/kg 3週毎 (化学療法併用) と設定された。副次的知見として、ramucirumabのVEGFR-2への高親和性によりVEGF-Aリガンドが受容体から競合的に置換され、血清VEGF-A濃度が1.5〜3.5-fold (主に8 mg/kg以上で顕著) 上昇した。この上昇はVEGFR-2遮断の充足度・範囲の代替マーカーとなる可能性を示した (Fig 1)。
胃癌・食道胃接合部癌 — REGARD試験 (NCT00917384、単剤二次治療)
REGARD試験 (Fuchs et al., Lancet 2014) は白金製剤またはフッ化ピリミジンを含む一次化学療法後進行の転移性胃癌またはGEJ腺癌355例を2:1に無作為化 (ramucirumab 8 mg/kg 2週毎 n=238 vs プラセボ n=117、加えてBSC) した国際多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験 (2009年10月〜2012年1月、29ヶ国)。層別化因子は体重減少・原発部位・地理的地域。主要評価項目OSを達成: ramucirumab群5.2ヶ月 vs プラセボ群3.8ヶ月 (HR 0.776, 95% CI 0.603-0.998, P=0.0473)、死亡リスク22%減少 (Table 1)。副次評価項目PFSもHR 0.483 (95% CI 0.376-0.620, P<0.0001) と有意延長。DCR (disease control rate): 48.7% vs 23.1% (P<0.0001)。ORRは双方ともに極めて低く (3.4% vs 2.6%)、ramucirumabが腫瘍縮小よりも病勢安定化を介してOS改善をもたらす薬剤であることが示された。安全性: Grade 3〜4 AE総頻度はramucirumab群57% vs プラセボ群58%と同等であり、最も頻度の高い重篤AEは高血圧 (Grade 3: 8% vs 3%) であったがGrade 4高血圧は皆無。消化管穿孔・蛋白尿・静脈血栓の増加なし。治療関連死は双方2%。65歳以上サブグループ (n=128) でも若年層と同様のOS改善効果 (HR 0.72, P for interaction=0.56) が確認された。QoL評価では6週時点でstable/improved報告がramucirumab群34% vs プラセボ群13%と良好。男性ではHR 0.67 (95% CI 0.49-0.91) と良好な傾向を示した一方、女性ではHR 1.43 (95% CI 0.85-2.40) と性別間での効果差も観察された。本試験はVEGF軸阻害薬として胃癌において単剤でOSを有意改善した最初の薬剤というマイルストーンを達成した。
胃癌・食道胃接合部癌 — RAINBOW試験 (NCT01170663、paclitaxel併用二次治療)
RAINBOW試験 (Wilke et al., 2014) は白金製剤+フッ化ピリミジン一次治療後進行の転移性胃/GEJ腺癌665例を1:1無作為化し、paclitaxel 80 mg/m² 週1回 + ramucirumab 8 mg/kg 2週毎 vs paclitaxel + プラセボで比較した第III相試験。層別化因子は地理的地域・測定可能病変の有無・一次治療からの進行時間 (<6ヶ月 vs ≥6ヶ月)。主要評価項目OS: ramucirumab+paclitaxel群9.6ヶ月 vs paclitaxel単独7.4ヶ月 (HR 0.807, 95% CI 0.678-0.962, P=0.0169)、死亡リスク19%減少 (Table 1)。PFS: 4.4ヶ月 vs 2.9ヶ月 (P<0.0001)、進行リスク27%低減。DCR: 80% vs 64% (P<0.0001)。安全性: Grade 3〜4 AEがramucirumab群で増加 (82% vs 63%)。主要な重篤AEとして好中球減少 (40.7% vs 18.8%)・白血球減少 (17.4% vs 6.7%)・高血圧 (14.1% vs 2.4%) がramucirumab群で顕著に高かったが、治療中止率は類似し、治療関連死もramucirumab群4.0% vs 対照群4.6%と同等であった。Stepwise Cox回帰で独立生存予測因子 (アジア出身・ECOG PS 0・体重減少<10%・転移臓器数少・腹水なし・高分化型・胃切除歴の7因子) を同定した多変量補正後もOS改善の頑健性は維持された。欧州・オーストラリア・北米患者サブグループ (region 1、n=398) でも全体集団と一貫した有効性・安全性を確認。QoL解析でもramucirumab追加によるQoL不損害が示され、安定/改善期間が延長した。なお一次治療での組合せ (modified FOLFOX + ramucirumab) の第II相164例ではPFS (6.44 vs 6.74ヶ月、HR 0.98, 95% CI 0.69-1.37) もOS (11.7 vs 11.5ヶ月、HR 1.08, 95% CI 0.73-1.58) も差がなく、ramucirumabの有益性は二次治療に限られることが確認された。
NSCLC — REVEL試験 (NCT01168973、docetaxel併用二次治療)
REVEL試験 (Garon et al. Lancet 2014) は白金ベース一次治療後進行のStage IV NSCLC 1,253例 (docetaxel 75 mg/m² + ramucirumab 10 mg/kg 3週毎 n=628 vs docetaxel + プラセボ n=625) を対象とした無作為化二重盲検第III相試験。主要評価項目OS: ramucirumab群10.5ヶ月 vs 対照群9.1ヶ月 (HR 0.857, 95% CI 0.751-0.979, P=0.0235)、死亡リスク14%減少 (Table 1)。PFS: 4.5ヶ月 vs 3.0ヶ月 (HR 0.762, P<0.0001)、進行リスク24%低減。ORR: 22.9% vs 13.6% (P<0.001)。本試験の最も重要な特徴は扁平上皮癌・非扁平上皮癌の双方で一貫した有効性が示された点であり、bevacizumabが非扁平上皮 (adenocarcinoma) のみに適応を持ち、nintedanibがadenocarcinomaでのみOS改善を示す (Reck et al. LancetOncol 2014; LUME-Lung 1試験) という状況において、ramucirumabは扁平上皮癌も含む全組織型に適応できる唯一の血管新生阻害剤としての位置付けを確立した。Grade 3以上の主要AE (ramucirumab vs プラセボ) は好中球減少 (49% vs 40%)・発熱性好中球減少 (16% vs 10%)・疲労 (14% vs 10%)・白血球減少 (14% vs 12%)・高血圧 (6% vs 2%) であり、dose adjustmentや支持療法で概ね管理可能であった。NSCLC一次治療の第II相試験では: Camidge et al.のcarboplatin (AUC 6) + paclitaxel (200 mg/m²) + ramucirumab (10 mg/kg) 3週毎で初期30例中評価可能15例のORR 67% (PR 9例・CR 1例)・6ヶ月PFS 5.7ヶ月; Doebele et al.の無作為化第II相140例 (cisplatin/carboplatin+pemetrexed ± ramucirumab) ではPFSの有意差なし (5.6 vs 7.2ヶ月、HR 0.75, P=0.132) ながらDCRの有意改善 (86% vs 70%、P=0.031) が得られた。これらの一次治療試験データはREVELの二次治療エビデンスを補完する文脈で提示されている。
乳癌 — ROSE/TRIO-12試験 (NCT00703326)
ROSE/TRIO-12試験 (Mackey et al., SABCS 2013) はHER2 (human epidermal growth factor receptor 2) 陰性進行・転移性乳癌 (MBC, metastatic breast cancer) 1,144例をdocetaxel 75 mg/m² + ramucirumab 10 mg/kg 3週毎 vs docetaxel + プラセボ (2:1無作為化) で比較した第III相試験。主要評価項目PFS: ramucirumab群9.5ヶ月 vs 対照群8.2ヶ月 (HR 0.881, 95% CI 0.762-1.019, P=0.077) と主要評価項目は未達 (Table 1)。中間解析でのOS中央値: 27.3ヶ月 vs 27.2ヶ月 (HR 1.01, P=0.915) と実質的に差なし。ORR: 44.7% vs 37.9% (P=0.027) と数値上わずかな差はあったが、中央値奏効期間・DCR (86.4% vs 81.3%) も類似していた。唯一有意差が認められたのは疾患進行時間 (time to progression): 9.7ヶ月 vs 8.2ヶ月 (HR 0.78, P=0.034) のみであった。安全性面では高血圧 (27.0% vs 11.5%)・出血 (48.0% vs 22.3%)・epistaxis (39.9% vs 16.8%)・口腔粘膜炎 (50.7% vs 30.6%)・体重減少 (21.9% vs 10.5%) 等がramucirumab群で顕著に増加しており、OS・PFS改善なしという結果と合わせ乳癌でのramucirumabの臨床的有用性は否定的と結論づけられた。先行するeribulin mesylate ± ramucirumab第II相試験 (アントラサイクリン・タキサン前治療あり乳癌) でもPFS 4.4ヶ月 vs 4.1ヶ月 (P=0.4)・OS 13.5ヶ月 vs 11.5ヶ月 (P=0.4) と有効性が示されず一貫した否定的結果となった。先行試験としてAVADO試験 (bevacizumab 15 mg/kg + docetaxel vs docetaxel単独) でもHER2陰性MBCでのPFS 9.0 vs 8.1ヶ月 (P=0.045) とわずかな改善のみでOS改善なし・FDA適応取消という先例とも整合し、乳癌においてVEGF/VEGFR-2経路依存性が他がん種と比較して低い可能性が示唆された。
HCC・大腸癌での進捗 (REACH・RAISE試験)
REACH試験 (NCT01140347) はsorafenib一次治療後のHCC (hepatocellular carcinoma) 544例を対象にramucirumab 8 mg/kg 2週毎 vs プラセボで比較した第III相試験であり、2014年6月のプレスリリースでOS優位性が統計的有意性に達しなかったことが公表された。RAISE試験 (NCT01183780) はbevacizumab+oxaliplatin+フッ化ピリミジン後進行の転移性大腸癌 (MCRC, metastatic colorectal cancer) 1,000例以上をFOLFIRI (irinotecan 180 mg/m² day 1 + 5-fluorouracil 2.4 g/m² day 1-2 + folinic acid 400 mg/m² day 1) ± ramucirumab 8 mg/kg 2週毎で比較した第III相試験であり、本論文発表時点では進行中であった。
考察/結論
Ramucirumabのがん種横断的位置付けと既報との対照的な結果
Ramucirumabは2014年時点で転移性胃癌/GEJ癌の単剤二次治療 (REGARD)・paclitaxel併用二次治療 (RAINBOW)・転移性NSCLCのdocetaxel併用二次治療 (REVEL) の3適応でFDA承認を取得し、VEGFR-2選択的遮断の概念的妥当性を臨床的に証明した。これまでの研究ではVEGF経路阻害薬として最も広く用いられてきたbevacizumabが胃癌二次治療でOS改善を示せなかった (AVAGAST試験等) のと対照的に、ramucirumabが単剤で胃癌OS改善を達成した点は、リガンドではなく受容体VEGFR-2を直接遮断するという新規な機序的差異の重要性を示しており既報の知見を超えるものである。REGARD試験での死亡リスク22%減少・RAINBOW試験での19%減少という一貫した有効性が確認される一方、乳癌のROSE/TRIO-12試験での完全な無効はがん種間でVEGFR-2依存性が大きく異なることを示している。胃癌ではbevacizumabが失敗した状況でramucirumabが成功した背景には、胃癌でのVEGFR-2シグナルの特殊な依存性と、VEGF-A以外のリガンド (VEGF-C/D) 経路の関与が考えられる。
NSCLCにおける有効性と臨床的有意性の議論
NSCLC二次治療でのOS 1.4ヶ月の改善はASCO意見書が定義した「臨床的有意閾値 (NSCLC: OS 2.5〜4ヶ月改善、PFS 3〜4ヶ月改善)」 (Ellis et al. JClinOncol 2014) を数値上満たさないことを著者自身も率直に認め、これまでの研究との相違として提示している。しかし著者らはramucirumabのNSCLCでの臨床的意義を肯定的に評価する根拠として以下を挙げている: (1) 二次治療の有意基準は一次治療より低く設定すべきであること; (2) PFS改善 (1.5ヶ月) が単なる治療期間延長ではなくOS改善に直結している点; (3) 扁平上皮癌でも有効であり、bevacizumabが非扁平上皮のみ適応・nintedanibがadenocarcinomaのみOS改善を示す現状でramucirumabが組織型を問わず使用できる唯一の抗血管新生薬となる点。特に扁平上皮癌においては代替治療オプションが限られており、この臨床的意義は他薬との単純比較を超えた独自価値を持つ。
予測バイオマーカー不在という残された課題と今後の展望
本論文で最も明確に指摘された残された課題は予測バイオマーカーの完全な不在である。VEGF-A血中濃度・VEGFR-2腫瘍発現・循環内皮前駆細胞数等の候補はいずれも臨床的有用性を確立するに至っておらず、今後の検討が不可欠である。乳癌でのVEGF標的治療の一貫した失敗は、MERIDIANのようなtranslational研究でbaseline VEGF-A発現等を前向きに評価して患者選択に活用する戦略の重要性を強調する。臨床応用の観点からは、適切な患者選択なしにramucirumabを高罹患率疾患 (胃癌・NSCLCなど) に広く適用することの費用対効果が問題となる。Ramucirumabの1回当たりの薬剤コストは$7,140と高額であり、OS 1.4ヶ月の改善という成績に対して経済的正当性を確立するためにも、恩恵を受ける患者集団の絞り込みは今後の最大課題である。さらに免疫チェックポイント阻害剤 (抗PD-1/PD-L1抗体) との併用は、血管正常化によるT細胞浸潤増強という相乗メカニズムから理論的な魅力があり、bench-to-bedsideとしての次の展開が期待された。本レビューはramucirumabが抗血管新生治療に新たな標準選択肢を確立した一方、バイオマーカー不在・費用対効果・乳癌での失敗という三つの未解決課題があることを明確化しており、future researchへの道筋を示している。
方法
PubMed検索および主要学会発表 (ASCO・ESMO・SABCS・IASLC World Conference on Lung Cancer) のプレゼンテーション・プレスリリースを包括的に収集した叙述的文献レビュー (narrative review)。収集対象はramucirumabに関する前臨床研究・第I相試験 (Spratlin et al., JCO 2010)・第II相試験および第III相試験であり、主要試験識別子: REGARD (NCT00917384)・RAINBOW (NCT01170663)・REVEL (NCT01168973)・ROSE/TRIO-12 (NCT00703326)・REACH (NCT01140347)・RAISE (NCT01183780) を含む。試験の有効性評価にはOS・PFS・ORR・DCRをエンドポイントとして採用し、log-rank検定・Cox比例ハザードモデル (HR、95% CI) を用いた試験を中心に整理した。安全性はNCI-CTCAE (National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events) 分類に基づくGrade 3〜4有害事象頻度で評価した。RAINBOW試験の多変量解析では逐次的Cox回帰 (stepwise Cox regression) で独立生存予測因子を同定している。薬物動態解析 (PK) はコンパートメントモデルを参照し、ramucirumabのreceptor-mediated clearanceが8 mg/kgで飽和することを記述している。なお系統的文献レビュー・メタ解析の手法は本論文の範囲外であり、主要試験のデータを個別に記述・比較する形式をとっている。著者のうちGiuseppe AprileはREGARD試験の主任研究者として関与している。