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Osimertinib, an Irreversible Next-Generation EGFR Tyrosine Kinase Inhibitor, Exerts Antitumor Activity in Various Preclinical NSCLC Models Harboring the Uncommon EGFR Mutations G719X or L861Q or S768I

  • 著者: Nicolas Floc’h, Sangbin Lim, Sue Bickerton, Afshan Ahmed, Jonathan Orme, Jelena Urosevic, Matthew J. Martin, Darren A.E. Cross, Byoung Chul Cho, Paul D. Smith
  • Corresponding author: Nicolas Floc’h (AstraZeneca Oncology R&D, Cambridge, UK)
  • 雑誌: Molecular Cancer Therapeutics
  • 発行年: 2020
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 32943544

背景

非小細胞肺がん (NSCLC) における上皮成長因子受容体 (EGFR) 変異は、治療標的として確立されており、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤 (EGFR-TKI) はこれらの患者に対して高い有効性を示す。しかし、EGFR変異の約10%から20%を占める非定型 (uncommon) EGFR変異(G719X、L861Q、S768Iなど)は、古典的変異(exon 19 del、L858R)とは異なる薬剤感受性を示すことが知られている。特に、G719X変異はEGFR遺伝子のexon 18におけるコドン719のグリシン置換(G719A、G719C、G719S)を指し、L861Q変異はexon 21のコドン861におけるロイシンからグルタミンへの置換、S768I変異はexon 20のコドン768におけるセリンからイソロイシンへの置換である。これらの非定型変異は単独で存在することもあれば、G719XとS768I、G719XとL861Qのように複合変異として存在することもある。

第一世代EGFR-TKIであるゲフィチニブやエルロチニブに対する非定型変異の感受性は、古典的変異と比較して低い傾向が報告されている。例えば、Chiu et al. (2015) の報告では、G719X変異患者の客観的奏効率 (ORR) は36.8%、L861Q変異患者では39.6%であり、古典的変異患者のORR (65.3-67.5%) と比較して有意に低かった。一方、第二世代EGFR-TKIであるアファチニブは、一部の非定型変異に対して有効性を示すことが示唆されている。Yang et al. LancetOncol 2015によるLUX-Lung 2/3/6試験の統合解析では、G719X、L861Q、S768I変異を有する患者において、アファチニブのORRは71%と報告され、特にG719X変異では77.8%、L861Q変異では56%、S768I変異では100%のORRが示された。しかし、これらのデータは後方視的解析に基づくものであり、非定型変異に対する最適な治療戦略は依然として未確立な部分が残されている。

オシメルチニブは、第三世代の不可逆的EGFR-TKIであり、古典的EGFR変異(exon 19 del、L858R)に対して高い有効性を示すとともに、第一・第二世代TKI耐性メカニズムであるT790M変異に対しても選択的な阻害活性を持つことが知られている。FLAURA試験では、未治療のEGFR変異陽性NSCLC患者において、オシメルチニブは第一世代TKIと比較して有意な無増悪生存期間 (PFS) の延長(18.9ヶ月 vs 10.2ヶ月)を示した。さらに、中枢神経系 (CNS) 転移を有する患者においても有効性が報告されている。Soria et al. NEnglJMed 2018Mok et al. NEnglJMed 2017らの研究は、オシメルチニブがこれらの古典的変異に対して優れた効果を示すことを確立している。しかし、オシメルチニブの非定型EGFR変異(G719X、L861Q、S768Iなど)に対する前臨床的活性は、これまでのところ系統的に評価された報告が不足していた。特に、患者由来細胞株や患者由来異種移植 (PDX) モデルを用いたin vitroおよびin vivoでの包括的な評価が欠如しており、この知識ギャップを埋めることが、非定型EGFR変異を有するNSCLC患者に対する治療選択肢を拡大し、治療成績を改善する上で重要であると考えられた。

目的

本研究の目的は、オシメルチニブが多様な非定型EGFR変異(G719X、L861Q、S768I、L747Sなど)に対してin vitroおよびin vivoでどのような抗腫瘍活性を示すかを系統的に評価することである。具体的には、以下の3つの主要なアプローチを用いてオシメルチニブの有効性を検証した。

第一に、Cos-7細胞に様々な非定型EGFR変異体(単独または複合変異)を発現させ、EGFRリン酸化アッセイを用いて、オシメルチニブ、その主要代謝物であるAZ5104、およびアファチニブのEGFRリン酸化阻害能 (IC50値) を比較評価する。これにより、オシメルチニブが広範な非定型EGFR変異に対して直接的な阻害活性を持つかを確認する。

第二に、G719C/S768I複合変異またはL861Q変異を有する患者由来NSCLC細胞株(YU-1092およびYU-1099)を用いて、オシメルチニブがEGFRリン酸化およびその下流シグナル経路(AKT、ERK、S6など)を阻害し、細胞増殖を抑制する能力をin vitroで評価する。これにより、より疾患関連性の高いモデルにおけるオシメルチニブの細胞レベルでの効果を検証する。

第三に、G719X単独変異またはG719XとL861Q/S768Iの複合変異を有する複数の患者由来異種移植 (PDX) モデル(LC-F-29、CTG-1082、CTG-2534、LU1901など)を用いて、オシメルチニブのin vivoでの抗腫瘍効果(腫瘍増殖抑制率 (TGI%) および腫瘍退縮率 (%tumor regression))を評価し、アファチニブとの比較を行う。これにより、生体内環境におけるオシメルチニブの治療効果を包括的に明らかにし、非定型EGFR変異を有するNSCLC患者に対するオシメルチニブの臨床的有効性の根拠を確立する。

結果

多様な非定型EGFR変異に対するオシメルチニブのin vitro EGFRリン酸化阻害活性: Cos-7細胞発現系を用いたEGFRリン酸化アッセイにより、オシメルチニブは評価した全ての非定型EGFR変異(G719A、G719C、G719S、L861Q、S768I、L747S)およびそれらの複合変異に対して、強力なEGFRリン酸化阻害活性を示した (Table 1)。オシメルチニブの幾何平均IC50値は4.5 nMから40.7 nMの範囲であり、その主要代謝物であるAZ5104 (1.2 nMから40.7 nM) およびアファチニブ (1.7 nMから79.2 nM) と同程度の効力であった。特に、古典的EGFR変異であるexon 19 del (IC50 8.4 nM) およびL858R (IC50 11.9 nM) と比較しても、非定型変異に対するオシメルチニブの効力は同程度であることが確認された。例えば、G719C/S768I複合変異に対するオシメルチニブのIC50は4.5 nMであり、これは古典的変異に対する活性と同等かそれ以上であった。これらのデータは、オシメルチニブが広範な非定型EGFR変異に対して直接的かつ強力な阻害活性を持つことを示唆している。

患者由来細胞株におけるオシメルチニブのEGFRリン酸化および増殖抑制効果: 患者由来NSCLC細胞株YU-1099 (EGFR G719C/S768I) およびYU-1092 (EGFR L861Q) を用いたin vitro実験により、オシメルチニブがEGFRリン酸化および下流シグナル経路を強力に阻害することが示された (Figure 1A, B)。YU-1099細胞では、試験した最低濃度のオシメルチニブでEGFRリン酸化が完全に阻害された。YU-1092細胞では、30 nMから100 nMのオシメルチニブ濃度でEGFRリン酸化が完全に阻害された。両細胞株において、オシメルチニブは用量依存的にpAKT、pERK、pS6などの下流シグナルマーカーのリン酸化を減弱させ、アポトーシス促進タンパク質BIMの発現を増加させた。さらに、増殖アッセイでは、YU-1099細胞で約30 nM、YU-1092細胞で10 nM未満のIC50値で、オシメルチニブが細胞増殖を強力に抑制することが確認された (Figure 1C-F)。これらの結果は、Cos-7細胞でのデータと一致し、より疾患関連性の高いモデルにおいてもオシメルチニブが非定型EGFR変異を標的とした抗腫瘍活性を発揮することを示している。

非定型EGFR変異を有するPDXモデルにおけるオシメルチニブのin vivo抗腫瘍活性: 複数の非定型EGFR変異を有するPDXモデルを用いたin vivo薬効評価により、オシメルチニブが持続的な腫瘍増殖抑制効果または腫瘍退縮効果を示すことが明らかになった。n=5-10 mice/群で評価された。 LC-F-29 PDXモデル (EGFR G719A;S768I) において、オシメルチニブ25 mg/kgの1日1回経口投与は、ビヒクル群と比較して有意な腫瘍退縮 (45% regression, p<0.001 at day 14) を誘導した (Figure 2A)。一方、アファチニブ7.5 mg/kgは中程度の腫瘍増殖抑制 (58% TGI, p<0.01 at day 14) を示した。オシメルチニブ処理群では全てのマウスで腫瘍体積の減少が観察されたのに対し、アファチニブ群では全てのマウスで腫瘍増殖が認められた (Figure 2B)。 CTG-1082 PDXモデル (EGFR G719A;L861Q) では、オシメルチニブ25 mg/kg投与により有意な腫瘍増殖抑制 (87% TGI, p<0.001 at day 14) が観察された (Figure 4A)。CTG-2534 PDXモデル (EGFR G719C;S768I) では、オシメルチニブ25 mg/kg投与により顕著な腫瘍退縮 (58% regression, p<0.001 at day 14) が認められた (Figure 4B)。CTG-2534モデルでは全てのマウスで腫瘍体積の著しい減少が確認された (Figure 4D)。これらのPDXモデルにおいて、オシメルチニブはアファチニブと同等またはそれ以上の腫瘍制御効果を示し、G719X変異がL861QまたはS768Iと複合して存在する場合でも感受性が維持されることが確認された。全てのin vivo実験において、オシメルチニブは良好な忍容性を示し、体重減少は最小限であった (Figure 2C, 4E, F)。

PDXモデルにおけるオシメルチニブの薬力学的効果: LC-F-29 PDXモデル (n=4 mice/群) を用いた薬力学的研究では、オシメルチニブ単回投与後、腫瘍組織中のリン酸化EGFRレベルが24時間後も有意に抑制されていることが確認された (Figure 3A, E)。これはオシメルチニブの不可逆的結合メカニズムと一致する。また、下流シグナルマーカーであるpERK、pS6、pAKTも同様に持続的な抑制を示した (Figure 3B-D)。アファチニブと比較して、オシメルチニブはより堅牢で持続的な経路阻害を達成しており、これはin vivoでの抗腫瘍効果の違いと相関していた。

MET増幅によるオシメルチニブ耐性の克服: G719A変異を有するLU1901 PDXモデル (n=5 mice/群) は、オシメルチニブ単剤治療に対して耐性を示した (Figure 5A)。このモデルのゲノム解析により、MET遺伝子増幅が確認された。MET増幅は、EGFR阻害剤に対する耐性メカニズムとして確立されている。この耐性を克服するため、MET阻害剤であるサボリチニブを単独またはオシメルチニブとの併用で投与した。サボリチニブ25 mg/kg単独投与またはオシメルチニブとの併用投与は、LU1901モデルにおいて顕著な腫瘍退縮 (サボリチニブ単独で95% regression, p<0.001 at day 14; 併用で100% regression, p<0.001 at day 14) を誘導した (Figure 5A)。これは、LU1901モデルの腫瘍増殖がMET活性化に依存していることを示しており、MET増幅がオシメルチニブ耐性の主要なメカニズムであることを裏付けている。

考察/結論

本研究は、オシメルチニブが古典的EGFR変異(exon 19 del、L858R)に加え、G719X、L861Q、S768I、L747Sといった多様な非定型EGFR変異に対しても強力な前臨床的抗腫瘍活性を示すことを、多岐にわたるモデル系で系統的に示した。In vitroでのEGFRリン酸化阻害アッセイ、患者由来細胞株を用いた増殖抑制およびシグナル伝達阻害、そして複数の非定型変異を有するPDXモデルにおけるin vivo抗腫瘍効果の一貫した所見は、オシメルチニブの非定型EGFR変異陽性NSCLCへの臨床適用を強く支持するものである。

先行研究との違い: これまでの研究では、非定型EGFR変異に対するオシメルチニブの有効性は、主にBa/F3細胞などの工学的に改変された細胞モデルを用いたin vitroデータに限定されていた。本研究は、より疾患関連性の高い患者由来細胞株およびPDXモデルを広範に用いることで、オシメルチニブのin vivoでの有効性を詳細に評価した点で、これまでの報告と異なる。特に、アファチニブとの比較において、オシメルチニブが同等以上の腫瘍制御効果を示したことは、非定型変異に対する治療選択における第三世代TKIの優位性を示す重要な知見である。

新規性: 本研究で初めて、G719X単独変異だけでなく、G719XとL861QまたはS768Iの複合変異を有するPDXモデルにおいても、オシメルチニブが持続的な腫瘍増殖抑制または退縮効果を示すことをin vivoで実証した。この結果は、複合変異を有する患者に対するオシメルチニブの潜在的な有効性を示す新規なエビデンスである。また、MET増幅がG719A変異を有するPDXモデルにおけるオシメルチニブ耐性メカニズムとして機能し、MET阻害剤サボリチニブとの併用によりこの耐性が克服されることを示した点も新規性がある。

臨床応用: 本研究のデータは、非定型EGFR変異を有するNSCLC患者に対するオシメルチニブの臨床的有効性を強く支持するものである。実際に、本研究の発表後、Ahn et al. (2020) による非定型EGFR変異NSCLC患者36例を対象とした臨床試験 (KCSG-LU15-09) では、オシメルチニブのORRが50%、PFS中央値が8.2ヶ月と報告されており、本前臨床データと臨床的観察が一致する。このコンバージェントなエビデンスは、G719X、L861Q、S768Iを含む非定型変異に対するオシメルチニブの適応拡大の基盤を提供し、NCCNやESMOなどのガイドラインでこれらの変異に対するオシメルチニブが推奨されるようになった。本研究は、AstraZenecaの基礎研究部門がオシメルチニブの適応拡大を前臨床的に探索し、その可能性を提示したという点で、臨床現場への貢献が大きい。

残された課題: 今後の検討課題として、非定型EGFR変異の多様性を考慮し、より多くのサブタイプに対するオシメルチニブの有効性を評価する必要がある。また、本研究で示されたMET増幅以外のオシメルチニブ耐性メカニズムの同定と、それらを克服する併用療法の開発も重要である。さらに、非定型変異を有する患者におけるオシメルチニブの長期的な有効性や安全性プロファイルを、大規模な臨床試験で検証することが求められる。本研究は前臨床データに基づいているため、これらの知見が実際の患者集団でどのように再現されるか、さらなる臨床研究が必要であるというlimitationがある。

方法

細胞株および試薬: Cos-7細胞はEuropean Collection of Authenticated Cell Cultures (ECACC) から入手し、DNAフィンガープリンティングにより認証された。Cos-7細胞は、DMEM (Sigma-Aldrich) に10% FCS (PAA) および1% Glutamax (Life Technologies) を添加した培地で培養された。患者由来細胞株であるYU-1092 (EGFR G719C/S768I) およびYU-1099 (EGFR L861Q) は、NSCLC患者の悪性胸水から樹立された。これらの細胞株は、患者のドライバー遺伝子変異を維持していることが確認された。オシメルチニブ、AZ5104、およびアファチニブはAstraZeneca社で合成された。

In vitro EGFRリン酸化アッセイ: Cos-7細胞にEGFR G719A/C/S、L861Q、S768I、L747Sの単独または複合変異体をコードするcDNAを一時的に導入した。細胞を様々な濃度の試験化合物(オシメルチニブ、AZ5104、アファチニブ)で2時間処理した後、EGF (200 ng/mL) で10分間刺激した。EGFRリン酸化レベルは、Cisbio Pan phospho-EGFR Cellular Assay Kitの改変プロトコルを用いて測定した。IC50値は、Genedata Screenerソフトウェアパッケージを用いてシグモイド用量反応曲線から算出した。

免疫ブロット解析: YU-1092およびYU-1099細胞を化合物で処理後、細胞ライセートを調製し、SDS-PAGEで分離後、ニトロセルロース膜に転写した。一次抗体として、p-EGFR (Y1068)、EGFR、p-AKT (S473)、AKT、p-ERK (T202/Y204)、ERK、p-S6 (S240/244)、S6、Bim、アクチンに対する抗体(Cell Signaling Technology製)を用いた。HRP標識二次抗体と化学発光基質を用いてシグナルを検出し、LAS-4000ルミノイメージアナライザーシステム (Fujifilm) で解析した。

細胞増殖アッセイ: YU-1092およびYU-1099細胞を6ウェルプレートに播種し、一晩培養後、指示された濃度の薬剤で14日間処理した。培地と薬剤は3日ごとに交換した。その後、クリスタルバイオレット染色を行い、ImageJソフトウェアを用いて細胞数を定量し、増殖抑制率を評価した。

患者由来異種移植 (PDX) 研究: 動物実験は、英国Home Officeの規制およびAstraZenecaのグローバルバイオエシックスポリシーに従って実施された。LC-F-29 (EGFR G719A;S768I)、CTG-1082 (EGFR G719A;L861Q)、CTG-2534 (EGFR G719C;S768I)、およびLU1901 (EGFR G719A、MET増幅) のPDXモデルを用いた。腫瘍組織片をヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍体積はキャリパー測定により週2回モニタリングした。腫瘍体積が約0.2 cm³に達した時点で、マウスを各群(n=5-10/群)にランダムに割り付けた。薬剤(ビヒクル、オシメルチニブ25 mg/kg、アファチニブ7.5 mg/kg、サボリチニブ25 mg/kg)は経口ゾンデにより1日1回投与した。腫瘍増殖抑制率 (%TGI) および腫瘍退縮率 (%regression) を算出した。統計学的有意差は一方向t検定を用いて評価した。薬力学的研究では、単回投与後の腫瘍組織を特定の時間点(1, 6, 16, 24時間)で採取し、リン酸化EGFRおよび下流シグナル経路のタンパク質レベルを免疫ブロットにより解析した。統計解析には一方向二側性ANOVAを用いた。