- 著者: Christopher S. Garris, Sean P. Arlauckas, Rainer H. Kohler, Marcel P. Trefny, Seth Garren, Cécile Piot, Camilla Engblom, Christina Pfirschke, Marie Siwicki, Jeremy Gungabeesoon, Gordon J. Freeman, Alfred Zippelius, Ralph Weissleder, Mikael J. Pittet
- Corresponding author: Mikael J. Pittet (Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School, Boston, USA)
- 雑誌: Immunity
- 発行年: 2018
- Epub日: 2018-11-20
- Article種別: Original Article
- PMID: 30552023
背景
抗PD-1 (programmed cell death protein 1) 免疫チェックポイント阻害薬は多くのがん種で持続的な臨床応答を誘導できることが示されていた (Topalian et al. NEnglJMed 2012)。PD-1経路はT細胞の過剰活性化を防ぐ生理的機能を持つが、腫瘍がこれを悪用してCD8+T細胞を機能不全状態 (exhaustion, 疲弊) に陥れることが確立されており (Wherry et al. NatImmunol 2011)、がん免疫において腫瘍免疫監視・免疫逃避のバランスを示す「免疫編集 (immunoediting)」概念も確立していた (Schreiber et al. Science 2011)。一方で、抗PD-1がT細胞に直接作用して機能を回復させる「直接活性化モデル」と、活性化T細胞が樹状細胞 (dendritic cell, DC) をライセンスしてDCが免疫増幅する「ライセンシングモデル」の2仮説が競合していた。腫瘍微小環境でのIFNγ (interferon-gamma) およびIL-12 (interleukin-12) の産生細胞の同定や、抗PD-1投与後のリアルタイム腫瘍内薬力学の解析は不足しており、治療奏効時の機序を単細胞解像度で直接観察した研究は手薄な状況にあった。これが本研究が解決すべき主要な知識のギャップ (gap in knowledge) であった。
目的
IFNγ-IRES-eYFP (internal ribosome entry site-enhanced yellow fluorescent protein) およびIL-12p40 (interleukin-12 p40 subunit)-IRES-eYFPサイトカインレポーターマウスを用いたintravital imagingと単細胞RNA-seq (scRNA-seq, single-cell RNA sequencing) を組み合わせ、抗PD-1療法の腫瘍内薬力学をリアルタイムかつ単細胞解像度で解明する。IFNγ・IL-12誘導の細胞起源と経路依存性を同定し、非典型NF-κB (nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells) 経路のDC IL-12産生における役割と、IL-12産生DC増幅による抗PD-1療法増強効果を検証する。
結果
抗PD-1投与後の腫瘍内IFNγ・IL-12の急速かつ大幅な誘導: 抗PD-1単回投与後1日目にIFNγ+細胞がベースラインから6.0-fold増加し (n=5匹/群、mean ± SEM: 6.0±1.1)、この増加は3日間以上持続した。IFNγ+細胞は腫瘍間質に蓄積しその大部分はCD8+T細胞であった (Fig 1B)。同時期にIL-12p40+細胞が12.1-fold増加し (n=5匹/群、12.1±3.7)、少なくとも5日間持続した (Fig 1C)。IL-12p40+細胞は分枝形態を呈しDC様であり、治療前に比べ腫瘍深部・血管近傍に蓄積した。intravital imagingでは治療後1日目のIL-12+細胞の運動係数が約10μm²/minと高値であったが、5日目には<1μm²/minへと大幅に低下し、DCが腫瘍組織へ段階的に定着する過程を動的に可視化した (Fig 1G)。これらの知見は、抗PD-1が少なくとも2つの非重複細胞集団に機能的に作用することを示す。
scRNA-seqによるIL-12産生のDC1サブセットへの限局と機能的必須性の証明: n=4,095細胞 (未処置n=1,154、抗PD-1処置n=2,941) のscRNA-seqクラスタリング解析 (t-SNE可視化) により、MC38腫瘍内免疫細胞をT細胞・Treg・NK細胞・好中球・単球・マクロファージ・DC1・DC2の各クラスターに分類した (Fig 2A)。Il12b (IL-12p40) 発現はDC1サブセット (Batf3+, Flt3+, Ly75+/DEC-205, Cd40+, Irf8+) のみに認められ、CD8+T細胞・マクロファージ・単球・DC2では発現を認めなかった (Fig 2F)。Zbtb46-DTR骨髄キメラでDCを選択的に枯渇させるとMC38腫瘍に対する抗PD-1応答が完全に消失した (p<0.001)。またIL-12中和抗体投与でも抗PD-1による腫瘍制御が失われ (p<0.001)、DCおよびDC由来IL-12が抗PD-1療法の有効性に不可欠であることが示された。
CD8+T細胞→IFNγ→DC IL-12産生という間接的ライセンシング機序の確立: フローサイトメトリーおよびscRNA-seqの両解析で、IL-12+DCはPD-1を発現しておらず (Fig 3A)、intravital imagingでも抗PD-1抗体がIL-12+DCに直接結合しないことが確認された。CD8+T細胞を枯渇させると抗PD-1後のIL-12p40産生が消失し (Fig 3C)、IFNγ中和抗体投与でIL-12産生が有意に減少した (p<0.001)。決定的証拠として、DC選択的IFNγR1欠損マウス (CD11c-cre×Ifngr1fl/fl) ではIL-12p40産生低下 (p<0.001) と抗PD-1無応答が確認された (Fig 3E, 3F)。これらは「抗PD-1がT細胞に作用→IFNγ産生→DCがIFNγを感知→IL-12産生→T細胞機能増強」という間接的ライセンシングモデルを支持し、DC上のPD-1・FcγR非発現の確認も含め直接活性化モデルを否定する。
IL-12によるTIL活性化のマウス・ヒト両コホートでの実証: 組換えIL-12のMC38腫瘍内投与でIFNγ+細胞が5.9-fold増加し (5.9±0.7)、腫瘍増殖を顕著に抑制した (Fig 4A, 4B)。MC38腫瘍からのCD8+ TILをaCD3/CD28+IL-12で刺激するとIFNγ産生が著明に増強された (p<0.0001, Fig 4C)。ヒト黒色腫患者19例でのImmunoPulse IL-12電気穿孔法試験 (NCT01502293) では、治療後に細胞溶解シグネチャー遺伝子 (CD2, CD3E, GZMA, GZMH, GZMK, NKG7, PRF1) の発現上昇を認め (Fig 5A, 5B)、シグネチャースコア上位群で良好な臨床転帰が確認された (Fig 5C)。各種固形がん患者6例からex vivoで分離したCD8+ TILでもIL-12添加によりIFNγ産生が増強され (5/6例、Fig 5D)、マウスでの知見がヒトでも再現された。
非典型NF-κB経路活性化によるIL-12+DC増幅と抗PD-1抵抗性モデルへの有効性: scRNA-seq解析でIL-12+DC1は非典型NF-κB経路構成遺伝子であるCd40, Birc2 (cIAP1), Map3k14 (NIK: NF-κB-inducing kinase), Nfkb2 (p100), Relbが特異的高発現を示した (Fig 6A)。CD40アゴニスト抗体投与でIL-12+腫瘍内DCが6.6-fold増加し (6.6±1.2)、cIAP阻害薬AZD5582で4.0-fold増加した (4.0±1.3, Fig 6C)。NIK (Map3k14) 欠損骨髄キメラは抗PD-1に無応答であり、非典型NF-κB経路が抗PD-1応答に必須であることを示した。MC38モデルでは抗PD-1+抗CD40の組み合わせが単剤と比較してほぼ完全な持続腫瘍制御を実現し (p<0.0001, Fig 7C)、抗PD-1抵抗性B16F10メラノーマでも50% (6/12匹) が完全奏効・腫瘍再チャレンジ耐性 (免疫記憶誘導) を達成した (Fig 7D, 7E)。IL-12中和抗体投与でこの相乗効果が消失し (Fig 7G)、IL-12産生を介した機序が確認された。
考察/結論
本研究はintravital imagingとscRNA-seqを組み合わせることで、抗PD-1療法の腫瘍内薬力学を解明し、有効な抗腫瘍応答には「CD8+T細胞→IFNγ産生→DC IL-12産生→T細胞機能増強」というT細胞-DC間の相互クロストークが不可欠であることを示した。この「ライセンシングモデル」は従来の直接活性化モデルと異なり、抗PD-1が腫瘍免疫を完成させるにはDCによるIL-12サポートが必須であることを意味する。IL-12産生DC1サブセットの詳細な分子特性 (Batf3+, Irf8+, Ly75+, Cd40+) の同定およびin vivo intravital imagingによる直接証明は本研究で初めて達成されたものであり、新規な機序論的フレームワークを提供する。
IL-12+DCがCD103 (Itgae) を発現しない点は、これまでの研究でCD103+DCが抗腫瘍免疫の中心的存在として位置づけられてきた既報と異なる重要な発見である。本研究はCD103発現が組織依存性であり (肺腫瘍では発現を維持)、IL-12産生能がより普遍的な機能的マーカーである可能性を新規に示した。IL-12産生DCを循環血液中の前駆細胞が供給できることも示されており、その発生起源の精密な解明が今後の研究課題である。
非典型NF-κB経路 (CD40アゴニズム・cIAP1/2阻害) がIL-12+DCを増幅し、抗PD-1との組み合わせが抗PD-1抵抗性B16F10モデルでも50%完全応答と免疫記憶を誘導したことは、臨床的意義が大きい。CD40アゴニストと抗PD-1の組み合わせ (臨床試験NCT03123783、NCT02376699) およびcIAP阻害薬と抗PD-L1の組み合わせ (NCT03270176) は既に臨床試験段階にあり、本研究の知見はこれらへの臨床応用を支持する機序的根拠を提供する。腫瘍内IL-12をターゲットとした戦略は従来の全身IL-12投与で問題となった重篤な毒性を回避しつつ有効性を発揮できる可能性があり、臨床現場への橋渡し (bench-to-bedside) の観点から有望である。
残された課題として、本研究はMC38・B16F10というマウスモデルに限定されており、ヒト腫瘍でのIL-12産生DCサブセットの定量的解析・最適増幅法の確立が今後の検討に委ねられている。また、aPD-1抗腫瘍活性が長期にわたって維持される機序 (特に骨髄・腫瘍排出リンパ節からの追加細胞動員の関与) は更なる検討が必要である。IL-12がT-bet活性化・Eomes抑制を介してT細胞疲弊を可逆的に解除する可能性も future research の方向性として論文で指摘されており、DCが発現するPD-L1が抗PD(L)1治療後にどのような運命をたどるかも未解決の課題として残されている。
方法
MC38大腸癌細胞株 (H2B-mApple (histone 2B-monomeric Apple fluorescent protein) 標識、RRID (Research Resource Identifier):CVCL_B288) またはB16F10メラノーマ細胞 (ATCC CRL-6475) をC57BL/6Jマウス (Jackson Laboratory、Stock#000664) に皮下移植した。IFNγ産生追跡にはIFNγ-IRES-eYFPレポーターマウス (JAX #017581)、IL-12産生追跡にはIL-12p40-IRES-eYFPレポーターマウス (JAX #006412) を使用した。二光子・共焦点intravital imagingにより抗PD-1 (clone 29F.1A12) 投与後のリアルタイム薬力学を追跡し、腫瘍関連マクロファージ (TAM: tumor-associated macrophage) はPacificBlue-dextranナノ粒子で標識した。scRNA-seqは10x Genomics Chromiumシステムを用い、CD45+細胞をSeurat Rパッケージで解析してt-SNE (t-stochastic neighbor embedding) およびSPRINGで可視化した。DC選択的枯渇はZbtb46-DTR (diphtheria toxin receptor) 骨髄キメラ (JAX #019506) とジフテリア毒素投与で、DC選択的IFNγ受容体欠損はCD11c-cre (Itgax-cre、JAX #007567) とIfngr1fl/fl (JAX #025394) の交配で実施した。非典型NF-κB活性化はCD40アゴニスト抗体 (clone FGK4.5) またはcIAP (cellular inhibitor of apoptosis protein) 1/2阻害薬AZD5582 (Selleck Chemical S7362) で行い、単剤および抗PD-1との併用効果をMC38・B16F10モデルで評価した。臨床データは黒色腫患者19例の腫瘍内ImmunoPulse IL-12電気穿孔法試験 (NCT01502293) とバーゼル大学病院からの6例 (肺腺癌2例・肺扁平上皮癌3例・滑膜肉腫1例) のTIL (tumor-infiltrating lymphocyte) ex vivo解析から取得した。統計はStudent’s two-tailed t検定および3群以上ではone-way ANOVAと多重比較を用いた。