• 著者: Jessica Jou, Kevin J. Harrington, Mai-Britt Zocca, Eva Ehrnrooth, Ezra E.W. Cohen
  • Corresponding author: Ezra E.W. Cohen (Moores Cancer Center, University of California San Diego Health, La Jolla, CA)
  • 雑誌: Clinical Cancer Research
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2020-10-29
  • Article種別: Review
  • PMID: 33122346

背景

治療的がんワクチンは、腫瘍特異的 T 細胞応答の誘導・増幅を目標とするがん免疫療法の一形態であり、標的抗原の選択が設計の核心となる。腫瘍関連抗原 (TAA: tumor-associated antigen) は腫瘍細胞に異常発現する自己抗原だが、中枢性・末梢性トレランス機構によって高親和性 T 細胞プールが枯渇しており、ワクチンはこれらのトレランスを「打破」するだけの効力が必要とされる Melief et al. JClinInvest 2015。これに対し、非同義変異・遺伝子変異・ウイルス性遺伝情報に由来する腫瘍特異的抗原 (TSA: tumor-specific antigen)、特にネオアンチゲンは腫瘍・患者特異的であり、中枢性トレランスの対象になりにくく自己免疫リスクも低いとされる。

免疫チェックポイント阻害薬 (CPI: checkpoint inhibitor) の登場によって腫瘍免疫への関心が急速に高まり、がんワクチンとの併用による相乗効果が期待されるようになった。しかしワクチン療法の前に立ちはだかる課題として、TME (tumor microenvironment: 腫瘍微小環境) の免疫抑制機構、T 細胞エグゾースション (exhaustion: 機能的疲弊)、腫瘍抗原の多様性と患者特異性という 3 点が継続的な障壁となっている。腫瘍の免疫原性は「抗原性」と「TME」の両者によって決まり、炎症のない高変異負荷腫瘍 (小細胞肺癌に例示される) では免疫細胞の TME 浸潤を阻む機構が発達する一方、炎症を伴う低変異負荷腫瘍 (腎細胞癌・肝細胞癌・トリプルネガティブ乳癌・胃癌・頭頸部癌) では別の戦略が求められる。

獲得抵抗性 (acquired resistance) のメカニズムとして、抗原提示機構の遺伝的変化や標的抗原の喪失が挙げられる。特に、メラノーマ患者における抗 PD-1 薬への獲得抵抗性は IFN 受容体関連 JAK1・JAK2 をコードする遺伝子の機能喪失変異と関連することが明らかにされており Zaretsky et al. NEnglJMed 2016、免疫圧が腫瘍内遺伝子異質性を形成しクローン制限を促進することで治療設計に影響する。こうした状況において、抗原選択の改善・送達プラットフォームの洗練・併用療法という複合戦略が模索されてきた。Ott らの個別化ネオアンチゲンペプチドワクチン試験 (Ott et al. NatMed 2017) はネオアンチゲンが実際に免疫原性 T 細胞応答を誘導できることを示す概念実証となった。しかし、(a) in silico MHC (major histocompatibility complex) 結合予測候補の免疫原性ヒット率が依然として低く有用なエピトープを選定するための精度が不足しており、(b) 低変異負荷腫瘍において十分なネオアンチゲンプールを確保するための戦略が確立されていないという 2 つの根本的な知識不足が、個別化がんワクチンの臨床実装を阻む最大の未解決問題として残されていた。

目的

本レビューは 2021 年時点での治療的がんワクチン分野を包括的に概説し、(1) 細胞系・ウイルスベクター・ペプチド系・DNA/mRNA という主要プラットフォームの作用機序と臨床データを整理し、(2) TME 内の免疫制御細胞を直接標的とする T-win テクノロジーを新規アプローチとして紹介し、(3) NGS (next-generation sequencing: 次世代シーケンシング) を活用した個別化ネオアンチゲン同定アルゴリズムの現状と課題を論じることを目的とする。

結果

細胞系ワクチン: Sipuleucel-T の FDA 承認と GVAX・Vigil の有望な初期成績:細胞系ワクチンは自己または同種腫瘍細胞や樹状細胞 (DC: dendritic cell) を利用して腫瘍特異的 T 細胞応答を誘導する設計を持つ (Table 1)。GVAX (GM-CSF-secreting tumor cell vaccine) は進行膵臓癌 (PDAC: pancreatic ductal adenocarcinoma) の多施設パイロット試験 (n=50) ではシクロホスファミド併用群の安定病変 (SD: stable disease) 率が 40.0%・mOS が 4.3 か月、GVAX 単独群では SD 16.7%・mOS 2.3 か月と、低免疫原性腫瘍でも一定の疾患制御が確認された。続くフェーズ Ib 試験 (n=30) では GVAX+イピリムマブ群が mOS 5.7 か月、イピリムマブ単独群が 3.6 か月 (HR 0.51, 95% CI 0.23-1.08, p=0.072) と、境界域ながら方向性のある生存改善を示した。

Vigil は自己腫瘍細胞に GM-CSF 発現プラスミドと bi-shRNA-furin を導入した治療ワクチンであり、進行卵巣癌のフェーズ II 試験 (n=91) の中間解析では BRCA1/2 野生型患者でワクチン群 mRFS 19.4 か月・プラセボ群 8 か月 (HR 0.51, p=0.038) と有意な無再発生存改善を示した。Vigil+アテゾリズマブの組み合わせでは BRCA1/2 野生型で Vigil 先行群 (n=7) の mOS が未到達、アテゾリズマブ先行群 (n=10) の mOS が 10.8 か月 (HR 0.12, p=0.015) と有意差が認められた。

Sipuleucel-T (PROVENGE) は前立腺酸性ホスファターゼ (PAP: prostatic acid phosphatase) を標的とする ex vivo 生成 DC ワクチンで、CRPC (castration-resistant prostate cancer: 去勢抵抗性前立腺癌) に対して FDA が承認した唯一の細胞系がんワクチンである。D9901・D9902A 両試験の統合解析 (n=127) では Sipuleucel-T 群 mOS 25.8 か月・プラセボ群 mOS 21.7 か月 (HR 0.78, 95% CI 0.61-0.99, p=0.032) と有意な OS 延長を達成した。一方、GVAX+ドセタキセル対ドセタキセル+プレドニゾン試験は mOS が 12.2 対 14.1 か月 (HR 1.70, p=0.0076) と逆方向の結果となり中止されており、細胞系ワクチン間でも腫瘍種・対照設定により結果が大きく異なることが示された。

ウイルスベクターワクチン: T-VEC の確立と heterologous prime-boost 戦略の限界:ウイルスベクターワクチンは腫瘍溶解作用と免疫刺激を組み合わせた設計を持ち、T-VEC はその代表格として 2015 年に FDA 承認された初の腫瘍溶解性ウイルスである (Table 2)。フェーズ III OPTiM 試験 (n=436) では、T-VEC 対 GM-CSF で DRR 16.3% 対 2.1% (OR 8.9, 95% CI 2.7-29.2, p<0.001)、ORR 26.4% 対 5.7%、mOS 23.3 か月 対 18.9 か月 (HR 0.79, 95% CI 0.62-1.00, p=0.051)、PFS は有意に改善 (HR 0.68, 95% CI 0.54-0.85, p<0.001) と、複数エンドポイントで優越性が示された Andtbacka et al. JClinOncol 2015。T-VEC+イピリムマブのフェーズ II 試験 (n=198) でも ORR 39% 対 18% (OR 2.9, 95% CI 1.5-5.5, p=0.002) と単剤より高い奏効率が確認された。

異種 (heterologous) prime-boost 戦略では PROSTVAC-VF/TRICOM が評価された。ワクシニアウイルスで PSA (prostate-specific antigen: 前立腺特異抗原) をプライミングし、ファウルポックスウイルスで追加接種するフェーズ II 試験 (n=125) では mOS 26.2 か月 対コントロール 16.3 か月 (HR 0.50, 95% CI 0.32-0.78, p=0.0019) と有望な成績を示した。しかしその後のフェーズ III 試験 (n=1,297) は早期に無効と判断されて中止され (HR 1.01, p=0.47)、フェーズ II の成績が大規模試験に再現されない「フェーズ II 罠」の典型例となった。

免疫調節分子も同時発現させる設計では TG4010 が代表的であり、MVA (modified vaccinia Ankara: 改変ワクシニアアンカラ) に MUC-1 と IL-2 を組み込んだウイルスである。フェーズ IIb/III TIME 試験 (n=222) では MUC-1 免疫応答陽性者の mOS が 32.1 か月、非応答者が 12.7 か月 (HR 0.43, 95% CI 0.20-0.93, p=0.03) と、免疫原性バイオマーカーによる患者選択の重要性を浮き彫りにした。RP1・RP2・RP3 (HSV-1: herpes simplex virus type 1 ベース、テナガザル白血病ウイルスエンベロープタンパク発現)、NDV (Newcastle disease virus) ベースの MEDI5395、HPV 16/18 E6/E7 発現 BVAC-C (子宮頸癌フェーズ I: ORR 11%、奏効持続 10 か月) など複数の新規ウイルスプラットフォームも臨床評価段階に入っており、ウイルス工学の進歩による多様化が加速している。

ペプチド系ワクチンと T-win: TME 免疫制御細胞を直接標的とする新戦略:合成長鎖ペプチド (SLP: synthetic long peptide) ワクチンは APC (antigen-presenting cell: 抗原提示細胞) による取り込みと MHC 提示を通じて CD4+・CD8+ T 細胞応答を誘導する。ISA101 (HPV-16 抗原ターゲット) はニボルマブとの併用でフェーズ II 試験 (n=24、HPV-16 陽性癌) において忍容性と相加効果を確認し、HPV-16 陽性子宮頸癌 (n=77) の化学療法併用試験では HPV-16 特異的 T 細胞応答が強い患者で OS の延長を示した。SurVaxM (サバイビン模倣 SLP ワクチン、SVN53-67/M57-KLH) は新規診断膠芽腫のフェーズ II 試験 (NCT02455557) で補助療法として投与され、12 か月 OS 93.4% という過去データ (約 65%) を大きく上回る成績を示した。

T-win テクノロジーは本レビューで詳細に紹介された最も革新的なプラットフォームである。IDO (indoleamine 2,3-dioxygenase: インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ)、PD-L1 (PD-ligand 1)、PD-L2、アルギナーゼ、CCL22 などの免疫制御分子に特異的な自己反応性 T 細胞を活性化するペプチドワクチン設計で、これらの「抗制御性 T 細胞 (anti-Treg)」はがん患者で高頻度に検出され、腫瘍細胞と免疫抑制細胞を直接殺傷するとともに炎症性サイトカイン分泌を介してエフェクター T 細胞応答を増強する (Table 3)。前臨床モデルでは IDO を標的とする T-win ワクチンにより TME 内の IDO+ 免疫抑制細胞が顕著に減少し、腫瘍浸潤 T 細胞の増加と抗 PD-1 抗体との相乗効果が確認されている。

臨床試験では IO101 (IDO 標的) +アルダラ+モンタニドのフェーズ I 試験 (ステージ III-IV NSCLC: non-small cell lung cancer: 非小細胞肺癌、n=15) で 15 例中 3 例が 6 年 OS で生存しており、20% の長期生存率という顕著な成果が報告された。IO102 (IDO 標的) +ペンブロリズマブの併用はメラノーマのフェーズ I/II 試験で評価中であり、IO103 (PD-L1 標的) のモノセラピーや他剤との組み合わせも BCC (basal cell carcinoma: 基底細胞癌)・CLL (chronic lymphocytic leukemia: 慢性リンパ性白血病)・くすぶり型多発性骨髄腫など複数癌種で試験が進行している。T-win の主要な課題として、最も強力な anti-Treg 免疫応答を自己免疫・毒性なしに活性化することが挙げられるが、これまでの臨床試験では自己免疫を誘発せずに特異的 T 細胞の循環が確認されており、安全性プロファイルは良好である。

mRNA ワクチンと個別化ネオアンチゲン戦略: NGS 時代の新世代アプローチ:mRNA ワクチンは迅速な製造、高い抗原提示能力、感染リスクなし、挿入変異誘発なしという利点を持ち、個別化ネオアンチゲンワクチン開発の主要プラットフォームとなっている。BNT111 (「FixVac」プラットフォーム、4 種類の共有 TAA をコードする脂質ナノ粒子 mRNA ワクチン) の転移性メラノーマ試験 (n=89、中間解析) では、単独療法群 (n=25) で PR 3 例・SD 7 例・完全代謝寛解 1 例が報告され、抗 PD-1 抗体併用群 (n=17) では 6/17 例で PR が観察され全例で多価 T 細胞応答が陽性であった (Table 4)。

個別化ネオアンチゲンワクチンの開発は AI プラットフォームの普及によって加速している。EDGE は AI を用いて腫瘍生検の配列データから腫瘍特異的ネオアンチゲンを同定するプラットフォームであり、GRANITE-001 は EDGE が患者・腫瘍特異的ネオアンチゲン 20 種を同定して設計する個別化ワクチン (アデノウイルスプライミング+自己増幅型 RNA ブースト) であり、SLATE は EDGE が患者横断的上位 20 種の共有ネオアンチゲンを標的とするオフザシェルフ版である。ATLAS は患者の T 細胞免疫応答から in vitro 応答が既に確認されたネオアンチゲンを選定するプラットフォームで、GEN-009 が複数腫瘍種でフェーズ I/IIa 試験中である。RECON バイオインフォマティクスエンジンを基盤とする NEO-PV-01 は患者固有の変異フィンガープリントに基づく個別化ワクチンで、ペンブロリズマブ+プラチナ製剤併用の NSCLC フェーズ I 試験など複数の試験が進行中である。

RO7198457 (BNT122、iNeST プラットフォーム: individualized neoantigen specific therapy) の固形腫瘍フェーズ Ia/Ib 試験 (n=132) では ORR 8% (CR 1 例を含む)・SD 49% が報告された。mRNA-4157 のフェーズ I KEYNOTE-603 試験 (n=33; 単独 n=13、ペンブロリズマブ併用 n=20) では併用群で CR 1 例・PR 2 例・SD 5 例が観察された。さらに KRAS 変異型 NSCLC・大腸癌・膵臓腺癌を対象に 4 種の代表的 KRAS 変異をコードする mRNA-5671/V941 のフェーズ I 試験も進行中であり、共有ネオアンチゲン戦略の新たな標的として KRAS が注目されている。

ナノ粒子送達システム: 有望な前臨床データと臨床転換の壁:ナノ粒子ベースのがんワクチンは生体利用能の延長・抗原分解保護・抗原放出制御を目的として表面特性や組成を改変した多様なシステムが評価されてきた。ポリマーナノ粒子・リポソーム・ミセル・カーボンナノチューブ・メソポーラスシリカナノ粒子・金ナノ粒子・ウイルスナノ粒子がメラノーマ・NSCLC・乳癌・前立腺癌・子宮頸癌で評価されたが、均一なサイズと形状での再現性の低さ・凝集・不安定性・急速なクリアランスが課題として残る。臨床試験に到達したナノ粒子ワクチンはテセモタイド (L-BLP25、MUC-1 特異的ワクチン) のみであり、ステージ III NSCLC のフェーズ III 試験 (n=700) では OS 差なし (HR 0.98, 95% CI 0.85-1.13, p=0.78)、早期乳癌フェーズ II 試験でも安全性は良好ながら残存癌負荷・病理学的完全奏効に有意差は認められなかった。

考察/結論

本レビューは 2021 年時点での治療的がんワクチンの全体像を多様なプラットフォームにわたって体系的に整理した点に意義がある。Sipuleucel-T のみが FDA 承認という現状のなか、T-VEC・ISA101・Vigil など複数プラットフォームが有望な初期臨床成績を示しており、mRNA 技術の急速な発展によって個別化ネオアンチゲンワクチンの製造・設計が現実的になりつつある。T-win という TME 内の免疫制御細胞を直接標的とする全く新しい作用機序のプラットフォームが登場したことも、この時期の大きな転換点である。

これまでの研究との違い: 既報の多くがウイルスベクターやペプチドなど単一プラットフォームを対象としていたのと異なり、本レビューは細胞系・ウイルスベクター・ペプチド・DNA/mRNA ・ナノ粒子の全 5 カテゴリを横断的に比較整理しており、各プラットフォームの進捗と課題を相互に対照的に浮き彫りにした。また PROSTVAC のフェーズ II→III 間での成績乖離 (mOS 利益 vs. HR 1.01) と、TG4010 の MUC-1 免疫応答陽性者での顕著な OS 差 (32.1 対 12.7 か月、HR 0.43) を並列して記載することで、バイオマーカー主導の患者選択なしにフェーズ III に進む危険性を実例をもって示した。これまでの研究では個別試験の結果が断片的に報告されていたが、本レビューで横断比較することで、CPI との組み合わせ戦略の合理性がより明確になった。

新規性: 本論文で初めて T-win テクノロジーの作用機序が詳細かつ系統的に紹介された。T-win は腫瘍抗原を直接標的とする従来のワクチンとは異なり、IDO・PD-L1 等の免疫制御分子を発現する免疫抑制細胞を自己反応性 T 細胞によって直接殺傷するという、novel な免疫療法の発想を体現している。さらに個別化ネオアンチゲンワクチン開発における AI プラットフォーム (EDGE、ATLAS、RECON) の分類と比較も本レビューにおいて初めて整理された内容であり、in silico 予測から実際の免疫原性 T 細胞応答への橋渡しという「精度問題」を明確にフレーム化した点に新規性がある。

臨床応用: 本知見は治療的がんワクチンの臨床応用を考える上で重要な示唆を持つ。最も有望な方向性は CPI との組み合わせであり、T-VEC+イピリムマブ試験 (ORR 39% 対 18%)、ISA101+ニボルマブ、BNT111+抗 PD-1 など複数の組み合わせが臨床的有用性を示した。臨床的意義として、T-win ワクチンが治療誘発性の自己免疫を誘発せずに循環 anti-Treg T 細胞を活性化できることは、既存の免疫療法基盤に組み合わせる際の安全な臨床現場への導入を後押しする。また bench-to-bedside の観点から、AI によるネオアンチゲン同定と mRNA 製造技術の高速化が組み合わさったことで、腫瘍生検から数週間以内に個別化ワクチンを製造するパイプラインが現実に近づいており、特に切除術後補助療法への応用が具体化しつつある。

残された課題: 今後の検討課題として以下が挙げられる。第一に、ネオエピトープ予測精度の向上が依然として不可欠であり、in silico 予測候補の大多数が実際には免疫応答を誘導しないという根本的問題の克服が必要である。第二に、クローナル (truncal) 変異由来ネオアンチゲンとサブクローナル変異由来候補の選択基準の確立が求められる。腫瘍内不均一性に対応するためにはすべての癌細胞に存在するクローナル変異を標的とすることが理論的には優れているが、実臨床での同定は容易でない。第三に、低変異負荷腫瘍 (膵臓癌・前立腺癌・グリオブラストーマなど) における効果的なワクチン戦略の開発は limitation として残る。第四に、ナノ粒子送達システムの大規模製造における品質均一性確保の問題が解決されない限り広範な臨床使用は困難であり、future research が求められる。これらの知識ギャップを克服することで、がんワクチンが既存の CPI・化学療法・放射線との最適な組み合わせパートナーとして定着することが期待される。

方法

本論文はシステマティックレビューであり、独自の患者コホートや実験系は持たない。文献検索は PubMed を主とする主要医学データベースを対象に、「cancer vaccine」「neoantigen」「immunotherapy」「TME」「mRNA vaccine」「oncolytic virus」「personalized medicine」等のキーワードで実施された。収集された文献は 2021 年発行時点での最新の臨床試験データ・前臨床研究・技術進展を中心に精選された。

各プラットフォームの臨床エビデンスは主にフェーズ I〜III 試験の成績を基に評価され、主要エンドポイントとして ORR (objective response rate: 客観的奏効率)、DRR (durable response rate: 持続奏効率)、PFS (progression-free survival: 無増悪生存期間)、RFS (relapse-free survival: 無再発生存期間)、OS (overall survival: 全生存期間) が採用された。各試験で報告されたハザード比 (HR: hazard ratio)・信頼区間 (CI: confidence interval)・p 値を引用しているが、本レビュー自体が新規統計解析を実施したものではなく、観察された生存延長の評価にはカプラン・マイヤー曲線とログランク検定が各原著で用いられた。ネオアンチゲン同定に関しては、MHC (major histocompatibility complex) 親和性予測・免疫原性エピトープ選定・バイオインフォマティクスアルゴリズムの技術的側面を文献レビューとして総括した。