• 著者: Carter M. Suryadevara, Rupen Desai, S. Harrison Farber, Bryan D. Choi, Adam M. Swartz, Steven H. Shen, Patrick C. Gedeon, David J. Snyder, James E. Herndon II, Patrick Healy, Elizabeth A. Reap, Gary E. Archer, Peter E. Fecci, John H. Sampson, Luis Sanchez-Perez
  • Corresponding author: John H. Sampson; Luis Sanchez-Perez (Duke University Medical Center, Durham, NC)
  • 雑誌: Clinical Cancer Research
  • 発行年: 2019 (Epub: 2018-11-13)
  • Epub日: 2018-11-13
  • Article種別: Original Article (Preclinical)
  • PMID: 30425092

背景

CAR (chimeric antigen receptor) T細胞療法は再発・難治性血液悪性腫瘍において顕著な成果を上げており、抗CD19 CAR T細胞療法は以前は不治とされた患者に最大90%の完全寛解率を達成している。一方、固形腫瘍への応用は腫瘍微小環境 (TME) の免疫抑制機構、とりわけCD4+FoxP3+制御性T細胞 (Treg) による抑制によって大きく制限されている (Maus et al. CancerImmunolRes 2013)。TregはグランザイムB (granzyme B) による直接接触、IL-10やTGFβなどの免疫抑制性サイトカイン分泌、CTLA-4を介したIDO (indoleamine 2,3-dioxygenase) 誘導、そしてIL-2消費を通じてエフェクターT細胞の増殖・機能を広範に抑制する。

現在の標準的CAR T細胞投与では、リンパ球除去化学療法・放射線療法を前処置として用いることでTregを除去し、ホメオスタシスサイトカイン (特にIL-7 (interleukin-7)、IL-15 (interleukin-15)) の生物学的利用能を高めてCAR T細胞の増殖・生存を促進する。しかし、これらの処置は非特異的毒性が強く、自己免疫疾患、感染抵抗性低下、免疫レパートリー多様性の喪失など重大な長期後遺症をもたらし、臨床適用を制限する。さらに、リンパ球除去後も免疫再構成の過程でTregが再増殖するため、有効性維持の窓が限られるという問題がある。

現代の2nd generation CARに不可欠なCD28共刺激ドメインは、T細胞活性化のシグナル2を模倣してCAR拡増を促進する一方 (Frigault et al. CancerImmunolRes 2015)、IL-2産生を増強することでTregの増殖・機能維持に必要なIL-2を皮肉にも供給してしまうことが報告されていた。CD28細胞質尾部のPYAP (proline-tyrosine-alanine-proline) モチーフはSrcファミリーキナーゼであるLck (lymphocyte-specific tyrosine kinase) をリクルートし、IL-2 mRNAの転写後安定化を通じてIL-2の正味分泌量を制御する。Koflertら (Mol Ther 2011) はPYAP変異によりLck結合を阻止するとTreg腫瘍浸潤が減少することを腫瘍内投与モデルで示したが、全身静脈内投与されるCAR T細胞 (chimeric antigen receptor-modified T cells, CARs) のin vivo持続性と抗腫瘍効果への影響は不明であった。また、CAR設計における受容体親和性と細胞外ドメインが固形腫瘍認識に与える影響についても検討が続いている (Hudecek et al. ClinCancerRes 2013)。

根本的なgap in knowledgeとして、Lck不活化 (ΔCD28変異) によるIL-2産生抑制がCAR T細胞自身のオートクリンIL-2シグナルを損ない、in vivo生着・持続を阻害するという相反するトレードオフが存在した。「IL-2産生抑制によるTreg抵抗性」と「IL-2依存的な自己持続性の維持」を同時に実現するCAR設計戦略は手薄であり、リンパ球除去なしで固形腫瘍を治療できるCAR T細胞の実現には至っていなかった。4-1BB (TNFR: tumor necrosis factor receptor superfamily member) がIL-2非依存的なT細胞生存・増殖を促進することが知られており、この特性がΔCD28変異による持続性喪失を補完できる可能性が仮説として浮上した。

目的

EGFRvIII (epidermal growth factor receptor variant III) 標的CARにおいて、CD28 PYAPモチーフへのΔCD28変異がIL-2産生を抑制してTreg免疫抑制に抵抗できるか検証し、さらに4-1BB共刺激の付加 (ΔCD28-4-1BBz設計) がLck不活化CARsのin vivo持続性を補完し、固形腫瘍に対する抗腫瘍効果をリンパ球除去なし条件で実現できるかをB16-EGFRvIIIメラノーマ前臨床モデルで明らかにすること。

結果

ΔCD28変異によるIL-2産生の選択的抑制 (IFN-γ保持を確認): In vitroにてEGFRvIII 14アミノ酸ペプチドによる抗原特異的刺激後のICS解析では、CD28z CAR T細胞のIL-2陽性率が平均16.6%であったのに対し、ΔCD28z CAR T細胞では5.41%と顕著に低下した (Fig 2D)。CBAによる上清定量ではCD28z群のIL-2濃度が平均31.97 pg/mLに対してΔCD28z群では9.3 pg/mLと約3.4-fold reduction を示し (Fig 2F)、n=3の独立実験で再現性が確認された。一方、IFN-γ産生はCD28z (51.65%、453.3 pg/mL) とΔCD28z (44.8%、439.67 pg/mL) で同等であり (Fig 2E、2G)、ΔCD28変異がIL-2産生経路のみを選択的に阻害し炎症性サイトカイン産生を温存することが確認された。CAR細胞表面発現率もΔCD28z CAR T細胞で93.9%と良好であり (Fig 2B)、51Cr放出アッセイによる細胞傷害性 (p=0.0177) および抗原特異的B16vIII溶解能も変異の影響を受けなかった (Fig 2C)。これらのin vitroデータは、ΔCD28変異がCAR発現・細胞傷害活性・IFN-γ産生を損なうことなく、IL-2産生のみを選択的に抑制することを実証した。

Lck不活化単独の限界:ΔCD28z CAR T細胞はリンパ球除去条件でも無効: CD28z CAR T細胞はリンパ球除去なし条件では腫瘍成長への抑制効果がほぼなく担癌対照群と同様の経過をたどったが、5 Gy TBIによるリンパ球除去前処置を加えると100%の腫瘍根絶を達成した (p<0.0001、各群n=7) (Fig 1D)。照射マウスでは末梢血Tregの持続的な減少が確認され (2-way ANOVA, p=0.0013 for interaction of time and group) (Fig 1E)、CD28z CAR T細胞の有効性がTreg除去に依存していることが示唆された。一方、ΔCD28z CAR T細胞はリンパ球除去なし条件で効果がないのみならず、5 Gy TBIによるリンパ球除去後の投与においてもCD28-4-1BBz CARsと比較して腫瘍成長に有意な影響を与えなかった (Fig 2I)。Lck不活化によるオートクリンIL-2シグナルの欠失がCAR T細胞のin vivo生存・増殖能を根本的に損ない、リンパ球除去によるサイトカイン環境改善があっても補完できないことが明らかとなった。

ΔCD28-4-1BBz CAR T細胞:リンパ球除去なし条件での固形腫瘍抑制: EGFRvIII標的のscFv-CD8TM-ΔCD28-4-1BB-CD3ζを組み込んだ3rd generation ΔCD28-4-1BBz CAR T細胞 (細胞表面発現率91%、51Cr放出アッセイ p=0.0004) は、リンパ球除去なし条件において有意な腫瘍成長遅延を達成した (混合効果線形モデル p<0.005、各群n=7) (Fig 3D)。これは評価した4種類のCAR設計 (CD28z、ΔCD28z、CD28-4-1BBz、ΔCD28-4-1BBz) の中で、リンパ球除去なしに抗腫瘍効果を示した唯一の設計であった。野生型CD28に4-1BBを付加した3rd generation CD28-4-1BBz CAR T細胞 (発現率91.7%、p=0.0104) はリンパ球除去なし条件では腫瘍成長を抑制できず (Fig 4D)、4-1BB付加のみでは不十分でありΔCD28変異との組み合わせが必須であることが直接比較により示された。移入5日後の末梢血フローサイトメトリー解析では、ΔCD28-4-1BBz群のCAR T細胞絶対数は32.8/μL血液、頻度はCD3+区画の2.5%であり、CD28-4-1BBz群 (19.9/μL、1.3%) に対して有意に高値であった (1-way ANOVA p<0.0001、各群n=5) (Fig 4E)。2nd generation CAR T細胞 (CD28z、ΔCD28z) はいずれも対照T細胞と有意差がなく、ΔCD28変異と4-1BBシグナルの相乗効果がin vivo増殖・生着を促進することが定量的に確認された。

Treg共移入実験によるTreg抵抗性の実証: リンパ球除去腫瘍担癌マウスにDEREGマウス由来のFoxP3+Tregを共移入した実験 (CAR:Treg=10:1比、n=21〜25/群、3独立実験プール) において、CD28-4-1BBz CAR T細胞はTreg共移入により抗腫瘍効果が完全に消失した (腫瘍増殖回帰直線傾きの比較 p=0.0116) (Fig 5C)。一方、ΔCD28-4-1BBz CAR T細胞はTreg共移入の存在下でも抗腫瘍効果を完全に維持し、Treg共移入あり・なし間で腫瘍増殖に有意差を認めなかった (p=0.3655) (Fig 5C)。これはΔCD28変異によるIL-2産生抑制がTreg増殖・機能維持に必要なIL-2供給を遮断し、CAR T細胞がTreg免疫抑制から能動的に逃れることを直接実証するものである。リンパ球除去マウスにTreg非存在下でCARs単独を移入した対照実験では、CD28-4-1BBzおよびΔCD28-4-1BBz双方が同等の抗腫瘍効果を示しており (Fig 5A、p<0.05)、ΔCD28変異の利点はTreg存在下に特異的に発揮されるという設計の合理性が支持された。

考察/結論

本研究は、リンパ球除去なしで樹立固形腫瘍を単剤治療できるCAR T細胞を前臨床で設計した、これまで報告されていない初の報告である。CD28 PYAPモチーフへのΔCD28変異と4-1BB共刺激の組み合わせ (ΔCD28-4-1BBz CAR) という新規の設計原則により、(1) IL-2産生を選択的に抑制してTreg増殖・機能維持に必要なIL-2供給を遮断するTreg抵抗性機構と、(2) 4-1BB (TNF receptor superfamily member) によるIL-2非依存的なT細胞生存・増殖補完機構を同時に実現した。

先行研究との比較において主要な相違点として、Koflertらの研究は腫瘍内局所投与モデルに限定されており、全身静脈内投与時のΔCD28変異のin vivo持続性と抗腫瘍効果への影響はこれまでの先行研究で示されていなかった。本研究では全身投与という臨床実態に即した条件でΔCD28-4-1BBz CARsのin vivo増殖優位性 (32.8 vs. 19.9/μL血液、p<0.0001) とTreg抵抗性を同時に実証した。4-1BB単独付加 (CD28-4-1BBz) がリンパ球除去なしで無効であったことは重要であり、Treg免疫抑制経路の遮断 (ΔCD28) とIL-2非依存的増殖の確保 (4-1BB) という二つの修飾が相乗的に必要である新規の設計知見を提供する。ΔCD28-4-1BBz CAR T細胞が2nd generationおよびCD28-4-1BBz CARsと比較して末梢血で最高の絶対数・頻度を示したことは、この相乗効果を定量的に裏付けている。

臨床応用上の意義として、リンパ球除去化学療法・放射線療法は自己免疫、感染抵抗性低下、免疫レパートリー多様性喪失など重大な長期毒性を有する。ΔCD28-4-1BBz CAR設計はこれらの有害処置を不要とする可能性があり、特にTreg浸潤が高い固形腫瘍 (膠芽腫、メラノーマ、その他Treg豊富な固形癌) を有する患者、または既存の化学療法・放射線療法に不応または不耐の患者集団に対して新たな治療の選択肢を広げうる。静脈内単剤療法として設計されており、複数のTreg浸潤固形癌腫への汎用性も持つ。ただし、今回のリンパ球除去なしでの腫瘍成長遅延はリンパ球除去ありの完全根絶と比較すると有効性は限定的であり、臨床での本格応用には更なる最適化が必要である。

残された課題として、腫瘍微小環境内でのCAR T細胞浸潤量やTreg減少の直接評価が行われておらず、ΔCD28変異による腫瘍内Treg浸潤低減の直接的証拠が不足している点はlimitationである。EGFRvIIIがB16メラノーマに内因性でなく人工的に導入された抗原である点、皮下腫瘍モデルがCNS免疫特権や血液脳関門を有する実際の膠芽腫環境を再現していない点も考慮が必要であり、著者らは頭蓋内同所性腫瘍モデルでの検証を今後の検討として挙げている。さらに、ΔCD28-4-1BBz CAR T細胞の分化表現型 (KLRG1、CD127、T-bet、Eomesなど) や長期生存特性、CD25介在シグナルによる短命エフェクター細胞分化抑制の可能性、腫瘍微小環境内での持続性など、設計の細胞固有効果についてもfuture researchが求められる。

方法

CAR設計と産生: MSGV1レトロウイルスベクターを用い、抗EGFRvIII scFv (single chain variable fragment、抗体クローン139由来)-CD8 transmembrane domain-CD28-CD3ζからなる2nd generation CAR (CD28z) と、4-1BB共刺激ドメインを追加した3rd generation CAR (CD28-4-1BBz) を構築した。ΔCD28変異体 (ΔCD28z、ΔCD28-4-1BBz) は部位特異的変異導入によりCD28 PYAPモチーフに2アミノ酸置換 (PYAP→AYAA) を導入してLckリクルートを阻止した。PI3Kシグナルに関与するYMNMモチーフは保持した。レトロウイルス産生はHEK 293T細胞へのLipofectamine 2000 (Invitrogen) を用いた共トランスフェクションで行い、C57BL/6NCrマウス (Charles River Laboratories) 脾細胞をConcanavalin A (2.5 μg/mL) およびIL-2 (50 U/mL) で48時間活性化後、RetroNectin (25 μg/mL) コーティングプレートでウイルス上清 (IL-2 50 U/mL添加) による形質導入を実施した。

In vitro機能評価: 51Cr (chromium-51) 放出アッセイにより、4時間の標的細胞傷害性を種々のE:T (effector-to-target) 比で評価した (標的: B16vIII陽性対照、B16OVA陰性対照)。群間比較にはunpaired t検定を使用。ICS (intracellular cytokine staining) では、抗EGFRvIII 14アミノ酸ペプチドをプレートコーティングして抗原特異的刺激後、IL-2・IFN-γの細胞内産生をフローサイトメトリーで解析した。CBA (cytometric bead array、BD Biosciences) では同様に刺激した上清中のIL-2・IFN-γを製造業者指示に従い定量した。多群比較には1-way ANOVA (Tukey事後検定) または2-way ANOVA (交互作用解析) を使用した。

In vivoモデル: C57BL/6NCrマウス左脇腹に1×10^5個のB16vIII (B16-EGFRvIII melanoma) 細胞を皮下接種し、7日間の腫瘍生着を確認した後にCAR T細胞を静脈内投与した。リンパ球除去群には7日目に5 Gy全身照射 (TBI) を実施した。腫瘍体積は長径×短径²×0.52 (単位: mm³) で算出し、2,000 mm³到達または潰瘍化を安楽死基準とした。腫瘍増殖曲線の統計解析には、log変換腫瘍体積に対する混合効果線形モデル (first-degree autoregressive structure for repeated measures) を適用し、増殖曲線の傾きにpairwise contrastを用いた。

Treg共移入実験: DEREG [C57BL/6-Tg(Foxp3-DTR/EGFP)23.2Spar/Mmjax] マウス脾細胞からCD4+細胞をMiltenyi Biotec磁気ビーズで単離後、GFP発現によりFoxP3+Tregをフローサイトメトリーソートした。Miltenyi Treg Expansion Kit (CD3/CD28 MACSiBead) を用いて3〜7日間in vitro拡張後、移入当日にGFP再ソートで高純度を確保した。CAR:Treg=10:1の比率で混合し、腫瘍担癌リンパ球除去マウスに200 μL PBSで静脈内共移入した (n=21〜25/群、3回の独立実験プールデータ)。

免疫モニタリング: 移入5日後に後眼窩採血し、50 μLの血液にFlow-Count Fluorospheres (Beckman Coulter) を添加したフローサイトメトリーにより末梢血中のCAR T細胞絶対数 (個数/μL血液) と頻度 (CD3+区画に占める割合) を定量した。末梢血Tregの経時モニタリングにはCD4+/FoxP3+二重染色を使用した。