• 著者: Mauro Di Pilato, Raphael Kfuri-Rubens, Jasper N. Pruessmann, Aleksandra J. Ozga, Marius Messemaker, Bruno L. Cadilha, Ramya Sivakumar, Chiara Cianciaruso, Ross D. Warner, Francesco Marangoni, Esteban Carrizosa, Stefanie Lesch, James Billingsley, Daniel Perez-Ramos, Fidel Zavala, Esther Rheinbay, Andrew D. Luster, Michael Y. Gerner, Sebastian Kobold, Mikael J. Pittet, Thorsten R. Mempel
  • Corresponding author: Mauro Di Pilato (MD Anderson Cancer Center, Houston, TX, USA); Thorsten R. Mempel (Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA)
  • 雑誌: Cell
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-08-02
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 34343496

背景

抗腫瘍細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) 応答は、TCF-1 (T cell factor 1) 陽性 (TCF-1pos) の幹様記憶細胞が自己複製し、TCF-1陰性 (TCF-1neg) のエフェクター様細胞を産生する階層構造によって維持されることが知られている (Siddiqui et al. Immunity 2019, Miller et al. NatImmunol 2019)。TCF-1neg CTLは、高増殖性のtransitory subset (CX3CR1陽性) と、不可逆的な機能低下状態にある最終疲弊subset (CD101陽性) を含む連続的な分化状態から構成されることが報告されている (Hudson et al. Immunity 2019, Zander et al. Immunity 2019)。樹状細胞 (dendritic cell; DC) は、腫瘍排液リンパ節 (tdLN) における抗腫瘍応答の開始と、腫瘍微小環境 (tumor microenvironment; TME) 内でのT細胞機能の維持の両方において重要な役割を果たすことが報告されている (Garris et al. Immunity 2018)。

近年、従来のcDC1、cDC2、pDCに加えて、IL12b、Fascin1、CCR7を高発現するDC3 (LAMP3+ DC、mregDCとも称される) と呼ばれる新たなDCサブセットが同定され、その役割が注目されている (Zilionis et al. Immunity 2019)。しかし、TME内における各CTLサブセットとDCとの空間的・機能的相互作用の詳細は依然として未解明な点が多かった。特に、TME内の全細胞におけるケモカイン発現プロファイルは系統的に解析されておらず、どのDCサブセットがどのCTLの状態を空間的に支持するのかという具体的な機序に関する知見が不足していた。これらの知識のギャップが本研究の動機付けとなった。特に、CTLの生存と抗腫瘍活性の維持に寄与するTME内の細胞間相互作用の分子メカニズムについては、さらなる解明が必要であった。

目的

本研究の目的は、腫瘍微小環境内の全細胞におけるケモカイン受容体およびリガンドの発現を網羅的に解析し、CTLサブセット (幹様、エフェクター様、transitory) を支持するDCおよびケモカイン軸を同定することである。特に、CXCR6-CXCL16軸の機能的役割と、TME内におけるCTLの生存および抗腫瘍活性維持における分子チェックポイントとしてのメカニズムを詳細に解明することを目的とした。この軸が、CTLの活性化誘導細胞死 (AICD) からの保護と、局所的な増殖の維持にどのように寄与するかを明らかにすることも重要な目的であった。

結果

CXCR6はCD8+ CTLで最も高発現するケモカイン受容体である: scRNA-seq解析により、D4M.3A-pOVAメラノーマのTMEにおいて、T/NK細胞、骨髄系細胞、非免疫細胞の3つの主要な細胞クラスターを同定した (Figure 1A)。TCF-1pos幹様CTL (CD8 T M) とTCF-1negエフェクター様CTL (CD8 T E) は、それぞれTcf7/Nsg2とGzmb/Havcr2の発現パターンに基づいて区別された (Figure 1B)。両方のCTL状態において、Cxcr6が最も高発現するケモカイン受容体遺伝子であり、エフェクター様CTLではCx3cr1も高発現していた (Figure 1C)。タンパク質レベルでは、腫瘍増殖18日目のPD-1+エフェクター様CTLがCXCR6を高レベルで均一に発現し、PD-1+幹様CTLではCXCR6の発現が陰性/中間/高の3相を示した (Figure 1H, I)。PD-1発現は腫瘍反応性CTLを識別し、TCF-1の発現喪失期にCXCR6のアップレギュレーションが生じることが示唆された。

CXCR6はCTL介在性腫瘍制御に必須である: Cxcr6-/-マウス (n=5-10 mice/group) では、D4M.3A-pOVA、YUMM1.1、LLC1の各腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖が有意に加速した (Figure 1J)。CD8+ T細胞を枯渇させたマウスでは、WTとKOマウス間での腫瘍増殖の差は消失したことから、CXCR6の抗腫瘍効果はCD8+ T細胞に依存することが示された (Figure 1M)。WTマウスのTME内では、総CXCR6の95%をCTLが占有していた (Figure 1L)。WT:Cxcr6 KO混合骨髄キメラマウスを用いた実験では、PD-1+エフェクター様CTL、特にCX3CR1+ transitory subsetにおいて、WT細胞がKO細胞を上回って蓄積した (Figure 1O)。腫瘍組織におけるWT細胞とCxcr6 KO細胞の比率は、CX3CR1+ transitory CTLで約3倍高かった。一方、TCF-1pos幹様細胞およびPD-1-傍観者細胞はCXCR6欠損の影響を受けなかった。

CXCR6はTME内でのCTLの局所拡張に必須である: CTFR標識OT-I細胞の共移入実験において、Cxcr6-/- OT-I細胞は腫瘍排液リンパ節 (tdLN) での増殖とCD69/CD25誘導がわずかに遅延したのみであり、プライミング段階への影響は軽微であった (Figure 2B, C)。しかし、移入5日目以降、TME内でTCF-1neg CTLが急速に拡大する際、WT細胞は大きく拡張したが、Cxcr6-/-細胞は拡張しなかった (Figure 2E)。その後の7日間の収縮期には、WT細胞が約2/3に収縮したのに対し、KO細胞は90%が消失し、ほぼ完全に消滅した。18日目時点で、エフェクター様WT細胞はKO細胞を31.5±11.9倍上回り、幹様細胞では7.3±2.7倍の差であった。CX3CR1+ transitory CTLの増加はCxcr6-/-マウスではほとんど観察されず、TME内での拡張の大部分を占めた。これらの結果は、CXCR6がプライミング後のTME内でのCTLの拡張と生存を律速段階として規定することを示した。また、CXCR6欠損CTLでは抗アポトーシス性タンパク質Bcl-2の発現が低下し、活性化誘導性細胞死 (AICD) が増加することが示された (Figure 2K, M)。特に、CX3CR1+ subsetにおいて、Cxcr6-/-細胞のKi67発現が最も顕著に減少し、ZombieRed取り込みによるアポトーシス率がWT細胞と比較して高かった (Figure 2J, M)。Bcl-2の異所性発現により、Cxcr6-/- CTLの腫瘍増殖制御能力が完全に回復したことから、CXCR6の主要な機能はCTLの生存を促進することであると結論付けられた (Figure 3P)。

DC3 (CCR7+) がCXCL16を発現しCTLを血管周囲ニッチに誘引する: scRNA-seq解析により、TME内のDC3 (IL12b/Fascin1/Ccr7を高発現するDCサブセット) がCXCR6のリガンドであるCXCL16の主要な発現細胞として同定された (Figure 4A, B)。多光子生体イメージング (MP-IVM) を用いて、TCF-1negエフェクター様CTLがTME内の血管周囲ストロマに集積し、CXCL16を発現するCCR7+ DC3が密集する血管周囲ニッチ (perivascular niche) を形成することが可視化された (Figure 5C, D)。この空間的配置はCXCR6依存的であり、WT CTLはCxcr6-/- CTLと比較して、DC3クラスターの直接近傍で4倍多く蓄積した (Figure 5I)。

DC3はIL-15をトランス提示してtransitory CTLをAICDから救済する: DC3はIL15 mRNAを発現し、IL-15Rα/IL-15複合体の形式でCTLにIL-15をトランス提示することが示された (Figure 6E, F)。IL15ra-DC特異的欠損マウス (n=5 mice/group) では、transitory CTL (CX3CR1+CXCR3-) の数が減少し、AICDの増加が観察された (Figure 6I)。WT CTLsはIl15ra-/-動物において高いアポトーシス率を示し、Cxcr6-/- CTLsよりも高かった (Figure 6I)。この結果、Il15ra-/-宿主の腫瘍組織におけるWT対Cxcr6-/-細胞の比率は3倍減少した (Figure 6K)。IL-15トランス提示は、CXCR6-CXCL16軸によるCTLの配置と連動して機能し、TCF-1negエフェクター様CTLが不可逆的な機能低下状態へ進行する前に、最大の抗腫瘍活性を維持することを可能にすると考えられる。DC3のCXCL16発現は、その数が少ないにもかかわらず、TME内のTCF-1neg CTLの生存を支持する上で重要な役割を果たすことが示された (Figure 6C, D)。

ヒト癌患者におけるCXCR6発現は生存を予測する: TCGAデータベースのメラノーマ患者 (n=469 patients) のバルクRNA-seqデータ解析により、腫瘍組織におけるCXCR6の発現はCD8Bの発現と強く相関し (Spearman r=0.65, p<0.001)、CXCR3やCCR5と同程度またはそれ以上に強い相関を示した (Figure 7A)。CXCR6高発現患者は低発現患者と比較して生存確率が高く (HR 0.71, 95% CI 0.62-0.81, p<0.001)、CXCR6はメラノーマ患者の全生存期間の最も強力な予測因子であることが示された (Figure 7D)。この関連性は、頭頸部癌、肺腺癌、乳癌など、他の免疫原性ヒト癌種でも観察された (Figure 7E)。

考察/結論

本研究は、CXCR6-CXCL16軸が細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) をDC3富化血管周囲ニッチへ配置し、DC3によるIL-15トランス提示がtransitory CTL (CX3CR1+) を活性化誘導細胞死 (AICD) から救済して局所拡張と機能維持を支持するという、これまで報告されていない新規の細胞・分子チェックポイントを提示した。これは、慢性ウイルス感染におけるtransitory CTLサブセットの同定 (Hudson et al. Immunity 2019, Zander et al. Immunity 2019) や、抗PD-1治療の反応にcDCクロストークが必須であるという既報 (Garris et al. Immunity 2018) を統合し、抗腫瘍CTL応答の空間的・時間的オーケストレーションの詳細を解明した点で、これまでの研究とは異なる。同じ腫瘍微小環境におけるCD8+ T細胞の機能状態を扱う研究 (Rooney et al. Cell 2015 の細胞傷害活性ゲノム解析) や、前手術免疫療法でのT細胞応答動態 (Luoma et al. Cell 2022) とも接続し、CTL生存ニッチの概念を補完する。

新規性: 本研究の独自性は、(1) TMEにおけるケモカイン受容体/リガンドの網羅的発現プロファイルの作成、(2) CXCR6がCTLで最も高発現するケモカイン受容体であることの発見、(3) DC3をIL-15トランス提示細胞として初めて同定したこと、(4) 多光子生体イメージングによるCTL-DC3血管周囲クラスターの可視化、(5) TCF-1からエフェクター様細胞への遷移時の走化性リプログラミング (CXCR6/CX3CR1/CCR5のアップレギュレーション、CXCR3のダウンレギュレーション) の系統的記述にある。特に、CXCR6がCTLのTME内での生存と局所拡張を促進する主要なメカモレギュレーターとして機能することを本研究で初めて実証した。

臨床応用: 本知見は、がん免疫療法の臨床応用において重要な意義を持つ。具体的には、(1) CXCR6アゴニストやCXCL16誘導によるCTLの腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) 局所拡張促進、(2) IL-15スーパーアゴニスト (N-803など) と抗PD-1抗体との併用療法の機序的裏付け (既に非小細胞肺癌で臨床試験中)、(3) DC3を標的としたがんワクチンやアジュバント戦略の開発、(4) transitory CTLサブセット (CX3CR1+CD8+) をTIL療法の選択マーカーとして利用することなどが挙げられる。これらの戦略は、より効果的な抗腫瘍免疫応答を誘導し、患者の生存率を向上させる可能性を秘めている。

残された課題: 今後の検討課題としては、(1) ヒトTMEにおけるDC3-IL-15-CTL軸の機能検証、(2) TIM-3陽性エフェクター様CTL (transitory) とTIM-3陽性疲弊CTLの区別と、それらの異なる標的化戦略の開発、(3) DC3の成熟や機能を促進/抑制する上流シグナルの同定、(4) CXCL16の供給源としての腫瘍細胞、DC3、間質細胞の定量的寄与の解明、(5) CXCR6陽性CTLの養子移入療法における治療効果 (CXCR6遺伝子改変CAR-T細胞など) の検証が挙げられる。また、本研究は急速に増殖する免疫原性マウスメラノーマモデルに基づいているため、より広範なヒト腫瘍におけるこのニッチの発生と、腫瘍内CTL分化におけるその役割をさらに探求する必要があるというlimitationがある。

方法

腫瘍モデル: D4M.3A-pOVA (SIINFEKL-H2B融合ネオ抗原発現メラノーマ)、YUMM1.1メラノーマ、LLC1肺癌モデルを用いた。これらのモデルは、免疫原性腫瘍に対するCTL応答を研究するために選択された。 scRNA-seq解析: 腫瘍単一細胞懸濁液を調製し、InDropsプラットフォームを用いてscRNA-seq解析を実施した。CD45陽性/CD45陰性細胞を分離後、9:1の比率で再結合し解析した。公開データ (MC38、B16.F10-OVA、LCMV脾臓、KP1.9肺腫瘍) との比較により、細胞状態のアノテーションを検証した (Butler et al. NatBiotechnol 2018, Wolf et al. GenomeBiol 2018, Hafemeister et al. GenomeBiol 2019)。データはGEO: GSE179111に寄託されている。 フローサイトメトリー: CXCR6、CX3CR1、CCR5、CXCR3、TIM-3、TCF-1、PD-1、CCR2などのマーカーを用いてCTLサブセットを定義し、細胞表面および細胞内タンパク質の発現を解析した。抗体はBioLegendおよびCell Signaling Technologyから購入した。 遺伝子欠損マウス: Cxcr6-/-マウス (Jax: 005693)、Il15ra floxedマウス (Jax: 003723)、CD8 T細胞枯渇マウス、Cxcr6 KO:WT/WT混合骨髄キメラ (BMC) マウス、CD8 T細胞枯渇マウス、Il15ra floxedマウス (DC特異的IL-15トランス提示欠損)、Xcr1-creマウス (cDC1特異的削除) を用いて、CXCR6およびIL-15Rαの機能的役割を評価した。 養子移入実験: CD44low CD62Lhiに精製したナイーブOT-I CD8+ T細胞 (WT vs Cxcr6-/-) を共移入し、Thy1.1/Thy1.2/CD45.1コンジェニック系統およびCelltrace Far Red (CTFR) 標識を用いて、T細胞の増殖、分化、TME内での動態を追跡した。 多光子生体イメージング (MP-IVM): D4M.3A-pOVA-H2B-Cerulean腫瘍を背部に皮下移植し、背部皮膚チャンバー (DSFC) を設置したIL-12 p40-YFPレポーターマウス (Jax: 006412) を用いて、TME内でのCTL-DC相互作用、CXCR6依存的な細胞配置、およびAICDをリアルタイムで可視化した。 機能試験: 腫瘍増殖曲線、生存期間、TME内の各CTLサブセット数、TIM-3およびCX3CR1の発現を評価し、CXCR6の抗腫瘍免疫における役割を検討した。 統計解析: 統計解析にはGraphPad Prism 8を使用し、Mann-Whitney U検定、ログランク検定、Cox比例ハザードモデルなどを用いた。p値が0.05未満を有意とした。