Th17 細胞

一行要約

Th17 は RORgammat を master regulator として IL-17A / IL-17F / IL-22 を産生する CD4-T-helper-cell サブセットであり、好中球リクルートを強力に駆動する一方、腫瘍免疫においては pro-tumor と anti-tumor の二面的役割を文脈依存的に示す。

表現型と分類

転写因子と分化条件

Th17 分化は RORgammat (ヒトでは RORC) を master transcription factor として駆動される。Naive CD4 T 細胞からの Th17 分化には TGF-beta + IL-6 (マウス) または IL-1-beta + IL-23 (ヒト) の組み合わせが必要であり、IL-6-STAT3 シグナルが RORgammat の発現を誘導する。IL-23 は Th17 の安定化と病原性 Th17 への分化に不可欠であり、IL-23R の発現は Th17 分化の正のフィードバックループを形成する。

Th1-cell の master regulator である T-bet (TBX21) と Th17 の RORgammat は相互に拮抗し、IFN-gamma は RORgammat の発現と Th17 分化を抑制する。この拮抗関係は TME 内の Th1/Th17 バランスを決定する重要な因子である。

Th17 の可塑性

Th17 は CD4-T-helper-cell サブセットの中で特に高い可塑性を示す。TME 内で Th17 は以下の転換を起こしうる:

  • Th17 → Th1 (ex-Th17) : IFN-gamma 産生能を獲得した pathogenic Th17。自己免疫と抗腫瘍の両面で重要
  • Th17 → Treg: TGF-beta 高濃度環境で Treg への転換が起こりうる。FOXP3 と RORgammat の co-expression が過渡的状態を反映
  • Th17 → Tfh-like: CXCR5 を発現し B 細胞ヘルプ能を獲得

この可塑性は Th17 の腫瘍免疫における二面的役割の分子的基盤の一つである。

病原性 vs 非病原性 Th17

マウスモデルの研究から、Th17 は非病原性 (TGF-beta + IL-6 で分化) と病原性 (IL-23 + IL-1beta で安定化) に分類される。病原性 Th17 は GM-CSF を高産生し、強力な炎症誘導能を持つ。腫瘍免疫における Th17 の機能はこの病原性の程度に依存する可能性があり、GM-CSF 産生 Th17 は好中球・マクロファージの活性化を通じて抗腫瘍免疫に寄与しうる。

がん微小環境での機能

好中球リクルートの駆動

Th17 の TME における最も重要な機能の一つは、IL-17A / IL-17F 産生を介した好中球リクルートの促進である。IL-17A は腫瘍細胞・線維芽細胞・内皮細胞上の IL-17RA/RC 受容体を活性化し、CXCL1IL-8 (CXCL8)、G-CSFGM-CSF の産生を誘導する。これらのケモカイン / 成長因子は Neutrophil-TAN の骨髄からの動員・TME 内への浸潤を強力に促進する。

NSCLC の STK11 (LKB1) 変異腫瘍では Th17 / IL-17 軸の活性化が顕著であり、好中球浸潤の増加と PD-1-inhibitor 耐性の一因と考えられている。STK11 欠損は CXCL8 / IL-17 シグナルを増強し、pro-tumor な Neutrophil-TAN の蓄積を促進する。

Pro-tumor 機能

Th17 / IL-17 軸は複数の pro-tumor メカニズムに関与する:

  • 血管新生促進: IL-17A は VEGF 産生を誘導し、腫瘍内血管新生 を促進する
  • 免疫抑制性好中球の動員: IL-17A は MDSC や N2 型 Neutrophil-TAN の蓄積を促進
  • 腫瘍細胞の増殖・生存: IL-17A は NF-kB-pathway を活性化し、腫瘍細胞の生存シグナルを増強
  • 炎症性微小環境の形成: 慢性炎症は 腫瘍進化 と免疫回避を促進
  • EMT 誘導: IL-17A は EMT を促進し、転移能を増強する報告がある

Anti-tumor 機能

一方で Th17 の anti-tumor 機能も報告されている:

  • CTL リクルート: IL-17A は内皮細胞の CXCL9/10 産生を誘導し、CD8-T-cell の腫瘍内浸潤を促進しうる
  • ex-Th17 エフェクター機能: Th1 に転換した ex-Th17 は IFN-gamma 産生と直接的な抗腫瘍活性を持つ
  • TLS 形成への寄与: Th17 が産生する lymphotoxin は Tertiary-lymphoid-structure の形成を促進しうる
  • 好中球の抗腫瘍極性化: 特定の条件下では IL-17A により動員された好中球が N1 型に分極

がん種別・文脈依存的な役割

Th17 の pro/anti-tumor バランスはがん種と腫瘍の遺伝子背景に大きく依存する。大腸癌では IL-17A が pro-tumor であるとのエビデンスが強く、一方で卵巣癌の一部では Th17 浸潤が良好な予後と相関する。NSCLC では STK11 / KEAP1 変異による文脈で pro-tumor 側に傾く傾向がある。

治療標的としての位置づけ

IL-17 経路の治療的操作

IL-17 / Th17 軸を標的とした治療戦略は、その二面的役割のため慎重なアプローチが必要である:

  • 抗 IL-17A 抗体 (secukinumab 等) : 乾癬等の自己免疫疾患で承認済みだが、がん免疫における IL-17 阻害の影響は不確定
  • 抗 IL-23 抗体: Th17 の病原性成熟を選択的に阻害。免疫関連有害事象 (irAE-pathophysiology) のリスクとの関連が検討中
  • RORgammat 阻害剤 / agonist: Th17 分化の直接的制御。agonist は ILC3 の活性化も伴う

ICI との関連

Th17 と PD-1-inhibitor の関係は複雑である。PD-1 blockade は Th17 応答を増強しうるが、それが治療効果に寄与するか副作用 (irAE) を増加させるかは文脈依存的である。ICI 関連大腸炎の一部は Th17 応答の過剰活性化に起因し、IL-17A 阻害が治療戦略として検討されている。

好中球経路との治療的交差

Th17 を介した好中球リクルートの遮断は、好中球依存的な腫瘍促進を軽減する戦略として注目される。CXCR2 阻害薬と ICI の併用は前臨床モデルで有望な結果を示しており、Th17-好中球軸の下流遮断を介した治療効果と考えられる。

Open Questions

  • 腫瘍内 Th17 の pro-tumor vs anti-tumor 極性を決定する分子的因子の同定
  • ex-Th17 の抗腫瘍エフェクター機能の治療的利用法
  • STK11 変異 NSCLC における Th17-好中球軸の治療的遮断の臨床的有用性
  • ICI 関連 irAE における Th17 の寄与度と予測バイオマーカー
  • 病原性 vs 非病原性 Th17 の TME 内での in vivo 識別法
  • Th17 → Treg 転換が腫瘍免疫回避に与える影響の定量的評価

関連エンティティ・概念