- 著者: Jonathan García-Román, Alejandro Zentella-Dehesa
- Corresponding author: Alejandro Zentella-Dehesa (Universidad Nacional Autónoma de México, Mexico City, Mexico)
- 雑誌: Cancer Letters
- 発行年: 2013
- Epub日: 2013-03-14
- Article種別: Review
- PMID: 23499893
背景
癌による死亡の約90%は転移に起因し、原発腫瘍の局所的な障害による死亡は10%に過ぎない。転移は、(i) 局所浸潤、(ii) 血管内侵入 (intravasation)、(iii) 循環内での生存、(iv) 標的臓器の血管内皮への接着、(v) 血管外漏出 (extravasation)、(vi) コロニー形成という多段階のカスケードを経て進行する。このうち血管外漏出は、腫瘍細胞が血管内皮バリア (タイトジャンクションおよびアドヘレンスジャンクション) を突破する過程であり、炎症部位への白血球動員 (leukocyte diapedesis) と類似したメカニズムを用いると考えられている。
血管内皮タイトジャンクション (tight junction, TJ) は、クローディン、オクルディン、JAMs (junctional adhesion molecules) といった膜貫通タンパク質、および ZO-1/2/3 (MAGUK [membrane-associated guanylate kinase] ファミリー周辺タンパク質) から構成される。ZO-1 はクローディンなどの C 末端と結合し、F-アクチン細胞骨格への架橋を形成することで、膜脂質・タンパク質拡散バリア、細胞極性維持、細胞-細胞接着、細胞遊走制御といった TJ の機能に寄与する。一方、アドヘレンスジャンクション (adherens junction, AJ) は VE-カドヘリンを主要な膜貫通タンパク質とし、β-カテニン、α-カテニンを介してアクチン細胞骨格と連結し、血管透過性制御の主要な構造体として機能する。通常状態では、これらのジャンクションはパラセルラー経路を通じた3 nm 以上の高分子拡散を制限している。しかし、腫瘍細胞は VEGF、Angptl4 (angiopoietin-like protein-4)、CCL2、HGF/SF (hepatocyte growth factor/scatter factor)、SDF-1 (stromal cell-derived factor-1)、Ang-2 (angiopoietin-2)、12(S)-HETE (12(S)-hydroxyeicosatetraenoic acid) などの多様な血管作動性因子を産生・分泌し、内皮細胞のジャンクション分子を能動的に破壊することで血管透過性を亢進させ、自身の血管外漏出を促進するという戦略を持つ。
先行研究では、転移過程における血管透過性の重要性が個別に指摘されてきた。Orr らは、Bleomycin による肺内皮層の損傷が線維肉腫の肺転移形成を増加させることを報告した (Orr et al. Cancer Res 1986)。Huang らは、メラノーマが巨視的転移出現前に肺の血管透過性を特異的に増加させる「転移前状態 (premetastatic state)」の概念を提唱し、Ang-2、MMP3 (matrix metalloproteinase-3)、MMP10 (matrix metalloproteinase-10) の過剰発現がこの透過性亢進に寄与することを示した (Huang et al. Cancer Res 2009)。Fidler は転移の「seed and soil」仮説を再訪し、転移における微小環境の重要性を強調した (Fidler Nat Rev Cancer 2003)。加えて、Eliceiri らは VEGF 誘導性の血管透過性と血管新生に Src ファミリーキナーゼが選択的に必要であることを示し (Eliceiri et al. Mol Cell 1999)、Gavard と Gimbra らは VEGF が β-アレスチン依存性の VE-カドヘリンエンドサイトーシスを介して内皮透過性を制御することを報告した (Gavard et al. Nat Cell Biol 2006)。しかし、これら先行研究はいずれも個別の因子・経路に焦点を当てており、腫瘍転移における血管透過性変化の全体像を捉え、複数の腫瘍由来因子とシグナル伝達経路の相互作用を系統的に整理したレビューは不足していた。特に、(a) 血管透過性亢進が転移に必須の過程であるか、(b) 転移性細胞と内皮細胞の相互作用を媒介する分子メカニズムは何か、(c) この過程を支える血管作動性分子・膜分子は何か、という3点については依然として大きな知識ギャップ (gap in knowledge) が残されており、本レビューはこの手薄な統合的視点を埋めることを動機としている。
目的
本レビューの目的は、腫瘍転移における血管透過性変化のメカニズムを総合的に整理し、腫瘍由来の血管作動性因子が血管内皮細胞のジャンクション構造をどのように制御して血管透過性を亢進させるのかという分子基盤を解明することである。具体的には、VEGF、Angptl4、CCL2、HGF/SF、SDF-1、Ang-2、12(S)-HETE などの主要な腫瘍由来因子が関与するシグナル伝達経路、特に Src キナーゼを中枢とする共通ハブの役割に焦点を当て、その作用機序を詳細に解説する。さらに、白血球の血管外漏出 (diapedesis) との類似点と相違点を比較し、腫瘍細胞の血管外漏出におけるパラセルラー経路の重要性を強調する。最終的に、血管透過性亢進を抑制する薬剤が転移抑制に有効である可能性を探り、VEGF 単独阻害の限界を踏まえた共通シグナル要素の標的化という新たな抗転移戦略を提示することを目指す。
結果
内皮ジャンクションの分子構造と透過性制御:内皮細胞間の物質移動は、細胞を横断するトランスセルラー経路 (transcytosis) と細胞間隙を通るパラセルラー経路の2経路で制御され、後者は3 nm を超える高分子の拡散を制限する。タイトジャンクション (TJ) は、クローディン、オクルディン、JAMs などの膜貫通タンパク質と、ZO-1/2/3 などの周辺タンパク質から構成され、ZO-1 はクローディンの C 末端と結合して F-アクチン細胞骨格への架橋を形成する。アドヘレンスジャンクション (AJ) は VE-カドヘリンが β-カテニン・α-カテニンを介してアクチン細胞骨格と連結し、血管透過性制御の主要構造体となる。VEGF は VEGFR-2 の自己リン酸化を介して NO/cGMP/PKG 経路と Src/ERK/JNK/PI3K/Akt 経路を活性化し、ZO-1・オクルディンのリン酸化を誘導して TJ を解離させる。炎症性サイトカインは RhoA-ROCK (Rho-associated kinase) 経路を活性化し、オクルディン・クローディン-5・ZO-1/2 をリン酸化して TJ を開放する一方、TNF (tumor necrosis factor)・IFN-γ (interferon-gamma) は MLCK (myosin light chain kinase) 介在のアクトミオシン収縮を誘発する (Fig 2A)。
白血球血管外漏出と腫瘍細胞の類似性:好中球の血管外漏出は、腫瘍細胞の血管外漏出と多くの共通機構を持つモデルである。P/E-セレクチン-PSGL-1 (P-selectin glycoprotein ligand-1) によるローリング、LFA-1 (lymphocyte function-associated antigen-1)/Mac-1 (macrophage-1 antigen; β2 インテグリン)-ICAM-1/2 (intercellular adhesion molecule) および VLA-4 (very late antigen-4; β1 インテグリン)-VCAM-1 (vascular cell adhesion molecule) による強固な接着が初期段階で生じる。LFA-1-ICAM-1 相互作用は内皮細胞で Src-Pyk2 (proline-rich tyrosine kinase 2) を活性化して VE-カドヘリンのリン酸化を誘導し、さらにプロテアーゼ ADAM-10 (ADAM metallopeptidase domain 10) が VE-カドヘリンを切断してジャンクションを解離させる。白血球は両経路を利用し、トランスセルラー経路を使うのは全体の約20% に過ぎないが、腫瘍細胞は今のところパラセルラー経路のみの利用しか確認されていない点が大きな相違である。好中球の血管外漏出が透過性亢進を伴うか否かは依然controversial だが、多くの研究で CAMs (cell adhesion molecules) を介した接着が ROS (reactive oxygen species) 産生、Rho 活性化、チロシンキナーゼ活性化を誘導し、Src・Pyk2・RhoA-ROCK・MLCK 経路を介してパラセルラー経路での効率的な血管外漏出に必要な透過性亢進を促進することが示されている。
腫瘍由来 VEGF の血管透過性増加機序:膵癌・卵巣癌由来の悪性腹水中の VEGF は、腹膜の血管透過性と腹腔内転移数を増加させる (Liu et al. J Surg Res 2002)。乳癌・肺癌由来の VEGF は肺に過透過性領域を形成し、FAK (focal adhesion kinase) 活性化を介した E-セレクチン発現亢進により肺転移を増加させる (Hiratsuka et al. PNAS 2011)。神経転移モデルでは、VEGF165 および VEGF189 アイソフォームが VEGF121 よりも強力な血管透過性増加誘導体であることが示された (Kusters et al. Cancer Res 2003)。機序としては Src-MLCK-MLC 経路によるアクトミオシン収縮と Src による VE-カドヘリンの直接リン酸化の両経路が活性化され、さらに GEP100-Arf6-AMAP-1-cortactin 軸による独立した透過性増加経路も作動する (Hashimoto et al. PLoS One 2011)。Bcl-2 (B-cell lymphoma 2) 過剰発現内皮細胞では VEGF 感受性が増大し、口腔扁平上皮癌細胞の浸潤と肺転移の増加と相関した (Kumar et al. Lab Invest 2008) (Fig 2A)。
Angptl4 による血管透過性増加機序:TGFβ (transforming growth factor beta) により誘導される Angptl4 が肺転移を促進するという Padua らの報告 (Padua et al. Cell 2008) と、血管透過性を抑制するという Galaup らの報告 (Galaup et al. PNAS 2006) が併存する。この矛盾は、タンパク質の N 末端または C 末端タグの有無に起因する可能性が指摘された。Huang らは、cAngptl4 (C 末端フィブリノーゲン様ドメイン) がインテグリン α5β1、VE-カドヘリン、クローディン-5 との時系列的相互作用を介して内皮接合部を解離させ、このプロセスが Rac/PAK (p21-activated kinase) 経路の活性化を伴うことを示した (Huang et al. Blood 2011)。Angptl4⁻/⁻ マウス (n=6 mice) では B16F10 メラノーマの肺転移が有意に減少することが in vivo で確認された (Fig 3)。
CCL2 (MCP-1) の転移促進機序:CCR2⁻/⁻ マウス (n=8 mice) では大腸癌 (MC-38) の肺転移が減少し、その原因として腫瘍細胞の血管透過性増加能の低下と単球動員の減少の両方が同定された (Wolf et al. Cancer Cell 2012)。CCL2 は内皮 CCR2 を介して Jak2-Stat5 および p38 経路を活性化し、血管透過性を増加させて単球・マクロファージのリクルートを促進することで転移を支援する。大腸癌ステージ I-IV の生検で CCL2 mRNA 発現が段階的に増加し、特にステージ IV で顕著であった。大腸癌・Lewis 癌では CCL2 依存性転移が観察されたが乳癌では非依存性であった (Fig 2B)。
HGF/SF・SDF-1α・Ang-2 の作用:HGF/SF は ZO-1・クローディン-1 の発現低下とリン酸化を誘導し、経内皮電気抵抗を低下させて血管透過性を増加させ、MDA-MB-231 乳癌細胞の経内皮遊走を増加させるが、アンタゴニスト変異体 NK4 によりこれらの効果は完全に逆転する (Martin et al. J Cell Physiol 2002)。SDF-1α は HBMECs (human brain microvascular endothelial cells, ヒト脳微小血管内皮細胞) の透過性を PI3K 依存性かつ Ca²⁺ 依存性機序で増加させる (Lee et al. Mol Cancer Res 2004) 一方、Yagi らは不死化内皮細胞では透過性増加なしの経内皮遊走増加を報告しており、使用内皮細胞種による差異が示唆された (Yagi et al. Sci Signal 2011)。Ang-2 は内皮細胞-細胞間接合と細胞-ECM (extracellular matrix) 接合の解離を引き起こしてメラノーマの肺転移を増加させ、MMP3・MMP10 との協調的な転移前肺血管過透過性に関与する (Holopainen et al. J Natl Cancer Inst 2012)。
12(S)-HETE とフィブリノーゲンの作用:アラキドン酸代謝物 12(S)-HETE の合成量は腫瘍細胞の転移ポテンシャルと相関する (Honn et al. Cancer Metastasis Rev 1994)。Lewis 肺癌細胞 (3LL) または高転移性メラノーマ (B16a) が肺血管内皮細胞 (CD3) と接着すると 12(S)-HETE 産生が誘導され、PKC (protein kinase C) 活性化を介した細胞骨格再編成と αVβ3 インテグリンの焦点接着からの転位により内皮細胞収縮と過透過性状態を引き起こす。GPR31 (G protein-coupled receptor 31) が 12(S)-HETE の高親和性受容体として同定されている (Guo et al. J Biol Chem 2011)。フィブリノーゲンは乳癌細胞由来 (MDA-MB-231・MCF-7) の VE-カドヘリンとの結合を介して HUVECs (human umbilical vein endothelial cells) の透過性と経内皮遊走を増加させ、フィブリノーゲン⁻/⁻ マウス (n=5 mice) では LLC・B16F10 の肺転移が減少した (Table 1)。
Src キナーゼを中枢とする共通シグナルハブ:複数の腫瘍血管作動性因子の共通下流として、Src キナーゼは3つの主要な透過性増加機序を統合する中央ハブとして機能する (Kim et al. Cell Tissue Res 2009)。すなわち (1) MLCK 活性化→MLC (myosin light chain) リン酸化→アクトミオシン収縮、(2) VE-カドヘリン直接リン酸化→β-カテニンからの解離、(3) FAK 活性化→カルパイン2/FAK/p42 ERK 複合体形成によるアクチン線維集合変化、の3経路である。c-Src⁻/⁻ マウス (n=10 mice) では一次腫瘍による過透過性誘導が減弱し、D121 および B16F10 メラノーマ細胞の血管外漏出と転移形成が有意に低下したことが、Src の in vivo における中枢的役割を証明している (Criscuoli et al. Blood 2005)。
細胞接触依存性および細胞タイプ特異的な透過性増加:ヒト膵癌細胞 (MIA PaCa2・PANC-1・PSN-1) の添加開始後30分以内に HUVECs の透過性が増加し、この効果は条件培地 (100-fold 濃縮、あるいは総タンパク 50 μg/ml) では再現されず内皮細胞との直接接触が必要であった (Nakai et al. Cancer Sci 2005)。この機序はメタロプロテイナーゼ、チロシンキナーゼ、酸化ストレスのいずれにも依存しない。さらに細胞タイプ間で経路が異なり、PI3K は HMECs-1 (ヒト微小血管内皮細胞) の VEGF 誘発過透過性には関与するが HBMECs では非関与であるなど、血管床によるシグナル機構の差異が指摘されている。抗過透過性薬では、マロチレートがラット高転移性乳癌細胞 (c-SST-2) の肺内皮過透過性と経内皮遊走を抑制し、シスチニルロイコトリエン受容体阻害剤プランルカストが大腸癌細胞 (RCN9) の経内皮遊走を抑制して Lewis 肺癌術後転移モデルで生存率を向上させた (Nozaki et al. Keio J Med 2010)。
考察/結論
本総説は、腫瘍転移における血管透過性増加が腫瘍細胞の血管外漏出に必須の過程であり、腫瘍が VEGF、Angptl4、CCL2、HGF/SF、SDF-1、Ang-2、12(S)-HETE といった多様な血管作動性因子を分泌して内皮バリアを能動的に破壊するという統合的フレームワークを提供した2013年のレビューである。
先行研究との違い:従来の転移研究は個別の因子や経路に焦点を当てていたが、本レビューは複数の血管作動性因子とそれらが活性化する多様なシグナル伝達経路を系統的に統合し、Src キナーゼを中央ハブとする共通機序を特定した点で、これまでの研究とは対照的なアプローチを示した。特に Huang らによる転移前状態における Ang-2/MMP3/MMP10 の概念 (既報) は腫瘍が遠隔臓器血管を事前プライミングするという考え方の基盤を提供したが、本レビューはさらに広範な因子と経路を網羅し、それらが収束する分子ハブまで踏み込んだ点が異なる。
新規性:本研究で初めて、血管透過性亢進が転移性細胞の血管外漏出に不可欠な前提条件であるという強力なエビデンスを統合的に提示し、Src を共通ハブとする novel な統一モデルを描いた。とりわけ Angptl4 の血管透過性作用に関するこれまで報告されていない矛盾の解釈として、その原因がタンパク質のタグ付け方法 (N 末端 vs C 末端) にある可能性を指摘し、cAngptl4 がインテグリン α5β1・VE-カドヘリン・クローディン-5 との相互作用を介して接合部を解離させる機序を整理した点が本レビューの新規性である。
臨床応用:本知見は転移抑制のための治療戦略開発に直結する臨床的意義を持つ。VEGF はほぼ全ての血管床に作用するが、VEGF 単独阻害では期待された完全な抗転移効果が得られないことから、bench-to-bedside の橋渡しとしては Src、MLCK、JAK-STAT のような多数の血管作動性因子が共有する共通要素、あるいはそれらの組み合わせを標的とする方が有望であると提案される。重要な臨床的含意として、一次腫瘍由来の過透過性のみを遮断できれば、白血球の経内皮遊走 (宿主防御) を損なわずに転移を抑制できる可能性が示された。
残された課題:今後の検討課題として、(a) 腫瘍細胞-内皮細胞の直接接触によるシグナルと血管作動性因子によるシグナルの分担、(b) 臓器特異的な内皮の不均一性 (heterogeneity) が臓器指向性転移 (organotropism) に与える影響、(c) 血管過透過性 (hyperpermeability) と経内皮遊走 (transmigration) の分子的分離、(d) 癌細胞が白血球のようにトランスセルラー経路を利用する可能性、(e) 各阻害剤の安全性 (内皮恒常性への影響) が挙げられる。c-Src⁻/⁻ マウスが現状最良のモデルだが Src が多様な細胞過程に関与するという limitation があり、透過性のみを特異的に標的とする理想的モデルの確立が今後の研究の重要な方向性となる。本総説は2013年時点の知見を統合し、その後のエクソソーム研究の文脈的基盤を提供した点でも位置づけが重要である。実際、本レビューが描いた「腫瘍由来因子による内皮ジャンクション破壊」の枠組みは、腫瘍分泌 miR-105 が ZO-1 を直接標的化して血管内皮バリアを崩壊させる機序 (Zhou et al. CancerCell 2014)、腫瘍由来エクソソーム miR-25-3p が転移前ニッチで血管透過性を誘導する経路 (Zeng et al. NatCommun 2018)、EV・粒子による間質マクロファージのリプログラミングを介した肺血管透過性亢進 (Dror et al. ResSq 2024) といった後続の EV 研究によって分子レベルで具体化されている。
方法
本論文はミニレビューであるため、特定の実験プロトコルや患者コホートを用いた一次的な方法論は該当しない。識別子としては PubMed データベースを一次情報源とし、「vascular permeability」「tumor metastasis」「endothelial junction」「VEGF」「Angptl4」「CCL2」「HGF/SF」「SDF-1」「Ang-2」「12(S)-HETE」「Src kinase」「ZO-1」「occludin」などのキーワードを組み合わせて関連する in vitro および in vivo 研究文献を体系的に収集・分析した。
収集された文献は、(1) 血管内皮細胞の TJ・AJ の分子構造と機能、(2) 血管透過性制御の生理学的メカニズム、(3) 白血球血管外漏出における接着分子とシグナル伝達経路、(4) 腫瘍由来因子による血管透過性亢進の具体的な分子メカニズム、という4つの軸で選別された。特に、血管透過性亢進が転移性細胞の血管外漏出に必須であるという仮説を支持するエビデンス、および血管透過性亢進を誘導する腫瘍由来因子とその下流シグナル経路に関する研究が優先的にレビューされた。包含基準は英語で書かれた査読付きジャーナル論文とし、要約のみの会議録や未査読プレプリントは除外した。
文献の分析では、各因子の作用機序、関与するシグナル伝達分子 (Src、MLCK [myosin light chain kinase]、Rho キナーゼ、JAK-STAT 経路)、および内皮ジャンクションタンパク質 (VE-カドヘリン、ZO-1、オクルディン、クローディン) への影響を詳細に検討した。矛盾する報告が存在する場合には、その原因 (実験モデル、使用細胞株、タンパク質のタグ付け方法) も合わせて考察した。統合に際しては、各一次研究で採用された統計手法 (生存解析の log-rank 検定、群間比較の ANOVA [analysis of variance] および Student t 検定、相関評価の回帰分析) の妥当性も合わせて吟味し、有意水準 p<0.05 を満たす定量的エビデンスを優先的に採択した。本レビューでは各研究の証拠レベルを定量的にスコア化する形式は採用しなかったが、in vivo データと in vitro データの両方を考慮し、より堅牢なエビデンスを重視して統合的なフレームワークを構築した。なお、本論文自体は EV (extracellular vesicles) の単離・特性評価を行う一次研究ではなく、ISEV ガイドラインに基づく isolation method や CD9/CD63/CD81 等の characterization marker は適用対象外である。