SOS1 (Son of sevenless homolog 1)

一行要約

SOS1 は RAS の主要 guanine nucleotide exchange factor (GEF) で、受容体型チロシンキナーゼ下流の GRB2 を介してリクルートされ、RAS の GDP→GTP 交換を触媒して MAPK 経路を活性化する。KRAS の上流レギュレーターとして、KRAS G12C 等変異癌における RAS 再活性化 / バイパス耐性を断つ標的として注目され、SOS1 阻害剤が KRAS 阻害剤との併用で wild-type および変異 RAS の再充填を抑える戦略の中核を担う。

主要エビデンス

メカニズム

SOS1 は触媒的 CDC25 ドメインで RAS の nucleotide-binding pocket に作用し、GDP を解離させて細胞内に過剰な GTP を再結合させる (GEF 活性)。受容体活性化により adaptor GRB2 が SOS1 を膜の活性化受容体近傍へリクルートし、SOS1 は RAS-GTP に対する allosteric ポケットでの正のフィードバックを通じて活性化を増幅する。KRAS G12C 共有結合阻害剤は GDP 結合型 KRAS のみを捕捉するため、SOS1 による GTP 再充填と上流シグナルが薬剤非感受性プールを供給して adaptive 耐性を生む。SOS1 阻害剤 (例 BI-3406) は catalytic ポケットを塞いで GDP→GTP 交換を抑制し、KRAS を不活性型に留めて KRAS 阻害剤や SHP2 阻害剤との相乗を生む。

臨床位置づけ

SOS1 は単剤では効果が限定的だが、KRAS G12C / G12D 阻害剤の効果増強と adaptive 耐性予防を目的とした併用 partner として開発が進む。BI-3406 (前臨床) や BI-1701963 (臨床) などの SOS1::pan-KRAS 阻害剤が KRAS 阻害剤・MEK 阻害剤との併用で評価されており、NSCLC を含む RAS 変異腫瘍で wild-type / 変異 RAS の再活性化を遮断する upstream node として位置づけられる。毒性 (正常組織の RAS シグナル抑制) と治療域の確保が課題。

Open Questions

  • SOS1 阻害剤 + KRAS 阻害剤併用の臨床的有効性と耐性克服効果
  • SOS1 阻害に伴う on-target 毒性 (正常 RAS シグナル) と治療指数の最適化