• 著者: Larkin J, Chiarion-Sileni V, Gonzalez R, Grob JJ, Rutkowski P, Lao CD, Cowey CL, Schadendorf D, Wagstaff J, Dummer R, Ferrucci PF, Smylie M, Hogg D, Hill A, Márquez-Rodas I, Haanen J, Guidoboni M, Maio M, Schöffski P, Carlino MS, Lebbé C, McArthur G, Ascierto PA, Daniels GA, Long GV, Bastholt L, Rizzo JI, Balogh A, Moshyk A, Hodi FS, Wolchok JD
  • Corresponding author: James Larkin (Royal Marsden NHS Foundation Trust, London)
  • 雑誌: N Engl J Med 2019;381:1535-46
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-09-28
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31562797

背景

進行黒色腫の治療はこの 10 年で大きく前進し、ipilimumab(抗 cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4 〔抗 CTLA-4〕抗体)、抗 programmed death 1(抗 PD-1)抗体である nivolumab と pembrolizumab、両者の併用、さらに BRAF/MEK 阻害薬(dabrafenib+trametinib 等)の登場により生存転帰が劇的に改善してきた。第3相 CheckMate 067 試験は、未治療進行黒色腫を対象に nivolumab+ipilimumab 併用または nivolumab 単独が ipilimumab 単独に比べ奏効率・無増悪生存(PFS)・全生存(OS)のいずれでも優れることを初回解析(Larkin et al. NEnglJMed 2015)、3年解析(Wolchok et al. NEnglJMed 2017)、4年解析(Hodi et al. LancetOncol 2018)と段階的に示してきた。併用療法は脳転移を有する転移性黒色腫でも臨床効果が報告されている。しかし、これら先行解析では最低でも 5 年に及ぶ長期生存の plateau が真に持続するか、後続全身療法を受けずに済む患者(treatment-free)の割合がどこまで広がるか、そして長期治療後に健康関連 QOL(health-related quality of life)が損なわれないかという、免疫チェックポイント阻害薬の「治癒に近い」長期ベネフィットを裏づける証拠は不足しており、5 年という長期スパンでの真の plateau 持続は未解明のままであった。本研究はこの未解明のギャップを埋めるべく、最低 5 年追跡での生存転帰・後続治療回避・QOL を統合的に報告する。

目的

未治療進行黒色腫患者を対象とした第3相 CheckMate 067 試験において、最低 60 か月(5年)追跡時点での OS と PFS を nivolumab+ipilimumab 併用群および nivolumab 単独群と ipilimumab 単独群とで比較し、併せて後続全身療法を受けない期間(treatment-free interval)・割合、健康関連 QOL、長期安全性を評価して、nivolumab を含むレジメンの長期ベネフィットを明らかにすることを目的とした。

結果

併用群の 5年 OS は単独 ipilimumab の倍: 最低 60 か月追跡(データベースロック 2019年7月2日)時点で、median OS は nivolumab+ipilimumab 群で 60.0 か月超 (median 未到達、95% CI 38.2 to not reached)、nivolumab 群で 36.9 か月 (95% CI 28.2 to 58.7)、ipilimumab 群で 19.9 か月 (95% CI 16.8 to 24.6) であった (Fig 1A)。死亡に対する hazard ratio は併用 対 ipilimumab で HR 0.52 (95% CI 0.43 to 0.64)、nivolumab 対 ipilimumab で HR 0.63 (95% CI 0.52 to 0.76) であり、いずれも併用群・単独群の優越を示した。5年 OS は併用群 52% vs ipilimumab 群 26%、nivolumab 群 44% であり、nivolumab 含有レジメンが ipilimumab 単独のほぼ倍の長期生存を示した。nivolumab+ipilimumab は転移性黒色腫で 5 年時点でも median OS が未到達である唯一の治療となった。

PFS と奏効も併用群で優越し plateau を形成: median PFS は併用群 11.5 か月 (95% CI 8.7 to 19.3)、nivolumab 群 6.9 か月 (95% CI 5.1 to 10.2)、ipilimumab 群 2.9 か月 (95% CI 2.8 to 3.2) であった (Fig 1B)。5年 PFS は併用群 36%、nivolumab 群 29%、ipilimumab 群 8% と顕著な差を示した。試験治療中の患者における objective response rate は併用群 58%、nivolumab 群 45%、ipilimumab 群 19% で、complete response 率はそれぞれ 22%・19%・6% と全群で前回解析より増加した(Table 1)。奏効持続例のうち 5 年時点で奏効継続中の割合は 62%・61%・40% であり、median 奏効持続期間は併用群・nivolumab 群で未到達、ipilimumab 群で 14.4 か月であった。

BRAF 変異・LDH 値別サブグループでも一貫した利益: BRAF 変異あり/なしの患者で 5年 OS はそれぞれ併用群 60%/48%、nivolumab 群 46%/43%、ipilimumab 群 30%/25% であった(Fig 2)。lactate dehydrogenase(LDH)正常例での 5年 OS は併用群 60%、nivolumab 群 53%、ipilimumab 群 34%、LDH 上昇例ではそれぞれ 38%・28%・15% で、いずれのサブグループでも nivolumab 含有レジメンが優れた(Fig S3)。腫瘍 PD-L1 発現単独では効果を予測できず、これは過去の解析と一致した(Figs S4, S5, Table S3)。

併用群は後続全身療法を長期に回避: 後続全身療法を受けた患者割合は併用群 46%、nivolumab 群 59%、ipilimumab 群 75% であり、ランダム化から後続全身療法開始までの median 時間は併用群で 60.0 か月超(median 未到達)、nivolumab 群 25.2 か月、ipilimumab 群 8.0 か月と大きく異なった(Table S4)。median treatment-free interval は併用群 18.1 か月、nivolumab 群 1.8 か月、ipilimumab 群 1.9 か月であった(Fig 3A)。生存中の患者のうち試験治療も後続全身療法も受けていない割合は併用群 74%、nivolumab 群 58%、ipilimumab 群 45% に達した(Fig 3B)。

新規後期毒性なく QOL も保持: Grade 3/4 の治療関連有害事象は併用群 59%、nivolumab 群 23%、ipilimumab 群 28% で、長期追跡でも過去の報告と同様であり、新たな試験薬関連死は報告されなかった(Tables S5-S9)。多くの治療関連 select adverse events は median 12 週未満で消失したが、内分泌系イベントなど一部は長期ホルモン療法を要した。EQ-5D-3L(European Quality of Life 5-Dimensions 3-Level)による評価では、index score の baseline からの変化は併用群・nivolumab 群でおおむね臨床的に意味のある閾値 0.08 の範囲内にとどまり、治療中・治療後ともに持続的な QOL 悪化はみられなかった(Fig S7)。一方、0.08 を超える悪化は ipilimumab 単独群でより高頻度に観察された。

考察/結論

転移性黒色腫の 5年生存率はこれまで悲観的なものであったが、本 CheckMate 067 の 5年解析は、nivolumab+ipilimumab 併用により約半数の患者で長期生存が持続するという、これまでの化学療法時代と異なり新たな基盤を提示した。3 年時点の先行研究で nivolumab 含有群の生存曲線にみられた plateau は本追跡でも継続しており、後続療法の影響を考慮しても併用群の長期生存が維持されていることを示す。nivolumab+ipilimumab は 5 年時点でも median OS が未到達である唯一のレジメンであり、complete response 率が初回解析以降も上昇し続ける点は、免疫チェックポイント阻害薬では best response が時間とともに改善しうるという novel な知見である。本研究で初めて、5 年という長期にわたり treatment-free interval が延長し続け、生存かつ無治療の患者割合が増え続けることが定量的に裏づけられた点は、併用療法の価値を示す重要な所見である。BRAF 変異例での pooled dabrafenib+trametinib 解析の 5年 OS 34%(Robert et al. NEnglJMed 2019)との単純比較は試験集団の差から頑健ではないものの、免疫療法群が良好な長期転帰を示した。臨床的意義として、本データは未治療進行黒色腫における一次治療選択の橋渡しとなり、QOL を損なわずに長期生存を達成しうる治療として併用療法を位置づける。残された課題として、checkpoint blockade 普及に伴う late-onset 毒性の長期監視、CheckMate 511(Lebbe et al. JClinOncol 2019)で検討された代替投与レジメンによる安全性・グローバルな価値の最適化、そして PD-L1 に代わる予測バイオマーカーの確立があり、今後の検討が必要である。結論として、進行黒色腫において nivolumab+ipilimumab 併用または nivolumab 単独は ipilimumab 単独よりも高い割合で持続的な 5年長期生存をもたらし、nivolumab 含有レジメンでは QOL の明らかな低下を伴わなかった。

方法

未治療で切除不能/転移性の組織学的確認された stage III/IV 黒色腫(BRAF V600 変異状態既知、ECOG performance status 0 または 1)の成人を対象とした第3相無作為化試験である。患者を 1:1:1 で (1) nivolumab 1 mg/kg + ipilimumab 3 mg/kg を 3 週ごと 4 回投与後 nivolumab 3 mg/kg を 2 週ごと、(2) nivolumab 3 mg/kg を 2 週ごと(ipilimumab matched placebo 併用)、(3) ipilimumab 3 mg/kg を 3 週ごと 4 回(nivolumab matched placebo 併用)に割り付けた。ランダム化は BRAF 変異状態、AJCC 転移病期、腫瘍 PD-L1 状態で層別化した。主要評価項目は併用群および nivolumab 群と ipilimumab 群との PFS と OS の比較で、有効性は intention-to-treat 集団で評価した。生存曲線は Kaplan-Meier 法で推定し、群間比較には Cox 比例ハザードモデル(hazard ratio 算出)を用い、本 60 か月追跡では 95% 信頼区間付きで OS・PFS・奏効率を再評価して記述的に updated P 値を提示した(併用群と nivolumab 群の正式統計比較は試験設計外)。複合奏効率の 95% CI は Clopper-Pearson 法、QOL は EQ-5D-3L 質問票で baseline からの平均変化を評価した。試験登録番号は ClinicalTrials.gov NCT01844505(CheckMate 067)。資金は Bristol-Myers Squibb ほか。