- 著者: Zappasodi R, Budhu S, Hellmann MD, Postow MA, Senbabaoglu Y, Manne S, et al. (Merghoub T, Wolchok JD)
- Corresponding author: Taha Merghoub (merghout@mskcc.org), Jedd D. Wolchok (wolchokj@mskcc.org)
- 雑誌: Cancer Cell
- 発行年: 2018
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article
- PMID: 29894689
背景
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) である抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)および抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)は、転移性黒色腫や非小細胞肺がん (NSCLC) の標準治療として確立されている (Hodi et al. NEnglJMed 2010; Topalian et al. NEnglJMed 2012; Larkin et al. NEnglJMed 2015). しかし、単剤での奏効率は20〜45%に留まり、併用療法でも最大60%程度であるため、治療効果の予測と最適化が重要な課題である。治療効果を前向きにモニタリングできる薬力学的バイオマーカーは、腫瘍におけるPD-L1発現以外にはほとんど検証されておらず (Herbst et al. Nature 2014)、この点に大きな知識ギャップが残されている。著者らは過去のマウス腫瘍モデル研究で、腫瘍内へのCD4+Foxp3-PD-1high T細胞 (4PD1hi) の蓄積が、アルファウイルスベースの抗メラノーマワクチン (VRP-TRP2) の治療活性と逆相関することを報告していた (Avogadri et al. CancerImmunolRes 2014)。特に、CTLA-4阻害薬は腫瘍内4PD1hiの最も顕著な増加を引き起こし、VRP-TRP2活性を増強する上で最も効率の低い治療法であった。しかし、4PD1hi細胞の具体的な免疫抑制機能、およびICI治療下でのその動態や臨床的意義については未解明な点が多かった。これらの背景から、ICI治療の有効性を予測し、個別化された治療戦略を導くための新たなバイオマーカーの確立が強く求められていた。
目的
本研究の目的は、まずCD4+Foxp3-PD-1high T細胞 (4PD1hi) の腫瘍免疫抑制機能を詳細に解明することである。次に、CTLA-4阻害薬とPD-1阻害薬が4PD1hi細胞の頻度と機能を相反する方向に調節するかを検証する。さらに、ICI治療中の4PD1hi細胞の動態を評価し、その薬力学的および予後予測バイオマーカーとしての臨床的有用性を確立することを目指す。最終的に、これらの知見がICI併用療法の最適化にどのように貢献しうるかを検討する。
結果
4PD1hi細胞は腫瘍進行に伴い腫瘍部位に蓄積し、非従来型の抑制性T細胞として機能する: B16担癌マウス (n=5-20 mice) において、4PD1hi細胞は腫瘍サイズに比例して腫瘍内に有意に蓄積した (Pearson r > 0)。腫瘍浸潤CD8+T細胞と4PD1hi細胞の比率は腫瘍増大とともに有意に低下した (p < 0.001)。Tregとの相関は有意ではなかった。ヒト転移性黒色腫患者 (n=10) およびNSCLC患者 (n=10) においても、末梢血に比べ腫瘍内での4PD1hi細胞頻度が有意に高く (p < 0.0001)、Foxp3およびCD25陰性の非Treg性であることが確認された (Figure 1C)。機能面では、ナイーブマウス脾臓由来の4PD1hi細胞はin vitroでPmel-1/gp100特異的CD8+T細胞の増殖、活性化、IFNγ/TNFα/IL-2産生を有意に抑制した (p < 0.01〜0.001)。この抑制はTregと比較して程度は低いものの、一貫して認められた (Figure 2B, 2C)。ヒト黒色腫・NSCLC腫瘍由来の4PD1hi細胞も同様に、自己TILおよび同種T細胞の増殖・サイトカイン産生を抑制し、この抑制機能はPD-1/PD-L1経路の選択的阻害により解除された (Figure 3B, 3C)。3D殺細胞アッセイでは、4PD1hi細胞上のPD-1またはPD-L1を選択的にブロックするだけで、CD8+TILのB16細胞傷害能が回復した (Figure 5A, 5B)。
CTLA-4阻害薬とPD-1阻害薬は4PD1hi細胞を相反する方向に調節する: NSCLC患者の縦断解析では、ニボルマブ単剤 (nivo3、n=10 patients) が末梢血4PD1hi細胞を有意に低下させたのに対し、イピリムマブ追加 (nivo3+ipi1、n=21 patients) ではこの低下が消失した (p < 0.001)。さらに、低用量ニボルマブ+高用量イピリムマブ (nivo1+ipi3、n=8 patients) では、イピリムマブ用量依存的に4PD1hi細胞が約2.5-fold増加した (Figure 4A)。転移性黒色腫コホートでも同様のパターンが確認され、ペムブロリズマブ (n=52 patients) で4PD1hi細胞が低下し、イピリムマブ (n=47 patients) で増加した (Figure 4C)。マウスモデルでは、CTLA-4阻害薬が用量依存的に4PD1hi細胞を腫瘍内および末梢で増加させ (100 μg vs 300 μg)、PD-1阻害薬の追加でこの増加が拮抗された (Figure 4B)。VRP-TRP2ワクチン + 抗CTLA-4抗体 + 抗PD-1抗体の三剤併用は、ワクチン単剤あるいは各ICI単独と比較して腫瘍縮小と長期制御において最も有効であり (p < 0.05以上、ログランク検定)、同時に腫瘍内4PD1hi細胞を有意に減少させた (Figure 4D, 4E)。抗CTLA-4抗体単独でTregが減少する一方、4PD1hi細胞が増加するという相殺効果が認められたが、抗PD-1抗体の追加がこれを是正した。
PD-1阻害後の4PD1hi細胞の残存は独立した不良予後因子であり、4PD1hi細胞はTFH様表現型を持つ: 転移性黒色腫患者52名(うち24名が死亡)におけるCox比例ハザード解析では、ペムブロリズマブ投与3週後の4PD1hi細胞頻度 (HR = 1.4; 95% CI: 1.16–1.70; p = 0.0005) および4PD1hi細胞変化量 (HR = 4.4; 95% CI: 1.03–19.14; p = 0.046) が死亡リスクの独立した予測因子であることが示された (Table 1)。RNAシークエンシング解析では、マウス (n=3 replicates) およびヒト (n=5 donors) の4PD1hi細胞は4PD1-細胞およびTregと転写プロファイルが明確に異なり、TFHと疲弊T細胞の両遺伝子シグネチャーと高い重複を示したが、4PD1hi細胞に固有のTFH遺伝子の数が最も多かった (Figure 6A, 6B)。4PD1hi細胞はCXCR5、Bcl6、ICOS陽性であり、Bcl6/CXCR5を下方制御した末梢循環TFH様の表現型を呈した。Batf KOマウス (n=6-10 mice) では、抗CTLA-4抗体による腫瘍内4PD1hi細胞増加が完全に消失し (p < 0.01)、CD86発現上昇を介した胚中心反応が4PD1hi細胞増加に必須であることが示された (Figure 6C)。また、SAP KOマウス (n=4-5 mice、TFH欠損) では、通常は無効な抗CTLA-4抗体単剤がB16腫瘍増殖を有意に抑制した (p < 0.05以上) (Figure 7D)。4PD1hi細胞はB細胞活性化を促進する一方でT細胞を抑制するという双方向性の免疫調節活性を示した。
考察/結論
本研究は、Foxp3を発現しない新規のCD4+T細胞サブセットである4PD1hi細胞が、腫瘍内で機能的に免疫抑制的に働き、ICI治療下での免疫応答を左右することを初めて包括的に示した。
新規性: 本研究で初めて、4PD1hi細胞がPD-1/PD-L1依存的な機序でT細胞エフェクター機能を抑制する新規の免疫抑制細胞集団であることを明らかにした。また、CTLA-4阻害薬が4PD1hi細胞を増加させ、PD-1阻害薬がこれを減少・機能抑制するという相反する調節メカニズムを解明し、両者の組み合わせによる相加効果の一部がこの機序によって説明されることを示した。
先行研究との違い: 従来の腫瘍内濾胞ヘルパーT細胞 (TFH) 浸潤が乳癌・大腸癌で予後良好と関連するという報告 (Bindea et al. Immunity 2013; Gu et al. JClinInvest 2013) とは対照的に、本研究では4PD1hi細胞がTFH様表現型を持ちながらもT細胞抑制機能を有することを示した。この見かけ上の矛盾は、TFH様細胞がB細胞活性化を促進しつつもT細胞を抑制するという双方向性の機能によって説明可能である。特に、PD-1発現の高さがT細胞抑制能の指標として機能することが示唆された。
臨床応用: 臨床的には、末梢血4PD1hi細胞の経時的モニタリングがICI治療効果の薬力学的指標として機能することが示された。特に、ペムブロリズマブ治療3週後の4PD1hi細胞の残存は、転移性黒色腫患者の全生存期間 (OS) の独立した不良予後因子であり (HR = 4.4; 95% CI: 1.03–19.14; p = 0.046)、治療最適化の意思決定に有用な早期バイオマーカーとなりうる。NSCLCにおけるニボルマブ単剤とニボルマブ+イピリムマブ併用コホート間の差異は、最適なICI用量・組み合わせの個別化選択に4PD1hi細胞モニタリングが貢献できる可能性を示唆する。
残された課題: 今後の検討課題として、4PD1hi細胞が発現するHAVCR2 (TIM-3)、TGFB、IL10、PDCD1などの複数免疫抑制分子の相互作用の解明、および他の腫瘍種での本知見の検証が残されている。また、PD-1単剤療法によるTreg誘導のメカニズム解明も重要である。これらの研究は、4PD1hi細胞の生物学をより深く理解し、その機能を打ち消すための戦略を開発する上で不可欠である。
方法
- マウスモデル: B16メラノーマ担癌C57BL/6マウス、自然発症メラノーママウス (Grm1-TG)、およびFoxp3-GFPトランスジェニックマウスを用いた。脾臓、腫瘍浸潤リンパ節、および腫瘍から4PD1hi細胞をFACSソーティングにより分離し、in vitro抑制アッセイ(CFSE増殖抑制)、in vivo養子移入アッセイ、および3次元細胞毒性アッセイを実施した。TFH欠損マウスモデルとして、Batf KOマウス(胚中心反応障害)およびSh2d1a (SAP) KOマウス(TFH欠損)を使用し、CTLA-4阻害薬の効果を評価した。
- ヒト検体: 免疫療法未治療の転移性黒色腫患者 (n=47) およびNSCLC患者 (n=51) から末梢血および腫瘍浸潤リンパ球を採取した。CD25発現を利用して4PD1hi細胞とTregを分離し、機能比較を行った。
- ICI治療中の縦断解析: NSCLC患者50名(ニボルマブ単剤、ニボルマブ+イピリムマブ併用など4コホート)および転移性黒色腫患者(イピリムマブ単剤n=47、ペムブロリズマブ単剤n=52)において、末梢血中の4PD1hi細胞の経時的変化をフローサイトメトリーで測定した。
- RNAシークエンシング: マウスおよびヒトの4PD1hi、Treg、4PD1-細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、TFH関連遺伝子シグネチャーの評価を行った。遺伝子セット濃縮解析 (GSEA) および単一サンプル遺伝子セット濃縮解析 (ssGSEA) を用いて、既知のCD4+T細胞サブセットとの重複を評価した。解析にはR統計環境とGSVAパッケージ (Hanzelmann et al. BMCBioinformatics 2013) を使用した。
- 統計解析: 2群間の比較にはStudentのt検定およびBonferroni補正を伴う2元配置分散分析 (ANOVA) を使用した。腫瘍フリー生存期間の解析にはログランク (Mantel-Cox) 検定を、変数間の依存性解析にはPearson相関検定を用いた。患者の生存解析にはCox比例ハザードモデルを適用した。統計解析はGraphPad Prism 7.0aソフトウェアで行われた。