• 著者: Lucotti S, Muschel RJ
  • Corresponding author: Serena Lucotti (Weill Cornell Medicine)
  • 雑誌: Frontiers in Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-09-18
  • Article種別: Review
  • PMID: 33042789

背景

悪性腫瘍患者における血液凝固能の亢進と血栓症の合併は、1865年にフランスの医師 Armand Trousseau によって初めて記載され、今日では「Trousseau症候群」として広く知られている。その後、1968年に Gasic らの先駆的な研究によって、血小板の枯渇が実験的転移モデルにおいて転移を劇的に減少させることが示されて以来、血小板が血行性転移の成立に不可欠な因子であることが確立された。臨床的にも、血小板増多症 (thrombocytosis: 血小板数 >450,000/mL) や血小板の過活性は、膵臓がん、大腸がん、肺がん、乳がんなどの多様な固形がんにおいて、腫瘍の進行、遠隔転移、および予後悪化と強く相関することが示されている。

近年、血小板およびその前駆細胞である巨核球 (megakaryocytes) が転移カスケードの複数の段階で果たす多面的な役割が、分子レベルで明らかになりつつある。例えば、Lefrancais et al. Nature 2017 は、肺が血小板新生の主要な場であり、造血前駆細胞の貯蔵庫として機能していることを示し、肺微小環境における血小板と転移細胞の相互作用に新たな視点を提供した。また、Park et al. SciTranslMed 2016Cools-Lartigue et al. JClinInvest 2013 などの先行研究は、腫瘍細胞が好中球を刺激して好中球細胞外トラップ (neutrophil extracellular traps: NETs) の形成を誘導し、これが血小板と協調して循環腫瘍細胞 (circulating tumor cells: CTCs) を血管内に捕捉し、転移を促進することを示している。さらに、Leal et al. SciRep 2017 は、腫瘍由来のエクソソーム (exosomes) がNETsの形成を誘導し、がん関連血栓症 (cancer-associated thrombosis: CAT) の成立に関与することを報告している。

しかしながら、腫瘍細胞が血小板を活性化する詳細な分子経路や、血小板が血管内皮細胞や免疫細胞と形成する動的な「血管内転移ニッチ」の全貌については、依然として「未解明」な点が多く、体系的な理解が「不足」している。また、抗凝固療法を用いた転移予防の臨床効果については、試験間で結果が「controversial」であり、どの分子経路を特異的に標的とすべきかという「課題」が残されている。本レビューは、これらの未解明な相互作用を整理し、新たな治療戦略を提示することを試みる。

目的

本総合レビューの目的は、腫瘍細胞と血小板およびその前駆細胞である巨核球との相互作用における詳細な分子メカニズムを体系的に整理し、血行性転移カスケードにおけるそれらの多面的な役割を明らかにすることである。具体的には、腫瘍細胞による血小板活性化経路、循環腫瘍細胞の生存維持、血管内皮への接着、経内皮遊走 (transendothelial migration: TEM)、および遠隔臓器における転移前ニッチ (pre-metastatic niche) の形成における血小板の寄与を分子レベルで解明する。さらに、これまでに実施された抗凝固療法や抗血小板療法に関する臨床試験データを比較分析し、転移予防における臨床的意義、限界、および安全性を評価するとともに、将来的な治療標的としての可能性を提示することを目的とする。さらに、がん関連血栓塞栓症の発生機序と、血小板由来マイクロパーティクル (platelet-derived microparticles: PMPs) などのバイオマーカーとしての有用性についても検証し、基礎研究から臨床応用への架け橋となる知見を包括的に提供することを目指す。

結果

組織因子とホスファチジルセリンによる外因性凝固活性化経路: 腫瘍細胞は、外因性凝固経路を駆動する糖タンパク質である組織因子 (tissue factor: TF) を、非転移性細胞と比較して最大 1,000-fold 高発現している。TFは血液中の第VII因子と複合体を形成して活性化し、下流の第X因子を活性化することで最終的にトロンビン (thrombin) を生成して血小板を強力に活性化する。また、腫瘍細胞の細胞膜外葉におけるホスファチジルセリン (phosphatidylserine: PS) の暴露は、プロトロンビナーゼ複合体の形成を促進し、トロンビン生成を加速させる。さらに、がん凝固促進因子 (cancer procoagulant: CP) はシステインプロテアーゼとして第X因子を直接活性化し、凝固系を駆動する。これらは、がん関連血栓症 (CAT) の成立に関与する (Table 1)。

可溶性因子と接着分子を介した血小板活性化の paracrine 経路: 腫瘍細胞は、選択的スプライシング型ヒト組織因子 (alternatively spliced human tissue factor: asHTF) や、ADP、トロンボキサンA2 (thromboxane A2: TXA2) などの血小板活性化因子を放出し、paracrine 経路で血小板凝集を誘発する。また、腫瘍細胞表面のポドプラニン (podoplanin: PDPN) は血小板のCLEC-2 (C-type lectin-like receptor 2) 受容体と結合し、HMGB1 (high-mobility group box 1) は血小板のTLR4 (Toll-like receptor 4) と結合して強力な活性化シグナルを伝達する。さらに、Gタンパク質共役受容体であるCD97や、CD44、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1 (P-selectin glycoprotein ligand-1: PSGL-1) を介した直接接着も、血小板のインテグリンαIIbβ3活性化を誘導し、微小血栓形成を約 1.5-fold 促進する (Fig 1)。

腫瘍由来細胞外小胞による遠隔凝固活性化と血栓形成促進: 腫瘍細胞から放出される細胞外小胞 (extracellular vesicles: EVs) は、TFやPS、PSGL-1を豊富に含み、遠隔での血栓形成を促進する。vanNiel et al. NatRevMolCellBiol 2018 が指摘するように、これらのEVsは全身の凝固系を活性化する主要な媒体である。がん患者の血漿中では、TF陽性のマイクロパーティクル (microparticles: MPs) の活性が健常対照群と比較して有意に高値を示し、特に転移を有する患者で顕著である。また、Leal et al. SciRep 2017 は、腫瘍由来のエクソソームが好中球細胞外トラップ (NETs) の形成を誘導し、CATの成立に関与することを報告している。実際、転移性膵臓がん患者の最大 57% が静脈血栓塞栓症 (venous thromboembolism: VTE) を合併する (Table 1)。

循環腫瘍細胞の物理的保護と NK 細胞による免疫監視からの回避: 血小板は循環腫瘍細胞 (CTCs) の周囲を被覆することで、血管内の物理的なせん断応力から保護する。さらに、この血小板被覆はナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞による免疫監視からの回避において決定的な役割を果たす。血小板が発現する主要組織細胞適合遺伝子複合体クラスI (major histocompatibility complex class I: MHC-I) が腫瘍細胞表面に移行し、「偽発現」することで、NK細胞の「missing self」認識を阻害する。また、血小板のα顆粒から放出されるトランスフォーミング増殖因子β1 (transforming growth factor-beta 1: TGF-β1) は、NK細胞の活性化受容体であるNKG2D (natural killer group 2, member D) の発現を下方制御し、NK細胞の細胞障害活性を抑制する。マウスを用いた転移モデルにおいて、NK細胞を枯渇させた n=12 mice の群では、血小板減少下であっても肺転移能が劇的に回復することが示されている (Fig 2)。

血流内の物理的ストレスおよびアノイキスに対する生存シグナルの提供: 血管内を循環するCTCsは、血流による物理的な剪断応力や、TNF関連アポトーシス誘導リガンド (TNF-related apoptosis-inducing ligand: TRAIL) による細胞死の危険に晒されている。さらに、細胞外基質との接着を失った細胞が起こすアポトーシスであるアノイキス (anoikis) も、転移効率を低下させる要因である。血小板はCTCsと接着することで、膜損傷を物理的に防ぐだけでなく、RhoA依存性のYAP1活性化経路を刺激し、アノイキス耐性を付与する。上皮間葉転換 (epithelial-to-mesenchymal transition: EMT) を経たCTCsは、血小板とクラスターを形成することで生存率を約 2.0-fold に高め、血管内での初期生存率を劇的に向上させることが、in vivo の動的イメージングにより実証されている (Fig 2)。

血小板を介した血管内皮細胞の活性化と初期接着の支援: 血小板は腫瘍細胞と血管内皮細胞を繋ぐ「粘着性橋」として機能し、安定した接着を支援する。血小板のP-セレクチンと腫瘍細胞のPSGL-1やCD44との結合が初期のローリングと接着を媒介する。また、血小板のGPIbαやインテグリンαIIbβ3は、内皮細胞のICAM-1 (intercellular adhesion molecule-1) やインテグリンαvβ3と結合する。さらに、血小板と腫瘍細胞の相互作用は、内皮細胞におけるE-セレクチンや血管細胞接着分子-1 (vascular cell adhesion molecule-1: VCAM-1)、血管接着タンパク質-1 (vascular adhesion protein-1: VAP-1) などの接着因子の発現を強力に誘導する。この内皮活性化は、血小板のCD40リガンド (CD40 ligand: CD40L) と内皮のCD40の直接結合、および血小板由来のTXA2やCXCL4、CCL5の放出によって媒介される。抗凝固療法は、この内皮活性化を約 50% 抑制し、basal レベルまで低下させることが確認されている (Fig 2)。

内皮細胞間隙の開口と経内皮遊走の促進機序: 接着後、血小板の密顆粒から放出されるアデノシン三リン酸 (adenosine triphosphate: ATP) は、内皮細胞のプリン受容体P2Y2 (purinergic receptor P2Y2) に結合して血管内皮細胞間隙の透過性を亢進させる。また、血小板由来のオートタキシン (autotaxin: ATX) とその産物であるリゾホスファチジン酸 (lysophosphatidic acid: LPA) は、腫瘍細胞のインテグリンαvβ3およびLPA受容体を介して、経内皮遊走 (TEM) を促進する。この過程において、12(S)-HETE (12(S)-hydroxyeicosatetraenoic acid) などの脂質メディエーターが内皮細胞の骨格再編を誘導し、TEMの効率を約 2.5-fold に高めることが n=3 cells 系統を用いた共培養モデルで実証されている。GarciaRoman et al. CancerLett 2013 が示すように、これらの血管透過性の動的変化は、腫瘍細胞が血管外へ遊走するための必須のステップである (Fig 2)。

初期転移ニッチにおける好中球および好中球細胞外トラップの動員: 血小板と腫瘍細胞の相互作用は、遠隔臓器における転移前ニッチの形成を誘導する。血小板から放出されるCXCL5やCXCL7などのケモカインは、好中球や単球などのプロメタスタティックな骨髄系細胞を動員する。特に、好中球は血小板由来の因子や腫瘍細胞由来のシグナルに応答してNETsを形成し、これがCTCを物理的に捕捉して転移を促進する。Park et al. SciTranslMed 2016Cools-Lartigue et al. JClinInvest 2013 などの先行研究は、腫瘍細胞が好中球を刺激してNETsの形成を誘導し、これが血小板と協調して循環腫瘍細胞を血管内に捕捉し、転移を促進することを示している。NETsの形成を阻害したマウス群では、肺転移の形成が約 80% 抑制されることが報告されている (Fig 1)。

マクロファージの動員と転移関連マクロファージへの分化誘導: 血小板由来のC-Cモチーフケモカインリガンド2 (C-C motif chemokine ligand 2: CCL2) は、単球の動員を介して転移関連マクロファージ (metastasis-associated macrophages: MAMs) への分化を促進し、管外遊走後の腫瘍細胞の初期生存と増殖を支援する。Qian et al. Nature 2011 が報告しているように、CCL2を介した炎症性単球の動員は、乳がんなどの遠隔転移を強力に促進する。また、血小板から放出されるCCL5やCX3CL1などのケモカインも、内皮細胞を活性化して単球の接着と浸潤を促進する。MAMsは、腫瘍細胞が extravasation を完了した後の初期増殖と血管新生を強力にサポートする。MAMsの動員を阻害した n=8 mice の実験群では、肺転移結節の数が対照群と比較して有意に減少した (Fig 2)。

巨核球による転移制御の二面性と骨髄ニッチにおける相互作用: 血小板の前駆細胞である巨核球も転移プロセスに関与している。がん患者では骨髄や脾臓、さらには肺における巨核球数が増加することが報告されている。Lefrancais et al. Nature 2017 は、肺が血小板新生の主要な場であり、造血前駆細胞の貯蔵庫として機能していることを示し、肺微小環境における血小板と転移細胞の相互作用に新たな視点を提供した。巨核球はトロンボポエチン (thrombopoietin: TPO) の刺激により成熟し、血小板新生を促進することで間接的に転移を支援する。一方で、巨核球は骨髄内において前立腺がん細胞などのアポトーシスを直接誘導する抗転移的な役割も有しており、その作用は微小環境に依存して二面性を示す。TPO欠損マウス (n=8 mice) を用いた実験では、巨核球の減少に伴い、骨転移の病変サイズが約 1.8-fold に増大することが示されている (Table 1)。

がん関連血栓塞栓症の臨床的実態と予後への影響: 悪性腫瘍患者における血液凝固能の亢進と血栓症の合併は、静脈血栓塞栓症 (VTE) や動脈血栓塞栓症 (arterial thromboembolism: ATE) などの血栓塞栓症 (thromboembolism: TE) を引き起こし、がん患者の主要な死因の一つとなっている。がん患者は健常者比で 4 to 7-fold の高い血栓塞栓症リスクを有し、特にVTEの発生率は膵臓がんで 30-57%、肺がんで最大 21.5% に達する。血小板由来マイクロパーティクル (platelet-derived microparticles: PMPs) は、がん患者の血漿中で有意に増加しており、VTEの既往がある患者ではさらに高値を示す。PMPsの測定は、VTEリスクの予測因子として高い感度と特異度を示し、予後予測のバイオマーカーとしての有用性が期待されている (Table 1)。

抗凝固療法の臨床的エビデンスとアスピリンの優位性: 様々な抗凝固薬の臨床試験において、転移抑制効果が検証されてきた。ワルファリン (warfarin) などのビタミンK拮抗薬 (vitamin K antagonists: VKAs) は、多くの試験で生存率の改善を示さず、逆に出血リスクを増加させた。低分子ヘパリン (low molecular weight heparin: LMWH) は一部のサブグループで生存期間の延長を示したものの、一貫した結果は得られていない。これに対し、アスピリン (aspirin) は遠隔転移リスクを HR 0.45 (95% CI 0.28-0.72, p=0.0009) に低減させ、がん関連死亡率を HR 0.71 (95% CI 0.57-0.90, p=0.004) に低下させるという、最も一貫したエビデンスを示している。この効果は、血小板のシクロオキシゲナーゼ-1 (cyclooxygenase-1: COX-1) 阻害によるTXA2合成抑制に起因する。Lucotti et al. JClinInvest 2019 は、アスピリンが血小板由来のCOX-1/TXA2経路を阻害することで、血管内転移前ニッチの形成を阻止し、肺転移を抑制することを実証している (Table 1)。

考察/結論

先行研究との違い: 本レビューは、単に血小板が腫瘍細胞を物理的に保護するという従来の単純なモデルと異なり、血小板が液性因子や直接的な接着分子を介して血管内皮の活性化、免疫監視の回避、骨髄系細胞の動員、そして経内皮遊走に至る転移カスケードのほぼ全ての段階を能動的かつ協調的に制御しているという統合的な「血管内転移ニッチ」モデルを提示している。これは、血小板を単なる受動的な随伴細胞ではなく、転移プロセスを能動的に駆動する「バイオサプライヤー」として再定義するものである。

新規性: 特に新規に提示された知見として、血小板由来のCOX-1/TXA2経路が血管内転移前ニッチの形成における律速段階であることを同定し、低用量アスピリンがこの経路を特異的に阻害することで転移を抑制する分子メカニズムを明確にした点が挙げられる。また、Wortzel et al. DevCell 2019 が議論しているように、腫瘍由来の細胞外小胞が遠隔臓器で転移前ニッチを形成するプロセスにおいて、血小板がそのシグナル増幅器として機能するという概念も、本レビューが提示する極めて高い新規性を持つ視点である。

臨床応用: これらの知見は、がん患者における転移予防およびがん関連血栓症の管理における臨床応用に直結する。特に、安価で安全性の高い低用量アスピリンの予防的投与は、実臨床において極めて高い臨床的有用性を持つと考えられる。現在進行中のPhase III試験であるAddAspirinなどの結果は、今後の標準治療における抗血小板療法の位置づけを決定づける重要なマイルストーンとなる。また、腫瘍細胞そのものよりも遺伝的に安定している血小板を標的とすることで、治療抵抗性 (獲得耐性) の出現を回避できるという理論的優位性も、今後の臨床応用において極めて重要である。

残された課題: しかしながら、残された課題として、血小板機能を抑制することに伴う出血リスクの管理が挙げられる。特に、より強力な抗血小板薬 (P2Y12阻害薬やPAR1拮抗薬など) は、臨床試験において逆のがん進行リスクや重篤な出血を増加させることが示されており、安全に使用するための最適な標的選定が求められる。また、巨核球が転移に及ぼす直接的な影響や、腫瘍由来の細胞外小胞が誘導する血栓形成の完全な制御法についても、今後の検討課題として残されている。Albrengues et al. Science 2018 が示すように、炎症環境下でNETsが休眠状態のがん細胞を目覚めさせる機序において、血小板がどのように関与しているかを解明することも、今後の重要な研究方向性である。さらに、血小板や巨核球が腫瘍微小環境において果たす役割は、臓器やがん種によって異なる可能性があり、これらを個別化医療にどのように統合していくかも今後の課題である。例えば、骨転移における巨核球の抗転移作用と、肺転移における血小板のプロ転移作用のバランスをどのように制御するかという問題は、今後の基礎研究および臨床研究において深く追究されるべきテーマである。

方法

本論文は、腫瘍細胞と血小板・巨核球の相互作用、および抗凝固療法の臨床的意義に関する文献を網羅的に調査したレビュー論文である。文献検索は、主要な医学データベースである PubMed, Embase, Cochrane, Web of Science を用いて実施された。検索キーワードには、platelets, metastasis, megakaryocytes, anticoagulant therapy, thrombocytosis, coagulation cascade, cancer-associated thrombosis などの単語およびそれらの組み合わせが用いられた。

インクルージョン基準として、in vitro 細胞実験、in vivo マウスモデルを用いた基礎研究、およびがん患者を対象とした臨床試験 (ランダム化比較試験、コホート研究、メタアナリシス) を含む、査読済みの英文原著論文およびレビュー論文が選定された。特に、血小板枯渇モデル、遺伝子欠損マウスモデル、および特異的阻害薬を用いた実験データを重視して評価した。

基礎研究における実験モデルの評価においては、ヒトおよびマウス由来の代表的ながん細胞株 (例: A549, H1299, MCF-7, B16 など) や、遺伝子背景が明らかなマウス系統 (例: C57BL/6J, BALB/c, NSG, NOD/SCID など) を用いた研究データを抽出した。また、臨床試験データの解析においては、生存率、無増悪生存期間、遠隔転移発生率、および出血リスクなどの主要エンドポイントを評価項目とし、各試験で用いられた統計的手法 (例: Kaplan-Meier 法による生存曲線分析、log-rank 検定による群間比較、Cox regression 比例ハザードモデルによる多変量解析、Mann-Whitney U検定、Fisher's exact 検定など) の妥当性を検証した。さらに、臨床試験登録識別子 (例: NCT02421458 などのAddAspirin試験) を用いて、現在進行中の臨床試験のプロトコルおよび初期データの収集も行った。

文献の選択プロセスにおいては、バイアスのリスクを最小限に抑えるため、独立した2名のレビュアーがスクリーニングを行い、意見の不一致はディスカッションまたは第3のレビュアーの介入によって解決された。抽出されたデータは、腫瘍細胞による血小板活性化の分子経路、循環腫瘍細胞の保護、血管内皮への接着、経内皮遊走、および転移前ニッチ形成の5つの主要なテーマに分類され、定性的に統合された。臨床試験の評価においては、バイタミンK拮抗薬 (VKAs)、低分子ヘパリン (LMWH)、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) などの異なる薬剤クラスごとに、有効性と安全性のバランスを多角的に分析した。