- 著者: James Larkin, Vanna Chiarion-Sileni, Rene Gonzalez, Jean Jacques Grob, C. Lance Cowey, Christopher D. Lao, et al.
- Corresponding author: James Larkin (Royal Marsden Hospital, London, UK); Jedd D. Wolchok (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
- 雑誌: New England Journal of Medicine
- 発行年: 2015
- Epub日: 2015-05-31
- Article種別: Original Article
- PMID: 26027431
背景
転移性メラノーマの治療は過去5年間で大きく進展し、免疫チェックポイント阻害薬やBRAF変異を標的とする薬剤の承認により、患者の予後は改善されてきた。特に、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4 (CTLA-4) 阻害薬であるイピリムマブは、2010年に転移性メラノーマ患者の全生存期間 (OS) を改善する初の薬剤として第III相試験で承認された Hodi et al. NEnglJMed 2010。イピリムマブ単剤療法では、奏効率 (ORR) は10〜15%であり、約20%の患者で長期生存が報告された。しかし、その効果は限定的であり、より高い奏効率と持続的な効果が求められていた。
一方、プログラム細胞死1 (PD-1) 阻害薬であるニボルマブとペムブロリズマブは、2014年にイピリムマブ治療後に進行した転移性メラノーマ患者、およびBRAF変異陽性メラノーマ患者でBRAF阻害薬治療後に進行した患者に対して米国食品医薬品局 (FDA) により承認された。これらの抗体は30〜40%の客観的奏効を伴い、その多くが持続的であった。ニボルマブは、未治療のBRAF野生型腫瘍患者 Robert et al. NEnglJMed 2015、またはイピリムマブ治療後に進行した患者において、化学療法と比較して優れた有効性を示すことが第III相試験で示された Weber et al. LancetOncol 2015。また、ペムブロリズマブも進行メラノーマ患者においてイピリムマブと比較して長い無増悪生存期間 (PFS) とOS、高い奏効率を示すことが報告された Robert et al. NEnglJMed 2015。
ニボルマブとイピリムマブは、T細胞活性化の異なる段階(CTLA-4は活性化初期のプライミング段階、PD-1は末梢/腫瘍局所のエフェクター段階)で作用するため、併用により相補的かつ相乗的な抗腫瘍効果が期待された。先行する第II相試験であるCheckMate 069では、BRAF野生型メラノーマ患者において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法がイピリムマブ単剤療法と比較して、ORRが61% vs 11%と併用療法の優位性が示された Postow et al. NEnglJMed 2015。しかし、この第II相試験ではPD-L1発現が抗PD-1単剤療法では効果予測因子となる一方で、併用療法ではその関連性が明確に示されず、PD-L1発現の最適なカットオフ値や臨床的有用性は未確立であった。また、併用療法の安全性プロファイルも詳細な評価が必要であった。
これらの背景から、未治療進行メラノーマ患者におけるニボルマブ単剤、イピリムマブ単剤、およびニボルマブとイピリムマブ併用療法の有効性と安全性を直接比較し、最適な治療レジメンを確立するための大規模な第III相試験が必要とされた。特に、PD-L1発現状況に応じた治療効果の違いや、併用療法の毒性プロファイルの詳細な評価が不足しており、これらのギャップを埋めることが本研究の重要な課題であった。
目的
未治療の切除不能なIII期またはIV期転移性メラノーマ患者を対象に、ニボルマブ単剤療法、イピリムマブ単剤療法、およびニボルマブとイピリムマブ併用療法の有効性および安全性を比較検討すること。主要評価項目として無増悪生存期間 (PFS) と全生存期間 (OS) を設定し、特にPFSに関する結果を報告する。副次評価項目として、客観的奏効率 (ORR)、PD-L1発現を予測バイオマーカーとした有効性評価、および安全性プロファイルを評価することを目的とした。本研究は、未治療進行メラノーマにおける最適な治療戦略を確立するための重要なエビデンスを提供することを目指した。
結果
患者背景: 2013年7月から2014年3月にかけて、オーストラリア、ヨーロッパ、イスラエル、ニュージーランド、北米の137施設で合計1296例の患者が登録され、945例が無作為化された。各群の患者背景は均等にバランスが取れていた。患者の年齢中央値は59歳、男性が約65%、BRAF V600変異陽性が31.5%、PD-L1陽性(≥5%)が23.6%、M1cステージが58.0%、乳酸脱水素酵素 (LDH) 上昇が36.1%であった (Table 1)。中央値12.2〜12.5ヶ月の追跡期間において、ニボルマブ群の37.4%、併用群の29.7%、イピリムマブ群の16.1%が治験薬の投与を継続していた。治療中止の最も一般的な理由は、ニボルマブ単剤群とイピリムマブ単剤群では疾患進行(それぞれ49.2%、65.0%)であり、併用群では治験薬の毒性(38.3%)であった。
主要評価項目PFS: PFS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群で11.5ヶ月 (95% CI, 8.9-16.7)、ニボルマブ単剤群で6.9ヶ月 (95% CI, 4.3-9.5)、イピリムマブ単剤群で2.9ヶ月 (95% CI, 2.8-3.4) であった (Figure 1A)。イピリムマブ単剤群と比較して、ニボルマブ+イピリムマブ併用群では有意に長いPFSが認められ (HR 0.42; 99.5% CI, 0.31-0.57; p<0.001)、ニボルマブ単剤群でも有意に長いPFSが認められた (HR 0.57; 99.5% CI, 0.43-0.76; p<0.001)。ニボルマブ+イピリムマブ併用群とニボルマブ単剤群の比較におけるハザード比は0.74 (95% CI, 0.60-0.92) であった。
客観的奏効率 (ORR): 治験責任医師評価によるORRは、ニボルマブ単剤群で43.7% (95% CI, 38.1-49.3)、ニボルマブ+イピリムマブ併用群で57.6% (95% CI, 52.0-63.2)、イピリムマブ単剤群で19.0% (95% CI, 14.9-23.8) であった (Table 2)。完全奏効 (CR) の割合は、併用群で11.5%、ニボルマブ単剤群で8.9%、イピリムマブ単剤群で2.2%と、併用群で最も高かった。客観的奏効までの期間中央値は3群間で類似しており、奏効期間中央値はいずれの群でも到達しなかった。腫瘍量の変化は、ニボルマブ単剤群で中央値-34.5%、併用群で中央値-51.9%、イピリムマブ単剤群で中央値5.9%であった (Figure 2)。
PD-L1発現状況別のサブグループ解析: 事前規定されたサブグループ解析では、PD-L1陽性(≥5%)腫瘍患者において、PFS中央値はニボルマブ単剤群で14.0ヶ月 (95% CI, 9.1-未到達)、ニボルマブ+イピリムマブ併用群で14.0ヶ月 (95% CI, 9.7-未到達) とほぼ同等であり、イピリムマブ単剤群では3.9ヶ月 (95% CI, 2.8-4.2) であった (Figure 1B)。一方、PD-L1陰性腫瘍患者では、PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ併用群で11.2ヶ月 (95% CI, 8.0-未到達)、ニボルマブ単剤群で5.3ヶ月 (95% CI, 2.8-7.1)、イピリムマブ単剤群で2.8ヶ月 (95% CI, 2.8-3.1) であり、PD-L1陰性患者において併用療法がニボルマブ単剤療法よりもPFSを延長する優位性が顕著であった (Figure 1C)。PD-L1陽性腫瘍患者におけるORRは、ニボルマブ単剤群で57.5%、併用群で72.1%、イピリムマブ単剤群で21.3%であった。PD-L1陰性腫瘍患者におけるORRは、ニボルマブ単剤群で41.3%、併用群で54.8%、イピリムマブ単剤群で17.8%であった。
BRAF変異状況別のサブグループ解析: BRAF変異陽性患者およびBRAF野生型患者のいずれのサブグループにおいても、ニボルマブ単剤療法またはニボルマブ+イピリムマブ併用療法がイピリムマブ単剤療法と比較してPFSを延長することが示された。ニボルマブ+イピリムマブ併用群では、BRAF変異陽性患者のPFS中央値は11.7ヶ月 (95% CI, 8.0-未到達) であり、BRAF野生型患者のPFS中央値は11.2ヶ月 (95% CI, 8.3-未到達) であった。
安全性プロファイル: 治療関連有害事象(あらゆるグレード)の発生率は、ニボルマブ単剤群で82.1%、ニボルマブ+イピリムマブ併用群で95.5%、イピリムマブ単剤群で86.2%であった (Table 3)。グレード3または4の治療関連有害事象の発生率は、併用群で55.0%と最も高く、ニボルマブ単剤群で16.3%、イピリムマブ単剤群で27.3%であった。併用群で最も頻繁に報告された有害事象は、下痢(44.1%)、疲労(35.1%)、そう痒症(33.2%)であった。グレード3または4の主な免疫関連有害事象 (irAE) は、下痢(併用群9.3% vs ニボルマブ群2.2% vs イピリムマブ群6.1%)、大腸炎(併用群7.7% vs ニボルマブ群0.6% vs イピリムマブ群8.7%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) 上昇(併用群8.3% vs ニボルマブ群1.3% vs イピリムマブ群1.6%)であった。治験薬の中止に至った治療関連有害事象は、併用群で36.4%、ニボルマブ単剤群で7.7%、イピリムマブ単剤群で14.8%であった。致死的な有害事象は、ニボルマブ単剤群で1例(好中球減少症)、イピリムマブ単剤群で1例(心停止)報告されたが、併用群では報告されなかった。irAEの多くは、確立された治療ガイドライン(ステロイド、TNF-α阻害薬など)に従った管理により改善し、グレード3または4のirAEの解決率は、ほとんどの臓器カテゴリーで85〜100%であった。
考察/結論
本CheckMate 067試験は、未治療の進行メラノーマ患者において、ニボルマブ単剤療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法が、イピリムマブ単剤療法と比較して有意に長いPFSと高いORRをもたらすことを明確に示した画期的な研究である。特に、併用療法はPFS中央値11.5ヶ月 (95% CI, 8.9-16.7) と、イピリムマブ単剤群の2.9ヶ月 (95% CI, 2.8-3.4) と比較して顕著な延長を示し (HR 0.42; 99.5% CI, 0.31-0.57; p<0.001)、ORRも57.6%とイピリムマブ単剤群の19.0%を大きく上回った。これらの結果は、ニボルマブ単剤療法もイピリムマブ単剤療法より優れていることを示しており、未治療進行メラノーマの治療パラダイムを大きく変えるものである。
先行研究との違い: 本研究のPFS結果は、先行する第II相試験であるCheckMate 069 Postow et al. NEnglJMed 2015 の結果を再現し、さらに大規模な第III相試験としてその優位性を確立した。特に、PD-L1陰性腫瘍患者において、併用療法がニボルマブ単剤療法よりもPFSを延長した点 (11.2ヶ月 vs 5.3ヶ月) は、PD-L1発現が低い患者における併用療法の追加的価値を明確に示しており、これまでのPD-L1陽性患者でのPD-1単剤療法の優位性という知見とは対照的である。この知見は、PD-L1発現が低い腫瘍タイプにおいても、CTLA-4とPD-1の二重阻害が有効である可能性を示唆する。
新規性: 本研究で初めて、未治療進行メラノーマ患者におけるニボルマブ単剤、イピリムマブ単剤、およびニボルマブ+イピリムマブ併用療法の3群比較を大規模に実施し、併用療法のPFSにおける優位性を統計学的に証明した。特に、PD-L1陰性腫瘍患者における併用療法の追加的利益は、これまで十分に報告されていない新規の知見である。この結果は、PD-L1をバイオマーカーとして治療選択を行う際の重要な考慮事項となる。
臨床応用: 本研究の結果は、未治療進行メラノーマにおけるニボルマブとイピリムマブの併用療法が新たな標準治療となる強力なエビデンスを提供する。併用療法は、BRAF変異の有無やPD-L1発現状況にかかわらず、イピリムマブ単剤療法よりも優れた効果を示した。特に、PD-L1陰性患者においても併用療法がニボルマブ単剤療法を上回る効果を示したことは、より幅広い患者層で併用療法が考慮されるべきであることを臨床現場に示唆する。本研究の結果に基づき、FDAは2015年10月にニボルマブとイピリムマブの併用療法をメラノーマの一次治療として承認し、免疫チェックポイント阻害薬併用療法の基盤的エビデンスとなった。
残された課題: グレード3または4の治療関連有害事象が併用群で55.0%と高頻度であったことは、その毒性プロファイルが許容限界に近いことを示唆しており、今後の検討課題である。有害事象の管理は確立されたガイドラインにより可能であったが、より安全性の高いレジメン(例:低用量イピリムマブの併用)の開発や、バイオマーカー(PD-L1、LDH、腫瘍変異負荷 (TMB)、腸内細菌叢など)を用いた患者選択の最適化が今後の研究で必要とされる。また、本報告ではPFSの結果のみが示されており、OSデータが未成熟であるため、長期的な生存利益については今後のフォローアップが待たれる。長期生存者の免疫記憶維持メカニズムの解明も重要な課題である。
方法
試験デザイン: 本研究は、多施設共同、無作為化、二重盲検、第III相試験 (CheckMate 067、NCT01844505) として実施された。
対象患者: 組織学的に確認された切除不能なIII期またはIV期メラノーマ患者で、全身療法による前治療歴がない者を対象とした。その他の主要な適格基準は、18歳以上、ECOGパフォーマンスステータス0または1、RECIST v1.1に基づき評価可能な病変を有すること、PD-L1発現状態評価のための腫瘍組織検体(アーカイブまたは最近生検されたもの)の利用可能性、およびBRAF V600変異状態が既知であることであった。主な除外基準は、ECOGパフォーマンスステータスが2以上、活動性の脳転移、眼球メラノーマ、または自己免疫疾患の存在であった。
ランダム化と治療: 合計945例の患者が1:1:1の比率で以下の3群のいずれかに無作為に割り付けられた。
- ニボルマブ単剤群: ニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに投与(イピリムマブに合わせたプラセボを併用)。(n=316)
- ニボルマブ+イピリムマブ併用群: ニボルマブ1 mg/kgとイピリムマブ3 mg/kgを3週間ごとに4回投与後、ニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに維持投与。(n=314)
- イピリムマブ単剤群: イピリムマブ3 mg/kgを3週間ごとに4回投与(ニボルマブに合わせたプラセボを併用)。(n=315) ニボルマブおよびイピリムマブは静脈内投与された。ランダム化は、腫瘍のPD-L1発現状態(陽性 vs 陰性または判定不能)、BRAF変異状態(V600変異陽性 vs 野生型)、およびAmerican Joint Committee on Cancer (AJCC) 転移ステージ(M0、M1a、M1b vs M1c)に基づいて層別化された。治療は、疾患進行(RECIST v1.1による)、許容できない毒性事象の発生、または同意撤回まで継続された。
評価項目:
- 主要評価項目: 独立中央判定によるPFSおよびOS。本報告ではPFSの結果が提示された。
- 副次評価項目: 客観的奏効率 (ORR)、PD-L1発現を予測バイオマーカーとした有効性評価、および安全性。
評価方法:
- 腫瘍評価: RECIST v1.1に基づき、無作為化後12週、その後49週まで6週間ごと、以降は疾患進行または治療中止まで12週間ごとに評価された Eisenhauer et al. EurJCancer 2009。PFSは、無作為化日から疾患進行または死亡のいずれか早い方までの期間と定義された。
- PD-L1発現: ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍検体を用いて、免疫組織化学的検査により中央検査室で評価された。PD-L1陽性は、評価可能な腫瘍細胞が100個以上含まれる切片において、腫瘍細胞表面のPD-L1染色が5%以上である場合と定義された。
- 安全性評価: 治験薬を少なくとも1回投与された全ての患者が安全性評価の対象とされた。有害事象の重症度は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v4.0に従って評価された。有害事象の管理に関するガイドラインはスポンサーから提供され、先行研究で公表されている。
統計解析: 約915例の患者を対象とした。PFSの比較では、追跡期間が少なくとも9ヶ月で観察されると予測されるイベント数により、全ての比較において平均ハザード比 (HR) 0.71を検出するために約83%の検出力と両側0.005のタイプIエラー率が確保されると推定された。PFSは、ニボルマブ群またはニボルマブ+イピリムマブ群とイピリムマブ群の間で、層別化ログランク検定を用いて比較された。ニボルマブ群とニボルマブ+イピリムマブ群間の正式な統計的比較は、本試験のプロトコルには含まれていなかった。ハザード比と99.5%信頼区間 (CI) は、Cox比例ハザードモデルを用いて推定された。PFS曲線、中央値と95% CI、および6、12、18ヶ月のPFS率はカプラン・マイヤー法を用いて推定された。