- 著者: Alice Tison, Soizic Garaud, Laurent Chiche, Divi Cornec, Marie Kostine
- Corresponding author: Marie Kostine (Department of Rheumatology, Bordeaux University Hospital, Bordeaux, France)
- 雑誌: Nature Reviews Rheumatology
- 発行年: 2022
- Epub日: 2022-09-01
- Article種別: Review
- PMID: 36198831
背景
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI; immune-checkpoint inhibitor) は、CTLA-4 (cytotoxic T lymphocyte-associated protein 4)、PD-1 (programmed cell death protein 1)、PD-L1 (programmed cell death 1 ligand 1)、LAG-3 (lymphocyte activation gene 3 protein) などの免疫チェックポイント経路を遮断することで抗腫瘍免疫応答を増強し、転移性メラノーマ、非小細胞肺癌 (NSCLC; non-small cell lung cancer)、腎細胞癌、肝細胞癌など多くの進行悪性腫瘍の治療を劇的に変革した。転移性メラノーマにおける6.5年生存率はイピリムマブ単剤で25%、ニボルマブ単剤で43%、両剤併用で57%にまで改善しており (Hodi et al. NEnglJMed 2010)、ICIが一部の患者で長期生存をもたらすことが確立されている。2022年3月にはLAG-3を標的とするレラチリマブがニボルマブとの併用でFDAに承認され、ICI適応はさらに拡大している (Table 1)。
自己免疫と悪性腫瘍は密接な双方向の関連を持つ。慢性炎症はがんリスクを増加させることが知られており、Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study (CANTOS) 試験では10,000例超を対象にIL-1β阻害薬カナキヌマブが肺癌発生を低下させることが示された。関節リウマチ (RA; rheumatoid arthritis)、全身性エリテマトーデス (SLE; systemic lupus erythematosus)、原発性シェーグレン症候群では一般集団よりリンパ腫リスクが高く、疾患活動性と相関することも報告されている。免疫抑制薬のがんリスクへの影響も重要であり、JAK (Janus kinase) 阻害薬トファシチニブはORAL Surveillance試験で50歳以上の心血管リスクを持つRA患者においてTNF阻害薬比較で固形腫瘍リスクの増加傾向が示された (HR 1.48、95% CI 1.04-2.09、追跡期間中央値4年) (Ytterberg et al. NEnglJMed 2022)。逆に、がん自体が自己免疫を誘発することもあり、傍腫瘍症候群 (paraneoplastic syndrome) や腫瘍関連抗原 (tumor-associated antigen; TAA) に対する自己抗体産生が報告されている。
このような密接な相互関連を背景に、ICI投与はirAE (immune-related adverse event; 免疫関連有害事象) を引き起こすリスクがあり、既存自己免疫疾患を有するがん患者では疾患フレアとirAEの二重リスクにさらされる。ICIが多くの進行がんに対して有効性を示す中、AID (autoimmune disease; 自己免疫疾患) 患者はほぼ全ての臨床試験から系統的に除外されてきた。その結果、この「ハイリスク」集団におけるICI投与の安全性・有効性に関するエビデンスが手薄であり、特にAIDフレアとde novo irAEの発症予測、ICI開始時のベースライン免疫抑制薬の最適な管理、生物学的疾患修飾抗リウマチ薬 (bDMARD; biologic disease-modifying antirheumatic drug) との組み合わせ戦略については knowledge gap が存在していた。既存のガイドラインもこの集団に対する具体的推奨が不十分であり、最新のリアルワールドエビデンスを統合した実践的指針の整備が強く求められていた。
目的
本レビューの目的は、既存AIDを有するがん患者におけるICI使用に関するエビデンスを体系的に統合し、以下の主要課題に対する実践的指針を提示することである。第一に22件の研究の統合解析を通じてAIDフレアおよびirAEの発症率・重症度・管理の現状を明らかにすること、第二にAID種類別のフレアリスクをTable 3として整理し高リスク疾患を特定すること、第三にICI開始時のベースライン免疫抑制薬の管理がICI有効性・毒性に与える影響を評価すること、第四にTNF/IL-6阻害薬の「デカップリング効果」という新規パラダイムの可能性を検討すること、そして現行の主要国際ガイドライン (SITC、NCCN、ASCO、EULAR) を比較して多職種連携による個別化戦略の重要性を強調することである。
結果
ICI安全性の全体像: 22研究の統合解析: Table 2に統合された22件の研究 (n=8から415) の大部分は後ろ向きコホート研究であり、4件が前向き研究 (うち1件はphase 3b単腕試験) であった。AIDフレアの発症率は6%から83%と広範な幅を示した。De novo irAEの発症率も16%から90%と多様であった。重症度については、Grade 3-4の重症irAEが35%未満であったのは13研究中11研究であり、毒性の大部分が軽症〜中等症に留まることが示された。ICI永久中止率は5%から100%と幅があったが、報告のある18研究中13研究では25%未満であった。
REISAMIC試験 (Danlos et al. 2018) は前向き研究であり、n=45例のAID患者とn=352例の非AID対照患者を比較した。AID患者のirAEリスクが44%であったのに対し非AID患者では29%であり、irAEフリー生存期間の中央値はそれぞれ5.4ヶ月 vs 13ヶ月と差があった。一方、オランダメラノーマコホート研究 (van der Kooij et al. 2021、n=415) では、抗CTLA-4、抗PD-1、または両者の併用治療のいずれにおいてもAIDの有無でirAE発症率に有意差は認められなかった。ただし、別の前向き研究では標準治療として投与された場合にのみAID患者でirAEリスクが高く、臨床試験として投与された場合にはリスク差が認められなかったとする選択バイアスの指摘もある。
組み合わせ療法 (ニボルマブ+イピリムマブ) では、Grade 3以上のirAE発症率が44% (組み合わせ) vs 30% (抗CTLA-4単剤) vs 17% (抗PD-1単剤) と、組み合わせ療法の毒性が顕著に高いことが示された (van der Kooij et al. 2021)。系統的レビュー (Wu et al. 2021) では52の研究からn=512例を統合し、フレアが44%、de novo irAEが24%で発生し、DMARD新規導入が6%、永久的ICI中止が18%であったことを報告した。抗PD-1/PD-L1治療ではフレア率42%・de novo irAE率26%、抗CTLA-4治療ではそれぞれ32%・42%と、治療薬種別で毒性パターンが異なることが示された。
AID種類別フレアリスク: 既存リウマチ性疾患におけるICI投与後のフレアリスクはAID種別により大きく異なることが示された (Table 3)。最もフレアリスクが高いのは乾癬性関節炎 (PsA; psoriatic arthritis) で50-79%であり、次いで多発性筋痛リウマチ (PMR; polymyalgia rheumatica) が57-64%、RAが55-56%であった。中等度リスク群としては、シェーグレン症候群が25-43%、筋炎が33-50%、SLEが27-31%、血管炎が17-46%であった。低リスク群には強直性脊椎炎/脊椎関節炎の23-31%、全身性強皮症 (SSc; systemic sclerosis) の11-25%、サルコイドーシスの19-20%が含まれた。
炎症性腸疾患 (IBD; inflammatory bowel disease) については、オランダコホートでICI誘発性大腸炎がIBD患者で19%に対し他のAID患者では3%と報告された。ある研究ではIBDフレア率が50%と高率であったが、これはコホート内のIBD患者比率が高いためのバイアスが関与しており、単純な比較が困難である (Table 2)。
ICI開始時のAID活動性とフレアリスクの関係については相反する結果があり、いくつかの後ろ向き研究では活動性AID患者でフレア率が高い傾向があった一方、最近のメタアナリシスではベースライン活動性状態によるフレアリスクの差は認められず (フレアリスク45%)、ICIの治療シーケンス (初回治療か否か) もフレアリスクに影響しないことが示された。無症状患者における自己抗体スクリーニングのirAE予測価値については混合した結果があり、EULARガイドラインでは特定症状のない場合の系統的自己抗体スクリーニングは推奨されていない。ただし胸腺腫患者については、avelumabのphase 1試験の結果に基づき、ICI誘発性筋炎の高リスクを特定するために抗AChR (抗アセチルコリン受容体) 抗体および抗横紋筋抗体のスクリーニングが推奨されている。
ベースライン免疫抑制薬とICI有効性の関係: AID合併がん患者におけるICI開始時の免疫抑制薬管理はICI有効性に重大な影響を与える可能性が複数の研究で示された。Tison et al. (2019) の後ろ向き多施設コホート研究 (n=112) では、ICI開始時に免疫抑制薬を服用していた患者のPFS中央値が3.8ヶ月であったのに対し非服用患者では12ヶ月と有意差を示した (p=0.006)。奏効率においても、進行メラノーマにおけるイピリムマブ治療を評価したMenzies et al. (2017) では、免疫抑制薬服用患者でORRが15%であったのに対し非服用患者では44%と有意に低く (p=0.033)、免疫抑制薬が交絡後も独立した予後因子であることを示した。組み合わせICI治療を受けたAID患者を対象とした研究 (Brown et al. 2021、n=55) では、ベースライン免疫抑制薬服用群でOS中央値が11ヶ月であったのに対し非服用群では31ヶ月であった (p=0.005)。
プレドニゾン換算10 mg/日以上の高用量グルココルチコイドのICI開始時の使用は抗腫瘍効果に悪影響を与えることが複数の研究で示されており、臨床的に可能な限りグルココルチコイドを10 mg/日未満に減量することが推奨される。ただし、高用量グルココルチコイド投与を受けた患者がより予後不良ながんを有する傾向があり、交絡の影響を完全に除外できないという制限がある。csDMARD (conventional synthetic DMARD; 従来型合成DMARD) であるメトトレキサートはT細胞応答を変化させる可能性があり、継続の是非については依然として議論が続いている。後ろ向きカナダ研究 (Hoa et al. 2021、n=27) ではRA患者8例中4例でフレアが認められ、3例ではメトトレキサート継続・再開にもかかわらずフレアが生じた。これはcsDMARDの増量がフレアを十分に予防できないことを示唆する。
ICI開始時の系統的レビュー (Abdel-Wahab 2018) では27%の患者が免疫抑制薬を受けており、うちグルココルチコイド (<10 mg/日) が21%、csDMARDが14%、bDMARDが1%であった。免疫抑制薬を受けていた患者でirAEが少ない傾向があったが (67% vs 74%)、フォローアップ期間の差が影響した可能性がある。
TNF/IL-6阻害薬によるデカップリングパラダイム: bDMARDがICIの抗腫瘍効果を維持しつつirAEを抑制する「デカップリング効果」という新規パラダイムが浮上しており (Fig. 2)、AID合併がん患者においてこの概念の応用が特に注目されている。TNF阻害薬については、前臨床マウスモデルの研究でインフリキシマブが免疫関連大腸炎を予防しつつ腫瘍内CD8+ 腫瘍浸潤リンパ球 (TIL; tumor-infiltrating lymphocyte) を増加させ、抗腫瘍効果を増強する可能性が示された (Bertrand et al. 2017、Perez-Ruiz et al. 2019)。この前臨床データを踏まえて実施されたTIMICEL phase 1b試験 (Montfort et al. 2021) では、転移性メラノーマ患者を対象にインフリキシマブまたはセルトリズマブと二重ICI (抗CTLA-4+抗PD-1) の組み合わせが評価された。両コホートとも安全性が確認され、セルトリズマブコホートでは有害事象数が多いものの全例が奏効した。
ただし、TNF阻害薬の長期使用は初期CD8+ T細胞分化阻害を介して抗腫瘍細胞傷害性T細胞プールを枯渇させる可能性があることも指摘されており、継続期間については慎重な判断が必要である。後ろ向きデータ (Verheijden et al. 2020、オランダメラノーマ治療レジストリ) では重篤なICI毒性を経験した患者のうちTNF阻害薬+グルココルチコイド群でグルココルチコイド単独群より生存が短い傾向があったが、グルココルチコイド投与量の記録がなく鉛時間バイアスも存在するため解釈には注意が必要である。
IL-6に関しては、2021年の系統的レビューでトシリズマブ (tocilizumab; 抗IL-6受容体抗体) が様々なirAEを有するn=91例の患者で85%に有効であり、腫瘍増悪が認められなかった (Campochiaro et al. 2021)。2022年に報告されたHailemichael et al.のデータでは、IL-6遮断がICI応答と毒性をデカップリングする効果が示され、免疫関連腸炎組織ではIL-12・TH1 (type 1 T helper) 遺伝子シグネチャーに対してIL-6発現およびTH17 (type 17 T helper) 遺伝子シグネチャーが上昇しているのに対し、奏効患者の腫瘍組織ではIL-12・TH1シグネチャーが上昇していた。マウスモデルでは抗CTLA-4+IL-6遮断の組み合わせが単剤比較で生存延長・腫瘍縮小をもたらし、自己免疫性脳脊髄炎を増悪させなかった。進行中のNCT03999749 phase 2試験では、イピリムマブ+ニボルマブ+トシリズマブの三者併用療法においてn=29例で追跡期間中央値8.2ヶ月時点のORRが58%と報告されており、Checkmate 511試験 (イピリムマブ+ニボルマブ単独) のORRより高い数値が示されている。
irAE病態生理と自己抗体・多職種管理体制: irAEの病態生理は複数のメカニズムが関与しており (Fig. 2)、AID患者においては特に未解明な点が多い。自己反応性T細胞の活性化として、ICI治療によりCD4+およびCD8+ T細胞を含むT細胞レパートリーが拡大し、TCRシーケンシングによりがんとirAEが影響する臓器間の共有抗原に対する交差反応が示唆されている。免疫関連大腸炎では組織常在性CD8+ T細胞が早期動員されることが確認された (Luoma et al. 2020)。免疫関連関節炎の滑液分析では、CD38hi CD127- PD-1+ CD8+ T細胞という独自の細胞集団とTreg (regulatory T cell; 制御性T細胞) の亢進が同定されたが、これはRA滑液とは異なる病態を示す。B細胞機能の変化も重要であり、制御性B細胞 (Breg; regulatory B cell) のIL-10産生機能の低下がirAEリスクと関連することが報告されている。
遺伝的要因も関与し、ICI誘発性関節炎においてHLA-DRB1*04:05アレルとの関連が示されており、PRDM1やCD274の変異もirAE発生と関連する。腸内マイクロバイオームについても、CTLA-4遮断後の大腸炎リスクがBacteroidetes門の前投与量と関連する一方、B. intestinalisの過剰代表が重篤なirAEリスクと関連することが複数の前向き研究で報告されている。多職種管理体制としては、腫瘍内科医、リウマチ専門医、各臓器専門医が参加する多職種ボードが各国で設立されており、AID患者へのICI適応判断の約10%がボードに諮問され、88-100%がICI開始に適切と判断されている。現行のパラネオプラスティック症候群を合併する患者では (16例の研究で8例がフレア)、特に神経症候群合併例で予後不良が報告されており、個別慎重判断が求められる。
考察/結論
本レビューは、既存AIDを有するがん患者へのICI治療に関するエビデンスを22件の研究から体系的に統合し、安全性プロファイルの全体像、AID種類別フレアリスク、ベースライン免疫抑制薬管理の影響、そしてTNF/IL-6阻害薬によるデカップリング効果という新規パラダイムを提示した点で、これまでの研究と異なる重要な貢献をしている。
先行のBoland et al. (2020) らの系統的レビューと比較すると異なる点がいくつかある。従来の後ろ向き研究の多くはAID合併患者での奏効率が一般集団と同等かそれ以上の可能性を示唆していたが、本レビューはコントロール群を有する前向き研究を重視しており、既報の系統的レビューより最新の2020-2022年のデータを統合している。これにより、AID患者と非AID患者で概ね同等のがん転帰を示す研究が多いという重要な知見が強調されている。また、選択バイアス (活動性AIDや高用量免疫抑制薬を要する患者がICIの対象になりにくい) が従来研究で過小評価されがちであったという点についても、本レビューが明確に指摘している点で対照的である。
新規性: 本研究で新規に提示された最大の概念は、TNFまたはIL-6阻害薬がICIの抗腫瘍効果を維持しつつirAEを抑制する「デカップリング効果」パラダイムである。これはこれまで報告されていない革新的な視点であり、従来の免疫抑制薬使用がICI有効性を低下させる懸念 (PFS: 3.8 vs 12ヶ月、p=0.006) に対し、選択的bDMARDによる組み合わせ戦略が欠点を克服できる可能性を示す。TIMICEL phase 1bおよびNCT03999749のような前向き試験がこの概念を支持しつつある。さらに、AID種類別フレアリスクをTable 3として包括的に整理した点も新規の貢献であり、個別化リスクコミュニケーションに活用できる実践的なフレームワークを提供している。
臨床応用: 本知見の臨床的意義は多岐にわたり、臨床現場における直接的な意思決定支援となる。第一に、PsA (50-79%)、PMR (57-64%)、RA (55-56%) を「フレア高リスク群」として同定し、ICIを開始する前に患者・医療者間で共有意思決定を行う根拠を提供した。第二に、ICI開始時のベースライングルココルチコイドは10 mg/日未満を目標とし、非選択的免疫抑制薬から選択的bDMARD (IL-6受容体阻害薬、TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12-23阻害薬、インテグリンα4β7阻害薬など) への切り替えを考慮するという実践的アルゴリズムが提示された。第三に、bench-to-bedside の橋渡しとして、トシリズマブやインフリキシマブが重篤なirAEに対して有効であるという臨床的エビデンスが蓄積しており、ステロイド依存性・難治性irAEへの早期使用を支持する根拠となる。多職種ボードへの照会によりこれまで禁忌とみなされていた重篤AID患者においても個別化された治療判断が可能になりつつある。
残された課題: 今後の検討課題として以下が挙げられる。第一に、AID種類・活動性別に層別化した大規模前向きランダム化比較試験 (RCT) がほぼ存在しておらず、現在の後ろ向き研究からは選択バイアスや報告バイアスを完全に排除できないというlimitationがある。現在進行中の試験 (NCT04375228: グルココルチコイド依存性irAEへのリツキシマブ+トシリズマブ評価) の結果が管理戦略を変える可能性がある。第二に、ICI開始時のcsDMARD継続・中止の最適な判断基準、および非選択的免疫抑制薬から選択的bDMARDへの切り替えの有効性に関するエビデンスが未だ不足している。第三に、AIDフレアとde novo irAEの免疫病態の違いを解明するためのバイオマーカー研究が future research として急務であり、ICIが既存の消耗した自己反応性T細胞を動員するのか (フレアメカニズム)、腫瘍と標的臓器間の共有抗原によるクロスリアクションなのか (irAEメカニズム) は未解明である。最後に、デカップリング効果は有望な概念であるが、現時点では少数例のデータに基づく概念的提案に留まり、大規模phase 3試験での検証が不可欠である。更なる検討として、補助療法セッティングでのAID患者へのICI使用においては転移がんとは異なるリスク-ベネフィット評価が必要であり、個別の疾患特性とがん予後を統合した意思決定体制の確立が求められる。
方法
本研究はナラティブレビューとして実施された。PubMed、Embase、Cochrane Libraryなど主要な医学データベースを用い、既存AIDを有するがん患者へのICI使用を検討した原著論文を系統的に検索した。検索期間はICIが臨床導入された2011年から本レビュー公開時点の2022年とし、後ろ向きコホート研究、前向き研究、レジストリ研究、および症例報告を参照した。最終的に実質的なデータを有する22件の研究がTable 2に統合された。各研究からAIDフレア発症率、irAE発症率、重症度 (Common Terminology Criteria for Adverse Events基準によるGrade分類)、管理内容 (グルココルチコイド、csDMARD、bDMARDの使用状況)、ICI中止率、および抗腫瘍効果 (奏効率 ORR; overall response rate、無増悪生存期間 PFS; progression-free survival、全生存期間 OS; overall survival) に関するデータを抽出した。
AID種類別フレアリスクについては、EULAR (European League Against Rheumatism) の「リウマチ性irAEの診断・管理に関するpoints to consider」(Kostine et al. AnnRheumDis 2021) および2件の文献レビューに基づき、Table 3として整理した。ベースライン免疫抑制薬の影響については、各研究で報告されたPFS・ORR・OSの比較データを参照し、HR (hazard ratio) および95% CI (confidence interval)、p値などの統計指標に基づき評価した。TNF/IL-6阻害薬に関しては、前臨床マウスモデルの知見、後ろ向きレジストリデータ、TIMICEL phase 1b試験 (NCT番号非記載、Montfort et al. 2021) および進行中のNCT03999749 phase 2試験の結果を統合した。最後にSITC、NCCN、ASCO、EULARの国際ガイドラインを比較検討し、多職種連携ボードにおけるAID患者のICI適応判断の現状を整理した。