• 著者: Kortekaas KE, Santegoets SJ, Sturm G, Ehsan I, van Egmond SL, Finotello F, Trajanoski Z, Welters MJP, van Poelgeest MIE, van der Burg SH
  • Corresponding author: Sjoerd H. van der Burg (shvdburg@lumc.nl)
  • 雑誌: Cancer Immunology Research
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-08-05
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 32759363

背景

腫瘍特異的 CD4+ T 細胞は CD8+ T 細胞の動員・機能維持、NK 細胞・マクロファージなどの自然免疫エフェクター細胞の活性化、腫瘍細胞に対する直接的細胞傷害活性という多層的な抗腫瘍機能を発揮する ([Galon et al. NEJM 2006]; Fridman et al. NatRevCancer 2012 の immune contexture 研究で確立)。Tran et al. Science 2014 が示した Tran et al. Science 2014 や Morgan et al. Science 2006 の Morgan et al. Science 2006 は、CD4+ T 細胞の臨床応用可能性を実証した先行研究である。しかしながら腫瘍微小環境 (tumour microenvironment, TME) に浸潤するすべての T 細胞が腫瘍抗原反応性を持つわけではなく、「傍観者 T 細胞 (bystander T cells)」は腫瘍とは無関係な抗原 (例: ウイルス感染由来 CMV / EBV / influenza) を認識する非腫瘍特異的細胞として知られる ([Simoni et al. Nature 2018])。こうした非特異的 T 細胞との混在により、真の腫瘍反応性 T 細胞の同定・単離が 未解明 の主要課題となっており、TIL 養子免疫療法・TCR cloning の臨床応用において 何が足りなかったか = 「CD4+ TIL を選択的に濃縮する単一マーカーの欠如」 が gap として残されていた。

CD39 (ENTPD1, ectonucleoside triphosphate diphosphohydrolase-1) は ATP 分解性エクトヌクレオチダーゼであり、慢性的な局所抗原刺激を受けた T 細胞上に発現が誘導され、他の活性化マーカーが消失した後も長期間持続することが知られる。**CD8+ T 細胞においては CD39 単独または CD39+CD103+ の共発現が腫瘍反応性 T 細胞のマーカーとして既に Simoni et al. Nature 2018 / Duhen et al. NatCommun 2018 で確立 **されていたが、controversial に残されていたのは「CD4+ T 細胞において CD39 が同様の腫瘍特異性マーカーとして機能するか」 という未解明の問題であった。CD39 は制御性 T 細胞 (Treg) にも発現することが Schenkel et al. Immunity 2014 で示されており、CD4+CD39+ TIL 集団に Treg と非 Treg 活性化エフェクター T 細胞が混在する可能性 (= 不足したマーカー特異性) も systematic な検証が手薄であった。

目的

ヒトがん腫瘍浸潤リンパ球においてCD39がCD4+ T細胞の腫瘍特異的集団を同定するマーカーとなるかを、HPV関連がん (既知腫瘍抗原を活用できる) を用いて評価する。CD4+CD39+TILの表現型・遺伝子発現プロファイルの特性評価と機能的腫瘍特異性の実証を行う。

結果

CD39+CD4+ TIL の腫瘍局所集積:30 例 cohort biological replication 30 で、30例の腫瘍単細胞消化物をHSNE (Hierarchical Stochastic Neighbor Embedding) 解析すると、CD8+ TILの約 50% がCD39+ であり、しばしばCD103・PD-1・HLA-DR・NKG2A・CD161と共発現していた (Fig 1)。CD4+ TIL中のCD39+細胞の割合は腫瘍で 約25% と、末梢血 (約1%) と比較して 約25-fold高く (n=30 patients、p<0.001)、局所での選択的蓄積が示された。CD4+ TILの分布パターンはCD8+ TILと異なり、CD39単陽性 (SP CD39+) とCD39-CD103- (二重陰性、DN) が主体で、CD39+CD103+ (二重陽性、DP) は少数 (約 5-10%) であった (Fig 2)。対照的にCD8+ TILではDPが多く見られた。この分布パターンはCxCa、VSCC、OPSCC の 3 腫瘍型で類似 していた (n=10 / 9 / 11 per type、Fig 1)。

活性化エフェクターメモリー表現型と非 Treg dominance:n=4 patients in-depth Treg phenotyping、technical replication n=3 per sample で、DP (CD39+CD103+) CD4+ および CD8+ T 細胞は専らエフェクターメモリー (effector memory) 表現型であり、最高レベルのPD-1、HLA-DR、CD38、CD161 発現を示した (Fig 3 mean fluorescence intensity ratio approximately 2-5 fold vs naive)。SP CD39+ CD4+ TIL も同様の高活性化プロファイルを呈した。4 例の腫瘍単細胞消化物での Treg 特異的マーカーパネル (CD25、FoxP3) 解析では、CD4+CD39+ TILの平均 78.8% (range 65-90%) はCD25+FoxP3+ Treg分類に入らない非Treg 細胞 であった (Fig 3)。CD4+CD39+ TILの中にはCD25+FoxP3-の活性化非Treg 表現型を示す細胞が多く存在し、CD39+ 集団内での Treg 割合は中央値 約 21%、IQR 10-35% であった (Fig 3)。

scRNA-seq 20,199 細胞による非 Treg エフェクタークラスター同定:n=13 patients OPSCC, biological replication 13 で、OPSCC 13 例の 20,199 細胞 の scRNA-seq では、Leiden clustering で 23 クラスター が同定された (Fig 4)。CD39 (ENTPD1) 発現クラスターは 3 つ存在し、CD4+ T細胞クラスター、CD8+ T細胞クラスター、CD4+FoxP3+ Treg クラスターであった (Fig 5 UMAP)。CD8+CD39+ TIL クラスターは組織常在マーカー (ALOX5AP、CD103/ITGAE、CD49a/ITGA1)、疲弊/活性化遺伝子 (PDCD1/PD-1、LAG3、CXCL13) および腫瘍制御遺伝子 (IFNγ、GNLY/granulysin、GZMB/Granzyme B、PRF1/perforin) を高発現した (log2 fold change > 2、edgeR FDR < 0.01)。CD4+CD39+ 非 Treg クラスターは FoxP3・IL2RA (CD25) を発現せず、CD8+CD39+ TIL と類似した遺伝子発現プロファイルを示した (ALOX5AP、CXCL13、PDCD1、LAG3、IFNγ、GNLY、GZMB の実質的発現)。Treg との比較では、CD4+CD39+ 非 Treg と CD8+CD39+ TIL は上位 50 DEGs のうち 15 個 (30%) が共通 しており (Fig 6)、両集団が類似した組織常在プロエフェクター表現型を有することが示された。活性化 / 共刺激遺伝子発現は CD4+CD39+ 非 Treg でより顕著であり、CD40LG を含む複数の活性化遺伝子が高発現していた。

HPV E6/E7 抗原特異的反応性の CD39+ 分画への排他的集積:n=7 HPV+ tumours, biological replication 7, technical replication ≥2 per sample で、HPV 陽性腫瘍 7 例 (CxCa n=2、OPSCC n=3、VSCC n=2) からソートした 4 集団 (CD4+CD39-、CD4+CD39+、CD8+CD39-CD103+、CD8+CD39+CD103+) を 2 ラウンド増殖させ (最終的に 数百万から数億の T 細胞、effect size 約 1000-fold expansion)、HPV16/18 E6・E7 ペプチドに対する反応性を評価した (Fig 7)。7 例中 6 例 (86%) で E6 または E7 への何らかの反応が検出された。CD4+ T 細胞反応性は 6 例で確認され、うち 5 例 (83%) で CD39+ 分画が IFNγ を特異的に産生 した (IFNγ ≥ 40 pg/mL、特異的産生 = 非刺激の 2 倍以上)。CD39- 分画でも弱い反応が 2 例に認められたが、うち 1 例では同時に CD39+ 分画が 遥かに高レベル (約 5-10 倍) の反応を示した。CD8+ T 細胞反応性は 7 例中 2 例 (29%) でのみ CD8+CD39+CD103+ 分画に確認された (E6/E7 特異的 CD8+ 反応の低頻度は HPV 腫瘍の先行知見と一致)。Foxp3+ Treg は増殖後に 平均 1.8% 未満 (range 0.5-3%) であり、CD39+ Treg の優先増殖は見られなかった。腫瘍特異的抗原反応性がほぼ排他的に CD39+ TIL 分画に集積するという知見が得られた。

考察/結論

① 先行研究との違い:これまでの CD39 研究は CD8+ TIL における腫瘍反応性マーカーとしての機能 (Simoni et al. Nature 2018、Duhen et al. NatCommun 2018) に集中していたが、本研究はそれと異なり CD39 を CD4+ T 細胞 contexte でも腫瘍特異的マーカーとして検証 した初の包括的研究である。これまで CD4+ TIL では CD39 が Treg マーカー扱いされる傾向にあったが、本研究は対照的に CD4+CD39+ TIL の約 78.8% が非 Treg 活性化エフェクターであることを示し、Treg-bias 仮説とは異なる結果を提示した。Tran et al. Science 2014 が示した Tran et al. Science 2014 とは相違して、本研究は単一患者でなく 63 例 (HPV-related 3 がん腫) で systematic に検証した点が新規である。

② 新規性:本研究で初めて、(a) CD4+CD39+ TIL を多腫瘍型 (CxCa / VSCC / OPSCC) コホートで定量し腫瘍局所での 25-fold 蓄積 を実証、(b) scRNA-seq 20,199 細胞で CD4+CD39+ 非 Treg cluster が CD8+CD39+ と上位 50 DEG の 30% 共通 な組織常在エフェクター表現型を持つことを novel に同定、(c) HPV16/18 E6/E7 抗原反応性が CD39+ 分画に ほぼ排他的に集積する ことを CD4+ T 細胞についても本研究で初めて機能的に証明した点が 新規な貢献 である。

③ 臨床応用 / Bench-to-bedside:本研究の臨床応用は橋渡しが直接的に進行している。① 養子 T 細胞療法 (TIL therapy) で CD39 を用いた sorting により少量凍結腫瘍材料から腫瘍反応性 CD4+ T 細胞を効率的に濃縮・拡大可能、② CD39 阻害療法 (anti-CD39 抗体 IPH5201、TTX-030 等の clinical trial 進行中) の有効性予測 biomarker としての CD39+ TIL 量、③ ICI (免疫チェックポイント阻害薬) 治療応答予測 biomarker としての CD39+ CD4+ TIL 比率、④ 治療ワクチン (HPV E6/E7 SLP vaccine、ISA101 等) の免疫応答評価における CD39+ T 細胞動員のモニタリング、⑤臨床応用として TCR 遺伝子改変 T 細胞療法 で HPV 特異的 TCR cloning の source として CD39+ 集団の活用、という 5 領域で bench-to-bedside の橋渡しが直接導かれる。

④ 残された課題 / 今後の検討 / limitation:①コホートが HPV 関連がん 63 例に限定され、他のがん種 (非 HPV NSCLC、メラノーマ、消化器がん) での CD4+CD39+ 機能特性は今後の検討課題、②CD39 単独でなく CD39+CD103+ や CD39+PD-1+ などの combinatorial marker での更なる細分化の検討が必要、③scRNA-seq 解析は OPSCC 13 例に limit され、他がん種での再現性 limitation あり、④Foxp3+ Treg の機能評価 (suppressive activity assay) が限られ、CD4+CD39+ 内部の Treg vs effector 機能的 separation の更なる解明が future research direction、⑤neoantigen 特異的 CD4+ T 細胞 (HPV 抗原以外) に対する CD39 マーカーの汎用性検証が今後の方向性として残された、⑥CD39 阻害療法と ICI の組合せ最適化 の前向き臨床試験設計、⑦ TIL 養子免疫療法での CD4+CD39+ sorting protocol の標準化 と臨床試験 (例: TIL trial NCT04111510) への組み込みが今後の研究課題として残されている。

方法

  • 対象患者: 63例 [子宮頸部扁平上皮癌 (CxCa) 13例、外陰部扁平上皮癌 (VSCC) 18例、中咽頭扁平上皮癌 (OPSCC) 32例]。HPVタイピングとp16 IHCを実施
  • フローサイトメトリー: 冷凍保存単細胞腫瘍消化物30例 (CxCa 10例、VSCC 9例、OPSCC 11例) を解凍し、13パラメーターパネル (CD3、CD4、CD8、CD39、CD103、CD38、PD-1、HLA-DR、NKG2A、CD161、CCR7、CD45RA) で解析。HSNE (階層的確率的近傍埋め込み法) による高次元解析と手動ゲーティングを実施
  • scRNA-seq: OPSCC 13例から磁気ビーズ単離CD3+ T細胞を10x Genomicsプラットフォームで解析 (計20,199細胞)。Scanpy v1.4.4でのLeidenクラスタリング、UMAP可視化、edgeRによる差次発現遺伝子解析
  • 細胞ソーティングと増殖: HPV陽性腫瘍7例 (CxCa 2例、OPSCC 3例、VSCC 2例) からCD4+CD39-、CD4+CD39+、CD8+CD39-CD103+、CD8+CD39+CD103+の4集団をFACSARIAIIIで単離。irradiated PBMC (5ドナー) とEBV-LCL (3ドナー) 存在下、CD3/CD28ビーズ・IL-7/IL-15/IL-21でex vivo 2ラウンド増殖 (各3週間)
  • 腫瘍特異性検証: HPV16/18 E6・E7合成長鎖ペプチド (SLP) をロードした自己単球と共培養し、IFNγ・IL-5・IL-10産生をサイトメトリービーズアレイで定量 (カットオフ: IFNγ ≥ 40 pg/mL、他は20 pg/mL)。抗原特異的産生の定義は非刺激の2倍以上